やわらかい色合いで描かれた脳のイラスト

認知機能ってそもそも何? 〜記憶・注意・判断を支える「脳のしくみ」を知る〜

「最近、人の名前がスッと出てこない」 「やることを順序立てて進めるのが、前より大変になってきた」―― そんな小さな引っかかりを感じたことはありませんか? そもそも私たちの「認知機能」とは、いったいどんな能力で、脳のどこが担っているのでしょうか。 これを知っておくと、年を重ねたときに何が起きているのか、どこを大切に守ればいいのかが、ぐっと見通せるようになります。 今日は、認知機能の話の いちばんはじめ――脳のしくみのお話を、できるだけやさしくまとめてみます。 ✅ 認知機能は、記憶・注意・判断などいくつもの能力の集まり。それぞれ脳の違う場所が担っています ✅ 脳は 単独の部屋 ではなく、チームプレー(ネットワーク) で働いています ✅ 「衰える場所」を知れば、「守るべき場所」が見えてきます 目次 そもそも「認知機能」とは? 脳の主役① 前頭前皮質 〜段取りと判断の司令塔〜 脳の主役② 海馬 〜記憶の入り口〜 注意のスイッチを切り替える「サリエンスネットワーク」 脳は「ネットワーク」で動いている 最新の話題:脳をささえる「もう一つの細胞」アストロサイト まとめ おわりに そもそも「認知機能」とは? 「認知機能」と聞くと、なんとなく 記憶力 のことだけを思い浮かべる方が多いかもしれません。 でも実は、認知機能はもっと幅広い能力の集まりです。 代表的なものを並べてみると―― 記憶:新しいことを覚える/思い出す 注意:必要な情報に目を向ける/よそ見をしない 実行機能:段取りを立てる・判断する・優先順位をつける 言語:話す・聞く・読む・書く 視空間認知:地図を読む/物の位置を把握する これらが組み合わさってはじめて、私たちは買い物に行ったり、料理を作ったり、人と会話したりできるわけです。 つまり「認知機能の低下」と一口に言っても、どの能力が、どのくらい衰えているかで見え方はずいぶん違ってきます。 脳の主役① 前頭前皮質 〜段取りと判断の司令塔〜 おでこのすぐ裏側にあるのが 前頭前皮質(ぜんとうぜんひしつ) と呼ばれる場所です。 ここは、人間の脳の中でいちばん「人間らしさ」を支えている部分とも言われています。 担っているのは―― 計画を立てる(旅行の段取り、料理の手順) 判断する(信号を渡るタイミング、買うかどうかの決断) ワーキングメモリ(一時的に情報を頭の中に置いておく能力) がまんする(衝動を抑える) なかでも前頭前皮質の「外側」にある 背外側前頭前皮質(はいがいそく ぜんとうぜん ひしつ) という部分は、注意を維持して、頭の中の情報を操作するときに大活躍します。 たとえば「電話番号を聞いて、それをメモするまでの数秒覚えておく」――こんなとき、ここがフル回転しています。 加齢やストレスでこの場所が弱ると、「段取りが苦手になる」「気が散りやすくなる」といった変化が出やすくなります。 脳の主役② 海馬 〜記憶の入り口〜 耳のすぐ内側、脳の奥のほうに 海馬(かいば) と呼ばれる、タツノオトシゴのような形をした小さな器官があります。 名前は知らなくても、「認知症で最初に縮みやすい場所」として聞いたことがあるかもしれません。 海馬の役割は、ひとことで言えば 「記憶の入り口」。 ...

