頭の体操をするシニアのイラスト

脳の「処理スピード」を鍛えると、20年後の認知症リスクが下がる? 〜数週間の脳トレが教えてくれたこと〜

「脳トレって、本当に意味があるの?」―― そう感じたことは、ありませんか? ドリルやパズルをやってはみるものの、「これで本当に認知症が防げるのかな…」と、半信半疑の方も多いと思います。 ところが最近、その問いに 20年がかりで答えを出した研究 が話題になりました。 「ある脳トレを数週間受けただけで、認知症になるリスクが下がり、その効果が最長20年続いた可能性がある」 今回は、その内容をできるだけやさしくお伝えします。 ✅ 「情報を素早く処理する力」を鍛える脳トレを受けた人は、10年後の認知症リスクが約29%低かった ✅ その効果は 最長20年 続いた可能性。途中で「追加レッスン」を受けた人ほど、効果が大きかった ✅ 特別な道具はいりません。大事なのは「素早く見て・気づく」練習を 続けること 目次 どんな脳トレだったの? 2,800人を20年追いかけた研究 カギは「追加レッスン」 おうちでできること おわりに どんな脳トレだったの? 今回の主役は、「情報処理スピードのトレーニング」(処理速度=見たものを素早く理解し、判断する力)と呼ばれる脳トレです。 やることはシンプルで、画面にパッと出てくる絵や記号を 素早く見つけて答える というもの。慣れてくると、表示時間がどんどん短くなり、まわりにじゃまな情報があっても、目的のものを素早く見分けられるようになっていきます。 車の運転で「歩行者や標識にパッと気づく」あの感覚に近い力、とイメージするとわかりやすいかもしれません。 2,800人を20年追いかけた研究 この研究は、アメリカで行われた 「ACTIVE研究」 という、とても大きな調査がもとになっています。 対象:65歳以上の 健康な高齢者 2,802人 開始:1998年ごろ から、20年以上の追跡 体制:アメリカ国立衛生研究所(NIH)が支援 参加者を、いくつかの脳トレを受けるグループと、何もしないグループに分けて比べたところ―― 情報処理スピードの脳トレを受けた人は、10年後に認知症と診断されるリスクが約29%低かった そして2026年2月、医学誌『Alzheimer’s & Dementia』に発表された最新の解析では、その効果が 最長20年 にわたってみられた可能性が報告されました。 カギは「追加レッスン」 ひとつ大事なポイントがあります。それは、一度きりで終わらせないこと。 最初の5〜6週間のトレーニングのあと、1〜3年後に 「追加レッスン」(ブースター) を受けた人ほど、認知症リスクがより下がっていました。レッスンを1回受けるごとに、リスクがさらに少しずつ下がっていく傾向もみられたそうです。 運動と同じで、脳トレも 「ときどき思い出して、また続ける」 ことが効いてくる、というわけですね。 おうちでできること 研究で使われたのは専用のパソコンプログラムですが、その「素早く見て・気づく」エッセンスは、毎日の暮らしの中にも取り入れられます。 ✅ トランプの神経衰弱や間違い探し で、「素早く見つける」練習を ✅ 会話・カラオケ・囲碁将棋 など、人と関わりながら頭を使う遊びを ✅ そして何より、ウォーキングなど体を動かす習慣 を。体を動かすことは、最強の「脳トレ」でもあります ✅ 大切なのは「完璧」より 「ときどきでも、続けること」 ...

