「そろそろ、ゴルフもやめどきかな」
「腰も痛いし、スコアも昔のようにはいかないし……」
そんなふうに、長く続けてきた趣味を手放すことを考えたことはありませんか。
2026年、国立長寿医療研究センターの島田裕之先生たちが、高齢者4,575人を対象にした研究を発表しました。テーマは、ゴルフと頭の元気との関係です。
理学療法士として現場に立っていると、趣味を手放した方から、少しずつ元気がなくなっていく——そんな場面に何度か出会うことがありました。今回の研究は、その実感に静かに重なるものでした。
✅ 認知機能が下がっていた人の割合は、今もゴルフをしている人14.1%/やめた人20.1%/したことがない人21.6% でした
✅ 効いていそうなのは、歩く・頭を使う・人と交わる、この3つが同時にそろうこと です
✅ ただし 回数を増やす必要はありません 。関係していたのは「たくさん回ること」ではなく「続いていること」でした
目次
- 4,575人を、3つのグループに分けてみたら
- ゴルフの、何が効いているのでしょう
- ここは正直に——「だからゴルフをすれば安心」とは言えません
- では、ほかのスポーツや活動はどうなのでしょう
- 共通しているのは「3つ」と「続いていること」
- 私自身のこと
- いま私たちにできること
- おわりに
4,575人を、3つのグループに分けてみたら
この研究では、高齢の方4,575人を、こんなふうに3つに分けて比べました。
- 今もゴルフをしている人
- 昔はしていたが、やめた人
- ゴルフをしたことがない人
そして4種類の検査で、認知機能が下がっているかどうかを調べました。結果が、こちらです。

今も続けている人が14.1% 。やめた人が20.1%、したことがない人が21.6%でした。統計的にみても、続けている人は「したことがない人」よりはっきり低い、と報告されています。
さらに興味深いのは、次の2点です。
- ゴルフ歴が長い人ほど、認知機能が下がっていない傾向がありました
- いっぽうで、年間のラウンド数や練習の量とは、はっきりした関係が見られませんでした
ゴルフをやめてしまった人は、もうダメということでしょうか……。
いいえ、そう読むのは早いです。実はこの研究、記憶に関しては「やめた人」にも良い関連がみられた と報告しています。それに、あとでお話ししますが、この数字には 逆向きの説明 も十分にあり得るんです。「頭が心配になってきたから、ゴルフをやめた」という順番ですね。
まとめると、この研究がいちばん強く示していたのは、こういうことになります。
月に何回も回っている人が良い成績だったのではありません。回数は少なくても、ゴルフをやめずに長く続けてきた人——そちらのほうに、良い結果が出ていたのです。
ゴルフの、何が効いているのでしょう
では、ゴルフの何が頭に関わっているのでしょうか。研究チームは、ゴルフを「体・頭・人づきあい、いくつもの要求が重なる活動」だととらえています。

① 歩く
18ホールを回れば、カートを使っても、けっこうな距離を歩きます。歩いて回れば8〜10km、1万歩を超えることも珍しくありません。しかも平らではありません。上り下り、傾いた足場、ラフの中。ただの散歩より、体の使い方はずっと複雑です。
② 頭を使う

ここがゴルフの、いちばん面白いところかもしれません。
風の向きと強さ、グリーンまでの残り距離、足元の傾き、池やバンカーの位置、そして今日の自分の調子。それを全部あわせて、1本のクラブを選ぶ 。しかも、状況は毎回ちがいます。同じ場面は二度とありません。
言われてみれば、ラウンド中はずっと何か考えていますね。
そうなんです。しかも「決めて、打って、結果を見て、次を考える」のくり返しでしょう。これは脳の中でも 段取りをつけたり、切り替えたりする働き をよく使います。ふだんの生活では、なかなかここまで使わないんですよ。
これを裏づける研究もあります。同じ島田先生たちが2018年に行った試験では、運動習慣のなかった65歳以上の106人を、24週間のゴルフ教室と健康講座のグループにくじ引きで分けました。その結果、ゴルフ教室のグループでは、単語を覚える力が6.8%、お話を覚える力が11.2% 高くなったと報告されています。
こちらは「くじ引きで分けて比べた試験」なので、ゴルフの側に原因があると言いやすい研究です。
③ 人と交わる

