夜空と眠りのイメージ

眠っている間に、脳は「明日の準備」をしている? 〜睡眠と“未来の記憶”の意外な関係〜

「寝ている間って、脳はただ休んでいるだけなのかな?」 ふと、そんなふうに思ったことはありませんか。 じつは睡眠中の脳は、思っている以上に いそがしくはたらいている ことがわかってきました。今回は、そんな研究のひとつをご紹介します。 脳は眠っている間に、「昨日までの記憶」を整理するだけでなく、「これから経験すること」の準備まで進めている ✅ 睡眠中の脳は、過去の記憶を保存する はたらきと、未来の記憶に備える はたらきを、同時に 進めていた ✅ これから覚えることを担当する細胞が、経験するより前の睡眠中に、すでに準備されている ことがわかった ✅ つまり睡眠は「ただの休み」ではなく、脳が舞台裏でせっせと働いている時間 だった(※マウスでの研究です) 目次 睡眠と記憶の、これまでの話 見つかった「明日の準備」のしくみ いま私たちにできること おわりに 睡眠と記憶の、これまでの話 私たちが眠っている間、脳は その日に見聞きしたことを整理して、しっかりした記憶に変えている ――これは以前からよく知られていました。 詳しくは、こちらの記事もどうぞ。 👉 眠っている間、脳は何をしているの? ところが今回の研究では、脳が整理しているのは「過去」だけではなかった、という新しい一面が見えてきました。 見つかった「明日の準備」のしくみ 富山大学のチームが、自由に動きまわるマウスの脳を、特別な小さな顕微鏡でのぞいて観察しました。 すると――記憶を担当する細胞のうち、「これから経験することを覚える」役の細胞 が、その経験をする より前の睡眠中に、すでに準備されている ことがわかったのです。 しかもこの“準備係”の細胞は、前の出来事を覚えたあとの睡眠中に用意される ようで、「昨日の経験」が「明日の記憶の受け皿」づくりに影響している可能性も示されました。 脳は眠っている間に、過去をしまいながら、未来の置き場所まで整えている――そんなイメージです。 ※ この研究は2025年、科学誌『Nature Communications』に発表されたものです。マウスでの研究 であり、人でまったく同じことが起きると確認されたわけではありません。 いま私たちにできること むずかしい話になりましたが、私たちにできることは、とてもシンプルです。 ✅ 睡眠時間をけずらない(記憶の整理も準備も、眠っている間に進みます) ✅ 毎日だいたい同じ時間に寝起きする(脳のリズムが整います) ✅ 寝る前のスマホ・明るい光をひかえる ✅ 昼間に体を動かす(夜の眠りが深くなります) 「しっかり眠ること」が、昨日の自分にも、明日の自分にも役立っている。そう思うと、眠る時間がちょっと愛おしく感じられますね。 具体的な眠り方のコツは、こちらにまとめています。 👉 脳が喜ぶ眠り方 おわりに 「寝る子は育つ」と言いますが、どうやら 大人の脳にとっても、睡眠は“育ちの時間” のようです。 過去を整理し、未来に備える――そんな脳の働きを思いながら、今夜もゆっくり休んでください。それが、いちばん身近な“脳のケア”なのかもしれません。 📚 あわせて読みたい一冊 PR スタンフォード式 最高の睡眠 睡眠研究の世界的な拠点・スタンフォード大学の研究者が、「眠りの質を上げるコツ」をやさしくまとめた30万部超のベストセラー。今日からできる工夫がたくさん載っています。 Amazonで見る 楽天で見る 参考にした情報 富山大学 学術研究部医学系 生化学講座の研究/井ノ口馨 卓越教授ほか 科学誌『Nature Communications』2025年発表の論文(睡眠中の記憶の並行処理) ※ 本記事は、上記の信頼できる研究・大学発表をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。紹介した内容は研究段階のものです。睡眠や体調についてご心配がある場合は、かかりつけ医にご相談ください。