May 12, 2026 · 1 分
運動・食事・人とのつながり・睡眠を象徴するやさしいイラスト

今日から始める「脳の守り方」 〜4本柱で続ける認知機能の予防〜

第1回 では脳の主役たちを、 第2回 では脳が衰えていく仕組みを、ご一緒に見てきました。 ここまでくると、こんな声が聞こえてきそうです。 「で、結局、なにをすればいいの?」―― ご安心ください。最終回の今回は、今日から始められる「脳の守り方」 を、4つの柱にまとめてご紹介します。 特別な道具も、難しい知識も必要ありません。 毎日の暮らしの中で、少しずつ積み重ねるだけ です。 ✅ 守り方の柱は 「運動」「食事」「人とのつながり」「睡眠」 の4つ ✅ どれか1つでもOK。「これなら続けられそう」 から始めるのがコツ ✅ 脳は 何歳になっても変わる力(神経可塑性) を持っています 目次 大前提:脳は何歳になっても変わる 運動 〜歩くことから始められる、いちばん確かな予防策〜 食事 〜血管をいたわることが、脳を守ること〜 人とのつながり 〜「認知的予備能」を育てる暮らし方〜 睡眠 〜眠っている間に、脳は記憶を整えている〜 気になったら早めに専門医へ まとめ おわりに 大前提:脳は何歳になっても変わる 予防のお話に入る前に、もう一度お伝えしたい大事なことがあります。 それは、脳は何歳になっても新しい回路を作る力を持っているということです。 専門用語では 神経可塑性(しんけい かそせい) と呼ばれます。 60歳から新しい楽器を始めた方 70歳から英会話を学び始めた方 80歳から絵を描き始めた方 そういう方たちの脳をMRIで見ると、実際に脳の構造が変わっていることが研究で報告されています。 「もう年だから」と思った瞬間に、脳の成長は止まりがちです。 「やってみよう」と思った瞬間から、脳はまた動き出します。 ここから紹介する4つの柱は、その「動き出した脳」を 育て、守る ための土台です。 運動 〜歩くことから始められる、いちばん確かな予防策〜 研究で いちばんはっきり効果が示されているのが、運動 です。 なかでも 有酸素運動(ウォーキング、軽いジョギング、水中歩行など)は―― 前頭前皮質や海馬の 灰白質を増やす 左右の脳をつなぐ 連絡網を強くする ミエリン(神経の保護膜)の修復を助ける ことが分かっています。 どのくらい、何を? 目安は1日5,000〜7,500歩。これだけで認知症リスクがしっかり下がるという研究があります 少し息が弾むくらいの早歩き を、合間に1〜2分でも入れる 週に2〜3回、ストレッチや軽い筋トレも組み合わせる 詳しくは、こちらの記事もあわせてどうぞ。 👉 1日5,000〜7,500歩で認知症リスクがぐっと下がる 👉 認知症リスクを45%下げる運動習慣 ...

May 14, 2026 · 2 分
地域の仲間と一緒に歩く高齢者のイメージ

『何を、どれくらい』のヒントが見えてきました 〜MCIから始める運動の最適解〜

「MCI(軽度認知障害) と言われたけれど、いったい何から始めればいいのか分からない…」 「運動がいいのは分かるけど、 何を、どれくらい やれば本当に効くのかしら?」 そんなお声を、地域の体操教室や介護現場でよく耳にします。 実は、2026年に入ってから MCIや軽度の認知症の方を対象にした運動研究 が立て続けに公表されました。 中身を読んでみると、これまで「とりあえず体を動かしましょう」と曖昧になっていた部分に、 具体的な答えのヒント が見えてきています。 今日は、特に注目したい 2つの研究 を、現場の目線でやさしくご紹介します。 ✅ 「何を、どれくらい」が見えてきました:複数の運動を組み合わせて、週3回以上 がひとつの目安です ✅ 続けることが何より大切:5年間の追跡では、参加率60%以上 のグループに認知機能の安定した経過傾向がみられました ✅ 一人で頑張らないこと:地域の仲間と一緒にやると 長続きしやすい——これが「効く運動」の隠れた条件かもしれません 少し長めの記事になりますので、気になるところからお読みください。 そもそも:MCI(軽度認知障害)ってどんな状態? 研究①:MCIの方に「どんな運動が効く」のか? 研究②:5年続けると、本当に差が出るのか? 「組み合わせる」と「続ける」のかけ算 家でできる組み合わせ運動の例 Toraponの現場から:地域体操教室で感じていること いま私たちにできること おわりに 〜進行しても、遅らせることはできる〜 そもそも:MCI(軽度認知障害)ってどんな状態? MCI(エム・シー・アイ) は Mild Cognitive Impairment の略で、日本語では「軽度認知障害」と呼ばれます。 ひとことで言うと、 「年相応の物忘れ」と「認知症」の あいだの状態 です。本人やご家族が「あれ?」と気付くことはあっても、まだ日常生活には大きな支障が出ていない段階のことを言います。 ただ、ここからが大事な話で、MCIは そのままにしておくと数年で認知症に進む方 もいれば、 元の状態に戻られる方や、長く安定したまま過ごされる方 もいらっしゃいます。 つまり、MCIは 「いま何をするか」で先が変わってくる段階 ——「分かれ道」のような時期です。 だからこそ、 「何を、どれくらいやればいいのか」 をできるだけ具体的に知っておきたいですよね。 研究①:MCIの方に「どんな運動が効く」のか? ひとつ目は、 MCIの方にどんな運動が一番効くのか を世界中の研究をまとめて比較した報告です(ネットワークメタ解析 と呼ばれる手法)。 複数のランダム化比較試験を集めて、 有酸素運動(ウォーキング・自転車など) 筋トレ(レジスタンス運動) バランス運動(太極拳・体操など) デュアルタスク(二重課題) 運動 を、 どれが一番認知機能を改善するか という観点で比べたものです。 ...

