医師が患者さんに検査の結果をやさしく説明しているイラスト

まだ何ともない人の、10年後が見えはじめた 〜アルツハイマー病の血液検査、未来への備え〜

「まだ、どこも悪くないんですけどね」 そう言いながら、健康診断の紙をながめる。多くの方にとって、検査とはそういうものだと思います。いま、体に何が起きているかを調べるもの。 ところが2026年7月、その常識が少しだけ動くような報告が出ました。血液を1本とるだけで、「まだ何の症状もない人の10年後」が、ある程度見通せるかもしれない、というのです。 発表したのはアメリカのハーバード大学などのチーム。医学誌『JAMA』に載り、同じ日に開かれた国際学会でも報告されました。 ✅ 症状のない約2,700人(平均70歳)を追いかけたところ、血液中のp-tau217という物質がとても高かった人は、10年のあいだに78%が物忘れの段階へ進んでいました ✅ ただしこれは「そうなりやすい」という見通しであって、決まった未来ではありません。研究者自身が「この数値だけで一人ひとりの将来は決められない」と述べています ✅ そしてこの検査、日本の健康保険ではまだ受けられません。 気になる症状があるときの入り口は、いまも「かかりつけ医に相談する」ことです この検査そのものについては、前回くわしく書きました。あわせてどうぞ。 👉 血液一滴で、アルツハイマー病の"きざし"がわかる時代へ 目次 まず、前回のおさらいを少しだけ 今回の新しさは「まだ何ともない人」を追いかけたこと 出てきた数字を見てみましょう ただし、決まった未来ではありません もうひとつの動き かかりつけ医でも分かるように ただし、日本ではまだ受けられません 分かったところで、打てる手はあるのでしょうか 理学療法士として、現場で思うこと いま私たちにできること おわりに 参考にした情報 まず、前回のおさらいを少しだけ アルツハイマー病では、発症するずっと前から、脳のなかで少しずつ変化が始まっています。その変化を映すものとして注目されてきたのが、p-tau217(ピー・タウ・ニーイチナナ)という物質です。 名前は難しいのですが、中身は単純です。脳の神経細胞のなかにある「タウ」というたんぱく質が、アルツハイマー病では形を変えて溜まっていきます。その変化したタウのかけらが、ごくわずかに血液へ流れ出てくる。それを測っているわけですね。 2025年5月には、アメリカの規制当局が、アルツハイマー病の診断に使える初めての血液検査として、この測定方法を正式に認めました。ここまでが前回のお話です。 あなた 前回で、もう十分すごい話だと思ったのですが……。 Torapon そうなんです。ただ、前回までは 「いま症状がある人の、その原因を突きとめる」 ための検査でした。今回はそこから一歩進んで、まだ何ともない人の先ゆきを調べています。使う場面が、まるきり変わるんですね。 今回の新しさは「まだ何ともない人」を追いかけたこと 今回の研究が調べたのは、認知機能に問題のない人たちでした。 対象は約2,700人。平均年齢70歳 6つの研究グループ・臨床試験のデータをまとめたもの 血液をとった時点では、全員が認知機能の検査で「正常」 そこから平均およそ5年、長い人では10年以上追いかけた そして「その後、物忘れの段階(軽度認知障害=MCI、または認知症)へ進んだかどうか」を数えています。 つまり、血液の数値が高かった人は、本当にその後そうなったのかを、実際に何年もかけて確かめたわけです。ここが今回のいちばん大事なところだと思います。 出てきた数字を見てみましょう 血液中のp-tau217の値によって、その後の進み方には、はっきりした差がありました。 p-tau217の値 5年のあいだに物忘れの段階へ進んだ割合 10年では とても高い(平均の2倍を超える) 約38%(3人に1人ほど) 78% やや高い 15% 45% ここで「とても高い」「やや高い」と書いたのは、平均からどれだけ離れているかでグループを分けたものです。とても高い、は平均の2倍を超えた人たち。やや高い、はその手前で、平均より少し上にいる人たちです。 なお、この表に平均くらいの人や、平均より低かった人は出てきません。 発表で示されたのは、高いほうの2つのグループだけです。 💡 「◯◯以上なら、やや高い」という一律の数値は示されていません。 血液の検査は、使う機械や試薬によって出てくる数字の目盛りが変わります。同じ人を測っても、検査の種類が違えば数値が違ってくるのです。そのため研究では、ばらつきをそろえたうえで比べています。 ですから、この検査は「◯◯以上だから危ない」と一本の線で決めるものではなく、平均からどのくらい離れているかで見るもの、と思っていただくのがよさそうです。 10年で78%。かなり大きな数字です。 けれども、ここで慌てないでいただきたいのです。この78%は、「平均の2倍を超えるほど高かった人」だけの数字です。ほとんどの方は、この列には当てはまりません。 あなた 78%と言われると、やっぱりドキッとします……。 Torapon そう感じるのが自然だと思います。ただ、この数字は 「とても高い」という限られたグループの話です。そして残りの22%の方は、10年たっても進んでいません。高い=必ずそうなる、ではないということも、同じくらい大事な結果なんですね。 ...