June 20, 2026 · 1 分
夜の窓辺で月を眺めるおだやかなイラスト

夜中に目が覚めるのは、私だけ? 〜年代で変わる睡眠の悩みと、今夜からできる工夫〜

「夜中に何度も目が覚めてしまう」「若いころは、どこでも眠れたのに」——。 そんなふうに感じて、ため息をついたことはありませんか? じつは今年(2026年)発表された大きな調査で、日本人の眠りの「いま」 が詳しくわかってきました。そして面白いことに、睡眠の悩みの中身は、年代によって大きく変わっていく のです。 「眠れないのは自分だけ」と思っていた方にこそ、読んでいただきたい内容です。数字を見ながら、今夜からできる工夫まで、ご一緒に見ていきましょう。 ✅ 日本人の睡眠時間は平均 6.4時間。理想は 7.4時間 で、ちょうど1時間足りない 状態が続いている ✅ 睡眠の悩みは年代で変わる。若い世代は「時間が足りない」、40〜50代は「眠りが浅い」、70代は「寝つけない・夜中に目が覚める」 が中心 ✅ 年齢とともに眠りが変わるのは 自然なこと。日中の過ごし方を少し変えるだけで、眠りの質は整えやすくなる 目次 日本人の眠り、いまはどうなっている? 年代で、こんなに変わる睡眠の悩み なぜ、年をとると眠りが変わるの? 理学療法士として、現場で感じること いま、私たちにできること おわりに 日本人の眠り、いまはどうなっている? あなた 「日本人は眠れていない」ってよく聞きますけど、実際のところ、どうなんですか? Torapon 今年の春に、全国3,000人に聞いた新しい調査があるんです。数字で見ると、「1時間足りない」 という姿がはっきり見えてきますよ。 調査会社のクロス・マーケティングが2026年3月に、全国の20〜69歳・3,000人に行った「睡眠に関する調査」によると—— いまの平均睡眠時間は 6.4時間 理想の睡眠時間は 7.4時間 その差は ちょうど1時間。しかもこのギャップは、2023年からずっと変わっていない そうです さらに、眠りの「質」についてはこんな結果でした。 睡眠の状態 割合 日中、眠くなる 65% 寝ても疲れがとれない 59% 眠りが浅い 57% 半分以上の人が「昼間眠い」「疲れがとれない」と感じている——つまり、眠りに悩んでいるのは、決してあなただけではない のです。 年代で、こんなに変わる睡眠の悩み ここからが、今回いちばんお伝えしたいところです。同じ「眠れない」でも、年代によって中身がまったく違う ことが、調査からわかっています。 若い世代(10〜30代):「時間が足りない・朝がつらい」 若い世代の悩みの中心は、睡眠時間そのものの不足 です。夜ふかしなどの生活リズムの乱れが影響しやすく、「朝なかなか起きられない」「日中だるい」という声が目立ちます。 40〜50代:「眠りが浅い・疲れがとれない」 働き盛りの世代では、「眠りの浅さ」 が特に多くなります。2026年の調査では、眠りの浅さは 50代で最も多い という結果でした。 また、2025年11月に全国の18〜79歳・3,000人に行われた別の調査(クロス・マーケティング「健康に関する実態・意識調査」)では、疲れやストレスを最も強く感じているのは40〜50代 だとわかっています。全体でも、疲れを感じている人は約7割、ストレスを感じている人は約6割にのぼりました。 あなた まさに私の世代です……。あと、夫のいびきも気になっていて。 Torapon じつは調査でも、男性の50〜60代は「いびき」、女性の40〜60代は「手足の冷えやしびれ」 が睡眠時の悩みの上位なんです。年代と性別で、悩みの顔ぶれが変わるんですね。 ...

July 20, 2026 · 1 分
夫のいびきに気づいて、静かに心配している妻のイラスト

いびきは、うるさいだけではありませんでした 〜777人を10年追いかけた調査から〜

「お父さん、夜中に息が止まってるよ」 ご家族にそう言われたことはありませんか。あるいは、ご自分が言った側かもしれません。 多くの場合、この話は笑い話で終わります。「うるさくてかなわん」「疲れてるんだろう」。そう言って、それきりになる。 けれど2026年に発表された調査は、そこにひとつ、重い数字を置いていきました。65歳以上の777人を10年間追いかけた研究です。 ✅ 眠っているあいだに呼吸が止まる「睡眠時無呼吸」の方を10年追ったところ、治療を受けていなかった人たちのほうが、考える力の衰え方が速いという結果でした ✅ ただしこれは観察した研究です。「治療すれば防げる」と証明したものではありません。もともとの条件にも差がありました ✅ それでも、検査は一晩で受けられます。日本では中等症以上の方が成人男性の約4人に1人。まず調べてみる価値のある数字だと思います 眠っているあいだに脳で何が起きているかは、こちらに書いています。 👉 ぐっすり眠ると、脳が掃除される 目次 そもそも「睡眠時無呼吸」とは 777人を、10年追いかけた 「69%速い」とは、どういう意味か 正直に書いておきたい、この研究の限界 もうひとつの研究は、少し違う景色を見せた 日本では、どのくらいの方にあるのか 検査と治療は、どう進むのか 現場で見てきたこと いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 そもそも「睡眠時無呼吸」とは 眠っているあいだに、のどの奥がふさがって呼吸が止まってしまう状態です。正しくは「閉塞性睡眠時無呼吸」といいます。 止まるといっても、そのまま息が止まりっぱなしになるわけではありません。体が苦しくなって、いったん目を覚ましかけて、また息を吸う。 これを一晩に何十回、多い方では何百回もくり返します。 問題は2つあります。 血液の酸素が下がる……息が止まっているあいだ、体じゅうの酸素が薄くなります。脳も例外ではありません 深く眠れない……目を覚ましかけるたびに、眠りが浅いところへ引き戻されます。本人はまったく覚えていません ご本人に自覚がないのが、この病気のいちばんやっかいなところです。気づくのは、たいてい隣で寝ている方です。 あなた 毎晩ぐっすり眠っているつもりなんですが……。 Torapon そこなんです。眠っている本人には、まず分かりません。 手がかりになるのは、朝の状態です。起きたときに頭が重い、口がからからに乾いている、しっかり寝たのに昼間に眠くなる。こういうことが続くようなら、一度調べてみる価値があります。 777人を、10年追いかけた 2026年7月、アルツハイマー病協会が出している学術誌に、フロリダ大学のグループの調査が載りました。 対象は、睡眠時無呼吸のある65歳以上の777人 アメリカで高齢者の健康と老いの変化を追い続けている全国調査(NHATS)に、公的医療保険の記録を突き合わせたもの 2011年から2021年まで、毎年、考える力を測り続けた 777人は、2つに分かれます。 人数 CPAP治療を受けていた方 354人(46%) 受けていなかった方 423人(54%) CPAPというのは、鼻や口にマスクを当てて、空気を送り込み、のどがふさがらないようにする装置です。いまのところ、この病気のいちばん確実な治療法とされています。 結果はこうでした。どちらのグループも、10年のあいだに考える力は少しずつ落ちていきました。 これは年齢を重ねれば自然なことです。 違ったのは、落ちる速さでした。 「69%速い」とは、どういう意味か ここは大事なところなので、ていねいに書きます。 研究チームが使ったのは、いくつかの検査をまとめた「考える力の総合点」です。10個の単語を聞いて、すぐに思い出せるだけ言う。しばらくしてから、もう一度思い出す。今日が何月何日か答える。大統領の名前を答える。こうしたものを合わせた点数です。 1年あたりの下がり方は、こうなりました。 1年あたりの下がり方 CPAP治療を受けていた方 0.03 受けていなかった方 0.05 この0.05と0.03を比べると、約1.7倍。報道で「69%速い」と紹介されたのは、この比のことです。 あなた 0.03と0.05……。正直、大きいのか小さいのかピンときません。 Torapon そう感じられて当然だと思います。これは点数そのものではなく、ばらつきを目盛りにした数字なので、直感的には分かりにくいんです。 ですから私は、倍率のほうで受け取っています。「10年たったとき、片方はもう片方の1.7倍ほど進んでいた」。それくらいの受け取り方が、ちょうどよいと思います。 ...