May 20, 2026 · 2 分
縁側でくつろぐシニアご夫婦のイラスト

日本人の認知症、約4割は予防できる 〜カギは「難聴」と「運動不足」〜

「認知症は、年をとれば誰でもなるもの」「家系だから、私もきっと……」―― そんなふうに、半ばあきらめてしまっている方は、いらっしゃいませんか? 実は、世界的に権威のある医学誌『ランセット』の専門委員会が、こう報告しています。 「認知症のリスク要因の約45%は、生活習慣で管理・遅らせることができる」 そして 2026年1月、日本人を対象にした最新研究 が、その姉妹誌である 『The Lancet Regional Health – Western Pacific』 に掲載されました。 東海大学の和佐野浩一郎先生らによる研究で、結論はこうです。 「日本人でも、最大で約 38.9% の認知症は、理論上 予防できる」 そして、日本でとくに大きな影響を持つのが、「難聴」と「運動不足」 だったのです。 ✅ 14のリスク要因を合計すると、日本人でも 約4割 の認知症が予防可能と推計 ✅ 日本でとくに影響が大きい3因子は 難聴・身体不活動・高LDLコレステロール ✅ 早めの対策(聴覚ケア・運動・健診)で、年間 約20万人 の発症を抑えられる可能性 目次 そもそも「14のリスク因子」って? 日本人で大きい3つの因子 なぜ「難聴」が最大のカギ? 14因子を年代別に整理してみる いま、私たちにできること おわりに そもそも「14のリスク因子」って? きっかけになったのは、世界の認知症研究をリードしている 「ランセット委員会」 が、2024年に発表した報告書です。 そこでは、認知症になるリスクを上げる要因のうち、「自分や社会の力で変えられるもの=修正可能なリスク因子」 が 14個 挙げられました。 ざっくりまとめると── 「生まれつきや遺伝で決まるものではなく、生活や環境を整えることで減らせるリスク」が、世界全体では認知症の 約45% を占めている。 これだけでも十分驚きの数字ですが、「日本ではどうなのか?」が気になるところです。 そこに答えを出してくれたのが、今回の和佐野先生らの研究です。 日本人で大きい3つの因子 研究では、日本の国民健康・栄養調査や大規模調査のデータを使って、「日本人の中で、どの因子がどれくらい大きいか」 を計算しました。 順位 因子 日本での影響 1位 難聴 6.7% 2位 身体不活動(運動不足) 6.0% 3位 高LDLコレステロール 4.5% 4位 糖尿病 3.0% 5位 高血圧 2.9% 世界の研究では「難聴」と「高LDLコレステロール」が大きいとされていましたが、日本人では「身体不活動(運動不足)」が世界平均より大きく 出ているのが特徴的でした。 ...