May 31, 2026 · 1 分
変化していく脳のイメージ

脳は、いくつになっても変われる 〜リハビリでわかった『脳の可塑性』のお話〜

「もう年だから、これ以上は良くならないよ」 リハビリの現場でも、ご本人やご家族から、そんな声をよく耳にします。 でも、私が理学療法士として毎日のように見ているのは、それとは少し違う光景です。 脳の病気やケガのあとでも、練習を重ねるうちに、できなかった動きが少しずつ戻ってくる――。そんな場面が、たしかにあるのです。 その背景には、脳がもともと持っている 「変わる力」 があります。今回はその力、「脳の可塑性(のうかそせい)」 について、やさしくお話しします。 ✅ 脳には、経験や練習に応じて、神経のつながりを作りかえる力 「脳の可塑性」 があります ✅ 脳卒中などで脳の一部が傷んでも、残った部分が役割を肩代わりしようとする(脳の再構成)。リハビリは、その力を引き出す手助けです ✅ この力は 高齢になってもゼロにはなりません。日々の運動・学び・人との関わりが、脳の“余力”を育てます 目次 そもそも「脳の可塑性」って? 脳が自分を作りかえる「再構成」の話 リハビリは「脳の変化」を引き出すお手伝い 現場で感じていること 高齢になっても、脳は変われる いま私たちにできること おわりに そもそも「脳の可塑性」って? あなた 脳って、一度できあがったらもう変わらないものだと思っていました……。 Torapon よく聞くお話ですね。でも実は、脳のつながり方は生まれたまま固定されているわけではないんです。練習や経験に応じて作りかわる力 ——それが『脳の可塑性』なんですよ。 私たちの脳の中には、「神経細胞(しんけいさいぼう)」 が、数えきれないほどたくさんあります。この細胞どうしは、手をつなぐように 「シナプス」 という接ぎ目でつながり、網の目のようなネットワークをつくっています。 このつながり方は、生まれたときのまま固定されているわけではありません。何かを練習したり、新しい経験をしたりすると、つながりが太くなったり、新しくできたりします。この「経験に応じて、脳の回路を作りかえる力」のことを、「脳の可塑性(かそせい)」 と呼びます。 たとえば、よく使う神経のつながりは、信号が伝わりやすくなっていきます。これは専門的には 「長期増強(ちょうきぞうきょう、LTP)」 と呼ばれ、学習や記憶の土台になっている仕組みです。「習うより慣れろ」という言葉は、まさに脳の可塑性のことを言い当てているのかもしれません。 脳が自分を作りかえる「再構成」の話 この「変わる力」が、いちばん頼もしくはたらくのが、脳卒中(のうそっちゅう)などで脳の一部が傷ついたあとです。 脳のある場所が傷んで、そこが担っていた役割(手を動かす、言葉を話すなど)がうまくいかなくなったとき――傷つかずに残った部分が、ネットワークを組み替えて、その役割を肩代わりしようとすることがあります。これを 「脳の再構成(さいこうせい)」 といいます。 休んでいた回路が活性化したり、残った神経どうしが新しいつながりをつくったりして、失われかけた働きが、少しずつ再び組み立て直されていくのです。 ただし、いいことばかりではありません。脳が傷ついたあとには、回復のじゃまをするタンパク質が現れることもわかってきており、これが回復の壁になる場合があります。だからこそ、早めに・適切にはたらきかけることが大切だと考えられています。 リハビリは「脳の変化」を引き出すお手伝い あなた リハビリって、ただ我慢して頑張るだけの、つらいものだと思っていました。 Torapon がむしゃらに頑張ればいい、というものではないんです。リハビリは、脳が変わりやすい状況を外から手伝ってあげる もの。運動や繰り返しの練習が、その『変わる力』をそっと引き出してくれるんですよ。 では、その「変わる力」を、どうやって引き出すのでしょうか。 そこで登場するのが、リハビリテーションです。 リハビリは、運動や、同じ動きの反復練習といった刺激を通して、脳の可塑性を 意図的に引き出し、失われた機能の回復を促していくプロセスだと考えられています。やみくもに頑張るのではなく、「脳が変わりやすい状況」を、外から手伝ってあげるイメージです。 カギをにぎるのが、脳の中で出る アセチルコリン という物質です。記憶や注意に深くかかわる脳の部位(マイネルト神経核)から出るこの物質が、脳の可塑性を後押しするスイッチのような役割をすると考えられています。さらに、こうした物質を調整して人工的に可塑性を高め、リハビリの効果を底上げしようという研究も進められています。 そしてもう一つ大切なのが、環境と経験です。ヒトの脳は、まわりの環境や、積み重ねる経験によって育ちます。刺激の豊かな環境――人と話す、手先を使う、体を動かす――が、脳の作りかえを後押しすると考えられています。 運動が脳を元気にする話は、こちらの記事もあわせてどうぞ。 👉 運動でつくられる“脳の若返り物質”の話 現場で感じていること 理学療法士として現場に立っていると、教科書の言葉以上に、この「脳の可塑性」を実感する場面があります。 最初はわずかな動きしか戻らなくても、あきらめずに、こつこつ続けた方ほど、半年・一年と経つうちに、できることが増えていく――そんな姿を、何度も見てきました。派手な特効薬があるわけではありません。地道な繰り返しこそが、脳の変化を引き出す確かな道なのだと、現場で教えられています。 高齢になっても、脳は変われる ...