September 4, 2026 · 2 分
ベッドでぐっすり眠る女性のイラスト

「何時間寝たか」より「毎日同じ時刻か」? 〜睡眠のリズムと認知症の関係〜

「睡眠は7時間は取りましょう」——。そんな話は、よく耳にしますよね。 では、寝る時刻や起きる時刻が、日によってバラバラな場合は、どんな影響があるでしょうか。 平日は6時起き、休日は10時起き。仕事や家の用事で、寝る時間もまちまち。そんな方は、きっと多いと思います。 じつは近年、睡眠の「長さ」だけでなく「毎日の規則正しさ」も、認知症と関係しているかもしれないという大規模な研究が、いくつか出てきました。 今回は、その中身を、わかっていることと、まだわからないことに分けてご紹介します。 ✅ イギリスの約8万8千人を調べた研究では、寝起きの時刻がいちばんバラバラな人(下位5%)は、真ん中の人にくらべて、認知症になる割合が 約1.5倍 だった ✅ 別の約8万2千人の研究では、睡眠が短め(7時間未満)の人でも、リズムがそろっている人は、そうでない人にくらべて認知症が少なかった ✅ ただし、どちらも「そういう関係が見られたという研究」です。バラバラな睡眠が原因だと決まったわけではありません 目次 睡眠の「規則正しさ」って、どう測るの 研究1:寝起きがバラバラな人は、認知症が約1.5倍 研究2:睡眠が短めでも、リズムがそろっていると ここは、慎重に読んでください どうして関係するの(考えられている仕組み) 現場で感じていること 今夜からできること(私の考えです) おわりに 睡眠の「規則正しさ」って、どう測るの あなた 規則正しい睡眠って、「毎日同じ時間に寝る」ってことですよね? それって、どうやって調べたんですか? Torapon そのとおりです。研究では、手首につける小さな機械(動きを記録する装置)を1週間つけてもらい、「毎日、同じ時間帯に寝ているか・起きているか」 を数字にしています。 この数字(睡眠規則性指数=SRI)は 0〜100点で表されます。 毎日まったく同じ時間帯に寝て起きていれば、100点に近づく 日によってバラバラなほど、0点に近づく ここで大事なのは、「何時に寝るか」ではなく「毎日そろっているか」 を見ていることです。夜型でも朝型でも、毎日同じなら、点数は高くなります。 研究1:寝起きがバラバラな人は、認知症が約1.5倍 1つめは、オーストラリアのモナシュ大学などの研究で、2024年に医学誌『Neurology(ニューロロジー)』に載りました。 対象:イギリスの88,094人(平均62歳) 方法:1週間、手首の装置で睡眠を記録 → その後、約7年間(人によって追いかけた年数は違い、ちょうど真ん中の人で7.2年)追いかけた 結果:追跡中に認知症になったのは 480人(全体の約0.5%) 年齢・性別・持病・遺伝(APOE ε4=アルツハイマー型のなりやすさに関わる遺伝子)などの影響を取りのぞいて比べると—— 比べた人 規則性の位置 認知症になる割合 真ん中の人(基準) 真ん中 1倍 いちばんバラバラな人(下位5%) かなり不規則 約1.5倍(1.53倍) いちばんそろっている人(上位5%) かなり規則的 約1.2倍(差があるとは言えない範囲) あなた あれ? いちばんそろっている人も、少し高いんですか? Torapon 数字の上では少し高めですが、誤差の範囲で、「差がある」とは言えない結果でした。大事なのは、いちばんバラバラな人だけが、はっきり高かったことです。 さらに、脳のMRIを撮った一部の人(約1万5千人)では、規則性が両端(とてもバラバラ/とても規則的)の人ほど、脳の灰白質(神経細胞が集まる部分)や、記憶に関わる海馬が小さい傾向がありました。 研究チームは、この結果を「不規則な睡眠は、認知症の新しい危険因子かもしれない」と、控えめにまとめています。 研究2:睡眠が短めでも、リズムがそろっていると 2つめは、シドニー大学などの研究で、2025年に『BMC Public Health』に載りました。 対象:イギリスの82,391人(43〜79歳) 方法:同じく1週間、手首の装置で睡眠を記録 → 平均7.9年追いかけた 結果:追跡中に認知症になったのは 694人 この研究では、まず、睡眠の長さを見ています。 ...

