地中海食と日本食が並ぶ食卓のイラスト

地中海食と日本食、合わせるとどうなる? 〜認知症予防の食卓に並べたい3つの食材習慣〜

「毎日同じおかずばかりで、なんだか脳によくない気がする」 「地中海食がいいって聞くけれど、急にオリーブオイル中心の食卓には変えられない」―― そんなふうに、自分の食卓と"理想の食事"のあいだで迷っていることはありませんか? 実は近年、地中海食と日本食、どちらも認知症予防によいことが分かってきました。 そして国立長寿医療研究センターの研究では、日本食をよく食べている人ほど認知症になりにくく、腸内環境にも違いが出ることが明らかになっています。 「地中海風」か「和食」かで悩む必要はありません。いいとこ取りで、今日からの食卓を少しずつ整えていくのが現実的な答えです。 ✅ **「単品サプリ」より「食事全体のパターン」**が認知症予防のカギ ✅ 地中海食と日本食はどちらも理にかなっている――両方のいいとこ取りでOK ✅ 注目したい4つの食材:魚介・きのこ・大豆・コーヒー(日本食スコア研究より) 今日は、地中海食と日本食をどう"合体"させるか――そして私の食卓によく並ぶ3つのメニューを、やさしくご紹介します。 目次 そもそも「脳によい食事」って? 地中海食のここがいい 日本食スコアという発見 地中海食×日本食という選択肢 私の食卓によく並ぶ3つの一皿 いま私たちにできること おすすめの一冊 そもそも「脳によい食事」って? 国立長寿医療研究センターは、認知症予防の食事についてはっきりこう言っています。 単一の栄養素(サプリメント等)を摂取しても、認知症予防には効果がありません。 つまり、「これさえ飲めば」という魔法のサプリは無く、実際の食品から、いろいろな栄養をパターンで摂ることが大事だ、ということです。 そのうえで、これまでの研究で繰り返し名前が挙がるのが、地中海食と日本食の二つの食事パターンです。 地中海食のここがいい 地中海食とは、イタリア南部やギリシャ沿岸で昔から食べられてきた食事のことです。 特徴をひと言でまとめると―― 色とりどりの野菜・果物(赤・黄・緑) 魚介類が豊富 オリーブ油を使う 全粒の穀類と食物繊維 ポリフェノールたっぷりの赤ワインを少々 国立長寿医療研究センターも「認知症予防効果が期待できます」と紹介しており、糖尿病の予防にもよいとされています。 ただ、毎日オリーブ油でパスタを食べる暮らしには無理がある――それが日本に住む多くの人の本音だと思います。 日本食スコアという発見 ここで嬉しいニュースがあります。 国立長寿医療研究センターの 佐治直樹副センター長 たちのチームは、日本食をよく食べている人ほど認知症になりにくいことを、実際の患者さんを調べて確かめました(Nutrition誌、2021年)。 研究チームが使った「日本食スコア」は、こんな食品を組み合わせて点数化したものです。 JDI9(基本の9品目) 米・味噌・魚介類・緑黄色野菜・海藻類・漬物・緑茶・牛肉/豚肉・コーヒー JDI12(拡張版) ↑に加えて、大豆・大豆製品/果物/きのこ 点数のつけ方 それぞれの食品について、ふだんよく食べている人は「1点」/あまり食べていない人は「0点」 ただし、牛肉・豚肉は逆(伝統的な和食では魚を主役にするので、たくさん食べていると0点になります) これを9品目すべて足すと、最大9点・最小0点(拡張版なら最大12点) **点数が高いほど"日本食らしい食事"**ということになります つまり「7点」というのは、9品目のうち7つは日常的によく食べているくらいの感覚です。 結果はとても分かりやすいものでした。 認知症のない人 vs 認知症のある人:JDI9 スコア 7点 vs 5点 同じく JDI12 スコア 8点 vs 7点 特に 魚介類・きのこ・大豆・コーヒー をよく食べている人で差が大きかった これらの食品が多い人は、腸内環境がよく整っており、認知症のリスクと結びつくと言われる物質も少ない 傾向(腸内細菌が出す"体に負担をかける成分"のこと) つまり、お味噌汁・焼き魚・きのこ・豆腐・コーヒーといった、ふだんの和食の延長線上にあるものが、ちゃんと脳の健康と結びついていた、ということです。 ...