June 27, 2026 · 1 分
運動で体と脳を元気にするイメージ

「にぎる力」が、脳を守る? 〜筋肉と脳の、新しい関係のお話〜

「このごろ、ペットボトルのフタが開けにくくなった」 「握手した手に、昔ほど力が入らない気がする」 そんなふうに、手の力(握力)の衰えを感じたことはありませんか? 「年のせいだから、しかたない」と思ってしまいがちですが、実はいま、この“にぎる力”と、脳の元気との関係に、世界中の研究者が注目しています。 理学療法士として現場に立っていると、「体の力」と「頭の元気」は、思っている以上に深くつながっていると感じます。今回は、筋肉と脳の、新しい関係について、やさしくお話しします。 ✅ 握力は「体全体の筋力の鏡」。大規模な研究で、握力が強い人ほど、将来アルツハイマー病になりにくい傾向が報告されています ✅ アメリカの有名な研究所が、**2026年を「脳の健康の年」**と位置づけました。運動が、脳を元気にする物質 「BDNF」 を増やすことがわかっています ✅ カギは、中年期からの筋力づくり。歩くなどの有酸素運動だけでなく、「筋トレ(筋力を保つこと)」も脳を守る、という新しい視点が広がっています 目次 そもそも、握力と脳って関係あるの? 世界が注目「2026年は、脳の健康の年」 握力は「体全体の筋力の鏡」 なぜ、筋肉が脳を守るの? 現場で感じていること いま私たちにできること おわりに そもそも、握力と脳って関係あるの? あなた 手の力と、脳の元気……。まったく別のもののように思えるのですが。 Torapon そう感じますよね。でも、握力は「体ぜんたいの筋力」をうつす鏡のようなもの。手の力が保てている方は、体全体の筋肉も元気なことが多いんです。そして、その体の元気が、脳の元気ともつながっている——そんなことが、少しずつわかってきたんですよ。 握力とは、文字どおり「手でにぎる力」のことです。健康診断で測ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。 この握力、じつは 「体全体の筋力の目安」 として、医療の現場でよく使われています。手の力だけを特別にはかっているのではなく、握力が保てている人は、全身の筋肉も元気なことが多いからです。 そして近年、この握力と、脳の健康・認知症のリスクとの関係を調べる研究が、世界中で相次いで報告されるようになりました。順番に見ていきましょう。 世界が注目「2026年は、脳の健康の年」 アメリカに、ソーク研究所(Salk Institute) という、脳科学で世界的に知られる研究所があります。この研究所が、2026年を「脳の健康の年(Year of Brain Health)」 と位置づけ、脳を守るしくみの解明に力を入れると発表しました。 その中で、大きなテーマの一つとされているのが 「運動」 です。 運動をすると、脳の中で 「BDNF(ビーディーエヌエフ)」 という物質が増えることがわかっています。これは 「脳を元気にする栄養」 のようなもので、神経細胞が生き延びるのを助け、学びや記憶を後押しし、新しい神経細胞が育つのを支えるはたらきがあると考えられています。 あなた 運動が、脳の栄養を増やしてくれるんですね。ちょっと意外です。 Torapon そうなんです。しかも研究所は、「有酸素運動」だけでなく「筋力(筋トレ)」も、脳を守るのではないかと考えて、くわしく調べはじめています。歩くことに加えて、筋肉を保つことも大事、というわけですね。 これまで「運動といえば、ウォーキングなどの有酸素運動」というイメージが強かったかもしれません。でもいま注目されているのは、筋力そのもの。筋肉が強い人ほど、脳が守られやすいのではないかという、新しい視点です。 運動でつくられる“脳の若返り物質”の話は、こちらの記事もあわせてどうぞ。 👉 運動でつくられる“脳の若返り物質”の話 握力は「体全体の筋力の鏡」 「筋力が脳を守る」という話を、より具体的に示したのが、握力を使った大規模な研究です。 ある研究では、約8万6千人という、とても多くの人を長い期間にわたって追いかけました。その結果、握力が強い人ほど、将来アルツハイマー病になるリスクが低い、という関係が、段階的にみられたと報告されています。握力が強いほどリスクが下がっていく——そんなゆるやかな傾向です。 また、2025年に発表された別の大規模な追跡研究でも、筋力が弱い人は、将来認知症になるリスクがやや高いという結果が示されました。握力や全身の筋力の低下が、将来の脳の健康を映すサインの一つになりうる、というわけです。 あなた 握力が弱いと、もう手おくれ……ということでしょうか。 Torapon いいえ、そうではありません。これらはあくまで「傾向」であって、握力が弱いから必ずそうなる、という話ではないんです。むしろ大切なのは、筋力は、いくつからでも育てられるということ。とくに 40〜60代の中年期から筋力を保つことが、将来の脳を守る土台になると考えられているんですよ。 ここで大事なのは、「握力の数字におびえること」ではありません。握力は、あくまで体の状態を知る手がかりの一つです。数字そのものより、**「これから、体の筋力をどう保っていくか」**のほうが、ずっと大切です。 なぜ、筋肉が脳を守るの? では、どうして筋肉が、脳を守ってくれるのでしょうか。そのしくみは、まだ研究の途中で、すべてが解明されたわけではありません。ただ、いくつかの道すじが考えられています。 運動が「脳の栄養(BDNF)」を増やす……体を動かすことで、神経を元気に保つ物質が増えると考えられています 筋肉そのものが、脳によい物質を出す……近年、筋肉は「動くための器官」であるだけでなく、体じゅうに“よい信号”を送り出す器官でもあることがわかってきました 血のめぐりがよくなる……運動や筋力の維持は、脳へ届く血の流れを助けます 生活習慣が整う……体を動かす習慣は、睡眠・血圧・血糖など、脳に関わる多くのことを、よい方向へ導きます ソーク研究所も、「筋肉を育てるしくみ」が、年をとった脳を守る手がかりになるのではないか、と考えて研究を進めています。つまり、筋肉を保つことは、脳への“うれしい贈りもの”を増やすことでもあるのです。 ...