October 8, 2026 · 1 分
スマホを使うおばあさんのイラスト

スマホ時代の「目年齢」と、昼間の眠気 〜14万人のデータでわかった、目と体の深い関係〜

「夕方になると、目がしょぼしょぼする」「日中、なんだか眠くてだるい」——。 そんな日が増えていませんか? じつはその不調、スマホやパソコンを見ている時間 と、深く関わっているかもしれません。今年(2026年)、14万人以上 の目のデータを解析した大きな調査から、目の疲れと「昼間の眠気」の意外なつながりが見えてきました。今回はその内容を、やさしく解説します。 ✅ 1日 8時間以上 画面を見ている人は、全体の約3割(20〜30代は4割以上) ✅ 74.8% の人が「日中、眠気がある」と回答 ✅ 見えてきたのは 「目年齢」 という考え方。目をいたわると、昼間の調子も整いやすい 目次 私たちは、こんなに画面を見ている “目年齢"って、なんだろう? 目の疲れと「昼間の眠気」は、つながっていた 理学療法士として、現場で感じること 今日からできる、目の休め方 おわりに 私たちは、こんなに画面を見ている あなた 最近、スマホを見る時間が増えた気がします。目にも良くなさそうで……。 Torapon 気になりますよね。調査でも、1日8時間以上 画面を見ている人が、全体の約3割もいたんですよ。 ロート製薬が、大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」で 14万人以上(143,086件) の目の健康データを集めて解析した調査(2025年4〜10月実施)によると—— 1日8時間以上 デジタル機器を見ている人は、全体の約3割 20〜30代 では、4割以上にのぼる スマホ、パソコン、テレビ……。気づけば一日の多くを画面とともに過ごしている——。そんな時代の姿が、数字にもはっきり表れています。シニア世代でも、スマホで連絡を取ったり動画を見たりする方が、年々増えていますね。 “目年齢"って、なんだろう? この調査でユニークなのが、「目年齢(めねんれい)」 という考え方です。これは、目のコンディションから割り出した“目の若さ”のこと。実際の年齢とは別に、目がどれくらい元気かを表します。 調査では、参加した人の—— 目年齢の平均は 43.8歳 実年齢の平均は 45.5歳 でした。そして興味深いことに、40〜60代では、画面を見る時間が短い人ほど目年齢は実年齢より若く、長い人ほど目年齢が上がっていく 傾向が見られたそうです。 あなた 見る時間が長いと、目が“年をとる”みたいな感じなんですね。 Torapon そうなんです。逆に言えば、目を休ませる工夫しだいで、目年齢は若く保ちやすい ということ。ここが希望の持てるところですね。 目の疲れと「昼間の眠気」は、つながっていた 今回いちばんお伝えしたいのが、目の疲れと「昼間の眠気」の関係 です。 調査では、74.8% もの人が「日中、眠気がある」と答えました。そして、目のコンディションが良くない層ほど、昼間の眠気を感じやすく、画面を見る時間も長い という傾向が見えてきたのです。 さらにこんな結果もありました。 モニターを見ていると症状が悪化すると感じる人:6割以上 目の乾きを自覚している人:約6割 疲れ目のスコアが高いのに、自分では気づいていない人(かくれ疲れ目):疲れ目の人の約25% つまり、目の疲れは、気づかないうちにたまり、昼間のだるさや眠気にもつながっている かもしれない、ということです。「なんだか日中ぼんやりする」の裏に、目の疲れがかくれているケースもあるのですね。 理学療法士として、現場で感じること リハビリの現場でも、「夜はしっかり寝ているのに、昼間眠くてね」という声をよく聞きます。原因は人それぞれですが、お話をうかがうと 「一日中スマホを見ている」 という方も少なくありません。 ...