August 25, 2026 · 1 分
朝日のイラスト

アルツハイマー病に明るい光? 〜『NAD+』研究の進展と、いま私たちにできること〜

ご家族にアルツハイマー病の方がいらっしゃる、あるいは「もしかして自分も…」と気になっている。 そんな方にとって、「いつか治る薬は出るのだろうか」 という思いは、いつも心のどこかにあるのではないでしょうか。 最近、医療ニュースで興味深い研究が紹介されました。 「進行したアルツハイマー病が『元に戻る』可能性」 そんな見出しが踊る、最新の研究レポートです。 私自身、母がアルツハイマー型認知症で施設に入所しているので、この記事を読んだとき、思わず食い入るように画面を見つめました。 今回は、その内容を 冷静に、わかりやすく お伝えしつつ、いま私たちにできることを一緒に考えてみたいと思います。 ✅ 海外で「進行したアルツハイマー病から脳の機能を取り戻す可能性」を示す研究が発表されました ✅ 鍵となるのは 「NAD+(ナドプラス)」 という、細胞のエネルギー源となる物質 ✅ ただし まだマウスの段階。すぐ使える治療ではないけれど、これまでにない新しい希望が見えてきました 目次 これまでの治療と、何が違うの? NAD+(ナドプラス)ってどんな物質? 研究でわかったこと でも、すぐ人に使えるわけじゃない理由 私が感じたこと いま、私たちにできること おわりに これまでの治療と、何が違うの? これまでのアルツハイマー病の治療や薬は、「進行を遅らせる」ことが目標でした。 最近話題になった抗体薬(レカネマブなど)も、脳にたまる「アミロイドβ」というゴミを取り除いて、進行をゆっくりにする働きをします。とても大切な進歩ですが、「失われた記憶や能力が戻ってくる」わけではありません。 ところが今回の研究では── これまでの治療 今回の研究 目標 進行を 遅らせる 失われた機能を 取り戻す ねらい アミロイドβの除去 脳の 修復力 を取り戻す 段階 一部すでに使用中 まだマウス実験 「取り戻す可能性」というのは、これまでなかった視点です。だから医療界では 画期的 と評価されています。 NAD+(ナドプラス)ってどんな物質? NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド) という名前は難しいですが、はたらきはシンプルです。 私たちの すべての細胞の中 に存在し、エネルギーを生み出したり、傷ついた DNA を修復したり するために欠かせない、いわば「燃料」のような物質です。 体が元気に動くにも、傷を治すにも、NAD+ が必要です。 NAD+ が枯渇すると… 研究チームは、アルツハイマー病のマウスの脳と、実際の人間の患者さんの脳でも、この NAD+ のバランスが崩れて、枯渇している ことを突き止めました。 つまり── 脳がダメージを受けても、それを 修復するための「燃料」が足りない。 結果として、脳の防御システムが崩れ、アルツハイマー病が進んでいく。 ...

May 4, 2026 · 1 分
脳のイラスト

脳は「自分で治す力」を取り戻せる? 〜改良型ビタミンKと神経再生の研究〜

「一度こわれた脳の神経は、もう元には戻らない」―― 長いあいだ、そう考えられてきました。 でも、その常識を少しずつ書きかえるような研究が出てきています。今回は、日本の大学から届いた、こんなお話です。 ビタミンKを改良した新しい物質が、「神経のもと」から神経細胞が育つのを、約3倍も後押しした ワクワクする話ですが、これも まだ研究の入り口 の段階です。「将来が楽しみな芽」として、やさしくお伝えします。 ✅ 芝浦工業大学のチームが、ビタミンKを改良した新しい化合物 をつくった ✅ その化合物は、「神経のもと(神経幹細胞)」を神経細胞に変える力が、天然のビタミンKの約3倍 だった ✅ ただし、これは 培養した細胞での実験。市販のビタミンKサプリとは 別物 で、「飲めば脳が再生する」話ではありません 目次 神経細胞は、本当に増えないの? 改良型ビタミンKの研究 ここを誤解しないで おわりに 神経細胞は、本当に増えないの? 私たちの脳は、たくさんの 神経細胞 がつながり合ってできています。これらは増えにくく、傷つくと戻りにくい――それが長年の「常識」でした。 ところが近年、脳の中には「神経のもと(神経幹細胞=しんけいかんさいぼう)」が残っていて、条件がそろえば 新しい神経細胞が生まれうる ことが分かってきました。そこで「このもとを、上手に神経細胞へ育てられないか?」という研究が進んでいるのです。 改良型ビタミンKの研究 芝浦工業大学のチームは、ビタミンK に注目しました。ビタミンKをそのまま使うのではなく、ビタミンAに関係する成分と組み合わせて、新しい化合物を設計したのです。 すると、その化合物は「神経のもと」を神経細胞に変える力が、天然のビタミンKのおよそ3倍 にもなりました。研究チームは、将来的に アルツハイマー病やパーキンソン病 のように神経が失われる病気の治療に、役立つ可能性があると期待しています。 この研究は2026年、専門誌『ACS Chemical Neuroscience』に発表されました。 ここを誤解しないで とても大事な注意点があります。 今回すごい働きを見せたのは、研究者が 新しく設計した特別な化合物 です。納豆や青菜に含まれる、ふだんのビタミンKとは別物 ですし、市販のビタミンKサプリを飲めば脳が再生する、という話ではありません。 また、実験は 培養した細胞 で行われたもので、人や動物の体で確かめるのはこれからです。期待しすぎず、研究の進み具合を見守りたいですね。 ⚠️ 血液をさらさらにするお薬(ワルファリンなど)を飲んでいる方 は、ビタミンKのとり方に注意が必要です。食事やサプリを変える前に、必ずかかりつけ医にご相談ください。 ビタミンKそのものは、骨や血管の健康に欠かせない大切な栄養です。納豆・ほうれん草・ブロッコリーなどから、ふだんの食事でバランスよく とるのがおすすめです。 おわりに 「こわれた脳は戻らない」という常識が、研究の進歩で少しずつ変わろうとしています。脳が 自分自身を修復する力 を引き出す――そんな未来の入り口に、私たちは立っているのかもしれません。 すぐに治療が変わるわけではありませんが、こうした地道な研究の積み重ねが、いつか大きな希望につながります。今日できることは、バランスのよい食事と、無理のない生活。基本を大切にしながら、明るいニュースを待ちましょう。 📚 あわせて読みたい一冊 PR LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界 ハーバード大学の老化研究の第一人者が、「老い」を科学の力でどこまで遅らせ、若返らせられるのかを語った世界的ベストセラー。体や脳が自分を修復する力という、今回の話とも通じるテーマを大きな視野で学べます。 Amazonで見る 楽天で見る 参考にした情報 芝浦工業大学の研究チーム(ビタミンKを改良した神経再生化合物) 専門誌『ACS Chemical Neuroscience』2026年発表の論文 ※ 本記事は、上記の信頼できる研究・大学発表をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。紹介した内容は培養細胞を用いた研究段階のものであり、治療効果やサプリメントの効果を示すものではありません。お薬の服用中の方・治療中の方は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