July 3, 2026 · 1 分
ゴルフ場で仲間と一緒に体をほぐすシニアたちの水彩画

ゴルフを続けている人は、頭も元気? 〜4,575人の研究が教えてくれた「続けること」の意味〜

「そろそろ、ゴルフもやめどきかな」 「腰も痛いし、スコアも昔のようにはいかないし……」 そんなふうに、長く続けてきた趣味を手放すことを考えたことはありませんか。 2026年、国立長寿医療研究センターの島田裕之先生たちが、高齢者4,575人を対象にした研究を発表しました。テーマは、ゴルフと頭の元気との関係です。 理学療法士として現場に立っていると、趣味を手放した方から、少しずつ元気がなくなっていく——そんな場面に何度か出会うことがありました。今回の研究は、その実感に静かに重なるものでした。 ✅ 認知機能が下がっていた人の割合は、今もゴルフをしている人14.1%/やめた人20.1%/したことがない人21.6% でした ✅ 効いていそうなのは、歩く・頭を使う・人と交わる、この3つが同時にそろうこと です ✅ ただし 回数を増やす必要はありません 。関係していたのは「たくさん回ること」ではなく「続いていること」でした 目次 4,575人を、3つのグループに分けてみたら ゴルフの、何が効いているのでしょう ここは正直に——「だからゴルフをすれば安心」とは言えません では、ほかのスポーツや活動はどうなのでしょう 共通しているのは「3つ」と「続いていること」 私自身のこと いま私たちにできること おわりに 4,575人を、3つのグループに分けてみたら この研究では、高齢の方4,575人を、こんなふうに3つに分けて比べました。 今もゴルフをしている人 昔はしていたが、やめた人 ゴルフをしたことがない人 そして4種類の検査で、認知機能が下がっているかどうかを調べました。結果が、こちらです。 今も続けている人が14.1% 。やめた人が20.1%、したことがない人が21.6%でした。統計的にみても、続けている人は「したことがない人」よりはっきり低い、と報告されています。 さらに興味深いのは、次の2点です。 ゴルフ歴が長い人ほど、認知機能が下がっていない傾向がありました いっぽうで、年間のラウンド数や練習の量とは、はっきりした関係が見られませんでした あなた ゴルフをやめてしまった人は、もうダメということでしょうか……。 Torapon いいえ、そう読むのは早いです。実はこの研究、記憶に関しては「やめた人」にも良い関連がみられた と報告しています。それに、あとでお話ししますが、この数字には 逆向きの説明 も十分にあり得るんです。「頭が心配になってきたから、ゴルフをやめた」という順番ですね。 まとめると、この研究がいちばん強く示していたのは、こういうことになります。 月に何回も回っている人が良い成績だったのではありません。回数は少なくても、ゴルフをやめずに長く続けてきた人——そちらのほうに、良い結果が出ていたのです。 ゴルフの、何が効いているのでしょう では、ゴルフの何が頭に関わっているのでしょうか。研究チームは、ゴルフを「体・頭・人づきあい、いくつもの要求が重なる活動」だととらえています。 ① 歩く 18ホールを回れば、カートを使っても、けっこうな距離を歩きます。歩いて回れば8〜10km、1万歩を超えることも珍しくありません。しかも平らではありません。上り下り、傾いた足場、ラフの中。ただの散歩より、体の使い方はずっと複雑です。 ② 頭を使う ここがゴルフの、いちばん面白いところかもしれません。 風の向きと強さ、グリーンまでの残り距離、足元の傾き、池やバンカーの位置、そして今日の自分の調子。それを全部あわせて、1本のクラブを選ぶ 。しかも、状況は毎回ちがいます。同じ場面は二度とありません。 あなた 言われてみれば、ラウンド中はずっと何か考えていますね。 Torapon そうなんです。しかも「決めて、打って、結果を見て、次を考える」のくり返しでしょう。これは脳の中でも 段取りをつけたり、切り替えたりする働き をよく使います。ふだんの生活では、なかなかここまで使わないんですよ。 これを裏づける研究もあります。同じ島田先生たちが2018年に行った試験では、運動習慣のなかった65歳以上の106人を、24週間のゴルフ教室と健康講座のグループにくじ引きで分けました。その結果、ゴルフ教室のグループでは、単語を覚える力が6.8%、お話を覚える力が11.2% 高くなったと報告されています。 こちらは「くじ引きで分けて比べた試験」なので、ゴルフの側に原因があると言いやすい研究です。 ③ 人と交わる そしてもう一つ。ゴルフは、4時間前後を、だれかと一緒に過ごす遊びです。 ...