May 8, 2026 · 1 分
穏やかに過ごすシニア女性とご家族のイラスト

認知症リスク、女性のほうが影響を受けやすい? 〜1万7千人の調査が示した「男女差」〜

「認知症は、女性のほうがなりやすい」――そんな話を、聞いたことはありませんか? たしかに、患者さんの数は女性のほうが多いのですが、「長生きする人が多いから」とも言われ、はっきりした理由はわかっていませんでした。 そんな中、1万7千人を調べた研究から、こんな結果が報告されました。 「同じリスク因子でも、女性のほうが脳(思考力)への影響が強く出やすい」 今回は、私たち――特に女性とそのご家族に知っておいてほしい話を、やさしくお伝えします。 ✅ 高血圧・糖尿病・肥満・難聴などがあると、男性より女性のほうが「頭の働き(記憶や判断力)の低下」につながりやすい ことがわかった ✅ 女性は うつ・運動不足・睡眠の悩み を抱える割合も、男性より高めだった ✅ でも、これらは すべて「変えられる」リスク。だからこそ、早めの対策が効きやすい 目次 どんな研究だったの? 女性で影響が強かったこと 理学療法士として思うこと いま、できること おわりに どんな研究だったの? この研究は、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校などのチームが、医学誌『Biology of Sex Differences』に発表したものです。 対象:中高年〜高齢の 17,000人以上 内容:高血圧・糖尿病・肥満・難聴・うつ・運動不足など、13の「変えられるリスク因子」 を、男女で比べた すると、ただ「女性に患者が多い」という話ではなく、同じリスクでも女性のほうが脳への影響を強く受けやすい、という傾向が見えてきたのです。 女性で影響が強かったこと 研究からは、大きく分けて2つのことが見えてきました。 ① 同じ持病でも、女性のほうが「脳への影響」が大きい 高血圧・肥満・糖尿病・難聴――これらは男性にもありますが、女性ではこれらが、より強く「頭の働きの低下」につながっていました。同じ高血圧でも、女性のほうが脳に響きやすい、というイメージです。 ② そもそも、女性に多い悩みもある 次の3つは、男性よりも女性に多くみられました。 気分の落ち込み(うつ) … 女性は約17%、男性は約9%(女性はおよそ 2倍) 運動不足 … 女性は約48%、男性は約42% 睡眠の悩み … 女性は約45%、男性は約40% つまり女性は、脳に影響しやすい要因を「より多く、より強く」抱えやすい、ということです。 なぜそうなるのか、はっきりした理由はまだわかっておらず、研究が続けられています。でも見方を変えれば、「女性こそ、早めに気をつけることで守れる部分が大きい」 とも言えそうです。 理学療法士として思うこと 私自身、母がアルツハイマー型認知症で施設に入所しています。だからこそ、こうした「女性と脳」の話は、どうしても他人事に思えません。 リハビリの現場でも、血圧や糖尿病、聞こえにくさ、気分の落ち込みを抱えた女性は本当に多くいらっしゃいます。そのひとつひとつが脳に効いてくるのなら、早めに手を打つ意味は大きい と、あらためて感じます。 いま、できること 特別なことは要りません。女性で影響が強かった項目こそ、早めに整えたいポイント です。 ✅ 血圧 を家でときどき測る習慣を ✅ 聞こえにくさ は我慢せず、早めに耳鼻科や補聴器の相談を ✅ 体を動かす。散歩や体操を、無理のない範囲で毎日少しずつ ...

