朝の窓辺で、年配の夫婦がコーヒーカップを手に、ゆったりと過ごしているイラスト

コーヒーを飲む人は、認知症が少なかった? 〜13万人を最長43年追った研究から〜

「コーヒーは、体にいいの? 悪いの?」。 昔から、よく話題になるテーマです。脳についても、「良い」という研究と「はっきりしない」という研究があり、決着がついていませんでした。 2026年2月、アメリカの医学雑誌『JAMA』に、13万人あまりを最長43年追いかけた研究が発表されました。この研究のポイントは、カフェイン入りのコーヒーと、カフェインレスのコーヒーを分けて調べたことです。 ✅ アメリカの約13万2千人を最長43年追った研究で、カフェイン入りコーヒーをいちばん多く飲むグループは、いちばん少ないグループにくらべて、認知症になる危険が18%低いという関係が見られました ✅ お茶でも似た関係が見られました。一方、カフェインレスのコーヒーでは、関係は見られませんでした ✅ 関係がいちばんはっきりしていたのは、コーヒーなら1日2〜3杯、お茶なら1〜2杯ほど。ただし「関係が見られた」研究で、「飲めば防げる」と証明したものではありません 目次 どんな研究だったのか カフェイン入りを多く飲む人は、認知症が少なかった カフェインレスでは、関係が見られなかった 「たくさん飲むほど良い」わけではない いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 どんな研究だったのか 研究したのは、アメリカのハーバード大学などのチームです。使ったのは、長く続いている2つの健康調査でした。 女性の看護師 約8万7千人(1980年から2023年まで) 男性の医療職 約4万5千人(1986年から2023年まで) 合わせて13万1,821人です。はじめの時点で、がん・パーキンソン病・認知症のない人たちでした。始めたときの平均年齢は、女性が46歳、男性が54歳ほどで、まだ働き盛りの世代です。 参加者は、2〜4年ごとに、何をどれくらい食べたり飲んだりしているかのアンケートに答えてきました。追いかけた期間は最長43年、半分の人は37年ほど以上。その間に、1万1,033人が認知症と診断されています。 あなた 40年以上も! そんなに長く調べた研究なんですね。 Torapon そうなんです。認知症は、症状が出る何十年も前から、脳の変化が始まるといわれています。中年のころの習慣と、何十年も後の認知症を結びつけて見られるのが、この研究の強みです。 カフェイン入りを多く飲む人は、認知症が少なかった 研究チームは、カフェイン入りコーヒーを飲む量で、参加者を4つのグループに分けました。 そして、結果に影響しそうなほかの要因をできるだけ差し引いて比べると、 いちばん多く飲むグループは、いちばん少ないグループにくらべて、認知症になる危険が18%低かった 「最近、もの忘れが増えた」と自分で感じている人の割合も、いちばん多く飲むグループで7.8%、いちばん少ないグループで9.5%と、少なめでした 女性の看護師の調査では、電話で頭の働きを確かめるテストも行われています。こちらでも、いちばん多く飲むグループのほうが、点数が少し高めでした。 ただ、その差は41点満点で0.11点ほど。とても小さな差です。いくつかのテストを合わせた成績では、偶然でも起こりうる程度の差にとどまりました。研究チーム自身も「わずかに良い(modestly better)」という言い方をしています。 お茶でも、似た関係が見られました。なお、要旨からは、お茶の種類(紅茶・緑茶など)の内訳は分かりません。 カフェインレスでは、関係が見られなかった この研究でいちばん目を引くのが、ここです。 カフェインレスのコーヒーを多く飲む人では、認知症の少なさとも、頭の働きのテストとも、関係が見られませんでした。 研究チームによると、これまでの研究の多くは、カフェイン入りとカフェインレスを区別せずに「コーヒー」としてまとめて調べていました。結果がそろわなかった理由のひとつは、そこにあったのかもしれません。今回は2つを分けて見たことで、「同じコーヒーでも、カフェイン入りのほうにだけ関係があった」ことが見えてきました。 あなた ということは、カフェインが脳に良いということですか? Torapon そう考えたくなりますよね。ただ、この研究は飲む量を割り振って比べたものではなく、ふだんの習慣を調べたものです。カフェインそのものが効いているのか、カフェイン入りを飲む人の暮らし方に何か違いがあるのかは、この研究だけでは分かりません。「カフェイン入りのほうに関係があった」と受け止めておくのが正確です。 「たくさん飲むほど良い」わけではない 量と認知症の関係を細かく見ると、まっすぐな関係ではありませんでした。 関係がいちばんはっきりしていたのは、 カフェイン入りコーヒーなら、1日2〜3杯ほど お茶なら、1日1〜2杯ほど 研究チームのまとめも「ほどほどの量で、関係がいちばん強かった」というものです。 なお、要旨には「1杯」が何ミリリットルかは書かれていません。また、砂糖やミルクの量、飲む時間帯について調べたかどうかも、要旨からは分かりません。 あなた じゃあ、今日から1日3杯にしようかな。 Torapon すでにコーヒーが好きな方は、「ほどほどに楽しんでいれば十分」と受け取ってください。飲めない方、苦手な方が、無理に飲み始める必要はありません。この研究は、そこまでは示していません。 いま、私たちにできること ☑ 好きな人は、ほどほどに楽しむ……研究で関係がいちばんはっきりしていたのは、1日2〜3杯ほど。増やすほど良い、という結果ではありませんでした ☑ 砂糖やミルクは控えめに……この研究で調べたことではありませんが、甘い飲み物を何杯も、となると、ほかの面が心配になります ☑ 夕方以降は控えめに……カフェインで眠りが浅くなると、元も子もありません。睡眠と脳の関係は、こちらで紹介しています。 👉 「何時間寝たか」より「毎日同じ時刻か」? ☑ 合わない人は、無理に飲まなくてよい……胃が荒れる、動悸がする、眠れなくなる方、心臓の病気や妊娠中などでカフェインを控えるよう言われている方は、主治医の指示を優先してください 🔎 家でゆっくり、コーヒーを淹れたい方へ 豆を挽いて、ゆっくり淹れる時間そのものが、ひと息つく習慣になります。今回の研究で関係が見られたのはカフェイン入りのコーヒーでした。 ...