August 11, 2026 · 2 分
紅葉の川沿いの小道を、年配の夫婦が並んでゆっくり歩いているイラスト

パーキンソン病でも、よく動く人ほど頭の衰えがゆっくり? 〜大事なのは「激しさ」より「時間」と「いま」〜

「パーキンソン病と言われてから、外に出るのがおっくうになった」。 そう感じている方も、いらっしゃるかもしれません。パーキンソン病というと、手のふるえや動きにくさが思い浮かびますが、物忘れや、考える力の衰えが心配になる方も少なくありません。 2026年10月、パーキンソン病の人でも、よく体を動かしている人ほど、考える力の衰えがゆっくりだったという研究が発表されました。 ✅ アメリカで、軽い〜中くらいのパーキンソン病の人294人を追った研究で、体をよく動かしている人ほど、考える力の衰えも、体の動きにくさの進み方も、ゆっくりでした ✅ 大事だったのは、運動の激しさより、動いている時間の長さ。そして、若いころよりいま動いているかでした ✅ ただし「関係が見られた」という研究で、運動のおかげで進行が遅くなったとまでは言えません 目次 パーキンソン病と「考える力」 よく動く人ほど、衰えがゆっくり 激しさより「時間」、昔より「いま」 気をつけて読みたいところ いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 パーキンソン病と「考える力」 パーキンソン病は、脳の中でドーパミン(体の動きをなめらかにする物質)を作る細胞が、少しずつ減っていく病気です。 手足のふるえ、動きがゆっくりになる、歩幅が小さくなる、といった体の症状がよく知られています。そのほかに、病気が進むにつれて、物忘れや、段取りを考える力が衰えてくる人もいます。 あなた 体の病気だと思っていました。頭のほうにも関係があるんですね。 Torapon そうなんです。だからこそ、体と頭の両方を、どう守っていくかが大事になります。今回の研究は、その両方を一緒に追いかけたものです。 よく動く人ほど、衰えがゆっくり 研究は、アメリカ・シンシナティ大学のチームによるもので、学術誌『Neurology』に2026年10月に発表されました。 対象:軽い〜中くらいのパーキンソン病の人294人(平均66歳・女性は3人に1人) 2019年から2025年にかけて参加した人を、頭の働きは最長5年、体の動きは最長7年追いかけました 運動は、聞き取りで「どんな活動を、週に何時間しているか」を調べました 頭の働きは、30点満点のテスト(MoCA=言葉や図形、計算などで、考える力を測る検査)で、毎年測りました 運動している時間の合計で、少ない組・中くらいの組・多い組の3つに分けて比べています。発表元の説明では、少ない組は週4時間まで、中くらいの組は週4〜8時間、多い組は週8時間を超える人たちです。 結果は、次のとおりでした。 運動している時間 頭のテストの点数の変化(1年あたり) 少ない組(週4時間まで) 約0.5点ずつ下がった 中くらいの組(週4〜8時間) 約0.1点ずつ下がった 多い組(週8時間を超える) ほとんど変わらなかった ※研究チームが計算で出した、それぞれの組の平均的な変化です。 年齢や性別、病気になってからの年数などをそろえて比べても、多い組は少ない組にくらべて、頭の働きの衰えがゆっくりでした。 手足の動かしにくさ(医師が診察して点数をつける検査)も、多い組のほうが、悪くなり方がゆっくりでした。ただし、こちらの差は、偶然とは言いにくい、ぎりぎりのところでした。 あなた 1年で0.5点……。それって、大きな差なんでしょうか? Torapon 1年だけ見ると、小さな差です。研究チームも「差は小さい」と認めています。ただ、パーキンソン病は長く付き合っていく病気です。小さな差でも、年月が重なると意味が出てくるかもしれない、というのが研究チームの見方です。 激しさより「時間」、昔より「いま」 この研究では、もう2つ、おもしろいことが分かりました。 ① 大事なのは、激しさより「時間」 ジョギングのような激しい運動をしている人も、良い結果でした。ところが、動いている時間の合計をそろえて比べると、激しさによる差は見られなくなりました。 つまり、激しい運動でなくても、動いている時間が長いことのほうが、関係が強かったのです。 では、激しくない運動とは、どんなものでしょう。発表元の説明では、ジョギングほどきつくない「ほどほどの強さの運動」として、次のようなものが挙げられています。 早歩き ダブルスのテニス 軽い水泳 家事 ② 昔より「いま」 参加者には、この10年間にどれくらい運動してきたかも聞いています。その分を差し引いても、最近の運動の量が、その後の衰えと関係していました。 あなた 若いころは運動していなかったんですけど、今からでも遅くないですか? Torapon この研究では、昔どうだったかより、いま続けているかのほうが大事そうだ、という結果でした。研究チームも「どれだけ長く動き続けるかが、カギかもしれない」と話しています。 気をつけて読みたいところ 希望のある結果ですが、次の点は心にとめておいてください。 くじ引きで「運動する組」「しない組」に分けた研究ではありません。もともと病気の進みがゆっくりな人ほど、たくさん動ける、という面も考えられます 運動の時間は本人の申告です。実際より多め・少なめに答えた人もいるかもしれません 参加者は、はじめの時点で頭の働きが比較的よい人が多く、研究チームも「結果の受け止め方には注意が必要」としています 体を動かすと脳が変わっていく仕組みは、こちらでも紹介しています。 👉 脳は、いくつになっても変われる 〜リハビリでわかった『脳の可塑性』のお話〜 ...

October 29, 2026 · 1 分
朝の川沿いを歩くシニア男性のイラスト

運動した筋肉が、脳に「部品」を届けていた 〜血小板が運ぶミトコンドリアの話〜

「運動は脳にいい」――もう耳にタコができるほど聞いた言葉かもしれません。 でも、こう思ったことはありませんか。 「足を動かしているのに、どうして頭によいのだろう?」 血のめぐりがよくなるから。気分が晴れるから。よく言われる説明ですが、どこか腑に落ちない感じが残ります。筋肉と脳は、離れた場所にあるのに。 その「離れた場所」を、実はモノがやりとりされていた――そんな研究が、2026年1月に順天堂大学から発表されました。 運動でつくられたある「部品」が、血のなかを流れて、脳まで運ばれていた というのです。 ✅ 運動をすると、筋肉のなかで ミトコンドリア(細胞のエネルギー工場) が増えます ✅ 増えたミトコンドリアは血液中に放り出され、血小板(けっしょうばん) がそれを拾い上げます ✅ 血小板は 血のめぐりが悪くなった場所に集まる性質 があるため、結果的にミトコンドリアが 脳の弱った部分へ届けられて いました ⚠️ 先にお伝えしておきます。 これは マウス(ねずみ)の実験 で分かったことです。人間でも同じことが起きているかは、これから確かめる段階です。この記事では、そこを正直に書きます。 目次 そもそもミトコンドリアって何? 順天堂大学が見つけた「運び屋」 なぜ血小板だったのか ここは正直に ― まだマウスの話です 「にぎる力」の話とつながっている いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 そもそもミトコンドリアって何? 学校で聞いたことがある、という方も多いと思います。少しだけおさらいさせてください。 ミトコンドリアは、細胞のなかにある「発電所」 です。私たちが食べたものと吸った酸素から、体を動かすためのエネルギーをつくり出しています。 大事なのは、この発電所の数は、生まれつき決まっているわけではない ということです。 運動をすると、筋肉のなかのミトコンドリアは増えます。 これは以前から分かっていたことで、「持久力がついた」という状態の正体のひとつが、これです。 そして脳もまた、体のなかでとくに電気を食う臓器 です。重さでは体の2%ほどしかないのに、エネルギーの2割前後を使っています。脳にとって、発電所の元気さは死活問題なのです。 あなた 運動すると筋肉の発電所が増える、というのは分かります。でも、それが脳とどう関係するのでしょう? Torapon そこが、今回の研究のいちばん面白いところなんです。筋肉で増えた発電所が、筋肉のなかにとどまらなかった ――そういうお話です。 順天堂大学が見つけた「運び屋」 研究をしたのは、順天堂大学の稲葉俊東先生、宮元伸和先生、服部信孝先生らのグループです。成果は2026年1月15日、医学誌 『MedComm』 のオンライン版に発表されました。 研究チームがマウスで確かめたのは、こういう流れでした。 ① 運動する → 筋肉のミトコンドリアが増える まず、これは想定どおりです。 ② 増えたミトコンドリアが、血液のなかに出ていく ここが意外なところです。筋肉のなかにしまわれたままではなく、一部が血液中に放り出されて いました。 ③ 血小板が、それを拾い上げる 血液のなかを流れているミトコンドリアを、血小板が取り込んで いたのです。 ...

