縁側でくつろぐシニアご夫婦のイラスト

日本人の認知症、約4割は予防できる 〜カギは「難聴」と「運動不足」〜

「認知症は、年をとれば誰でもなるもの」「家系だから、私もきっと……」―― そんなふうに、半ばあきらめてしまっている方は、いらっしゃいませんか? 実は、世界的に権威のある医学誌『ランセット』の専門委員会が、こう報告しています。 「認知症のリスク要因の約45%は、生活習慣で管理・遅らせることができる」 そして 2026年1月、日本人を対象にした最新研究 が、その姉妹誌である 『The Lancet Regional Health – Western Pacific』 に掲載されました。 東海大学の和佐野浩一郎先生らによる研究で、結論はこうです。 「日本人でも、最大で約 38.9% の認知症は、理論上 予防できる」 そして、日本でとくに大きな影響を持つのが、「難聴」と「運動不足」 だったのです。 ✅ 14のリスク要因を合計すると、日本人でも 約4割 の認知症が予防可能と推計 ✅ 日本でとくに影響が大きい3因子は 難聴・身体不活動・高LDLコレステロール ✅ 早めの対策(聴覚ケア・運動・健診)で、年間 約20万人 の発症を抑えられる可能性 目次 そもそも「14のリスク因子」って? 日本人で大きい3つの因子 なぜ「難聴」が最大のカギ? 14因子を年代別に整理してみる いま、私たちにできること おわりに そもそも「14のリスク因子」って? あなた 認知症って、遺伝や年のせいでどうしようもない……と思っていました。本当に自分で減らせるものなんですか? Torapon いい質問ですね。もちろん年齢や体質も関係します。でも研究では、生活や環境を整えることで 減らせるリスク が14個も見つかっているんです。ひとつずつ見ていきましょう。 きっかけになったのは、世界の認知症研究をリードしている 「ランセット委員会」 が、2024年に発表した報告書です。 そこでは、認知症になるリスクを上げる要因のうち、「自分や社会の力で変えられるもの=修正可能なリスク因子」 が 14個 挙げられました。 ざっくりまとめると── 「生まれつきや遺伝で決まるものではなく、生活や環境を整えることで減らせるリスク」が、世界全体では認知症の 約45% を占めている。 これだけでも十分驚きの数字ですが、「日本ではどうなのか?」が気になるところです。 そこに答えを出してくれたのが、今回の和佐野先生らの研究です。 日本人で大きい3つの因子 あなた 1位が『難聴』なんですね。耳の聞こえが認知症と関係するなんて、ちょっと意外です……。 Torapon そう思いますよね。でも近年、耳の聞こえは脳への大切な入り口 として注目されているんです。この表の数字の意味も、あとでやさしく解説していきますね。 研究では、日本の国民健康・栄養調査や大規模調査のデータを使って、「日本人の中で、どの因子がどれくらい大きいか」 を計算しました。 ...

May 8, 2026 · 2 分
耳に手を当てて聞き返しているシニア男性のイラスト

補聴器は、いつから使えばいいの? 〜「38.75」という研究が示した目安〜

「えっ? もう一回言って」が、口ぐせになっていませんか。 テレビの音量を上げたら、家族に「大きい」と言われた。3人以上で話していると、話の流れがつかめない。ざわざわしたお店だと、相手の声だけ聞き取れない――。 そんなとき、多くの方がこう思われます。「年のせいだから、しかたない」 と。 でも、もしその「しかたない」が、あとから効いてくるのだとしたら。 前回の記事で、日本人の認知症のリスク要因のうち いちばん大きいのは「難聴」だった ことをご紹介しました。ではその先――「じゃあ、いつ補聴器を使えばいいの?」。この問いに、最近ようやく研究が答えを出しはじめています。 ✅ 慶應義塾大学の研究で、平均聴力が「38.75デシベル」を超えたあたり から、聞こえの悪さと認知機能の低下が結びつくことが分かりました ✅ ただし補聴器は 「つければ認知症を防げる」道具ではありません。効果がはっきり出たのは、持病や生活習慣の面で、もともと認知機能が下がりやすい状態にあった人たち でした ✅ 迷ったら、まず 耳鼻科(耳鼻咽喉科)で聴力検査。通販の「集音器」を自分で選ぶ前にです 難聴が「なぜ」リスクになるのか、全体像を先に知りたい方はこちらをどうぞ。 👉 日本人の認知症、約4割は予防できる 〜カギは「難聴」と「運動不足」〜 目次 なぜ「聞こえ」が脳に関わるの? 「38.75」という目安 ― 慶應大学の研究 補聴器をつけると、どうなるのか 「集音器」と「補聴器」は別のものです 値段と、賢い買い方 母のことを思い出しながら いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 なぜ「聞こえ」が脳に関わるの? 耳が遠くなると、脳には3つのことが起こると考えられています。 ① 脳に届く「音の情報」が減る 脳は使われることで元気を保ちます。入ってくる音が減れば、それだけ脳の出番が減ってしまいます。 ② 聞き取りに、脳が余計な力を使う 聞こえにくいと、脳は足りない音を推測して補おうとします。その分、覚えたり考えたりに回す力が削られます。会話のあとにどっと疲れるのは、このためです。 ③ 人と会うのが、おっくうになる これがいちばん大きいかもしれません。聞き返すのが申し訳なくて、集まりを断るようになる。難聴は、じわじわと人づきあいを減らしていきます。 あなた うちの主人がまさにそれです。最近、町内の集まりに行きたがらなくて……。 Torapon 実はとても多いんです。ご本人は「めんどうだから」とおっしゃるのですが、よく聞くと 「話が分からないから、いるのがつらい」 ということが少なくありません。性格の問題ではなく、耳の問題 だったりします。 38.75という目安 ― 慶應大学の研究 さて、本題です。 「耳が遠くなってきた」と感じても、どこからが「対策すべき段階」なのか。これまで、はっきりした目安がありませんでした。 そこに答えを出そうとしたのが、慶應義塾大学病院 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の研究チーム(西山崇経先生、大石直樹先生ら)です。研究成果は2025年2月、『nature』の姉妹誌である 『npj Aging』 に掲載されました。 どんな研究だったか 対象になったのは、慶應義塾大学病院に通院していた 55歳以上の難聴のある方117人。この方たちを、2つのグループに分けました。 グループ 人数 補聴器を使ったことがない方 55人 3年以上、補聴器を使っている方 62人 そのうえで、聞こえの程度と、認知機能の検査の成績を比べたのです。 ...

