腰に手をあてて痛みをこらえる人のおだやかなイラスト

「レントゲンは異常なしなのに、なぜ痛い?」 〜腰痛と脳の、意外な関係のお話〜

「画像を撮っても、骨に異常はないと言われた。でも、腰は痛いまま」——。 そんな経験は、ありませんか? じつはこれ、とても多いお悩みです。そして最近の「痛みの研究」では、その理由がだんだんと分かってきました。 キーワードは、「脳」 です。腰の痛みなのに脳?と思われるかもしれませんが、慢性的な腰痛ほど、脳とのつながりが深い ことが分かってきているのです。今回はそのしくみを、できるだけやさしく解説します。 ✅ 痛みは「ケガの大きさ」そのものではなく、脳が出す “警報” のようなもの ✅ 痛みが長く続くと、神経や脳が 過敏(かびん) になり、傷が治っても痛みが残りやすくなる ✅ 焦らず、安全な範囲で 少しずつ動く ことが、回復への近道になる 目次 痛みは「ケガの大きさ」を測る目盛りではない 痛みが長引くと、脳と神経が“過敏”になる 不安や「動くのが怖い」が、痛みをさらに強める だからこそ、「動くこと」が回復のカギ 理学療法士として、現場で感じること まとめ 参考(すこし専門的な補足) 痛みは「ケガの大きさ」を測る目盛りではない あなた 検査では「異常なし」って言われたのに、こんなに痛いんです。気のせいなんでしょうか……。 Torapon 気のせいなんかじゃないですよ。痛みは、ケガの大きさをそのまま数字で表しているわけではない んです。まずはそこからお話ししますね。 多くの人は「痛み=体が壊れているサイン」だと思っています。もちろん、ぎっくり腰のような急な痛みは、実際に組織へのダメージが原因です。 ただ、痛みの正体はもう少し複雑です。痛みは、脳が「これは危険かも」と判断したときに鳴らす“警報” のようなもの。ケガの大きさを、そのまま目盛りで示しているわけではありません。 だから、こんなことが起こります。 大きなケガでも、夢中になっていると痛みを感じない 小さな変化でも、不安な状況だと強く痛む 痛みは「体の状態」だけでなく、「脳がどう受け取ったか」 で大きく変わるのです。 痛みが長引くと、脳と神経が“過敏”になる やっかいなのは、痛みが 3か月以上 続くと、体の傷が治った後も痛みが残りやすいことです。 これは、痛みを伝える神経のシステム自体が敏感になってしまうために起こります。専門的には 「中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)」 と呼びます。 あなた 中枢性感作……。むずかしそうな言葉ですね。 Torapon イメージは、鳴りっぱなしの車の防犯アラーム なんです。もう泥棒はいないのに、警報だけが鳴り続けている——そんな状態が、体の中で起きているんですよ。 危険はもう去ったのに、痛みのスイッチだけがオンのまま。これが、慢性腰痛でよく起きていることです。 さらに、痛みが長引くと、脳の中で 痛み・感情・注意 をあつかう部分の働きにも変化が現れることが報告されています。痛みが「ただの感覚」ではなく、気分や集中力とも結びついてしまうのですね。 不安や「動くのが怖い」が、痛みをさらに強める ここで大切なのが、心の状態も痛みに直結している という点です。 「また痛くなったらどうしよう」という不安 「これ以上ひどくなるかも」という考え 「動いたら悪化しそう」という、動くことへの恐怖 こうした気持ちがあると、人は自然と体を動かさなくなります。ところが、動かさないでいると筋力や柔軟性が落ち、神経はますます過敏に。結果として、痛みがさらに長引く悪循環 に入ってしまいます。 つまり腰痛は、「腰そのものの問題」だけでなく、体・心・生活環境が絡み合った問題 として捉える必要があるのです(これを「生物心理社会モデル」と言います)。 だからこそ、「動くこと」が回復のカギ ...

July 22, 2026 · 1 分