June 1, 2026 · 1 分
朝日と研究のイメージ

アルツハイマーの「炎症スイッチ」が見つかった? 〜脳の火を消す研究の最前線〜

「認知症の薬や治療は、これからどうなっていくの?」 ご家族のことを思って、そんなふうに気になっている方も多いと思います。 今回は、アルツハイマー病の研究の最前線から、ひとつ明るいニュースが届きました。 アルツハイマー病の脳で「炎症を止まらなくするスイッチ」になっているタンパク質が見つかった ただし、これは まだ研究の段階 の話です。期待しすぎず、でも前向きに――そんな気持ちで読んでいただければと思います。 ✅ アルツハイマー病の脳では「STING(スティング)」というタンパク質が、炎症をいつまでも続けさせるスイッチ になっていた ✅ マウスの実験で、このスイッチが入るのを防いだところ、脳の炎症がやわらいだ ✅ ただし 動物実験の段階 で、すぐに使える薬ではない。「新しい治療の的(まと)が見つかった」というニュースです 目次 そもそも「脳の炎症」って? 見つかった「炎症スイッチ」の話 いま私たちにできること おわりに そもそも「脳の炎症」って? 私たちの体には、ばい菌やケガから身を守る「免疫(めんえき)」のしくみがあります。脳にも、同じように見張り役の細胞がいて、異常があると 炎症 を起こして対応します。 ところが、この炎症が 必要もないのにずっと続いてしまう と、今度は脳そのものを傷つけてしまいます。アルツハイマー病では、この「消えない炎症」が、神経のつながりを弱らせる一因と考えられてきました。 見つかった「炎症スイッチ」の話 アメリカのスクリプス研究所のチームが、この「消えない炎症」の犯人をつきとめました。 カギになっていたのは、免疫の見張り役として働く「STING(スティング)」というタンパク質です。アルツハイマー病の脳では、このSTINGが 化学的に変化 してしまい、炎症のスイッチが入りっぱなしになっていたのです。 そこで研究チームが、マウスの実験で この変化が起きないように したところ――脳の炎症がやわらいだことが確認されました。研究を率いた神経内科医のスチュアート・リプトン博士は、これを「アルツハイマー病の新しい、重要な治療の的(まと)になる」と話しています。 ※ この研究は2026年、医学誌『Cell Chemical Biology』に発表されたものです。マウスでの段階 であり、人に使える薬ができたわけではありません。 いま私たちにできること 「新しい薬を待つ」だけでなく、今日からできること もあります。脳の余計な炎症を抑えるには、こんな生活習慣が役立つと考えられています。 ✅ 適度な運動 を続ける(歩く・体操など) ✅ しっかり眠る(睡眠中に脳の掃除が進みます) ✅ 野菜・魚を中心としたバランスのよい食事 ✅ 歯みがき・歯科受診など 口の中を清潔に保つ(歯周病の炎症も関係するといわれます) 特別なことではなく、いつもの暮らしの延長です。 運動と脳の関係は、こちらの記事もどうぞ。 👉 認知症を遠ざける運動のヒント おわりに 炎症という「脳の中の火」を、どこで消せばいいのか――その スイッチの場所 が見えてきた。これは、これからの認知症研究にとって大きな一歩です。 すぐに治療が変わるわけではありませんが、世界中の研究者が一歩ずつ前に進んでいます。私たちは過度に不安にならず、今できる生活習慣を大切にしながら、こうした明るいニュースを待ちたいですね。 📚 あわせて読みたい一冊 PR アルツハイマー病 真実と終焉 アルツハイマー病を「炎症・栄養・毒素」など複数の原因から見直す、世界的に話題になった一冊(白澤卓二先生監修)。今回の炎症の話とも通じる、生活習慣からのアプローチがやさしく整理されています。 Amazonで見る 楽天で見る 参考にした情報 スクリプス研究所(米国)の研究/責任著者:スチュアート・リプトン博士 医学誌『Cell Chemical Biology』2026年発表の論文(STINGタンパク質と脳の炎症) ※ 本記事は、上記の信頼できる研究・大学発表をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。紹介した内容は研究段階のものであり、治療効果を保証するものではありません。治療やお薬については、必ず主治医・かかりつけ医にご相談ください。