July 22, 2026 · 1 分
Torapon

1日8時間以上座っていませんか? 〜『動く・座らない・眠る』で守る24時間〜

「気がつくと、朝から夕方までずっと椅子に座っていた…」 そんな日が続いていませんか? 最近の大規模研究で、 1日8時間以上の座りすぎ が認知症リスクを大きく上げることが分かってきました。今回は、 動く・座らない・眠る の3点セットで考える、これからの「24時間の整え方」を平易にお伝えします。 この記事のポイント ✅ 1日8時間を超えて座っていると、認知症リスクが約27%上がるという報告 ✅ 「動く・座らない・眠る」の3点セットで、リスクは大きく下がる ✅ 大切なのは 「1時間に1回、立ち上がる」 という小さな習慣 研究:座位8時間超で認知症リスクが27%増 イギリス・York大学のOye-Somefunらが、2026年4月にPLOS One誌に発表したメタ解析です。 35歳以上の 数百万人規模・69件の前向きコホート研究 を統合した、現時点でとても信頼性の高い分析です。 研究のポイントを3つにまとめると: 座っている時間が1日8時間を超えると、認知症リスクが約27%増える 一方、 身体活動が多い・座位が短い・睡眠7〜8時間 の3条件を満たす人は、平均よりリスクが大きく低下した 1日の中で「動く」「座らない」「眠る」をどう配分するかが鍵になる 「動く・座らない・眠る」は3点セット これまで、運動・睡眠は別々に語られることが多かったのですが、この研究では 3つを1セットにして考える ことの大切さが浮かび上がりました。 要素 目安 動く(身体活動) 1日合計30分程度の中等度活動(早歩きなど) 座らない 連続して座る時間を短くする(理想は1時間に1回立つ) 眠る 7〜8時間程度の睡眠 どれか1つを頑張るより、 3つを少しずつ整える ほうが、認知症リスクの低下につながりやすいということです。 「1時間に1回、立ち上がる」だけでも違う 「座らない」と聞くと、立ち仕事に変えなきゃいけないように感じますが、そんな必要はありません。 私(Torapon)が地域の講座でお伝えしているのは、 「1時間に1回、立ち上がりましょう。立つだけでもOKです」 という、ごくシンプルな合言葉です。テレビのCM、家事の合間、家族の声かけ──きっかけは何でも構いません。 立ち上がって2〜3歩あるく、お茶を入れる、洗濯物を1枚たたむ。それだけで、ふくらはぎの筋ポンプが働いて全身の血流が動き出します。 雨の日でも続けたいなら、家でできる工夫を 「外を歩きたくても、雨の日や暑い日が続いて…」というご相談はとても多いです。 そんな日のために、私は 家の中で『座りすぎ』を断ち切る道具 をひとつ持っておくことをおすすめしています。 私自身は STEADYのミニフィットネスバイク(足元タイプ) を居間に置いていて、テレビを見ながら時々ペダルを回しています。 「座りすぎの座位」を「動く座位」に置きかえる イメージです。膝や腰への負担も少なく、年齢に関係なく始めやすいです。 PR ミニフィットネスバイク STEADY ST121 足元に置いて、テレビを見ながら時々ペダルを回すだけ。電源不要・静音・マグネット式で、夜のリビングでもご家族の迷惑になりにくい設計です。負荷は16段階で、年齢や体力に合わせて調節できます。「座りすぎの座位」を「動く座位」に置きかえる入り口にちょうど良い1台です。 楽天で見る 体を動かす習慣は、家の中だけでなく「通える場所」をつくるのも続けるコツ。外でしっかり運動したい方には、こんな選択肢もあります。 ...

May 24, 2026 · 1 分
薬と家族のあたたかいイメージ

認知症の薬、いま何が変わったのか 〜『症状をやわらげる薬』と『進行を遅らせる薬』〜

ご家族がアルツハイマー型認知症と診断されたとき、最初に気になるのは「お薬で何ができるんだろう?」ということではないでしょうか。 「最近、新しい薬の話題をよくニュースで見るけれど、自分や家族にも使えるのかな?」と気になっている方もいらっしゃるかもしれません。 実は認知症の薬物療法は、ここ数年で 大きな転換点 を迎えています。 今日はその全体像を、できるだけやさしく整理してみます。 ✅ 認知症の薬は 「症状をやわらげる薬」 と 「進行を遅らせる薬(疾患修飾薬・DMT)」 の2系統に分かれてきている ✅ 注目の新薬(レカネマブ・ドナネマブ)は MCI〜軽度の段階 で、かつ アミロイド検査 の確認が必須 ✅ 薬だけでは完結しません。早期発見・運動・食事・対人交流を組み合わせた 「統合的アプローチ」 が大前提です 少し長めの記事になりますので、気になるところからお読みください。 そもそも:認知症の薬には2つの流れがある これまでの主役:症状をやわらげる4つの薬 新世代の薬:『進行を遅らせる』DMT 新薬の副作用「ARIA」をどう見守るか 2026年以降:さらに広がる治療の選択肢 薬だけでは完結しない:統合的アプローチ いま私たちにできること そもそも:認知症の薬には2つの流れがある あなた 先生、新しい認知症の薬ってよくニュースで聞くんですけど、これまでの薬と何が違うんですか? Torapon いい質問ですね。実は認知症の薬には、いま大きく 2つの流れ があるんですよ。 ひとつ目は、症状をやわらげる薬(対症療法薬) です。 神経の働きを調整することで、記憶力や意欲、行動の悪化のスピードをゆるやかにしてくれます。 これまでの認知症治療の 主役 だったお薬です。 ふたつ目が、近年登場した 進行を遅らせる薬(疾患修飾薬=DMT) です。 DMTは「Disease-Modifying Therapy」の略で、病気の経過そのものを変える治療 という意味です。 これまでの薬のように症状をやわらげるのではなく、病気の原因物質そのもの に直接働きかけて、進行のスピードを抑えようとする、まったく新しいタイプのお薬です。 あなた 「原因物質」って、いったい何のことですか? Torapon アルツハイマー型認知症の場合、脳に アミロイドβ(ベータ)——ねばねばしたたんぱく質のかたまりが、20〜30年もかけて少しずつ溜まっていくことが、発症の一因と考えられているんです。 新世代の薬は、この アミロイドβを脳から取り除く ことを目的としています。 これまでの主役:症状をやわらげる4つの薬 日本では、長らく以下の 4種類 が使われてきました。 症状や重症度、合併症、ご本人の状況にあわせて、医師が一人ひとりに合うものを選びます。 お薬の名前 特徴 主な適応 ドネペジル(アリセプト®) 内服。意欲低下や自発性の低下が目立つときに 軽度〜高度のAD、レビー小体型認知症 にも保険適応 ガランタミン(レミニール®) 内服。液剤もあり、固形物が飲みにくい方に 軽度〜中等度のAD リバスチグミン(イクセロンパッチ®/リバスタッチ®) 唯一の貼り薬 ◎ 飲み込みが心配な方や、内服での吐き気を避けたい方に 軽度〜中等度のAD メマンチン(メマリー®) 上の3剤と 併用できる ◎ イライラ・攻撃性・焦燥感が強いときに 中等度〜高度のAD ※AD=アルツハイマー型認知症の略です。 ...