そしてもう一つ。ゴルフは、4時間前後を、だれかと一緒に過ごす遊びです。
歩きながら話し、待ちながら話し、終わってからも話す。人とつながっていることは、認知症を遠ざける要素として、いま世界中で重く見られています。
人とのつながりや、耳・目のケアがなぜ大切なのかは、こちらの記事でくわしくお話ししています。
👉 脳を守る「刺激とつながり」〜耳・目・心・環境の7つの危険因子〜
ただし——「歩くだけ」でも効いていました
ここは正直にお伝えします。
フィンランドなどの研究チームが、65歳以上の健康なゴルファー25人に、18ホールのラウンド/6kmのノルディックウォーク/6kmのふつうの歩きを、それぞれ体験してもらった実験があります。
その直後の頭の働きを測ったところ——3つとも同じように改善しました。
つまり、少なくともその日の効果に関しては、「ゴルフだから特別だった」わけではなかったのです。歩くこと自体に、しっかり力があった。ここは、ゴルフをしない方にとってこそ、大事な結果だと思います。
ここは正直に——「だからゴルフをすれば安心」とは言えません
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
今回の4,575人の研究は、「ある一時点で、みんなをまとめて比べた研究」 です(専門的には「横断研究」といいます)。同じ人を何年も追いかけたものではありません。
そのため、こういう読み方ができてしまいます。
- 順番が逆かもしれない……「ゴルフを続けたから頭が守られた」のではなく、「頭がしっかりしているから、ゴルフを続けられている」のかもしれません
- もともとの違いがあるかもしれない……ゴルフを続けられる方は、足腰が丈夫で、経済的にゆとりがあり、誘ってくれる仲間がいる。その条件そのものが、頭の元気とつながっている可能性があります
とくに「順番が逆かもしれない」というのは、この研究の"やめた人"のグループを見ると、よく分かります。
ゴルフをやめる理由は、腰やひざが痛くなった、車の運転がつらくなった、誘ってくれる仲間が減った——いろいろあります。そしてもの忘れが出てきて、スコアの計算や段取りがおっくうになったという方も、実際にいらっしゃいます。
つまり、“やめた人"のグループには、やめる時点ですでに何かが起きていた方が、多めに含まれている可能性があるのです。だとすれば、その人たちの認知機能が低めだったのは、ゴルフをやめたせいではなく、やめる原因になったもののせいかもしれません。
順番が「ゴルフをやめた → 頭が下がった」なのか、「頭が下がってきた → ゴルフをやめた」なのか。一時点で比べただけの研究では、この2つを見分けられないのです。
それでは、この研究には意味がないということですか?
とんでもない、大いに意味があります。ただ、言えることの範囲 をはっきりさせておきたいんです。「ゴルフをすれば認知症を防げる」とまでは、まだ誰も言えません。でも「今やっている活動を手放さないほうがよさそうだ」——ここまでは、いくつもの研究が同じ方向を指しています。
研究者ご自身も、この研究だけで「ゴルフに予防効果がある」と結論づけてはいません。「続けていることが、認知機能と関連している可能性がある」 ——ここまでが、この研究で言えることです。
では、ほかのスポーツや活動はどうなのでしょう
「ゴルフはしないのだけれど」という方が、ほとんどだと思います。ここからが本題かもしれません。
日本の約5万人を6年追いかけた研究
日本には、高齢者およそ49,700人を6年間追いかけた大きな研究(JAGES)があります。この間に、認知症を伴う要介護認定を受けた方が4,758人(9.6%)いました。
そこで「どんな趣味を持っている人が、認知症になりにくかったか」を調べています。数字は危険度の比で、1.00が「趣味なし」の目安。小さいほどリスクが低いという読み方です。
| 趣味 | 危険度の比 |
|---|---|
| ゴルフ(男性) | 0.61 |
| パソコン(男性) | 0.65 |
| 手工芸(女性) | 0.73 |
| 旅行(女性0.76/男性0.80) | 0.76〜0.80 |
| グラウンド・ゴルフ(男女とも) | 0.80 |
| 釣り(男性) | 0.81 |
| 写真撮影(男性) | 0.83 |
| 園芸・庭いじり(女性) | 0.85 |
そして、この研究のいちばん大事な結論は、個々の趣味ではありませんでした。
趣味の種類が多い人ほど、認知症になりにくい(男性0.84/女性0.78)。つまり「何をやるか」より、いくつ持っているかのほうが、はっきりした傾向として出たのです。
25年前から言われていた「意外な結果」
もう一つ、有名な研究をご紹介します。アメリカで75歳を超えた469人を、中央値で5年あまり追いかけた研究(2003年・『ニューイングランド医学雑誌』)です。
| 活動 | 危険度の比 |
|---|---|
| 囲碁・将棋などの盤ゲーム | 0.26 |
| 楽器の演奏 | 0.31 |
| 読書 | 0.65 |
| ダンス | 0.24 |
| 歩く運動 | 0.67(はっきりした差とはいえず) |
| 水泳 | 0.71(同上) |
| 自転車 | 2.09(同上) |
ここで驚かれるかもしれません。体を動かす活動のうち、はっきり差が出たのはダンスだけでした。歩くことも水泳も、この研究では有意な差になっていません。
では、この研究で大きな差が出たのはどこだったのでしょう。それは、頭を使う活動を、どれだけの日数やっているか でした。
この研究では、読書・盤ゲーム・楽器・クロスワード・書きもの・話し合いの6つについて、週に何日やっているかを足し算して、一人ひとりの点数を出しています。たとえば「読書を毎日(7日)+盤ゲームを週2日」なら9点、という具合です。
そのうえで469人を、点数の高い順に3つのグループに分けました。
- 点数の高いほう3分の1(週に11日分より多い=毎日何かしら頭を使っている人たち)
- 真ん中の3分の1
- 点数の低いほう3分の1(週に8日分より少ない人たち)
すると、いちばん上のグループは、いちばん下のグループに比べて、認知症になる割合が63%低いという結果でした。歩く・泳ぐでは差が出なかったのに、ここには大きな差が出たのです。