August 18, 2026 · 1 分
和やかに食卓を囲むシニア夫婦のイラスト

認知症予防は「食卓」から 〜MCIからの回復にも効く食事の整え方〜

「最近、何を食べたか思い出せない」「同じおかずばかりになっている気がする」―― 食卓を見ながら、ふとそんな小さな不安を感じることはありませんか? 実は、毎日の食事が、何十年もかけて少しずつ脳の健康をつくっていることが、近年の研究でだんだんはっきりしてきました。 そして、もし軽い物忘れ=**MCI(軽度認知障害)**の段階であれば、適切な対策で 健常な状態へ戻る可能性がある ことも分かっています。 ✅ 「これさえ食べれば治る」魔法の食品はありません。基本は 多様な食品をバランスよく ✅ 主食・主菜・副菜を、1日2食以上そろえることが質のよい食事の目安 ✅ 年代で食事のギアチェンジを:中年期はメタボ対策、高齢期はフレイル(虚弱)対策 今日は、認知症予防やMCIからの回復を支える「食事の整え方」を、できるだけやさしくまとめてみます。 目次 そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う 減塩・血糖・お酒の付き合い方 「共食」と五感の刺激 〜心と脳を元気に〜 私自身が実践していること(体験談) いま、私たちにできること おわりに そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 「食事で本当に脳が変わるの?」と思われるかもしれません。 これについて、近年こんなことが分かってきました。 いろいろな種類の食品を食べている人ほど、認知機能の低下が抑えられている 野菜・果物・魚を豊富に含む食事(地中海食や、それを応用した MIND食 と呼ばれるもの)は、抗酸化・抗炎症のはたらきによって認知症予防に役立つと考えられている 高血圧・糖尿病・高LDLコレステロールなど 血管の病気 は、認知症のリスクを高めることが分かっている。だから「血管の健康を保つ食事」が、そのまま「脳を守る食事」になる つまり食事は、ある日突然脳に効く特効薬ではなく、毎日少しずつ、脳に栄養を貯金していくようなものなのです。 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 「何を食べたらいいの?」と聞かれたら、私はまず 3つの皿をそろえること をおすすめしています。 主食(しゅしょく) ごはん、パン、麺類など エネルギー源 になります 主菜(しゅさい) 魚、肉、卵、大豆製品(豆腐・納豆など) 筋肉や脳の材料となるたんぱく質 が豊富 副菜(ふくさい) 野菜、きのこ、海藻、サラダ、煮物 ビタミン・ミネラル・食物繊維 で、脳の酸化ストレスを和らげます そこに、果物・ナッツ・乳製品を少しプラスできれば、栄養バランスはほぼ整います。 1日2食以上、主食・主菜・副菜がそろっているか―― これを意識するだけで栄養バランスは完璧です。 朝・昼・夜の小さな工夫 朝食:手間をかけずに ゆで卵 や 納豆 で主菜を確保。ヨーグルト で乳製品もプラス 昼食・夕食:魚(鯖・イワシ・サンマなど) を週に2〜3回。緑黄色野菜 を2種類以上 おやつ:菓子パンやスナックの代わりに ナッツ・果物・チーズ を選ぶ 「全部きちんと」と思うと続きません。1日1回からでOK。私もそうしています。 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う ...