May 31, 2026 · 1 分
笑顔でウォーキングを楽しむシニアのイラスト

認知症リスクを45%下げる運動習慣 〜60代から始める「脳の貯金」〜

「最近、人の名前がすぐに出てこない」「物のしまった場所をよく忘れる」―― そんな小さな不安を、ふと感じることはありませんか? 認知症は、ある日突然なるものではなく、何十年もかけて静かに進む病気だといわれています。 だからこそ、「いま、何ができるか」がとても大切です。 最近、世界的に権威のある医学誌『ランセット』の専門委員会が、こんな報告を発表しました。 「認知症のリスク要因の約45%は、生活習慣で管理・遅らせることが可能」 その中でも、今回お伝えしたいのが 「運動」 です。 私も理学療法士として30年、たくさんの方の体と向き合ってきましたが、「運動が脳に効く」という事実は、年を追うごとに 科学的にもはっきり してきています。 ✅ 定期的に運動している人は、認知症リスクが 約31%低い(早歩きを週3回以上で 50%低下 との報告も) ✅ 効くのは 有酸素運動+筋トレ+コグニサイズ(運動と脳トレの組合せ) の合わせ技 ✅ 「もう遅い」はありません。60代・70代から始めても1年で変わります 目次 なぜ運動が脳にいいの? 認知症予防に効く「4つの運動」 どのくらいやればいい? 頻度・強度・期間の目安 60〜70代の方へ 無理なく続けるコツ 理学療法士として、現場で感じていること いま、私たちにできること おわりに なぜ運動が脳にいいの? 「運動が体にいい」のはイメージしやすいと思います。 でも、運動が “脳” にも直接効く ということは、案外知られていません。 ここ数年の研究で、こんなしくみが分かってきました。 ① 筋肉から「脳の肥料」が出る スクワットなど筋肉を使う運動をすると、筋肉から イリシン という物質が出て、脳の中で BDNF(脳由来神経栄養因子) を増やすことが分かっています。 BDNF は別名 「脳の肥料」。新しい神経のつながりを作ったり、傷んだ神経を修復したりする、とても大切なはたらきをします。 ② 脳の血のめぐりが良くなる 運動で全身の血流が良くなると、脳にも新鮮な酸素と栄養が届きます。 特に 運動と頭の体操を組み合わせる と、記憶を司る脳の領域(海馬)が 萎縮しにくくなる ことが報告されています。 ③ リスクそのものが下がる 統計的にも、運動習慣のある人は、ない人に比べて 認知症リスクが約31%低い というデータがあります。さらに、早歩きなどの 少し息が上がる運動を週3回以上 行っている方は、リスクが50%も下がる との報告もあります。 運動は、いま見つかっている認知症予防策の中でも、もっとも証拠(エビデンス)の積み重なった方法のひとつ です。 認知症予防に効く「4つの運動」 ...

May 8, 2026 · 2 分
公園で楽しく歩くシニアのイラスト

1日5,000〜7,500歩で、アルツハイマー病の進行が遅くなる? 〜歩数の『スイートスポット』が見えてきた〜

「健康のためには 1日1万歩 歩きましょう」―― そう聞いて、「正直、それはちょっとしんどい」と感じたことはありませんか? 実は最近、世界的に有名な医学誌に、少し希望のもてる研究 が発表されました。 「1日5,000〜7,500歩でも、アルツハイマー病の進行を遅らせる可能性がある」 しかも、すでに脳に “アルツハイマー病の早期サイン” が現れている人 にも、その効果が見られたというのです。 私自身、母がアルツハイマー型認知症で施設に入所しているので、こうした研究には自然と目がとまります。今回は、その内容をできるだけわかりやすくお伝えします。 ✅ 1日 5,000〜7,500歩 歩いている人は、ほとんど歩かない人と比べて思考力の低下が 約半分 だった ✅ すでにアミロイドβ(脳のゴミ)がたまっている人にも、運動の効果が認められた 目次 どんな研究だったの? 5,000〜7,500歩が「スイートスポット」 アミロイドβがあっても、運動は意味がある 「タウ」って何? 脳のゴミとの関係 理学療法士として、現場で感じていること いま、私たちにできること おわりに どんな研究だったの? 今回ご紹介する研究は、米国マサチューセッツ総合病院(Mass General Brigham)の Wendy Yau 氏らのグループが、「Nature Medicine」 という非常に権威ある医学誌に発表したものです(2025年11月3日掲載)。 大きな特徴 対象:認知機能が 正常な高齢者 296人 期間:最大 14年間 の追跡調査 測定:歩数計で測った 1日の歩数 と、脳の検査 場所:ハーバード大学の「加齢脳研究(HABS)」のデータを使用 「歩数」と「脳の変化」の関係を、ここまで長くきちんと追いかけた研究は、世界的にも珍しいものです。 5,000〜7,500歩が「スイートスポット」 研究では、参加者を 1日の歩数によって4つのグループ に分けて比べました。 グループ 1日の歩数 非活動的 3,000歩以下 低活動量 3,001〜5,000歩 中活動量 5,001〜7,500歩 高活動量 7,501歩以上 その結果、注目すべきことがわかりました。 「歩けば歩くほど、認知機能の低下スピードが緩やかになる」 「ただし、1日 7,500歩までで効果は頭打ちになる」 ...