ダンスだけ、というのは不思議ですね。
研究者もそこに注目しています。ダンスは 体を動かしながら、順番を覚えて、相手や音楽に合わせる 。つまり 運動と頭と人づきあいが、同時に混ざっている んです。……お気づきでしょうか。ゴルフの「3つ」と、そっくりですよね。
なお、この研究ではゴルフとテニスをしていた方が10人に満たず、評価できなかったと正直に書かれています。「ゴルフが最強」などと言った研究者は、どこにもいません。
「相手や状況が変わる運動」のほうが強いかもしれない
近年よく言われるのが、この分け方です。
- 状況が毎回変わる運動……卓球、テニス、バドミントン、ダンス、そしてゴルフ
- 同じ動きをくり返す運動……ランニング、自転車、水泳
高齢の方を対象にした試験で、卓球のグループのほうが、自転車や早歩きのグループより、頭の切り替えの改善が広く出たという報告があります。予測できない状況に合わせ続けること自体が、脳への課題になっているのだろう、という考え方です。

共通しているのは「3つ」と「続いていること」
ここまでを、いったんまとめます。
ゴルフ、ダンス、卓球、囲碁将棋、グラウンド・ゴルフ、旅行、写真、釣り、園芸——ばらばらに見えるこれらに、共通していそうなものが二つあります。
ひとつめは、「歩く」「頭を使う」「人と交わる」のうち、複数が同時にそろっていること。
歩くだけでも意味はあります。頭を使うだけでも意味はあります。でも、同時にそろっているほうが強そうだ——これが、いろいろな研究をならべて見えてくる姿です。
ふたつめは、続いていること。
今回のゴルフの研究で、いちばん心に残ったのはここでした。ラウンド数を増やした人が有利だったのではありません。ゴルフ歴が長い人、つまり手放さなかった人のほうに、傾向が出ていたのです。
運動が脳にどう働くのか、その仕組みについてはこちらもどうぞ。
👉 認知症リスクを45%下げる運動習慣 〜60代から始める「脳の貯金」〜
私自身のこと
私自身、ゴルフを続けて10年以上になります。
コースに立つと、意外なほど頭を使っていることに気づきます。風はどちらから吹いているか。ピンまで残り何ヤードか。足元は左足下がりか。 それを全部あわせて、番手を1本選ぶ。迷って、結局1本大きいクラブを持って、また迷う。あの数十秒が、じつはなかなかの作業です。
そしてもうひとつ。歩きながらの会話が、思っていた以上にいいものだと感じています。向かい合って話すのではなく、並んで歩きながら、ぽつぽつと話す。ラウンドが終わってからの「あの一打がねぇ」という振り返りも含めて、あの時間は、ほかではなかなか手に入りません。
研究の数字を見ながら、「ああ、あの時間のことか」と、腑に落ちるところがありました。
いま私たちにできること

