体が弱ってきたら、頭も? 〜「フレイル」の変化と、認知機能の研究から〜
「最近、ペットボトルのふたが開けにくい」「歩くのが、前より遅くなった気がする」。 ご自分のことでも、離れて暮らす親のことでも、そんな小さな変化に気づいたことはありませんか。 こうした体の弱りは「フレイル(虚弱)」と呼ばれます。そして最近、体が弱っていく人は、頭の働きも落ちやすいことを示す研究が、いくつか出てきました。 今回は、「悪くなったとき」と「戻ったとき」に注目した研究を3つ、短くご紹介します。 ✅ 元気な状態からフレイルの側へ悪化した人は、元気なままの人にくらべて、頭の働きの落ち方が少し速いという結果でした ✅ 一方、フレイルの手前から元気に戻った人は、手前のままの人にくらべて、認知症になった人が約4割少なかったという研究もあります ✅ ただし、体を鍛えるだけで頭も守れる、とまでは言えません。くじ引きで調べた試験では、運動に「頭を使う」「食べる」を組み合わせたほうがよさそうでした 目次 そもそも「フレイル」とは? 悪化すると、頭の衰えも少し速い 手前から戻った人は、認知症が少なかった 運動だけで、頭も守れるの? 現場で感じていること いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 そもそも「フレイル」とは? フレイルとは、元気な状態と、介護が必要な状態の「あいだ」のことです。日本語では「虚弱」と訳されます。 日本では、次の5つのうち、3つ以上当てはまるとフレイル、1〜2つならフレイルの手前(プレフレイル)と考えます(日本版CHS基準・2020年改定)。 チェック項目 目安 体重が減った 6か月で2kg以上、意図せずに減った 握力が弱い 男性28kg未満、女性18kg未満 疲れやすい ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする 歩くのが遅い 1秒に1m未満(横断歩道を青のうちに渡りきれないくらい) 体を動かしていない 軽い運動・体操も、定期的な運動・スポーツも、週1回もしていない あなた いくつか当てはまるかも……。もう手遅れでしょうか? Torapon いいえ。フレイルのいちばん大事な特徴は、「戻れることがある」ところなんです。だからこそ、早めに気づくことに意味があります。 悪化すると、頭の衰えも少し速い 2026年9月に、中国・イギリス・アメリカの約2万人を合わせて調べた研究が発表されました(学術誌『Alzheimer’s & Dementia』)。 フレイルの状態を2年あけて2回測り、その後数年間、頭の働き(記憶・今日の日付などの見当識・段取りする力)を追いかけています。 はじめからフレイルやその手前だった人は、元気な人にくらべて、頭の働きが少しずつ速く落ちていました 元気な状態からフレイルの側へ悪化した人も、元気なままの人にくらべて、同じように少し速く落ちていました ただし、この研究には注意点が2つあります。 ここでの「フレイル」は、筋力ではなく、持病・症状・生活の不自由・気分の落ち込みなど、健康の問題がいくつ重なっているかで測ったものです フレイルが良くなった人で、頭の衰えがゆるやかになったかは、はっきりしませんでした。研究者自身も「フレイルを改善すれば頭が守られる、とは示していない」と書いています 手前から戻った人は、認知症が少なかった もうひとつ、体の弱りで測った研究があります(上の表のような項目で見る海外の物差しを、少し変えたものです)。2026年に発表された、60歳以上の約1万6千人を合わせて調べた研究です(学術誌『Journal of Advanced Research』)。 こちらも、フレイルの状態を2回測って、その「変化」と認知症の関係を見ています。 フレイルの変化 くらべた相手 認知症になった割合 元気 → 手前・フレイルに悪化 元気なままの人 約1.6倍 手前 → フレイルに悪化 手前のままの人 約1.9倍 手前 → 元気に戻った 手前のままの人 約0.6倍(約4割少ない) あなた 戻った人は、認知症が少なかったんですね! ...