May 21, 2026 · 1 分
朝の食卓で、ぬか漬けや野菜のおかず、ごはんとみそ汁を前に、年配の夫婦がくつろいでいるイラスト

おなかの中と『脳の年齢』は、つながっている? 〜腸内細菌と脳の老け具合の研究から〜

「腸は第二の脳」。そんな言葉を、テレビや雑誌で見かけたことがあるかもしれません。 2026年9月、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)などのチームが、腸内細菌(おなかの中にすむ細菌)や便に含まれる物質が、脳の「老け具合」と関係していたという研究を発表しました。 ただ、中身をよく読むと、「この菌を増やせば脳が若返る」という話ではありません。どこまで分かって、どこから先が分からないのか。一緒に見ていきましょう。 ✅ 約1,500人の脳をMRIで調べると、実際の年齢より脳が老けて見える人は、記憶や段取りの力がやや低く、気分も落ち込みぎみでした ✅ 便を調べた182人では、いくつかの腸内細菌や便の中の物質が、脳の老け具合と関係していました。ただし、その関係はごく小さなものでした ✅ ある1回の時点で調べた研究で、腸が先か脳が先かは分かりません。参加者の多くは30歳前後で、食事も調べていません 目次 「脳の年齢」って、どうやって測るの? 脳が老けて見える人は、記憶や気分も おなかの中を調べてみると 「良い菌・悪い菌」とは言えない理由 いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 「脳の年齢」って、どうやって測るの? 研究チームは、脳がぼんやり休んでいるときの様子を、MRI(磁気で体の中を写す検査)で撮影しました。 休んでいるときでも、脳のあちこちの部分は、互いに連絡を取り合っています。その「つながり方」は、年齢とともに少しずつ変わっていきます。 そこで、たくさんの人のデータをコンピューターに学ばせて、つながり方から「この脳は何歳くらいに見えるか」を当てるしくみを作りました。 脳から見た年齢が、実際の年齢より上 → 脳が「老けて見える」 脳から見た年齢が、実際の年齢より下 → 脳が「若く見える」 この差を、研究では「脳の老け具合」の目安にしています。 あなた 脳のシワや縮み具合を見るのとは、ちがうんですね。 Torapon そうなんです。今回は形ではなく、脳の部分どうしの「連絡のとり方」を見ています。ですから、ここでいう「老けて見える」は、病気があるという意味ではありません。あくまで、たくさんの人とくらべたときの「個人差」です。 脳が老けて見える人は、記憶や気分も 研究に参加したのは、病気のない18〜65歳の約1,500人(1,462人)です。年齢の真ん中は30歳前後で、若い人や働き盛りの人が中心でした(学術誌『eBioMedicine』2026年10月号、オンライン公開は9月)。 使われたデータは、アメリカのほか、日本の研究で集められた690人分も含まれています。 3つのグループ(674人・444人・344人)に分けて、同じ結果がくり返し出るかを確かめています。 結果は、次のとおりでした。 脳が老けて見える人ほど、少しのあいだ覚えておく力(ワーキングメモリ)や、段取りよく物事を進める力のテストの点が、やや低め 脳が老けて見える人ほど、気分の落ち込みの点数が、やや高め この傾向は、3つのグループで、くり返し見られた ただし、論文自身も「関係の強さは控えめ」と書いています。脳の老け具合は、記憶や気分を左右するたくさんある要因の1つ、と考えるのがよさそうです。 おなかの中を調べてみると ここからが、腸の話です。 3つめのグループ(ロサンゼルスの344人)のうち、脳の検査と便の検査がそろった182人について、便の中の細菌の種類と物質をくわしく調べました。 その結果、次のようなものが、脳の老け具合と関係していました。 便の中で見つかったもの 脳が老けて見える人で クロストリジウム、コリンセラなど、いくつかの細菌 多い傾向 セラミド(脂の一種で、体の炎症にも関わる物質) 多い傾向 24-ヒドロキシコレステロール(コレステロールが形を変えたもの) 多い傾向 エステトロール(女性ホルモンの仲間) 少ない傾向 では、なぜ便の中の菌や物質が、脳の老け具合と関係するのでしょうか。 研究チームは、これらの菌や物質が、体の中の炎症や血管の働き、脳の神経どうしのつながり、細胞がエネルギーを作るしくみなどを通して、脳に影響しているのではないか、と考えています。ただし、これはまだ「そうかもしれない」という段階の考えです。 ただ、気をつけたい点が2つあります。 関係の大きさは、ごく小さい……脳の老け具合は、同じ年齢でも人によって差があります。その差のうち、腸の様子で説明がついたのは、計算上わずか2%ほどでした。残りの大部分は、腸とは別の理由によるものです 調べた人にかたよりがある……182人を含むこのグループは、9割ほどが女性(344人中312人)でした。研究チームも「男女半々の、もっと大きな集団で確かめる必要がある」と書いています あなた たった2%なんですか。もっと大きな話かと思いました。 Torapon 報道の見出しだけだと、そう感じますよね。でも、腸と脳を同じ人で同時に調べた研究は、まだ少ないんです。「関係の手がかりが見えてきた」という、入り口の研究として受け取るのがちょうどいいと思います。 「良い菌・悪い菌」とは言えない理由 「脳が老けて見える人に多かった菌」と聞くと、つい「悪い菌だ」と思いたくなります。でも、そう決めつけるのは早すぎます。 ① どちらが先か、分からない この研究は、ある1回の時点で、脳と便を調べたものです。時間を追って変化を見たわけではありません。 腸の状態が、脳に影響したのか 脳やストレスの状態が、腸に影響したのか 食事や睡眠など、別の何かが両方に影響したのか このどれなのかは、分かりません。論文でも「原因や順番は言えない」と、はっきり書かれています。 ...