May 8, 2026 · 1 分
頭の体操をするシニアのイラスト

脳の「処理スピード」を鍛えると、20年後の認知症リスクが下がる? 〜数週間の脳トレが教えてくれたこと〜

「脳トレって、本当に意味があるの?」―― そう感じたことは、ありませんか? ドリルやパズルをやってはみるものの、「これで本当に認知症が防げるのかな…」と、半信半疑の方も多いと思います。 ところが最近、その問いに 20年がかりで答えを出した研究 が話題になりました。 「ある脳トレを数週間受けただけで、認知症になるリスクが下がり、その効果が最長20年続いた可能性がある」 今回は、その内容をできるだけやさしくお伝えします。 ✅ 「情報を素早く処理する力」を鍛える脳トレを受けた人は、10年後の認知症リスクが約29%低かった ✅ その効果は 最長20年 続いた可能性。途中で「追加レッスン」を受けた人ほど、効果が大きかった ✅ 特別な道具はいりません。大事なのは「素早く見て・気づく」練習を 続けること 目次 どんな脳トレだったの? 2,800人を20年追いかけた研究 カギは「追加レッスン」 おうちでできること おわりに どんな脳トレだったの? 今回の主役は、「情報処理スピードのトレーニング」(処理速度=見たものを素早く理解し、判断する力)と呼ばれる脳トレです。 やることはシンプルで、画面にパッと出てくる絵や記号を 素早く見つけて答える というもの。慣れてくると、表示時間がどんどん短くなり、まわりにじゃまな情報があっても、目的のものを素早く見分けられるようになっていきます。 車の運転で「歩行者や標識にパッと気づく」あの感覚に近い力、とイメージするとわかりやすいかもしれません。 2,800人を20年追いかけた研究 この研究は、アメリカで行われた 「ACTIVE研究」 という、とても大きな調査がもとになっています。 対象:65歳以上の 健康な高齢者 2,802人 開始:1998年ごろ から、20年以上の追跡 体制:アメリカ国立衛生研究所(NIH)が支援 参加者を、いくつかの脳トレを受けるグループと、何もしないグループに分けて比べたところ―― 情報処理スピードの脳トレを受けた人は、10年後に認知症と診断されるリスクが約29%低かった そして2026年2月、医学誌『Alzheimer’s & Dementia』に発表された最新の解析では、その効果が 最長20年 にわたってみられた可能性が報告されました。 カギは「追加レッスン」 ひとつ大事なポイントがあります。それは、一度きりで終わらせないこと。 最初の5〜6週間のトレーニングのあと、1〜3年後に 「追加レッスン」(ブースター) を受けた人ほど、認知症リスクがより下がっていました。レッスンを1回受けるごとに、リスクがさらに少しずつ下がっていく傾向もみられたそうです。 運動と同じで、脳トレも 「ときどき思い出して、また続ける」 ことが効いてくる、というわけですね。 おうちでできること 研究で使われたのは専用のパソコンプログラムですが、その「素早く見て・気づく」エッセンスは、毎日の暮らしの中にも取り入れられます。 ✅ トランプの神経衰弱や間違い探し で、「素早く見つける」練習を ✅ 会話・カラオケ・囲碁将棋 など、人と関わりながら頭を使う遊びを ✅ そして何より、ウォーキングなど体を動かす習慣 を。体を動かすことは、最強の「脳トレ」でもあります ✅ 大切なのは「完璧」より 「ときどきでも、続けること」 ...