ゴルフはしていないのですが、私にもできることはありますか?
もちろんです。むしろ 今やっていることを続けるほうが、新しく何かを始めるよりずっと現実的 なんですよ。研究が示していたのも、まさにそこでした。
- ✅ 今ある趣味を、手放さない……これがいちばん大事です。「もう歳だから」と一つやめると、次もやめやすくなります
- ✅ 回数を増やさなくていい……月1回でも、続いていることに意味がありそうです。無理に増やして体を痛めては、元も子もありません
- ✅ 「歩く・考える・人と会う」がいくつそろっているかで見てみる……1つしかないなら、そこに一つ足せないか考えてみてください。歩く仲間をつくる、教室に通う、それだけで2つになります
- ✅ 一人でやらない工夫を……同じことでも、だれかと一緒だと続きます
- ✅ 趣味は、いくつあってもいい……日本の研究では「種類が多いほど良い」という結果でした。一つに絞る必要はありません
- ✅ 体を痛めない工夫をする……長く続けるための、いちばん現実的な備えです
続けるうえで、いちばんの敵は「痛み」です。腰や肩をかばいながらでは、どうしても足が遠のいてしまいます。ゴルフをされる方は、体の使い方をこちらでもお話ししていますので、よろしければどうぞ。
👉 回すのは腰ではなかった 〜ゴルフに必要な可動域と筋力(第1回・体幹編)〜 (姉妹ブログ「ゴルフのカラダ研究所」)
記事の中でお話ししたとおり、音楽に合わせて体を動かすタイプの運動は、研究のうえでも注目されてきました。ご家族やお子さん世代で「そういう運動を始めてみたい」という方がいらしたら、こんな選択肢もあります。
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📚 あわせて読みたい一冊
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おわりに
「そろそろ、やめどきかな」
その言葉が出そうになったとき、今日の数字を少しだけ思い出していただけたらと思います。続けている人14.1%、やめた人20.1% 。もちろん、これは「やめたから下がった」と証明したものではありません。そこは正直に申し上げます。
それでも、日本の5万人の研究も、25年前のアメリカの研究も、そして今回のゴルフの研究も、同じ方を向いていました。体を動かし、頭を使い、人と交わる時間を、手放さないこと。
上手である必要はありません。回数を増やす必要もありません。
細くても、続いていること。 それが、いま研究が指し示している一点です。
今日のラウンドも、今日の一局も、今日の畑仕事も。
どうか、大切になさってください。
参考にした情報
- 元になった研究:Shimada H, Doi T, Makizako H, Toba K.「Relationship between playing golf and cognitive function in old age」『Acta Psychologica』第268巻・論文番号107354(2026年/DOI: 10.1016/j.actpsy.2026.107354)。国立長寿医療センターの研究チームによる、高齢者4,575人を対象とした横断研究です
- この研究を紹介した記事:ケアネット「日本人高齢者、ゴルフと認知機能が関連」(会員登録が必要です)
- ゴルフ教室の試験:Shimada H, et al.『Journal of Epidemiology and Community Health』2018年72巻944-950頁(DOI: 10.1136/jech-2017-210052)。65歳以上106人を24週間のゴルフ教室と健康講座に無作為に割り付けた試験
- 1回のラウンドの効果:Kettinen J, et al.『BMJ Open Sport & Exercise Medicine』2023年。東フィンランド大学・エディンバラ大学・チューリッヒ工科大学の研究チームが、65歳以上のゴルファー25人を対象に実施
- 日本の趣味と認知症:「高齢者の趣味の種類および数と認知症発症:JAGES 6年縦断研究」『日本公衆衛生雑誌』第67巻11号(2020年)。約49,700人を6年間追跡
- 余暇活動と認知症:Verghese J, et al.「Leisure Activities and the Risk of Dementia in the Elderly」『New England Journal of Medicine』2003年348巻2508-2516頁。75歳超の469人を追跡
- 記事中の2枚の図は、報告された数値をわかりやすく描いたイメージ図です
- ※本記事は一般的な情報提供を目的としたものです。もの忘れなどで気になる症状があるときや、痛みを抱えながら運動を続けてよいか迷うときは、自己判断せず、かかりつけの医師にご相談ください。