May 10, 2026 · 2 分
脳と血管のイメージイラスト

薬の大半は、脳に届いていなかった 〜「関所」を越える研究のいま〜

以前、認知症の薬、いま何が変わったのか という記事で、進行を遅らせる新しい薬(レカネマブ、ドナネマブ)をご紹介しました。 あの記事を書いたあと、読者の方からこんなご質問をいただくことがありました。 「せっかく効く薬ができたのに、どうして『少し遅らせる』程度なのですか?」 もっともなご質問だと思います。今回は、その答えのひとつになりそうな話をお届けします。 結論から申し上げると、こういうことでした。 投与した薬の大部分は、そもそも脳に入っていなかった。 脳には、外から入ってくるものを厳しく選り分ける 「関所」 があります。薬は、その関所でほとんど止められていたのです。 そしていま、この関所をどう越えるかという研究が、静かに、しかし確実に進んでいます。 ✅ 脳を守る 血液脳関門(けつえきのうかんもん) という関所があり、抗体の薬はここをほとんど通れません ✅ 突破する方法が2つ試されています。超音波で門を一時的に開ける 方法と、通行証を持った「乗り物」に載せる 方法です ✅ ただし、どちらも まだ数人〜数十人規模 の段階です。期待しすぎず、しかし目は離さずに 目次 脳には「関所」がある 薬は、関所で止められていた 方法① 超音波で門を開ける 方法② 通行証つきの乗り物に載せる ここは正直に ― まだ数人の話です それでも、意味があると思う理由 いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 脳には「関所」がある 脳は、体のなかでも特別に守られている臓器です。 その守りの中心が、血液脳関門(けつえきのうかんもん) と呼ばれるしくみです。英語の頭文字をとって「BBB」と呼ばれることもあります。 脳のなかを走る血管は、壁の細胞どうしがすき間なくぴったりくっついて います。体のほかの場所の血管は、もう少しゆるく、栄養や水分がしみ出せるようになっているのですが、脳だけは違います。 おかげで、細菌や有害な物質は脳に入れません。とてもありがたいしくみ です。 ただ、この関所には困ったところがあります。通してほしい薬まで、まとめて止めてしまう のです。 あなた 体を守るための関所が、治療の邪魔もしてしまうということですか。 Torapon そのとおりなんです。関所は「よい薬」と「悪い物質」を見分けてくれません。 大きな分子は通さない、という単純な基準で門を閉じています。そして、いま使われている認知症の新薬は——まさにその「大きな分子」なのです。 薬は、関所で止められていた レカネマブやドナネマブは、抗体(こうたい) という種類の薬です。 抗体は、体が細菌やウイルスと戦うためにつくるたんぱく質で、とても大きな分子 です。脳のなかにたまったアミロイドβという物質にくっついて、掃除を助けるはたらきをします。 問題は、その大きさでした。 大きい分子ほど、関所を通れません。 抗体の薬を点滴で入れても、脳に届くのは、投与した量のごくわずか(1%にも満たないとされます)。残りは、体のほかの場所をめぐって終わります。 ここで、少し見え方が変わってこないでしょうか。 いまの薬が「進行を少し遅らせる」程度にとどまっているのは、薬の力が弱いから、とはかぎらない のです。そもそも、現場にほとんど到着していなかった。 だとすれば、やるべきことは薬を強くすることではありません。どうやって現場まで届けるか。 いま研究者たちが取り組んでいるのは、そこです。 方法① 超音波で門を開ける ひとつめは、いかにも力技に聞こえる方法です。 ...