June 1, 2026 · 1 分
研究と希望のイメージ

アルツハイマー病に「もうひとつの引き金」? 〜脳の“発電所”をふさぐタンパク質の発見〜

「認知症の研究は、いまどこまで進んでいるの?」 ご家族のことを思って、そんなふうに気になっている方も多いと思います。 今回は、アルツハイマー病の研究の最前線から、また新しい発見が届きました。 アルツハイマー病の脳で「細胞のエネルギー工場」をふさいでしまうタンパク質が見つかった ただし、これは まだ研究の段階 の話です。期待しすぎず、でも前向きに――そんな気持ちで読んでいただければと思います。 ✅ アルツハイマー病の脳では「GRK2(ジーアールケーツー)」というタンパク質がかたまり、細胞の“発電所”であるミトコンドリアをふさいでいた ✅ それによって、認知症のもとと言われる アミロイドβ(ベータ)が増える悪循環 が起きていた ✅ マウスの実験で、このかたまりを防ぐ候補の物質を使うと、神経細胞の傷みがやわらいだ。ただし まだ動物実験の段階 で、すぐ使える薬ではありません 目次 そもそも「ミトコンドリア」って? 見つかった新しい「悪循環」の話 いま私たちにできること おわりに そもそも「ミトコンドリア」って? 私たちの体は、目に見えないほど小さな「細胞(さいぼう)」が、たくさん集まってできています。その細胞の一つひとつの中に、体を動かすためのエネルギーをつくる、小さな工場 があります。これが「ミトコンドリア」です。車でいえばエンジン、家でいえば電気をつくる発電所のような、大切な役わりをしています。 脳の神経細胞は、とてもたくさんのエネルギーを使います。ですから、このミトコンドリアが元気でないと、神経細胞もうまくはたらけません。ミトコンドリアの元気と脳の元気は、深くつながっている と考えられています。 見つかった新しい「悪循環」の話 スイスの工科大学(ETHチューリッヒ)のチームが、この「発電所のトラブル」の犯人のひとつをつきとめました。 カギになっていたのは、「GRK2(ジーアールケーツー)」というタンパク質です。アルツハイマー病の脳では、このGRK2の“はたらかなくなった形”が かたまりになってたまり、ミトコンドリアの出入り口をふさいでいたのです。 すると発電所がうまく回らなくなり、認知症のもとと言われる アミロイドβ(ベータ)が増える。そのアミロイドβが、またGRK2のかたまりを増やす――という 「悪循環」 が起きていました。 そこで研究チームが、このかたまりができるのを防ぐ候補の物質(「化合物10」と呼ばれるもの)をマウスに使ったところ――発電所のはたらきが戻り、神経細胞の傷みがやわらいだ ことが確認されました。 ※ この研究は2026年、医学誌『Cell Reports Medicine』に発表されたものです。ヒトの脳の組織とマウスで調べた段階 であり、人に使える薬ができたわけではありません。研究チームはこれから、薬の開発を一緒に進める企業を探す段階だとしています。 以前ご紹介した「炎症スイッチ」の話と同じく、これも 「新しい治療の的(まと)が見つかった」 という前向きなニュースです。 あわせて、こちらの記事もどうぞ。 👉 アルツハイマーの「炎症スイッチ」が見つかった? いま私たちにできること 「新しい薬を待つ」だけでなく、今日からできること もあります。細胞の発電所(ミトコンドリア)を元気に保つには、こんな生活習慣が役立つと考えられています。 ✅ 適度な運動 を続ける(歩く・体操など。ミトコンドリアは運動で増えるといわれます) ✅ しっかり眠る(睡眠中に脳の掃除が進みます) ✅ 野菜・魚を中心としたバランスのよい食事 ✅ 食べすぎに気をつける(腹八分目も体にやさしいといわれます) 特別なことではなく、いつもの暮らしの延長です。 おわりに 「炎症」に続いて、今度は「細胞の発電所」。アルツハイマー病を、いろいろな角度から見直す研究が、世界中で一歩ずつ進んでいます。 すぐに治療が変わるわけではありませんが、手がかりは確実に増えています。私たちは過度に不安にならず、今できる生活習慣を大切にしながら、こうした明るいニュースを待ちたいですね。 📚 あわせて読みたい二冊 PR 生涯健康脳 こんなカンタンなことで脳は一生、健康でいられる! ...