October 21, 2026 · 1 分
Torapon

野菜中心でも油断できない? 〜超加工食品と『注意力』のはなし〜

「お野菜もちゃんと食べているし、そんなに偏ってはいないはず…」 そう思っていても、菓子パンや即席麺、加工肉が毎日の食卓に並んでいませんか? 最近の研究で、こうした 超加工食品(UPF) が増えると 「注意力」が落ちやすい ことが分かってきました。今回は、難しいお話を平易にまとめてみます。 この記事のポイント ✅ 超加工食品(UPF)が10%増えるごとに、注意力スコアが下がるというデータが出た ✅ 「食事全体の質」とは別の影響なので、野菜中心の人も油断できない ✅ 大切なのは 「ゼロにする」ではなく「頻度を下げる」 そもそも「超加工食品(UPF)」って? UPFは Ultra-Processed Foods の略で、工場で何段階も加工された食品をさします。代表的なものは: 菓子パン、市販の菓子 加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン) 即席麺、冷凍ピザ 清涼飲料水、エナジードリンク スナック菓子 これらは塩・砂糖・脂質に加え、家庭ではあまり使わない添加物(乳化剤・保存料など)が含まれているのが特徴です。 研究:UPF 10%増ごとに「注意力」が落ちる オーストラリアの研究(Monash大学、Cardosoら、2026年4月発表)は、40〜70歳の成人 2,192人 の食事を分析しました。「Nova分類」という方法でUPFの割合を出し、認知機能との関連を調べたところ、 UPFが食事全体で10%増えるごとに、注意力スコアが有意に低下していた ことが分かりました。一方で 記憶のテストとの関連は見られなかった とのこと。注意力という、毎日の生活の中で「うっかり」「気が散る」につながる部分にじわっと影響していたわけです。 大事なのは「食事全体の質」と独立だったこと ここがポイントです。研究では「食事全体の質(野菜・果物の摂取量など)」を補正しても、 UPFそのものの影響が残った といいます。 つまり、 野菜をしっかり食べている方 魚や大豆もとっている方 でも、 菓子パン・加工肉・即席麺・清涼飲料を放っておくと注意力が落ちる可能性がある ということ。「いいものを足す」だけでは足りず、「困るものを少し減らす」両輪が大切なんですね。 現場で私が伝えていること 私(Torapon)は患者さんやご家族にお話しするときに、こんなふうにお伝えしています。 「ゼロにしなくて大丈夫です。それ以外にも、おいしいものはいっぱいありますし、お楽しみとして時々食べる分には良いと思いますよ」 UPFを「悪者扱い」して全部禁止してしまうと、食卓がさみしくなり、長続きしません。 頻度を下げる ことを意識するだけで、注意力の維持にぐっと近づけます。 いま私たちにできること 具体的に、無理なく続けやすい工夫を5つご紹介します。 ✅ 朝食の 菓子パンを週に1〜2回に(残りはご飯・パン+たんぱく質に) ✅ ハム・ソーセージは 週2〜3回まで、メインは魚・卵・豆製品で ✅ 即席麺は 「忙しい日のお守り」 として常備、毎日にはしない ✅ 清涼飲料水を お茶・水・無糖炭酸 に置きかえる ✅ おやつは 果物・ナッツ・ヨーグルト を選ぶ日を増やす ...

May 23, 2026 · 1 分
栄養バランスのよい食卓のイラスト

ビタミンB12、「基準値内」でも足りていないかも? 〜年を重ねた脳と、栄養の意外な関係〜

健康診断で「ビタミンの数値は正常ですよ」と言われると、ひと安心しますよね。 でも、こんな研究をご存じでしょうか。 「血液検査では『基準値内』でも、ビタミンB12がやや低めの高齢者は、考えるスピードが少しゆっくりになっていた」 “足りている”はずなのに、脳には影響が出ているかもしれない――。今回は、そんな少し意外な研究を、やさしくお伝えします。 ✅ B12が「基準値内でも低め」の高齢者は、考えるスピード(処理速度)がゆっくりめ で、脳の白質に小さな変化がみられた ✅ ただし「サプリをたくさん飲めば脳が良くなる」わけではない。上乗せ効果は ごくわずか という報告も ✅ まずは 食事から。気になる方は自己判断せず、血液検査でかかりつけ医に相談 を 目次 そもそもビタミンB12って? 「基準値内なのに足りない」研究の話 サプリに飛びつく前に 食事でとるには おわりに そもそもビタミンB12って? ビタミンB12は、神経や血液を元気に保つ ために欠かせない栄養素です。魚や貝、肉、卵、乳製品などに多く含まれています。 やっかいなのは、年を重ねると吸収する力が落ちやすい こと。さらに、胃の調子や一部のお薬の影響でも、吸収が下がることがあります。つまり「ちゃんと食べているつもり」でも、体の中では足りにくくなっている――そんなことが起こりうるのです。 「基準値内なのに足りない」研究の話 アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームが、認知症のない 健康な高齢者231人(平均71歳)を調べました。 すると―― B12が 「基準値内でも低め」 の人は、考えるスピード(処理速度)がゆっくりめ だった さらに、脳の 白質(はくしつ=神経の通り道)に、小さな傷のような変化が多くみられた この研究は2025年に医学誌『Annals of Neurology』に発表され、「いまの基準値は、脳にとっては少し甘いのかもしれない」という議論を呼びました。 サプリに飛びつく前に ここで、とても大事な注意点があります。 「じゃあB12のサプリをたくさん飲めばいいんだ!」――そう考えたくなりますが、話はそう単純ではありません。 別の研究では、Bビタミンのサプリで頭の働きが良くなる効果は ごくわずか にとどまった、と報告されています。足りない人が補うことには意味があっても、「たくさん飲むほど脳に効く」わけではない のです。 サプリは飲み合わせや持病との相性もあります。自己判断で大量にとるのは避け、まずは血液検査でご自分の状態を知ること から始めましょう。 ※ サプリメントや栄養の取り方については、必ずかかりつけ医にご相談ください。 食事でとるには いちばんの基本は、やっぱり毎日の食事です。B12は、こんな食材に多く含まれています。 ✅ あさり・しじみ・牡蠣 などの貝類 ✅ さんま・さば・いわし などの魚 ✅ レバー、卵、牛乳・チーズ、のり 特別なものではなく、和食の食卓に自然と並ぶもの ばかりですね。「最近、魚や貝を食べていないな」と思ったら、週に何回かは意識して取り入れてみてください。 食事と脳の関係は、こちらの記事もどうぞ。 👉 認知症を遠ざける食事のヒント おわりに 「基準値内だから大丈夫」と思っていた栄養が、実は脳にとっては少し足りていないかもしれない――。今回の研究は、そんな気づきを与えてくれました。 とはいえ、神経質になりすぎる必要はありません。魚や貝、卵を、いつもの食卓に少し増やす。 そして気になるときは、ひとりで悩まず、かかりつけの先生に相談する。その小さな積み重ねが、これからの脳を守ってくれます。 ...