August 20, 2026 · 1 分
脳のしわの山の部分はきれいに片づき、谷の部分には落ち葉が残っている様子を、庭の手入れにたとえたイラスト

アミロイドが消えた場所には、タウも少なかった 〜ひとりの方の脳が教えてくれたこと〜

アルツハイマー型認知症の新しい薬は、脳にたまった「ゴミ」を取りのぞく薬です。 では、ゴミを取りのぞくと、脳の中では本当に何かが変わるのでしょうか。 2026年、アメリカのペンシルベニア大学のチームが、薬の治療を受けたあとに亡くなった、ひとりの男性の脳をくわしく調べた結果を発表しました。 ✅ 1人だけを調べた報告です。薬でアミロイドがほとんど消えていた場所では、もうひとつのゴミ「タウ」も、治療を受けていない人の脳にくらべて少なくなっていました ✅ 一方、同じ脳の中でもアミロイドが残っていた場所では、タウは治療を受けていない人と同じくらいありました ✅ 使われたのは、いまは販売が終わっている古い薬です。「早く治療すれば防げる」とまでは、この1例からは言えません 目次 アミロイドとタウ、ふたつのゴミ 亡くなったあとの脳を、くわしく調べた 「山」は片づき、「谷」には残っていた この研究から言えること、言えないこと いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 アミロイドとタウ、ふたつのゴミ アルツハイマー型認知症の脳には、2種類のゴミがたまることが知られています。 アミロイドβ(ベータ)……神経細胞の外にたまる、ねばねばしたたんぱく質のかたまり。先にたまりはじめます タウ……神経細胞の中にたまり、もつれた糸のようになるたんぱく質。神経細胞が弱っていくことと、深く関係していると考えられています いま日本で使われている新しい薬(レカネマブ・ドナネマブ)は、点滴でアミロイドβを取りのぞく薬です。 ただ、「アミロイドを取りのぞけば、そのあとのタウや、脳がやせていくことも抑えられるのか」は、人の脳では、まだよく分かっていませんでした。 あなた 薬の試験で「進行がゆるやかになった」と聞きましたが、それとは違うんですか? Torapon 試験で分かるのは、もの忘れなどの症状の変わり方です。脳の中でタウがどうなったかを、目で見て確かめるには、亡くなったあとに脳を調べるしかありません。そういう機会は、とても少ないんです。 亡くなったあとの脳を、くわしく調べた 調べられたのは、50代で、軽いもの忘れの段階と診断された男性です(軽度認知障害=日常生活はおおむね自分でできるが、もの忘れが目立つ段階のこと)。 この方は、アルツハイマー型認知症になりやすさに関わる遺伝子の変化(TREM2という遺伝子)を持っていました。 薬の試験に参加し、アデュカヌマブという抗アミロイド薬を受けた 4年半のあいだに、30回の点滴を受けた 最後の点滴から4年後に亡くなり、亡くなったあとに脳がくわしく調べられた 研究チームは、この方の脳を顕微鏡でくわしく調べ、治療を受けていない14人の脳(年齢、または同じ遺伝子の変化の有無をそろえた人たち)とくらべました。 このように、ひとりの方を、時間をかけてくわしく調べた報告を「症例報告」といいます。たくさんの人を集めてくらべる研究とは違い、ひとりの中で起きたことを細かく見られる反面、「ほかの人でも同じか」は分かりません。 さらに、生きているあいだに撮っていた画像検査(PET=脳にたまったゴミを映す検査、MRI=脳の形を映す検査)も、あわせて調べています。 あなた アデュカヌマブって、聞いたことがない薬です。 Torapon アメリカで最初に、早い段階の承認を受けた抗アミロイド薬です。ただ、いまは販売が終わっていて、日本では使われていません。いま日本で使われているレカネマブやドナネマブとは、別の薬だということは覚えておいてください。 「山」は片づき、「谷」には残っていた 脳の表面には、たくさんの「しわ」があります。盛り上がった山の部分と、その間の谷の奥があります。 調べてみると、この方の脳は、場所によってアミロイドの残り方がまだらでした。 場所 アミロイド タウ しわの山 ほぼ消えた 少なめ しわの谷の奥 多く残った 同じくらい ※タウの量は、治療を受けていない14人の脳とくらべたものです。 つまり、同じひとりの脳の中で、「アミロイドがよく取れた場所」と「取れなかった場所」が隣り合っていたのです。 さらに、生前のMRIを見直すと、アミロイドが少なくなった場所では、脳がやせていくスピードがゆるやかだったという関係も見られました。 アミロイドが残った場所でも、脳の表面に近い層では量が少なく、深い層にたくさん残っていました。薬が届きやすい場所と、届きにくい場所があるのかもしれません。 あなた それなら、アミロイドをしっかり取れば、タウも防げるということですか? Torapon 研究チームも「しっかり取りきることが必要なのかもしれない」と考えています。ただ、これは1人の脳で見られたことです。アミロイドが取れたからタウが少なかったのか、もともとタウがたまりにくい場所だったからアミロイドも取れやすかったのか、そこまでは決められません。 この研究から言えること、言えないこと 言えること 薬でアミロイドがほとんど消えた場所では、タウが少なく、脳のやせ方もゆるやかだった 取れ方には「むら」があり、しわの山では取れやすく、谷の奥では残りやすかった 言えないこと 1人だけの報告です。ほかの人にも同じことが起きるかは分かりません アミロイドを取ったことが「原因」で、タウが少なくなったとまでは言えません 使われたのはアデュカヌマブで、いま日本で使われている薬で同じことが起きるかは分かりません 報道では、研究チームが「早い段階で、しっかり取りのぞくことが大事なのかもしれない」と話しています。また、薬の試験はふつう1年半ほどで結果を判断するため、もっと長い時間がたってから出てくる違いを見のがしているかもしれない、とも指摘しています。 ただし、これは研究チームの「そうかもしれない」という考えで、まだ確かめられたわけではありません。この1例だけで「早く治療すれば認知症を防げる」と分かったわけではありません。 ...

