明るい部屋で、ピアノを楽しそうに弾く高齢の女性と、そばで見守る家族のイラスト

ピアノを60代から始めると、頭は元気になる? 〜未経験の人が1年習った研究〜

「楽器は、子どものころから習っていないと無理でしょう?」 そう思って、あきらめている方は多いかもしれません。 ドイツとスイスの研究チームが、楽器の経験がほとんどない62〜78歳の156人に、1年間ピアノを習ってもらう試験をおこないました。 ✅ ピアノを習った人は、音楽を聴いて学んだ人にくらべて、生活の質(心・体・まわりの環境)の満足度が上がりました ✅ 頭の切り替えは、ピアノ組も聴く組も伸びました。ピアノ組が上回ったのは1項目だけでした ✅ 4年後、連絡がついたピアノ組の約6割が、まだ弾いていました 目次 音楽をいつも聴く人は、認知症になりにくい? 未経験の人に、1年ピアノを習ってもらった この研究の弱いところ おわりに 参考にした情報 音楽をいつも聴く人は、認知症になりにくい? オーストラリアで、70歳以上の約1万900人を追いかけた研究があります。 音楽を「いつも」聴く人は、「聴かない・たまに・ときどき」の人とくらべて、認知症になる割合が39%低いという結果でした。 ただし、これは観察研究です。調整したのは年齢・性別・学歴だけで、運動や持病などの影響は取りきれていません。「聴けるくらい元気な人だった」可能性も残ります。 そこで知りたくなるのが、「実際に始めてもらったら、どうなるのか」です。 未経験の人に、1年ピアノを習ってもらった ドイツ・ハノーファーとスイス・ジュネーブで、62〜78歳の健康な156人(平均69.5歳)が参加しました。条件は、これまでの人生で楽器の経験が半年未満の人です。 くじ引きで2つの組に分けました。 ピアノ組(74人) … ピアノを習う 聴く組(82人) … 音楽を聴いて学ぶ(ジャンルや作曲家のお話など。弾いたり歌ったりはしません) どちらも週1回60分のレッスンを1年間、毎日の宿題つきです。ピアノ組の比べた相手は「何もしない人」ではなく、同じように講座に通う「聴く組」でした。両方の組が1年間、先生のいる講座に通ったので、「習い事に通うこと自体」の効果を取りのぞいて比べられています。 結果は次のとおりです。 生活の質 … ピアノ組のほうが、心の面・体の面・まわりの環境の面で上がりました。人づきあいの面は、組による違いはありませんでした 頭の切り替え … ピアノ組も聴く組も、いくつかの項目で伸びました。ピアノ組が上回ったのは、数字の切り替え課題の1項目だけでした 4年後 … 連絡がついたピアノ組のうち、約6割(32人)がまだ弾いていました あなた 楽器なんて、今さら始められるでしょうか……。 Torapon この研究の参加者は、ほとんどが楽器の初心者でした。それでも1年で、音の強弱や区切りをつけた演奏が、中くらいまで上達しています。年齢や、始める前の頭の調子は、上達の度合いと関係しませんでした。 あなた 弾かずに、聴くだけではだめですか? Torapon 頭の切り替えは、聴く組も伸びました。好きな曲をゆったり聴くのも、気軽な一歩です。ただ、「聴けば認知症を防げる」とまでは言えません。 この研究の弱いところ 測ったのは生活の質や頭の切り替えで、認知症になるかどうかは調べていません。期間も1年あまりです 参加者は、音楽に興味があって自分から応募した、健康な人です。そうでない人にも同じ結果が出るかは分かりません 途中で新型コロナの流行があり、レッスンがオンラインになった時期がありました つまり、「ピアノで認知症が防げる」という話ではありません。分かったのは、始める年齢が遅くても、楽しみながら続けられて、暮らしの満足度が上がる可能性があるということです。 趣味や人とのつながりと脳の関係は、こちらでもまとめています。 👉 今日から始める「脳の守り方」〜4本柱で続ける認知機能の予防〜 おわりに 「聴く」でも「弾く」でも、音楽のある時間は、暮らしを少し明るくしてくれそうです。 始めるなら、いきなり大きな楽器を買わなくても大丈夫です。まずは好きな曲を、毎日1曲聴くことからでも。弾いてみたくなったら、お店で鍵盤を触ってみるのもいいと思います。 PR 電子ピアノ(初心者向け) 置き場所をとらない電子ピアノは、初心者の入り口に向いています。大きさや鍵盤の重さが機種で違うので、できれば店頭で触って選ぶと安心です。 Amazonで見る 楽天で見る PR グランドピアノ いつかは本物のピアノを、という方に。かなり高価で、置き場所や防音も必要です。まずは弾いてみて、続けられそうだと思ってからで十分です。 Amazonで見る 楽天で見る 参考にした情報 Worschech F ほか「Quality of life in older adults is enhanced by piano practice: Results from a randomized controlled trial」Annals of the New York Academy of Sciences 2025年;1550(1):239-254 Mack M ほか「Effects of a 1-year piano intervention on cognitive flexibility in older adults」Psychology and Aging 2025年;40(2):218-235 Losch H ほか「Acquisition of musical skills and abilities in older adults—results of 12 months of music training」BMC Geriatrics 2024年;24:1018 Jaffa E ほか「What Is the Association Between Music-Related Leisure Activities and Dementia Risk? A Cohort Study」International Journal of Geriatric Psychiatry 2025年;40(10):e70163 ※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。持病のある方や、指先・肩・首などに痛みのある方は、無理のない練習のしかたをかかりつけ医にご相談ください。