May 31, 2026 · 1 分
栄養バランスのよい和食の食卓のイラスト

その「疲れ」「やる気の出なさ」、栄養不足のサインかも? 〜ビタミンB12・葉酸と疲労の意外な関係〜

「しっかり寝ているのに、なんだか疲れがとれない」 「以前ほど、やる気がわいてこない」―― そんなふうに感じることはありませんか? 年のせいかな、と思いがちですが、実は 毎日の食事(栄養) が関係しているかもしれません。今回は、日本の研究から届いた、こんなお話です。 ビタミンB12と葉酸(ようさん)が足りない人ほど、「疲れ」や「やる気の低下」が大きかった ✅ 健康な日本人 約600人 を調べたところ、B12・葉酸が不足ぎみの人ほど、疲れやすく・やる気が出にくい 傾向があった ✅ カギになったのは「ホモシステイン」という血液中の物質。B12・葉酸が足りないと、これが増える ✅ ただし「サプリを飲めば元気になる」と決まったわけではない。まずは 食事の見直し から 目次 B12・葉酸ってどんな栄養? 「疲れ」と栄養をつないだ日本の研究 食事でとるには おわりに B12・葉酸ってどんな栄養? ビタミンB12 と 葉酸 は、どちらも血液や神経を元気に保つために欠かせない栄養素です。2つは チームのように協力して 働いています。 困ったことに、年を重ねると 吸収する力が落ちやすい うえ、葉酸は野菜不足などで足りなくなりがちです。「ちゃんと食べているつもり」でも、体の中では不足しはじめている――そんなことが起こりえます。 「疲れ」と栄養をつないだ日本の研究 大阪公立大学の叶内(かのうち)宏明教授らのチームが、健康な日本人 約600人 を対象に、血液の状態と「疲れ・やる気」の関係を調べました。 すると―― 血液中の「ホモシステイン」が高い人ほど、疲れが強く、やる気も低め だった ホモシステインは、B12・葉酸が足りないと増える 物質 つまり「栄養の不足が、疲れやすさの隠れた原因のひとつかもしれない」というわけです。この研究は2026年、栄養学の専門誌『Nutrients』に発表されました。 ※ これは「関係がみられた」という研究で、「B12・葉酸を増やせば必ず元気になる」と証明したものではありません。慢性的な疲れには、ほかの原因(病気など)も隠れていることがあります。 食事でとるには いちばんの基本は、やっぱり毎日の食事です。 ✅ ビタミンB12 … あさり・しじみ・牡蠣などの貝類、さんま・さば、レバー、卵、のり ✅ 葉酸 … ほうれん草・ブロッコリーなどの青菜、枝豆・納豆などの豆類、いちご・みかんなどの果物 どちらも、和食の食卓に自然と並ぶもの ばかりですね。「最近、魚や青菜を食べていないな」と思ったら、少し意識して取り入れてみてください。 なお「サプリで補えばいいのでは?」と思われるかもしれませんが、自己判断で大量にとるのは禁物 です。疲れが長く続くときは、ひとりで悩まず、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。 ※ サプリメントの利用や栄養の取り方については、必ずかかりつけ医にご相談ください。 ビタミンB12と脳の関係は、こちらの記事もどうぞ。 👉 ビタミンB12、「基準値内」でも足りていないかも? おわりに 「疲れ」や「やる気の出なさ」を、気持ちや年のせいだけにしてしまうのは、少しもったいないかもしれません。その背景に、栄養という整えられる原因 がかくれていることもあるのです。 魚や貝、青菜や豆を、いつもの食卓に少しだけ増やす。そんな小さな積み重ねが、毎日の元気につながっていきます。気になる疲れが続くときは、どうぞ早めにかかりつけの先生に相談してくださいね。 📚 あわせて読みたい一冊 PR 医者が教える食事術 最強の教科書 ...