May 9, 2026 · 2 分
健康診断の結果を見て笑顔の男性

コレステロールが気になる方へ。今日から始められる『3つの習慣』

「健康診断でコレステロールが高いと言われた…」 「数値を下げたいけど、何から始めればいいの?」 そんな方のために、今日からできる『3つの簡単な習慣』 をお伝えします。 理学療法士として30年、たくさんの方の健康と向き合ってきましたが、結論はとてもシンプルです。 結論:『青魚』『野菜』『ウォーキング』の3つだけでOKです! 難しいことはありません。一つずつ、無理なく始めていきましょう。 そもそもコレステロールって何? コレステロールには 「善玉(HDL)」 と 「悪玉(LDL)」 の2種類があります。 種類 異常なしの値 善玉(HDL) 40 以上(mg/dL) 悪玉(LDL) 60〜119(mg/dL) ※ 2024年4月改定版・日本人間ドック・予防医療学会の基準値 善玉と悪玉、なにが違うの? ざっくり言うとこんな違いです。 善玉:血管にこびりついた余分なコレステロールを掃除してくれる 悪玉:多すぎると血管にたまり、血液をどろどろにする ただし、悪玉といっても コレステロール自体は体に必要なもの。細胞の大切な材料です。少なすぎても問題なんですね。 ちょうど良いバランスが大事、ということです。 「LH比」もチェックしてみてください 最近は LH比(悪玉 ÷ 善玉) という比率が注目されています。 LH比 状態 1.5 未満 血管きれい 1.5 以上 コレステロール、たまり始め 2.0 以上 動脈硬化が心配 2.5 以上 血栓のリスクあり 各値が「異常なし」の範囲でも、LH比が高いと注意が必要です。 健康診断の結果を見ながら、ぜひご自分でも計算してみてください。 高いとどうなるの?気になる3つのリスク 悪玉コレステロールが多すぎると、血管の内側にプラーク(脂のかたまり)がたまっていきます。 そのまま放っておくと… 動脈硬化(血管が硬くなる) 心筋梗塞(心臓の血管が詰まる) 脳梗塞(脳の血管が詰まる) どれも避けたいことばかりですよね。だからこそ、早めの対策が大切なんです。 食事で気をつけたい3つのこと ① 青魚を週に2〜3回、食卓へ サバ・イワシ・サンマなどの青魚には、EPA・DHA という成分がたっぷり含まれています。 これがコレステロールや中性脂肪を減らし、血液をサラサラにしてくれるんです。 毎日でなくても、週に2〜3回 を目安にしてみてください。 💡 ポイント:サバ缶もおすすめです。手軽で、味噌煮や水煮など種類も豊富。買い置きしておくと便利ですよ。 ...

November 2, 2021 · 1 分
夜の台所で、ごはんとみそ汁をのせたお盆を手に、壁の時計を見上げている高齢の男性のイラスト

夕食が遅い人は、認知症が多いのでしょうか 〜日本の28万人を追いかけた調査から〜

「気がつくと、夕食が夜の9時を回っている」 「朝はあまりお腹がすかないので、コーヒーだけで済ませてしまう」 どちらも、めずらしい話ではないと思います。私自身、仕事から帰るのが遅くなった日は、そうなりがちです。 その「食べる時間」について、2026年7月、日本から大きな調査の報告が出ました。健康診断を受けた65歳以上の28万人を、その後も追いかけた ものです。 先にお伝えしておきます。この記事は「時間を守れば認知症を防げます」という話ではありません。 むしろ研究をよく読むと、そう単純ではないことが分かります。ただ、知っておくと役に立つ内容ではありました。 ✅ 九州大学のグループが、日本の65歳以上 283,166人 を追いかけました。そのあいだに新たに認知症と診断されたのは 18,056人 です ✅ 寝る2時間以内に夕食をとる日が週3回以上ある人 は、そうでない人と比べて、新たに認知症と診断された人が 1.17倍 でした。朝食を抜く日が週3回以上ある人 は、そうでない人と比べて 1.13倍 です ✅ ただしこれは 観察した研究 で、原因と結果は分かりません。「認知症になりかけていたから、食事の時間が乱れた」という逆の順番 も、じゅうぶんに考えられます 食事の中身については、こちらでまとめています。 👉 認知症予防は「食卓」から 〜MCIからの回復にも効く食事の整え方〜 目次 どんな調査だったのか 分かったことは2つ 数字の読み方をここでまとめます いちばん疑わしいのは「順番が逆」という可能性 正直に書いておきたいこの研究の弱いところ それでも生活リズムには意味があると思う理由 理学療法士として現場で思うこと いま私たちにできること おわりに 参考にした情報 どんな調査だったのか 報告したのは、九州大学の川口健悟先生 たちのグループです。2026年7月28日、『GeroScience』 という老化の研究をあつかう医学雑誌のオンライン版に発表されました。 LIFE研究という、大きな調査の一部です。使われたのは、日本の19の自治体 に残っている、健康診断・医療保険・介護保険の記録です(どなたの記録か分からないように処理したものを使っています)。 対象になった方 … 65歳以上の283,166人 平均年齢 … 72.8歳 女性の割合 … 58.5% 調査に加わった時期 … 2016年4月から2021年3月のあいだに健康診断を受けた方 その後、新たに認知症と診断された方 … 18,056人 28万人という人数は、日本の研究としてはかなり大きなものです。しかも、あとから昔を思い出して答えてもらう形ではなく、健康診断のときに先に食事の時間を聞いておいて、そのあとどうなったかを追いかける やり方(前向きコホート研究=はじめに集団を分けておいて、その後を追いかける調べ方)で行われています。 食べる時間については、健康診断の問診票 で、次の2つを「はい・いいえ」で答えてもらっています。 寝る2時間以内に夕食をとる日が、週3回以上あるか … あてはまる方は 36,609人 で、全体の12.9%です 朝食を抜く日が、週3回以上あるか … あてはまる方は 17,727人 で、全体の6.3%です あなた 28万人も調べたのなら、もうはっきりしたということですか? ...