October 23, 2026 · 1 分
朝のやわらかな光のなかで、湯気のたつお茶のあるテーブルのイラスト

今日から始める『脳が喜ぶ眠り方』 〜睡眠の質を上げる実践のヒント〜

ここまで2回にわたって、睡眠と脳の関係を見てきました。 第1回:ぐっすり眠ると、脳が掃除される?〜眠りと脳のふしぎな関係〜 第2回: 眠っている間、脳は何をしているの?〜記憶と感情の整理整頓〜 「脳って、寝ている間にこんなに頑張ってくれているんだ」と、少しだけ眠る時間が愛おしくなった方もいらっしゃるかもしれません。 最終回の今回は、その大切な時間をもっと味方につけるための、実践のお話です。 むずかしい道具やお金は一切いりません。今夜から始められるものばかりです。 この記事のポイント ✅ 「何時間寝るか」と「いつ寝るか」が、脳の修復力を大きく左右します ✅ お酒・カフェイン・スマホは、知らずに眠りの質を下げています ✅ 血圧・血糖値の管理は、脳の “そうじ機能” を守ることにつながります 目次 まずは「7〜9時間ルール」 寝る時間・起きる時間を一定に お酒とカフェインの落とし穴 寝室の “三拍子”——涼しく・暗く・静かに 血管の健康が、脳の眠りを守る まとめ まずは「7〜9時間ルール」 研究の世界では、成人の理想的な睡眠時間はおおむね7〜9時間とされています。 この範囲を外れた場合、脳の老化の指標である「白質高信号(はくしつこうしんごう)」が増えやすいことが、4万人規模の脳画像研究で示されました。 「6時間で十分だ」と長く感じていた方も、1日30分早く布団に入ることから始めてみませんか。 特に朝方のレム睡眠は、感情を整える大切な時間です。 睡眠時間を削ると、ここがいちばん最初に失われてしまいます。 「忙しい日ほど早く寝る」——これが、本当の意味での “脳の節約術” かもしれません。 寝る時間・起きる時間を一定に 「休みの日くらいは、ゆっくり寝かせて」——わかります。 でも、毎日の就寝・起床時刻が2時間以上ずれると、体内時計が混乱して、深い眠りに入りづらくなることが分かっています。 特に起床時刻のばらつきは、体内時計の調整に大きく影響します。 休日も、平日との差は1時間以内におさえると、脳のリズムが整いやすくなります。 朝、起きたらカーテンを開けて自然光を浴びるだけでも、体内時計のスイッチが入ります。 散歩や朝ごはんもセットにできれば、なお良し。 「寝つきが悪い」とお困りの方も、まずは朝の光から見直してみてください。 夜の眠りは、朝の習慣に支えられています。 お酒とカフェインの落とし穴 「寝つきが悪いから、寝る前にちょっとだけ」—— お酒のお話、耳が痛い方もいらっしゃるかもしれません。 実はアルコールは、レム睡眠を強く抑え込みます。 たしかに寝つきは良くなったように感じますが、感情の整理を担う"一晩のセラピー"の時間が削られてしまうのです。 ストレスを感じた日ほど、寝酒は逆効果になりやすいことが知られています。 カフェインも要注意です。コーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンク—— 午後3時以降の摂取は、その夜の眠りに影響が出る可能性があります。 カフェインは体内に半日ほど残ることもあるので、夕方以降はノンカフェインのお飲み物に切り替えてみてください。 寝酒がなぜよくないのか、もう少し詳しいお話は前回の記事でも触れています。 👉 眠っている間、脳は何をしているの?〜記憶と感情の整理整頓〜 寝室の “三拍子”——涼しく・暗く・静かに ぐっすり眠るためには、寝室の環境がかなり大事です。 ポイントは3つ。 1. やや涼しく——深い睡眠に入るとき、体は中心の温度をすこし下げる必要があります。室温は18〜22℃を目安に。 2. 暗く——わずかな光でも、深い眠りを妨げると言われています。豆電球は消すか、なるべく暗いものに。 3. 静かに——耳栓やホワイトノイズで、突発的な音をやわらげるのも有効です。 そしてもうひとつ、寝る30分前のスマホ・テレビ・パソコン。 これらの強い光と情報量は、脳を「まだ起きていてね」と勘違いさせてしまいます。 代わりに、読書・ストレッチ・温かい飲み物など、ゆったりした習慣を取り入れてみてください。 「眠る準備」を整える時間そのものが、脳のスイッチを少しずつオフにしてくれます。 血管の健康が、脳の眠りを守る 第1回でお話ししたグリンパティック・システム(脳の掃除機能)は、血管のしなやかさに支えられています。 動脈がやさしく拍動することで、脳脊髄液が押し出され、老廃物が流れていく仕組みでしたね。 ...

May 17, 2026 · 1 分