June 1, 2026 · 1 分
台所のテーブルでサプリメントの瓶を手に取り、考えている女性のイラスト

ひざのために飲んでいたサプリが、脳には? 〜グルコサミンをめぐる新しい報告〜

「ひざにいいらしいよ」 そう聞いて、グルコサミンを飲みはじめた。あるいは、親御さんに送っている。テレビでも新聞でも見かけますし、ドラッグストアの棚には、いつも大きく並んでいます。 そのグルコサミンについて、2026年6月、少し気になる報告が出ました。 先にお伝えしておきます。この記事は「いますぐやめてください」という話ではありません。 むしろ研究をよく読むと、そう単純な話ではないことが分かります。ただ、知っておいたほうがいい内容ではありました。 ✅ アメリカの研究で、グルコサミンを使っていた人は、軽い物忘れ(MCI)から認知症に進む割合が25%高かったという報告が出ました ✅ ただし動物実験では、健康な脳ではまったく変化が起きませんでした。影響が出たのは、すでにアルツハイマー病の状態にあった場合だけです ✅ 研究者自身が「関連が見えただけで、原因と決まったわけではない」と述べています。やめるかどうかは、かかりつけの先生と相談して決めることです サプリとのつき合い方全般については、こちらもあわせてどうぞ。 👉 健康にかけるお金は年15.7万円。それでも「何を信じたらいい?」 目次 そもそもグルコサミンとは 何が報告されたのか ここがいちばん大事なところ 正直に書いておきたいこの研究の弱いところ ひざには効いているのでしょうか 天秤にかけ直してみませんか 理学療法士として現場で思うこと いま私たちにできること おわりに 参考にした情報 そもそもグルコサミンとは グルコサミンは、糖の仲間 です。名前に「グルコ」とついているとおり、ブドウ糖に近い形をしています。 体の中では、関節の軟骨(なんこつ=骨と骨の間のクッション)をつくる材料のひとつとして使われています。ですから「すり減った軟骨の材料を、飲んで補おう」という考え方で、サプリとして売られてきました。 考え方としては、とても分かりやすいですよね。減ったものを足す。だからこれだけ広まったのだと思います。 ただ、ここで一つ、頭の隅に置いておいていただきたいことがあります。 飲んだグルコサミンは、ひざにだけ届くわけではありません。 体じゅうを巡ります。当然、脳にも届きます。今回の研究は、その「脳に届いたあと」の話です。 あなた ひざのために飲んでいるのに、脳の話になるんですか? Torapon そこが、今回いちばん意外だったところです。口から入れたものは、行き先を選べません。 ひざに効かせたくても、体じゅうに配られてしまう。だから研究者の方たちは「では、ほかの場所では何が起きているのだろう」と調べたわけですね。 何が報告されたのか 報告したのは、アメリカ・フロリダ大学 の研究チームです。2026年6月9日、『nature』の姉妹誌である 『Nature Metabolism』 に発表されました。 この研究のおもしろいところは、まったく違う3つの方法で、同じ方向の結果が出た ことです。ひとつずつ見ていきます。 ① 病院の記録を、大量に調べた フロリダ大学の病院に残っていた、2012年から2024年までの患者さんの記録(お名前などが分からないように処理したもの)を調べました。人数はこうです。 グループ 人数 うちグルコサミンを使っていた人 認知症の診断がある方 24,481人 1,896人(約8%) 軽度認知障害(MCI)の方 41,884人 2,750人(約8%) ※ 軽度認知障害(MCI) … 物忘れは出ているけれど、日常生活はまだ自分でできる段階。認知症の一歩手前と言われます。 追いかけた期間は、中央値でおよそ5年 でした。その結果、こうなりました。 軽度認知障害の方 … グルコサミンを使っていた人は、認知症に進んだ割合が25%高かった すでに認知症の診断がある方 … 1年以上使っていた人は、亡くなる割合が25%高かった ② 亡くなった方の脳を、直接調べた 次に研究チームは、アルツハイマー病の方20人の脳(前頭葉の表面) を、特殊な質量分析という方法で調べました。 ...