June 19, 2026 · 1 分
研究と希望のイメージ

脳の老化を進める『鉄のタンパク質』 〜減らすと記憶が戻った、という新しい発見〜

「年をとると、もの覚えが悪くなるのは仕方ない」 そう思ってあきらめている方も、多いかもしれません。 ところが最近、「脳の老化には、ある“原因物質”がかかわっていて、それを減らすと記憶が戻った」 という、おどろきの研究が報告されました。 今回は、その発見――脳にたまる 「FTL1(エフティーエルワン)」 というタンパク質の話を、やさしくご紹介します。ただし、これは まだ研究の段階 の話です。期待しすぎず、でも前向きに、そんな気持ちで読んでいただければと思います。 ✅ 老化した脳には 「FTL1」という鉄に関わるタンパク質がたまり、細胞の“発電所”ミトコンドリアを弱らせて、記憶力を下げていた ✅ 年老いたマウスでこの FTL1を減らしたところ、記憶のテストの成績が改善。脳の働きが“若返る”可能性が示されました ✅ ただし、これは マウスの遺伝子を操作した実験の段階。人にそのまま使えるわけではなく、これからの研究が必要です 目次 そもそも「FTL1」と「ミトコンドリア」って? 見つかった「脳の老化のしくみ」 FTL1を減らしたら、記憶が戻った 人に使えるの? 見通しと、いまの限界 いま私たちにできること おわりに そもそも「FTL1」と「ミトコンドリア」って? 私たちの体は、小さな 「細胞(さいぼう)」 がたくさん集まってできています。その細胞の一つひとつの中に、エネルギーをつくる小さな工場があります。これが 「ミトコンドリア」 です。家でいえば、電気をつくる発電所のような存在です。 脳の神経細胞は、とてもたくさんのエネルギーを使います。ですから、この発電所が元気でないと、脳もうまくはたらけません。 一方の 「FTL1」 は、もともと 脳の中の“鉄”をしまっておく役割を持つタンパク質です。鉄は体に必要なものですが、多すぎても少なすぎてもいけない、デリケートな存在。FTL1は、その鉄のバランスを保つ係をしています。 見つかった「脳の老化のしくみ」 研究チームが、**若いマウスと年老いたマウスの脳(記憶をつかさどる海馬)**を比べたところ、おどろくことがわかりました。年をとるにつれて、神経細胞の中にFTL1が異常にたまっていくのです。 FTL1が増えすぎると、脳の中の鉄のバランスが乱れます。すると―― 発電所(ミトコンドリア)の働きが悪くなる → 体に必要なエネルギー(ATP)がうまくつくれなくなる → 神経細胞どうしのつなぎ目(シナプス)の働きが弱る → 記憶力や、考える力が低下する つまり、「年をとると、FTL1が増える → 脳がエネルギー不足になり、神経のつながりが弱る」 という流れが、もの覚えの低下の一因になっていた、というわけです。 ここで大事なのは、この研究が 「神経細胞が死んでしまうことだけが、脳の老化の原因ではない」 と示した点です。つながりの“働き”が弱っているだけなら、もう一度元気にできる余地がある――。そんな希望につながる発見でもあります。 脳の“発電所”をめぐる話は、こちらの記事もどうぞ。 👉 アルツハイマー病に「もうひとつの引き金」? FTL1を減らしたら、記憶が戻った 研究チームは、次に 「では、増えすぎたFTL1を減らしたらどうなるか」 を確かめました。年老いたマウスの脳で、FTL1を減らす操作を行ったのです。 すると、その結果は劇的でした。 物を見分ける記憶:ふつうの年老いたマウスは、新しい物と古い物を見分けられず、テストの成績はほぼゼロ。ところが FTL1を減らしたマウスは、はっきりと成績が改善し、新しい物を見分けられるようになりました 道を覚える記憶(空間記憶):以前通った道と新しい道を区別するテストでも、ふつうの年老いたマウスはできなかったのに、FTL1を減らしたマウスでは、はっきり改善が見られました 脳の中を調べると、乱れていた鉄のバランスが整い、弱っていたミトコンドリアの働きとエネルギー産生も回復していました。加齢で減っていた、つなぎ目(シナプス)に必要なタンパク質も、再び増えていたといいます。 さらに研究チームは、エネルギーづくりを助ける「NADH」という成分を与えることでも、記憶の低下を防げることを確認しました。FTL1という“原因”だけでなく、エネルギー不足という“結果”の側からも手を打てる可能性が見えてきたのです。 人に使えるの? 見通しと、いまの限界 ...