October 19, 2026 · 1 分
医師が高齢の方にやさしく説明しているイラスト

血液一滴で、アルツハイマー病の“きざし”がわかる時代へ 〜p-tau217という新しい検査が照らす希望〜

「最近、親の物忘れが増えた気がする」 「自分も、ふと言葉が出てこないことがある」―― そんな小さな不安を、心のどこかに抱えていませんか? 認知症、とくにアルツハイマー病は、「気づいたときにはかなり進んでいた」ということが少なくありません。だからこそ、もっと早く、体に負担をかけずに気づける方法が、長いあいだ望まれてきました。 2025年5月、その願いに一歩近づくニュースが、海の向こうから届きました。血液の検査で、アルツハイマー病の手がかりを調べる方法が、初めて公式に認められたのです。 今日は、この「p-tau217(ピー・タウ・ニーイチナナ)」という新しい血液検査について、できるだけやさしくお話しします。そして最後に、私自身の家族のことにも、少しだけ触れさせてください。 ✅ この記事の要点 ✅ 2025年5月、米国で「血液検査」によるアルツハイマー病の手がかり調べが、初めて公式に承認されました ✅ これまでの検査(脳の画像検査や背中からの検査)より、体への負担がぐっと少ないのが特徴です ✅ 早く気づけるほど、生活習慣の見直しや治療を早く始められる——そこに大きな希望があります もくじ そもそも「アルツハイマー病」と「認知症」は同じ? 脳に溜まる“2つのゴミ”――アミロイドβとタウ これまでの診断は、体への負担が大きかった p-tau217――血液でわかる「手がかり」 早く分かることが、なぜ希望になるのか いま私たちにできること おわりに――母のこと、そして未来へ そもそも「アルツハイマー病」と「認知症」は同じ? よくある誤解のひとつに、「アルツハイマー病=認知症」というものがあります。じつはこれは正確ではありません。 認知症は、いろいろな原因で記憶や判断の力がゆっくり低下していく「状態」をまとめた呼び名です。その原因のひとつとして最も多いのが、アルツハイマー病という脳の病気です。 アルツハイマー病では、もの忘れ(記憶の障害)が少しずつ進んでいくのが特徴です。そして脳の中では、目には見えない変化が、症状が出るよりもずっと前から始まっているとされています。 脳に溜まる“2つのゴミ”――アミロイドβとタウ アルツハイマー病の脳には、大きく分けて**2種類の“ゴミ”**が溜まっていくことが分かっています。 アミロイドβ(ベータ)……神経細胞の外側に溜まるタンパク質。比較的早い段階から溜まり始めます。 リン酸化タウ……神経細胞の内側に溜まるタンパク質。こちらが溜まってくると、神経細胞が傷んで、もの忘れなどの症状につながっていきます。 大切なのは、まずアミロイドβが溜まり、それを追いかけるようにタウが溜まっていくという順番です。 つまり、タウの変化を捉えられれば、その前段階であるアミロイドβの蓄積も起きていると考えられる――この点が、今回の血液検査のカギになります。 これまでの診断は、体への負担が大きかった 長いあいだ、生きている方の脳で、この“2つのゴミ”がどれくらい溜まっているかを確かめる方法はありませんでした。 近年になって、ようやく次のような方法で調べられるようになりました。 アミロイドPET/タウPET……特殊な画像検査で、脳の中の蓄積を見る方法 脳脊髄液(のうせきずいえき)の検査……背中に針を刺して、脳のまわりの液を採って調べる方法 どちらも精度は高いのですが、費用が高い・体への負担が大きい・受けられる施設が限られるといった難しさがありました。とくに背中から液を採る検査は、想像するだけで身構えてしまう方も多いと思います。 そこで、もっと手軽な「血液検査」でわからないかと、20年以上にわたって研究が重ねられてきました。 p-tau217――血液でわかる「手がかり」 研究の積み重ねのなかで、とくに有望とされたのが、血液中のp-tau217(リン酸化タウの一種)です。 p-tau217は、脳の画像検査で異常が見える前の早い段階から、血液の中でわずかに増えてくることが分かってきました。そして2025年5月、米国の食品医薬品局(FDA)が、アルツハイマー病の診断に使える初めての血液検査として、この測定方法を正式に認めました。 報告されている精度の一例を挙げると、 アルツハイマー病と診断された方で、この血液検査が陽性なら、脳にアミロイドβの変化がある可能性がとても高い(年齢にかかわらず、おおむね95〜97%台) アルツハイマー病以外のタイプの認知症と診断された方で、検査が陰性なら、アミロイドβの変化はない可能性がとても高い(おおむね91〜99%) とされています。体への負担が少ない血液検査で、ここまで手がかりがつかめるようになったことは、医療にとって大きな前進です。 ⚠ ここはとても大切です 今回の承認は、あくまで米国(アメリカ)での話です。日本で今すぐ、どこの病院でも受けられる検査というわけではありません。 また、検査だけで「アルツハイマー病です」と決まるものでもなく、症状や経過と合わせて、医師が総合的に判断するものです。気になる症状があるときは、まずはかかりつけ医や「もの忘れ外来」に相談するのが第一歩です。 早く分かることが、なぜ希望になるのか 「早く分かっても、どうしようもないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。でも、私はそうは思いません。早く気づけることには、たしかな意味があります。 生活習慣を早めに見直せる……運動・食事・睡眠・人とのつながりなど、脳の健康を支える習慣に、より早く取り組めます 新しい治療を検討できる……近年は、アミロイドβに働きかける新しいお薬(レカネマブ、ドナネマブなど)も登場しています。こうした治療は、早い段階ほど検討の余地が広がるとされています これからの暮らしに備えられる……ご本人もご家族も、心の準備や生活の工夫を、あわてずに進められます 認知症を完全に防ぐ魔法はまだありません。けれども、進み方をゆるやかにし、その人らしい時間を少しでも長く保つことは、決して夢物語ではなくなってきています。早期発見は、その入り口なのです。 脳の健康を支える生活習慣について、くわしくは過去の記事もあわせてどうぞ。 👉 認知症を防ぐ「血管と代謝」の整え方 👉 脳を守る「刺激とつながり」 いま私たちにできること 新しい検査の登場を待つあいだにも、今日から始められることはたくさんあります。チェックリストにしてみました。 ☑ 気になる物忘れが続くときは、ひとりで抱えずもの忘れ外来などに相談してみる ☑ ウォーキングなど、無理のない運動を生活に取り入れる ☑ 野菜・魚・大豆などをバランスよく、腹八分目を心がける ☑ しっかり眠る(睡眠は脳のお掃除の時間です) ☑ 人と話す、出かける、笑う――つながりと刺激を大切にする ☑ 聞こえや見え方が気になったら、早めにケアする どれも特別なことではありません。けれど、こうした積み重ねが、脳をやさしく守ってくれるのです。 ...

June 15, 2026 · 1 分