August 22, 2026 · 2 分
食卓に置かれた焼き魚と、その隣に並ぶサプリメントの瓶のイラスト

脳には、ちゃんと届いていました 〜DHAのサプリと、2年後の脳の話〜

「頭のために、DHAを飲んでいます」 外来やリハビリの場で、何度も聞いた言葉です。テレビでも、新聞の広告でも、よく見かけます。魚の油が脳にいいというのは、もうすっかり定着した話になりました。 私自身、長いあいだ「まあ、悪いことではないだろう」と思っていました。 ところが2026年、その考え方をひとつ整理し直す研究が出ました。しかも、期待はずれだったからではありません。期待どおりだったのに、その先が続かなかったからです。 ✅ DHAのサプリを2年間しっかり飲んだ方の髄液を調べたら、脳にはちゃんと届いていました。ここは、はっきり証明されました ✅ ところが2年後の脳の大きさも、考える力も、飲まなかった方と差は見つかりませんでした ✅ 一方で、食べものとしての魚については、たくさん食べる方のほうが認知症が2割ほど少ないという報告が続いています。魚とカプセルは、別の話として考えたほうがよさそうです ひざのサプリについても、似た構図の記事を書いています。あわせてお読みください。 👉 ひざのために飲んでいたサプリが、脳には 目次 まず、この研究のすごいところ 脳には、たしかに届いていた それでも、2年後は変わらなかった 正直に書いておきたい、この研究の限界 「かえって早いのでは」という報告と、その反論 これまでの研究をまとめると では、魚そのものはどうなのか 公的機関は、どう言っているか いま飲んでいる方へ 現場で見てきたこと いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 まず、この研究のすごいところ アメリカ・南カリフォルニア大学のグループが行った「PreventE4」という試験です。 サプリの研究というと、「飲んでいる人と飲んでいない人を比べた」というものが大半です。それでは、もともと健康に気をつかう人がサプリを飲んでいるだけかもしれません。 この試験は違います。 くじ引きで、DHAを飲むグループと、見た目が同じ偽物を飲むグループに分けた 本人にも、調べる側にも、どちらか分からないようにした 739人を調べて、条件に合う365人を追いかけた 期間は2年間 対象になったのは、平均66歳で、まだ認知症のない方たち。しかも「ふだん魚をあまり食べない方」(食事からのDHAが1日200mg未満)に絞っています。もともと足りていない人に足したら、どうなるか。よく考えられた設計です。 飲んだ量は1日2グラム。 市販のサプリよりかなり多い量です。 脳には、たしかに届いていた この試験がいちばん知りたかったのは、実は「頭が良くなるか」ではありませんでした。 飲んだDHAが、本当に脳まで届くのか。 そこを確かめることが第一の目的でした。 そのために、背中から針を刺して髄液(脳と脊髄をひたしている液体)を採るという、かなり大変な検査をしています。 結果は、はっきりしていました。 髄液のDHAの変わり方 DHAを飲んだ方 増えた(+0.17) 偽物を飲んだ方 ほぼ変わらず(−0.02) 血液のほうでも、オメガ3の指標が4.9%から11.0%へと、しっかり上がっていました。 飲めば届く。 これは、この試験が証明したことです。 あなた 届いているなら、いいことなのでは? Torapon 私も最初にそう思いました。ここまでは、期待どおりだったんです。 問題は、その先でした。届いたのに、その先で何かが変わったようには見えなかったんですね。 それでも、2年後は変わらなかった 2年後、参加した方たちの脳をMRIで調べ、考える力の検査も行いました。 海馬(記憶にかかわる部分)の大きさ……差は見つからず 大脳皮質の厚み……差は見つからず 考える力の検査……差は見つからず 脳には届いた。でも、脳は変わらなかった。 これがこの試験の結論です。研究者たちは論文の最後で、「今後は、サプリを飲ませる試験よりも、脳のなかでDHAがどう使われているかの研究を優先すべきだ」と書いています。かなり踏み込んだ書き方だと思います。 正直に書いておきたい、この研究の限界 ただし、この結果も慎重に読む必要があります。 ひとつめ。考える力の検査は、この試験の「おまけ」でした。 この試験がいちばん確かめたかったのは、あくまで髄液にDHAが増えるかです。考える力の検査は「探索的」、つまり参考として調べた項目でした。ですから、認知機能に効かないことが証明された、とまでは言えません。 ふたつめ。途中でやめた方が4割近くいました。 ...

September 6, 2026 · 2 分
夜空の下、月明かりにそっと照らされる脳のイラスト

ぐっすり眠ると、脳が掃除される? 〜眠りと脳のふしぎな関係〜

「最近、ぐっすり眠れていますか?」 夜中に何度も目が覚めたり、朝起きても疲れが残っていたり——。 そんな日が続くと、なんとなく頭がぼんやりして、集中力も落ちてきますよね。 でも、もし「睡眠」が、ただの休憩ではなく、脳の中をきれいに掃除する大切な時間だったとしたらどうでしょう? 実は、2012年に発見されたある仕組みによって、それが本当のことだと分かってきました。 今回はその仕組み——「グリンパティック・システム」をやさしくご紹介します。 この記事のポイント ✅ 脳には、寝ている間に老廃物を流す独自の「掃除システム」があります ✅ そのカギを握るのは、脳脊髄液(のうせきずいえき)と、 星型の細胞「アストロサイト」です ✅ 睡眠不足は、認知症の原因物質の蓄積につながる可能性があります 目次 そもそも「グリンパティック・システム」って? 寝ている間、脳の中で何が起きているの? 掃除がうまくいかないと、どうなる? どうやって守ればいいの? まとめ そもそも「グリンパティック・システム」って? あなた グリンパティック……? なんだか難しそうな名前で、読む前からくじけそうです。 Torapon 名前は難しそうですが、中身はシンプルなんです。ひとことで言うと、眠っている間に脳のゴミを水で洗い流すしくみ。それだけ分かれば十分ですよ。 聞き慣れない言葉ですが、難しく考えなくて大丈夫です。 脳の中を流れる水(脳脊髄液)が、老廃物を洗い流してくれる仕組み——そう思っていただければ十分です。 私たちの体には「リンパ系」という、老廃物や余分な水分を集めて流す仕組みがあります。 ただ、脳の中にはリンパ管がほとんど通っていません。 ではどうやって脳の中の “ゴミ” を片付けているのか——。 それを2012年に解き明かしたのが、デンマークの神経科学者ネーデルガード博士のチームでした。 彼らは脳特有の “もう一つのリンパ系” として、この仕組みをグリンパティック・システムと名付けました。 「グリア(脳の支援細胞)+リンパ」という意味の造語です。 脳の中にも、私たちが眠っている間にせっせと働く"掃除部隊"があったのです。 寝ている間、脳の中で何が起きているの? あなた 寝ているだけなのに、脳の中でそんなに色々なことが起きているんですか? Torapon そうなんです。眠っている間の脳は、休んでいるどころか 『そうじタイム』 の真っ最中。3つの主役が力を合わせて働くんですよ。順に見てみましょう。 このシステムの主役は、3人います。 1. 脳脊髄液(のうせきずいえき)——脳と背骨の中を流れる、無色透明の液体です。 2. アストロサイト——脳の中で神経細胞を支える、星のような形をした細胞です。 3. 血管の “ゆっくりした拍動”——心臓に合わせて広がったり縮んだりするポンプの動きです。 眠りに入ると、これらが連携して動き始めます。 ① 細胞の “すき間” が広がる ノンレム睡眠(深い眠り)に入ると、脳の中の興奮を高める物質(ノルアドレナリン)の量がぐっと下がります。 すると、脳の細胞が少し縮み、細胞と細胞のすき間が約60%も広がることが分かっています。 このすき間こそが、脳脊髄液の “通り道”。 広がった通り道を、液体が一気に流れやすくなるのです。 ② 脳脊髄液が流れ込む 血管の周りには、ほんのわずかな空間(血管周囲腔)があります。 脳脊髄液は、ここを通って脳の奥深くまで入り込み、老廃物を集めて再び外へと運び出します。 ...