July 1, 2026 · 1 分
薬と生活習慣を考えるイメージ

「やせる薬」は、認知症に効くのか 〜大きな期待と、正直な結果〜

ここ数年、「やせる薬」という言葉をよく耳にするようになりました。もともとは糖尿病の薬として使われてきた GLP-1(ジーエルピーワン) という種類のお薬です。 この薬について、しばらく前からこんな話題がありました。 「この薬を飲んでいる人は、認知症になる人が少ないらしい」 大きな期待が集まりました。そして2026年、その答えの一つが出ました。今日は、期待と、その正直な結果のお話です。少し意外な結末ですが、そこから学べることのほうが、じつは大きいのです。 ✅ カルテを集めた調査では、この薬を飲んでいる人は認知症のリスクが40〜70%低いという報告がありました ✅ ところが、3,808人を対象にきちんと比べた試験では、差はありませんでした(2026年3月発表)。ただしこれは「すでに始まったもの忘れを治せるか」を調べたものです ✅ 「そもそも防げるか」は、これから。1億ドルをかけた新しい試験が始まりましたが、その土台に置かれているのは、やはり生活習慣です 目次 なぜ「脳にも効く」と期待されたのか きちんと試したら、差はなかった 期待と結果が、なぜずれたのか それでも研究は終わらない いま確かなのは、生活習慣のほう 現場で感じていること いま私たちにできること おわりに なぜ「脳にも効く」と期待されたのか GLP-1という薬は、もともと血糖値を下げる薬です。食欲を抑えるはたらきもあるため、体重が減ることから「やせる薬」として知られるようになりました。 この薬と認知症の関係が注目されたきっかけは、大量のカルテのデータでした。 糖尿病の患者さんのうち、GLP-1の薬を使っていた人と、別の薬を使っていた人を後から比べたところ、GLP-1のグループでは認知症になった人が40〜70%少なかったという報告が、いくつも出てきたのです。 理屈の面でも、期待できる材料がありました。 脳の炎症をやわらげるはたらきがありそうだ 脳の血のめぐりによさそうだ 血糖や体重が整うこと自体が、脳にもよいはずだ あなた それだけそろっていれば、効きそうに思えますね。 Torapon そうなんです。世界中の研究者が期待しました。だからこそ、本当にそうなのかを確かめる大きな試験が組まれたんですよ。 きちんと試したら、差はなかった その試験の名前を evoke(イヴォーク) といいます。 3,808人が参加(55〜85歳) 全員、もの忘れが始まっている段階の方(軽度認知障害、または軽度のアルツハイマー病) くじ引きで「本物の薬(飲むタイプのセマグルチド)」と「にせ薬」に分ける 2年間、認知機能の変化を比べる 結果は、2026年3月の国際学会で発表され、医学誌『Lancet』にも掲載されました。 本物の薬を飲んだ人と、にせ薬を飲んだ人とで、認知機能の変化に差はありませんでした。 血液の検査では、脳の炎症に関わる数値が最大10%ほど改善していました。けれど、もの忘れの進み方そのものは変わらなかったのです。 あなた あんなに期待されていたのに……。 Torapon 残念な結果ではあります。でも私は、この結果がきちんと発表されたこと自体が大切だと思っています。効かなかったことをはっきり示してくれたから、私たちは「この薬を飲めばもの忘れが治る」という期待に、お金や時間を注がずにすむのですから。 期待と結果が、なぜずれたのか 理由は、大きく2つあります。 ひとつは、調べ方の違いです。 はじめの「40〜70%低い」は、もともと薬を飲んでいた人のカルテを、後から集めて比べたもの(観察研究)でした。この方法には落とし穴があります。薬を飲んでいる人と飲んでいない人は、もともと違うからです。通院を続けている、健康に気を配っている、経済的な余裕がある——そうした違いが、結果に混ざりこんでしまいます。 いっぽう evoke は、くじ引きで薬とにせ薬に分ける方法でした。こうすると2つのグループの条件がそろうので、薬そのものの効果がはっきり見えます。 この「観察研究では言い切れない」という話は、前回の記事でもお伝えしました。 👉 帯状疱疹のワクチンで、認知症が減る? もうひとつは、タイミングです。 evoke に参加したのは、すでにもの忘れが始まっていた方々でした。認知症の変化は、症状が出る10年、20年前から静かに始まっていると考えられています。だとすれば、症状が出てからでは遅すぎたのかもしれません。 それでも研究は終わらない 2026年7月13日、ロンドンで開かれたアルツハイマー病の国際会議で、アメリカのアルツハイマー協会が新しい試験を発表しました。PROTECT-Cog(プロテクト・コグ)といいます。 1億ドル(150億円ほど)をかけた、世界規模の試験 対象は、まだ認知症になっていない、リスクの高い高齢の方 生活習慣のプログラムに、GLP-1のような代謝を整える薬を足すと、さらに効果が上がるかを調べる 3年間、6か月ごとに認知機能と健康状態をくわしく調べる 責任者は、アルツハイマー協会の Maria C. Carrillo 博士です。 ...