October 5, 2026 · 1 分
ゴルフ場で仲間と一緒に体をほぐすシニアたちの水彩画

ゴルフを続けている人は、頭も元気? 〜4,575人の研究が教えてくれた「続けること」の意味〜

「そろそろ、ゴルフもやめどきかな」 「腰も痛いし、スコアも昔のようにはいかないし……」 そんなふうに、長く続けてきた趣味を手放すことを考えたことはありませんか。 2026年、国立長寿医療研究センターの島田裕之先生たちが、高齢者4,575人を対象にした研究を発表しました。テーマは、ゴルフと頭の元気との関係です。 理学療法士として現場に立っていると、趣味を手放した方から、少しずつ元気がなくなっていく——そんな場面に何度か出会うことがありました。今回の研究は、その実感に静かに重なるものでした。 ✅ 認知機能が下がっていた人の割合は、今もゴルフをしている人14.1%/やめた人20.1%/したことがない人21.6% でした ✅ 効いていそうなのは、歩く・頭を使う・人と交わる、この3つが同時にそろうこと です ✅ ただし 回数を増やす必要はありません 。関係していたのは「たくさん回ること」ではなく「続いていること」でした 目次 4,575人を、3つのグループに分けてみたら ゴルフの、何が効いているのでしょう ここは正直に——「だからゴルフをすれば安心」とは言えません では、ほかのスポーツや活動はどうなのでしょう 共通しているのは「3つ」と「続いていること」 私自身のこと いま私たちにできること おわりに 4,575人を、3つのグループに分けてみたら この研究では、高齢の方4,575人を、こんなふうに3つに分けて比べました。 今もゴルフをしている人 昔はしていたが、やめた人 ゴルフをしたことがない人 そして4種類の検査で、認知機能が下がっているかどうかを調べました。結果が、こちらです。 今も続けている人が14.1% 。やめた人が20.1%、したことがない人が21.6%でした。統計的にみても、続けている人は「したことがない人」よりはっきり低い、と報告されています。 さらに興味深いのは、次の2点です。 ゴルフ歴が長い人ほど、認知機能が下がっていない傾向がありました いっぽうで、年間のラウンド数や練習の量とは、はっきりした関係が見られませんでした あなた ゴルフをやめてしまった人は、もうダメということでしょうか……。 Torapon いいえ、そう読むのは早いです。実はこの研究、記憶に関しては「やめた人」にも良い関連がみられた と報告しています。それに、あとでお話ししますが、この数字には 逆向きの説明 も十分にあり得るんです。「頭が心配になってきたから、ゴルフをやめた」という順番ですね。 まとめると、この研究がいちばん強く示していたのは、こういうことになります。 月に何回も回っている人が良い成績だったのではありません。回数は少なくても、ゴルフをやめずに長く続けてきた人——そちらのほうに、良い結果が出ていたのです。 ゴルフの、何が効いているのでしょう では、ゴルフの何が頭に関わっているのでしょうか。研究チームは、ゴルフを「体・頭・人づきあい、いくつもの要求が重なる活動」だととらえています。 ① 歩く 18ホールを回れば、カートを使っても、けっこうな距離を歩きます。歩いて回れば8〜10km、1万歩を超えることも珍しくありません。しかも平らではありません。上り下り、傾いた足場、ラフの中。ただの散歩より、体の使い方はずっと複雑です。 ② 頭を使う ここがゴルフの、いちばん面白いところかもしれません。 風の向きと強さ、グリーンまでの残り距離、足元の傾き、池やバンカーの位置、そして今日の自分の調子。それを全部あわせて、1本のクラブを選ぶ 。しかも、状況は毎回ちがいます。同じ場面は二度とありません。 あなた 言われてみれば、ラウンド中はずっと何か考えていますね。 Torapon そうなんです。しかも「決めて、打って、結果を見て、次を考える」のくり返しでしょう。これは脳の中でも 段取りをつけたり、切り替えたりする働き をよく使います。ふだんの生活では、なかなかここまで使わないんですよ。 これを裏づける研究もあります。同じ島田先生たちが2018年に行った試験では、運動習慣のなかった65歳以上の106人を、24週間のゴルフ教室と健康講座のグループにくじ引きで分けました。その結果、ゴルフ教室のグループでは、単語を覚える力が6.8%、お話を覚える力が11.2% 高くなったと報告されています。 こちらは「くじ引きで分けて比べた試験」なので、ゴルフの側に原因があると言いやすい研究です。 ③ 人と交わる そしてもう一つ。ゴルフは、4時間前後を、だれかと一緒に過ごす遊びです。 ...

August 11, 2026 · 2 分