May 15, 2026 · 1 分
やわらかな夜空のもと、星と本のイラストが穏やかに浮かぶ

眠っている間、脳は何をしているの? 〜記憶と感情の整理整頓〜

「ぐっすり眠ったはずなのに、頭がスッキリしない」 「悲しいことがあった日は、よく眠れない」 そんな経験はありませんか? 実は、私たちが眠っている間、脳の中ではとても大切な"作業"が行われています。 それは——記憶の整理と、感情の処理です。 前回はグリンパティック・システム(脳の掃除のしくみ)をお話ししました。 今回はその続きとして、「眠っている間、脳が裏側で何をしているのか」を、もう少しのぞいてみましょう。 この記事のポイント ✅ 睡眠は2つの段階に分かれていて、それぞれ違う"仕事"をしています ✅ ノンレム睡眠は記憶を脳に定着させ、レム睡眠は感情をやさしく整えてくれます ✅ 睡眠不足は、学ぶ力・気持ちのコントロール・人との関わりにも影響します 目次 睡眠は「ひとつ」じゃない ノンレム睡眠:記憶を"刻み込む"時間 レム睡眠:「一晩のセラピー」と呼ばれる理由 眠りが足りないと、心と頭はどうなる? まとめ 睡眠は「ひとつ」じゃない 「眠っている時間」と聞くと、ずっと同じ状態が続いているように感じますよね。 でも実際の睡眠は、2つの段階が約90分ごとに交互にやってくることが分かっています。 ノンレム睡眠——脳が深く休んでいるけれど、体は動かせる状態。深さによってさらに段階が分かれます。 レム睡眠——体は休んでいるけれど、脳は活発に動いている状態。夢を見るのは主にこの時間です。 ひと晩に4〜5回、この2つを行き来しながら朝を迎えます。 そして面白いことに、前半はノンレム睡眠が多く、後半(朝方)はレム睡眠が多くなります。 だから「もう少し寝かせてほしいな」と感じる朝方は、実はレム睡眠のまっただ中なのです。 ノンレム睡眠:記憶を"刻み込む"時間 日中に「あ、これは大事だな」と思ったことや、新しく覚えた人の名前、運動の動きなどは、いったん「海馬(かいば)」という脳の小さな部屋に仮置きされます。 そのままだと、しばらくして消えてしまうことも。 ところが眠っている間、特にノンレム睡眠の深い段階になると、不思議なことが起こります。 昼間に活動した神経細胞のパターンが、もう一度ゆっくり再生されるのです。 これを「海馬のリプレイ」と呼びます。 「もう一度なぞり書きをしてもらう」イメージに近いかもしれません。 リプレイによって、海馬に置かれていた記憶は、より広い"長期保管庫"である大脳皮質(だいのうひしつ)へと書き写されていきます。 2024〜2025年の研究では、このリプレイのタイミングが「睡眠紡錘波(すいみんぼうすいは)」と呼ばれる特殊な脳波と同期しているほど、翌日の記憶テストの成績が良いことも分かってきました。 子どもが昼寝のあとに新しい言葉をスラスラ使えるようになるのも、この働きのおかげとされています。 学んだことを忘れたくないとき、夜更かしして詰め込むより、早めに眠った方が結果的に身につくのは、こういう理由なのです。 レム睡眠:「一晩のセラピー」と呼ばれる理由 つらい出来事があった日、ぐっすり眠った翌朝に「不思議と少し気持ちが楽になっていた」と感じることはありませんか? これは気のせいではなく、レム睡眠の働きとされています。 睡眠研究の世界では、レム睡眠を**「一晩のセラピー(overnight therapy)」**と呼ぶことがあります。 不安をやわらげるしくみ レム睡眠のあいだ、脳の中では、ストレスを高める物質(ノルアドレナリン)の分泌がぐっと下がります。 ストレスホルモンが少ない、安全な状態で、その日にあった出来事を脳が"もう一度なぞる"のです。 すると、出来事の「内容(こんなことがあった)」は記憶として残るのに、くっついていた不快な感情だけが少しずつ薄められていく——そんなことが脳の中で起きています。 これがレム睡眠の「セラピー機能」です。 寝酒がよくない理由 ところが、アルコールはこのレム睡眠を強く抑え込みます。 夜にお酒を飲むと、寝つきは良くなったように感じても、レム睡眠が短くなり、その大切な"セラピー時間"が失われてしまいます。 「つらい日こそ飲んで寝る」が逆効果になりやすいのは、このためです。 ストレスを感じた日ほど、しっかりとした"素の眠り"が必要なのです。 眠りが足りないと、心と頭はどうなる? ここまでをまとめると、睡眠は頭の中の “編集者” と “整理係” のような役割を担っていることが分かります。 編集者(NREM)が記憶を清書し、整理係(REM)が感情をていねいに片付けてくれているわけです。 その時間が足りないと、当然いろんな影響が出てきます。 物覚えが悪くなる——昼間に覚えたことが、長期記憶に書き写されにくくなります。 イライラ・不安が強くなる——感情の整理が追いつかず、小さなことで揺れやすくなります。 判断力が落ちる——前頭前皮質(判断を担う領域)の働きが鈍くなります。 人とのつながりが浅くなる——表情を読み取る力や共感する力も弱まることが報告されています。 睡眠と脳の関係について、もう少し基本から知りたい方はこちらの記事もどうぞ。 👉 認知機能ってそもそも何?〜記憶・判断・注意のしくみ〜 ...