August 16, 2026 · 2 分
補聴器店で補聴器を調整してもらう高齢女性のイラスト

補聴器は、つけただけでは足りませんでした 〜6万人の調査が示した「聞こえるようになること」〜

「買ったんですけどね、あんまり使っていないんです」 補聴器の話をすると、驚くほどよく返ってくる言葉です。引き出しにしまったまま、という方に、私は何人もお会いしてきました。 前回の記事では「いつから使えばいいのか」を書きました。今回はその続きです。つけたあとの話をします。 前回の記事はこちらです。 👉 補聴器は、いつから使えばいいの? ✅ 33か国・6万人を超える調査で、補聴器を使っている方は認知症のリスクが9%低いという結果が出ました ✅ ただし内訳を見ると、「よく聞こえるようになった」と答えた方だけが14%低く、「あまり良くならなかった」方では差がありませんでした ✅ 大事なのは持っていることではなく、ちゃんと聞こえる状態にしておくこと。そのために、調整に通う必要があります 目次 6万人を超える調査でわかったこと 「持っている」と「聞こえている」は違う なぜ、つけただけでは足りないのか 調整に通う、ということ まだ聞こえている方へ 難聴は防げます 現場で見てきたこと いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 6万人を超える調査でわかったこと 2026年、香港大学のグループが大きな調査結果を発表しました。 33か国、7つの大規模調査のデータをまとめたもの 対象は55歳以上で、聞こえに問題のある61,089人 平均6.5年追いかけ、そのあいだに認知症が疑われた方は8,911人 結果、補聴器を使っている方は、使っていない方に比べて認知症のリスクが9%低いという関係が見られました。 ここまでは、これまでにも言われてきたことです。新しいのは、その先でした。 「持っている」と「聞こえている」は違う 研究チームは、使っている方をさらに2つに分けました。 認知症のリスク 「よく聞こえるようになった」と答えた方 14%低い 「あまり良くならなかった」と答えた方 差なし 同じ「補聴器を使っている人」でも、結果がまったく違いました。 研究をまとめた先生は、こう述べています。 大事なのは機器をつけているかどうかではなく、その機器が日常生活のなかで、聞こえを本当に良くしているかどうかである。 あなた つけていれば効く、というわけではないんですね……。 Torapon そうなんです。ここは、私にとってもハッとする結果でした。「補聴器を使いましょう」とお伝えするだけでは、足りなかったわけです。「聞こえるようになりましたか」まで確かめないと、意味が半分になってしまうのですね。 なぜ、つけただけでは足りないのか 補聴器は、めがねとは違います。買ったその日に、よく聞こえるようにはなりません。 理由は3つあります。 その人の聞こえ方に合わせる作業が要る……高い音が聞こえにくい方、低い音が聞こえにくい方。どの音をどれだけ大きくするかは、一人ひとり違います 脳が慣れるのに時間がかかる……久しぶりに音が戻ってくると、はじめは「うるさい」と感じます。多くの方が、ここでやめてしまいます 聞こえは変わっていく……年月とともに聞こえ方は変わります。去年合っていた設定が、今年も合うとはかぎりません だから、買ったあとに何度か通って、少しずつ合わせていく必要があるのです。 あなた はじめの「うるさい」は、我慢するしかないんですか? Torapon 我慢しなくて大丈夫です。むしろ、そのまま伝えてください。 「うるさい」は調整の大事な手がかりですから、遠慮すると合わせようがないんですね。ただ、少しずつ音に慣れていく期間はどうしても要ります。そこは「慣らしていく時期」と思っていただけたらと思います。 調整に通う、ということ 具体的には、こういうことです。 はじめの数か月は、何度か調整に通う 「うるさい」「言葉が聞き取りにくい」を、遠慮せず伝える。それが調整の材料になります 落ち着いたあとも、年に1度は聞こえの確認をする 電池や耳あかの詰まりでも、聞こえは落ちます。手入れの仕方も教わっておく あなた 何度も行くのは、正直めんどうです……。 Torapon よく分かります。ただ今回の結果からすると、この通う手間こそが効いているのだと思います。せっかくのものを引き出しにしまってしまうより、あと数回だけ足を運ぶ。そう考えていただけたらと思います。 まだ聞こえている方へ 難聴は防げます ここまでは「聞こえにくくなったあと」の話でした。もうひとつ、お伝えしたいことがあります。 ...

August 29, 2026 · 1 分