September 13, 2026 · 2 分
朝の窓辺で、年配の夫婦がコーヒーカップを手に、ゆったりと過ごしているイラスト

コーヒーを飲む人は、認知症が少なかった? 〜13万人を最長43年追った研究から〜

「コーヒーは、体にいいの? 悪いの?」。 昔から、よく話題になるテーマです。脳についても、「良い」という研究と「はっきりしない」という研究があり、決着がついていませんでした。 2026年2月、アメリカの医学雑誌『JAMA』に、13万人あまりを最長43年追いかけた研究が発表されました。この研究のポイントは、カフェイン入りのコーヒーと、カフェインレスのコーヒーを分けて調べたことです。 ✅ アメリカの約13万2千人を最長43年追った研究で、カフェイン入りコーヒーをいちばん多く飲むグループは、いちばん少ないグループにくらべて、認知症になる危険が18%低いという関係が見られました ✅ お茶でも似た関係が見られました。一方、カフェインレスのコーヒーでは、関係は見られませんでした ✅ 関係がいちばんはっきりしていたのは、コーヒーなら1日2〜3杯、お茶なら1〜2杯ほど。ただし「関係が見られた」研究で、「飲めば防げる」と証明したものではありません 目次 どんな研究だったのか カフェイン入りを多く飲む人は、認知症が少なかった カフェインレスでは、関係が見られなかった 「たくさん飲むほど良い」わけではない いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 どんな研究だったのか 研究したのは、アメリカのハーバード大学などのチームです。使ったのは、長く続いている2つの健康調査でした。 女性の看護師 約8万7千人(1980年から2023年まで) 男性の医療職 約4万5千人(1986年から2023年まで) 合わせて13万1,821人です。はじめの時点で、がん・パーキンソン病・認知症のない人たちでした。始めたときの平均年齢は、女性が46歳、男性が54歳ほどで、まだ働き盛りの世代です。 参加者は、2〜4年ごとに、何をどれくらい食べたり飲んだりしているかのアンケートに答えてきました。追いかけた期間は最長43年、半分の人は37年ほど以上。その間に、1万1,033人が認知症と診断されています。 あなた 40年以上も! そんなに長く調べた研究なんですね。 Torapon そうなんです。認知症は、症状が出る何十年も前から、脳の変化が始まるといわれています。中年のころの習慣と、何十年も後の認知症を結びつけて見られるのが、この研究の強みです。 カフェイン入りを多く飲む人は、認知症が少なかった 研究チームは、カフェイン入りコーヒーを飲む量で、参加者を4つのグループに分けました。 そして、結果に影響しそうなほかの要因をできるだけ差し引いて比べると、 いちばん多く飲むグループは、いちばん少ないグループにくらべて、認知症になる危険が18%低かった 「最近、もの忘れが増えた」と自分で感じている人の割合も、いちばん多く飲むグループで7.8%、いちばん少ないグループで9.5%と、少なめでした 女性の看護師の調査では、電話で頭の働きを確かめるテストも行われています。こちらでも、いちばん多く飲むグループのほうが、点数が少し高めでした。 ただ、その差は41点満点で0.11点ほど。とても小さな差です。いくつかのテストを合わせた成績では、偶然でも起こりうる程度の差にとどまりました。研究チーム自身も「わずかに良い(modestly better)」という言い方をしています。 お茶でも、似た関係が見られました。なお、要旨からは、お茶の種類(紅茶・緑茶など)の内訳は分かりません。 カフェインレスでは、関係が見られなかった この研究でいちばん目を引くのが、ここです。 カフェインレスのコーヒーを多く飲む人では、認知症の少なさとも、頭の働きのテストとも、関係が見られませんでした。 研究チームによると、これまでの研究の多くは、カフェイン入りとカフェインレスを区別せずに「コーヒー」としてまとめて調べていました。結果がそろわなかった理由のひとつは、そこにあったのかもしれません。今回は2つを分けて見たことで、「同じコーヒーでも、カフェイン入りのほうにだけ関係があった」ことが見えてきました。 あなた ということは、カフェインが脳に良いということですか? Torapon そう考えたくなりますよね。ただ、この研究は飲む量を割り振って比べたものではなく、ふだんの習慣を調べたものです。カフェインそのものが効いているのか、カフェイン入りを飲む人の暮らし方に何か違いがあるのかは、この研究だけでは分かりません。「カフェイン入りのほうに関係があった」と受け止めておくのが正確です。 「たくさん飲むほど良い」わけではない 量と認知症の関係を細かく見ると、まっすぐな関係ではありませんでした。 関係がいちばんはっきりしていたのは、 カフェイン入りコーヒーなら、1日2〜3杯ほど お茶なら、1日1〜2杯ほど 研究チームのまとめも「ほどほどの量で、関係がいちばん強かった」というものです。 なお、要旨には「1杯」が何ミリリットルかは書かれていません。また、砂糖やミルクの量、飲む時間帯について調べたかどうかも、要旨からは分かりません。 あなた じゃあ、今日から1日3杯にしようかな。 Torapon すでにコーヒーが好きな方は、「ほどほどに楽しんでいれば十分」と受け取ってください。飲めない方、苦手な方が、無理に飲み始める必要はありません。この研究は、そこまでは示していません。 いま、私たちにできること ☑ 好きな人は、ほどほどに楽しむ……研究で関係がいちばんはっきりしていたのは、1日2〜3杯ほど。増やすほど良い、という結果ではありませんでした ☑ 砂糖やミルクは控えめに……この研究で調べたことではありませんが、甘い飲み物を何杯も、となると、ほかの面が心配になります ☑ 夕方以降は控えめに……カフェインで眠りが浅くなると、元も子もありません。睡眠と脳の関係は、こちらで紹介しています。 👉 「何時間寝たか」より「毎日同じ時刻か」? ☑ 合わない人は、無理に飲まなくてよい……胃が荒れる、動悸がする、眠れなくなる方、心臓の病気や妊娠中などでカフェインを控えるよう言われている方は、主治医の指示を優先してください 🔎 家でゆっくり、コーヒーを淹れたい方へ 豆を挽いて、ゆっくり淹れる時間そのものが、ひと息つく習慣になります。今回の研究で関係が見られたのはカフェイン入りのコーヒーでした。 ...

October 23, 2026 · 1 分