May 16, 2026 · 1 分
朝のやわらかな光のなかで、湯気のたつお茶のあるテーブルのイラスト

今日から始める『脳が喜ぶ眠り方』 〜睡眠の質を上げる実践のヒント〜

ここまで2回にわたって、睡眠と脳の関係を見てきました。 第1回:ぐっすり眠ると、脳が掃除される?〜眠りと脳のふしぎな関係〜 第2回: 眠っている間、脳は何をしているの?〜記憶と感情の整理整頓〜 「脳って、寝ている間にこんなに頑張ってくれているんだ」と、少しだけ眠る時間が愛おしくなった方もいらっしゃるかもしれません。 最終回の今回は、その大切な時間をもっと味方につけるための、実践のお話です。 むずかしい道具やお金は一切いりません。今夜から始められるものばかりです。 この記事のポイント ✅ 「何時間寝るか」と「いつ寝るか」が、脳の修復力を大きく左右します ✅ お酒・カフェイン・スマホは、知らずに眠りの質を下げています ✅ 血圧・血糖値の管理は、脳の “そうじ機能” を守ることにつながります 目次 まずは「7〜9時間ルール」 寝る時間・起きる時間を一定に お酒とカフェインの落とし穴 寝室の “三拍子”——涼しく・暗く・静かに 血管の健康が、脳の眠りを守る まとめ まずは「7〜9時間ルール」 研究の世界では、成人の理想的な睡眠時間はおおむね7〜9時間とされています。 この範囲を外れた場合、脳の老化の指標である「白質高信号(はくしつこうしんごう)」が増えやすいことが、4万人規模の脳画像研究で示されました。 「6時間で十分だ」と長く感じていた方も、1日30分早く布団に入ることから始めてみませんか。 特に朝方のレム睡眠は、感情を整える大切な時間です。 睡眠時間を削ると、ここがいちばん最初に失われてしまいます。 「忙しい日ほど早く寝る」——これが、本当の意味での “脳の節約術” かもしれません。 寝る時間・起きる時間を一定に 「休みの日くらいは、ゆっくり寝かせて」——わかります。 でも、毎日の就寝・起床時刻が2時間以上ずれると、体内時計が混乱して、深い眠りに入りづらくなることが分かっています。 特に起床時刻のばらつきは、体内時計の調整に大きく影響します。 休日も、平日との差は1時間以内におさえると、脳のリズムが整いやすくなります。 朝、起きたらカーテンを開けて自然光を浴びるだけでも、体内時計のスイッチが入ります。 散歩や朝ごはんもセットにできれば、なお良し。 「寝つきが悪い」とお困りの方も、まずは朝の光から見直してみてください。 夜の眠りは、朝の習慣に支えられています。 お酒とカフェインの落とし穴 「寝つきが悪いから、寝る前にちょっとだけ」—— お酒のお話、耳が痛い方もいらっしゃるかもしれません。 実はアルコールは、レム睡眠を強く抑え込みます。 たしかに寝つきは良くなったように感じますが、感情の整理を担う"一晩のセラピー"の時間が削られてしまうのです。 ストレスを感じた日ほど、寝酒は逆効果になりやすいことが知られています。 カフェインも要注意です。コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンク—— 午後3時以降の摂取は、その夜の眠りに影響が出る可能性があります。 カフェインは体内に半日ほど残ることもあるので、夕方以降はノンカフェインのお飲み物に切り替えてみてください。 寝酒がなぜよくないのか、もう少し詳しいお話は前回の記事でも触れています。 👉 眠っている間、脳は何をしているの?〜記憶と感情の整理整頓〜 寝室の “三拍子”——涼しく・暗く・静かに ぐっすり眠るためには、寝室の環境がかなり大事です。 ポイントは3つ。 1. やや涼しく——深い睡眠に入るとき、体は中心の温度をすこし下げる必要があります。室温は18〜22℃を目安に。 2. 暗く——わずかな光でも、深い眠りを妨げると言われています。豆電球は消すか、なるべく暗いものに。 3. 静かに——耳栓やホワイトノイズで、突発的な音をやわらげるのも有効です。 そしてもうひとつ、寝る30分前のスマホ・テレビ・パソコン。 これらの強い光と情報量は、脳を「まだ起きていてね」と勘違いさせてしまいます。 代わりに、読書・ストレッチ・温かい飲み物など、ゆったりした習慣を取り入れてみてください。 「眠る準備」を整える時間そのものが、脳のスイッチを少しずつオフにしてくれます。 血管の健康が、脳の眠りを守る 第1回でお話ししたグリンパティック・システム(脳の掃除機能)は、血管のしなやかさに支えられています。 動脈がやさしく拍動することで、脳脊髄液が押し出され、老廃物が流れていく仕組みでしたね。 ...

May 17, 2026 · 1 分