August 2, 2026 · 1 分
和食の朝ごはんの前で椅子から立ち上がろうとする高齢男性のイラスト

やせる薬で減るのは、脂肪だけではありません 〜筋肉を守りながら使うために〜

前回、「やせる薬」(GLP-1受容体作動薬といいます)が認知症に効くのかどうかを書きました。 前回の記事はこちらです。 👉 「やせる薬」は、認知症に効くのか あの記事を書いたあと、ずっと引っかかっていたことがあります。理学療法士として、いちばん気になるところに触れていなかったのです。 体重が減るのは分かりました。では、減っているのは何なのでしょうか。 ✅ 高齢の糖尿病の方432人を24か月追いかけたところ、薬を使った方は筋肉の量・握力・歩く速さが、使わなかった方より低下していました ✅ これは薬を否定する話ではありません。使うなら、筋肉を守る手を一緒に打っておきたい、という話です ✅ 守り方は地味です。たんぱく質をしっかり摂り、筋肉に力を出させること。それだけです 目次 体重が減るとき、何が減っているのか 432人を24か月追いかけた研究 この研究の弱いところも書いておきます なぜ高齢の方でとくに心配なのか 筋肉を守るために、できること 現場で見てきたこと おわりに 参考にした情報 体重が減るとき、何が減っているのか 体重計の数字は、脂肪と筋肉を区別してくれません。 食事の量が減れば、体は脂肪だけでなく筋肉も一緒に手放します。これは薬にかぎった話ではなく、どんなやせ方でも起きることです。 ただ、若い方と高齢の方では、意味がまるで違います。 あなた どう違うんですか? Torapon 若い方は、あとから筋肉を取り戻せます。でも年を重ねると、減らすのは簡単で、戻すのは何倍も大変なんです。そして高齢の方にとって筋肉は、見た目の話ではありません。立ち上がる、歩く、転ばない——暮らしそのものを支えているものなんですね。 432人を24か月追いかけた研究 2025年、中国のグループがこんな報告を出しました。 対象は65歳以上で2型糖尿病のある432人 セマグルチド(やせる薬の一種)を使った220人と、使わなかった212人を比べた 24か月追いかけて、筋肉の量・握力・歩く速さを測った 結果、薬を使ったグループは、使わなかったグループと比べて、 手足の筋肉の量が低下 握力が低下 歩く速さが低下 していました。しかも薬の量が多い方ほど、影響が大きいという関係も見えています。 もうひとつ気になるのは、参加した方の27.7%が、はじめからサルコペニア(筋肉が減って力が落ちた状態のこと)だったことです。もともと少ない方が、さらに減らしていた可能性があります。 この研究の弱いところも書いておきます 大事な但し書きです。この研究は、あとから記録をさかのぼって調べたものでした。 くじ引きで薬を使う人と使わない人を分けた研究(そのほうが確かなことが言えます)ではありません。ですから、「薬のせいで筋肉が減った」と断定はできません。 「薬を使った方には、そういう変化が見られた」——いまはそこまでです。 あなた じゃあ、そんなに心配しなくてもいいのでしょうか。 Torapon 私は、心配しすぎず、備えはしておくくらいがちょうどいいと思っています。というのも、筋肉を守る手立てはどれも、やって損のないことばかりだからです。研究の結論を待たなくても、今日から始められます。 なぜ高齢の方でとくに心配なのか 理由は単純です。筋肉が減ると、生活の自由が減るからです。 立ち上がりにくくなる 歩く速さが落ちる 転びやすくなる 転んで骨折すると、そこから寝たきりにつながることがある 体重が10キロ減って血糖値がよくなっても、歩けなくなってしまったら、差し引きで損です。そこは天秤にかけ直したいところです。 筋肉を守るために、できること やることは、たった2つです。 ・たんぱく質を、いつもより意識して摂る 食事の量が減るぶん、中身の密度を上げます。 目安は体重1キロあたり1.0〜1.2グラム。体重60キロの方なら、1日60〜72グラムです。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を、毎食ひと品ずつ入れるとおおよそ届きます。 ※腎臓の病気がある方は、たんぱく質を増やすと負担になることがあります。必ずかかりつけの先生に相談してからにしてください。 ・筋肉に、力を出させる 歩くだけでは、筋肉は増えません。「よいしょ」と力を出す動きが要ります。 椅子から立ち上がる。10回を1セット、朝と晩に かかとの上げ下げ。台所で、10回 ペットボトルを持って、ひじの曲げ伸ばし。10回 きつくなくて大丈夫です。続くことのほうが、はるかに大事です。 ...

August 27, 2026 · 1 分
あたたかい朝のイメージ

認知症ガイドラインが9年ぶりに大改訂 〜『治せない病』から『進行を抑える病』へ〜

「認知症は、もう治せない病気だと思っていませんか?」 最近のニュースで、新しいお薬(レカネマブ・ドナネマブ)の話題を耳にした方も多いと思います。「うちの家族にも使えるのかな?」「薬がダメでも、家でできることってあるの?」——そんな疑問を抱えていらっしゃるご家族・ご本人もいらっしゃるのではないでしょうか。 実は、2026年5月、日本の認知症治療の 教科書(ガイドライン) が 9年ぶりに大改訂 されました。 中身を読むと、認知症をめぐる景色が この10年で大きく変わった ことがよく分かります。 今日はその改訂のポイントを、できるだけやさしく整理してみます。 ✅ 認知症は「治せない病」から 「進行を抑える病」 へと、医療の前提が変わってきています ✅ 新しいお薬は MCI〜軽度 が対象。それ以外の方や進行例には 運動療法・認知リハ・音楽療法 がしっかり位置づけられました ✅ 中でも 「二重課題(デュアルタスク)」 は、認知機能が低下した方にも取り入れやすい新しい運動の形です 少し長めの記事になりますので、気になるところからお読みください。 そもそも:「ガイドライン」って何のこと? 改訂のポイント①:「治せない」から「進行を抑える」へ 改訂のポイント②:新しいお薬の位置づけが明確に 改訂のポイント③:非薬物療法がしっかり書き込まれた PTの目から見た「二重課題運動」の重要性 家でできる二重課題の例 いま私たちにできること おわりに 〜希望が持てる時代へ〜 そもそも:「ガイドライン」って何のこと? ガイドラインというのは、ひとことで言えば お医者さんたちの「最新の教科書」 です。 日本では各分野の専門学会が、その時点で最も信頼できる研究をまとめて「いま、この病気にはこう向き合うのが標準ですよ」という指針を作っています。今回大改訂されたのは、日本神経学会などが中心となってまとめている 『認知症疾患診療ガイドライン2026』。 前のバージョンは2017年版。9年ぶりの大改訂 ということになります。 なぜ9年もかかったのか。それは、ここ数年で 認知症の景色が大きく変わった からです。 改訂のポイント①:「治せない」から「進行を抑える」へ これが、今回の改訂の 一番大きな変化 だと私は感じています。 2017年の前回版が出た頃、認知症は「進行を止められない病」と考えられていました。お薬は 症状をやわらげる ことが目的で、病気そのものの進行には手が出せませんでした。 ところが、2023年末に レカネマブ、2024年に ドナネマブ という新しいタイプのお薬が日本で承認されたことで、状況が変わります。 これらの新薬は、アルツハイマー病の原因と考えられている アミロイドβ(ベータ) という脳のゴミを取り除くことで、病気の進行そのものを遅らせる ことを目指したお薬です。 つまり—— 2017年:認知症は「治療不可能な病」 2026年:認知症は「進行を抑制できる病」 このわずか9年で、認知症医療の前提が 180度近く変わった わけです。 💡 詳しい新薬の解説は、以前まとめた記事もぜひ参考にしてください。 👉 認知症の薬、いま何が変わったのか ...

May 19, 2026 · 2 分
給与明細書のイラスト

給与や年金から引かれるお金、中身を知っていますか? 〜健康保険・介護保険・厚生年金のきほん〜

「給与明細の『控除』の欄、なんとなく見て終わりにしていませんか?」 「年金から介護保険料が引かれているけど、これって何のお金?」―― そんなふうに思ったことのある方へ。 毎月のお給料や年金から引かれているお金の多くは、健康保険・介護保険・厚生年金 という3つの「社会保険」の保険料です。名前は知っていても、「いくら・どうやって決まっているのか」 まで知っている方は、意外と少ないのではないでしょうか。 この記事では、リハビリの現場で働く理学療法士の視点も交えながら、「払う側」から見た社会保険のきほん を、できるだけやさしく整理します。 ✅ 保険料は「給料の額(標準報酬月額)× 決まった率」で計算され、半分は会社が払ってくれている ✅ 介護保険料は 40歳から 給与天引きが始まり、65歳からは年金からの天引き に切り替わる ✅ 厚生年金は率が 18.3%で固定。たくさん払った人は、将来たくさん受け取れる仕組み 目次 そもそも「社会保険」って何? 健康保険料のきほん 介護保険料は「40歳から」「65歳から変わる」 厚生年金の保険料はどう決まる? モデルケース:月給30万円の給与明細 いま私たちにできること おわりに そもそも「社会保険」って何? 社会保険とは、病気・介護・老後といった「人生の大きなリスク」に、みんなでお金を出し合って備える仕組み です。この記事で扱う3つは、それぞれ役割が違います。 保険の名前 何に備える? 保険料を払う人 健康保険 病気・ケガの医療費 原則すべての人(生涯) 介護保険 介護が必要になったとき 40歳以上 の人 厚生年金 老後の生活費など 会社などで働く人 あなた 「保険料が高い……」と思っていましたが、備えている中身がぜんぶ違うんですね。 Torapon そうなんです。そしてもうひとつ大事なのは、会社員の場合、同じ額を会社も一緒に払ってくれている(労使折半=ろうしせっぱん)ということ。明細に見えている金額は「半分」なんですよ。 健康保険料のきほん 会社員の健康保険料は、次のかけ算で決まります。 標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2(本人負担分) 標準報酬月額(=毎月の給料を計算しやすいよう区切りのよい額に置き換えたもの)に、保険料率をかけ、それを会社と半分ずつ負担します。 中小企業の多くが入る 協会けんぽ の場合、保険料率は都道府県ごとに決まっていて、2026年度は全国平均9.90%(前年より0.1%引き下げ)。もっとも低い新潟県は9.21%、もっとも高い佐賀県は10.55%と、住んでいる場所で少し差があります。 お住まいの都道府県の料率は、こちらで確認できます。 👉 協会けんぽ「令和8年度の都道府県毎の保険料率」 なお、75歳になると全員が「後期高齢者医療制度」に移り、保険料は都道府県ごとに決まった額を、主に年金からの天引きで納めるようになります。また、自営業の方や退職後の方が入る 国民健康保険 は、市町村ごとに前年の所得などから計算される、少し別の仕組みです。 あなた 2026年4月から、給与明細に「子ども・子育て支援金」という新しい項目が増えていました。あれは何ですか? Torapon よく気づかれましたね。子育て支援の財源として 2026年4月に始まった新しい負担 で、健康保険料と一緒に集められます。2026年度の率は0.23%(これも労使折半)なので、月給30万円の方で 本人負担は月345円ほど です。 ...

July 6, 2026 · 1 分