May 31, 2026 · 1 分
和やかに食卓を囲むシニア夫婦のイラスト

認知症予防は「食卓」から 〜MCIからの回復にも効く食事の整え方〜

「最近、何を食べたか思い出せない」「同じおかずばかりになっている気がする」―― 食卓を見ながら、ふとそんな小さな不安を感じることはありませんか? 実は、毎日の食事が、何十年もかけて少しずつ脳の健康をつくっていることが、近年の研究でだんだんはっきりしてきました。 そして、もし軽い物忘れ=**MCI(軽度認知障害)**の段階であれば、適切な対策で 健常な状態へ戻る可能性がある ことも分かっています。 ✅ 「これさえ食べれば治る」魔法の食品はありません。基本は 多様な食品をバランスよく ✅ 主食・主菜・副菜を、1日2食以上そろえることが質のよい食事の目安 ✅ 年代で食事のギアチェンジを:中年期はメタボ対策、高齢期はフレイル(虚弱)対策 今日は、認知症予防やMCIからの回復を支える「食事の整え方」を、できるだけやさしくまとめてみます。 目次 そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う 減塩・血糖・お酒の付き合い方 「共食」と五感の刺激 〜心と脳を元気に〜 私自身が実践していること(体験談) いま、私たちにできること おわりに そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 「食事で本当に脳が変わるの?」と思われるかもしれません。 これについて、近年こんなことが分かってきました。 いろいろな種類の食品を食べている人ほど、認知機能の低下が抑えられている 野菜・果物・魚を豊富に含む食事(地中海食や、それを応用した MIND食 と呼ばれるもの)は、抗酸化・抗炎症のはたらきによって認知症予防に役立つと考えられている 高血圧・糖尿病・高LDLコレステロールなど 血管の病気 は、認知症のリスクを高めることが分かっている。だから「血管の健康を保つ食事」が、そのまま「脳を守る食事」になる つまり食事は、ある日突然脳に効く特効薬ではなく、毎日少しずつ、脳に栄養を貯金していくようなものなのです。 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 「何を食べたらいいの?」と聞かれたら、私はまず 3つの皿をそろえること をおすすめしています。 主食(しゅしょく) ごはん、パン、麺類など エネルギー源 になります 主菜(しゅさい) 魚、肉、卵、大豆製品(豆腐・納豆など) 筋肉や脳の材料となるたんぱく質 が豊富 副菜(ふくさい) 野菜、きのこ、海藻、サラダ、煮物 ビタミン・ミネラル・食物繊維 で、脳の酸化ストレスを和らげます そこに、果物・ナッツ・乳製品を少しプラスできれば、栄養バランスはほぼ整います。 1日2食以上、主食・主菜・副菜がそろっているか―― これを意識するだけで栄養バランスは完璧です。 朝・昼・夜の小さな工夫 朝食:手間をかけずに ゆで卵 や 納豆 で主菜を確保。ヨーグルト で乳製品もプラス 昼食・夕食:魚(鯖・イワシ・サンマなど) を週に2〜3回。緑黄色野菜 を2種類以上 おやつ:菓子パンやスナックの代わりに ナッツ・果物・チーズ を選ぶ 「全部きちんと」と思うと続きません。1日1回からでOK。私もそうしています。 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う ...

May 9, 2026 · 2 分
地中海食と日本食が並ぶ食卓のイラスト

地中海食と日本食、合わせるとどうなる? 〜認知症予防の食卓に並べたい3つの食材習慣〜

「毎日同じおかずばかりで、なんだか脳によくない気がする」 「地中海食がいいって聞くけれど、急にオリーブオイル中心の食卓には変えられない」―― そんなふうに、自分の食卓と"理想の食事"のあいだで迷っていることはありませんか? 実は近年、地中海食と日本食、どちらも認知症予防によいことが分かってきました。 そして国立長寿医療研究センターの研究では、日本食をよく食べている人ほど認知症になりにくく、腸内環境にも違いが出ることが明らかになっています。 「地中海風」か「和食」かで悩む必要はありません。いいとこ取りで、今日からの食卓を少しずつ整えていくのが現実的な答えです。 ✅ **「単品サプリ」より「食事全体のパターン」**が認知症予防のカギ ✅ 地中海食と日本食はどちらも理にかなっている――両方のいいとこ取りでOK ✅ 注目したい4つの食材:魚介・きのこ・大豆・コーヒー(日本食スコア研究より) 今日は、地中海食と日本食をどう"合体"させるか――そして私の食卓によく並ぶ3つのメニューを、やさしくご紹介します。 目次 そもそも「脳によい食事」って? 地中海食のここがいい 日本食スコアという発見 地中海食×日本食という選択肢 私の食卓によく並ぶ3つの一皿 いま私たちにできること おすすめの一冊 そもそも「脳によい食事」って? 国立長寿医療研究センターは、認知症予防の食事についてはっきりこう言っています。 単一の栄養素(サプリメント等)を摂取しても、認知症予防には効果がありません。 つまり、「これさえ飲めば」という魔法のサプリは無く、実際の食品から、いろいろな栄養をパターンで摂ることが大事だ、ということです。 そのうえで、これまでの研究で繰り返し名前が挙がるのが、地中海食と日本食の二つの食事パターンです。 地中海食のここがいい 地中海食とは、イタリア南部やギリシャ沿岸で昔から食べられてきた食事のことです。 特徴をひと言でまとめると―― 色とりどりの野菜・果物(赤・黄・緑) 魚介類が豊富 オリーブ油を使う 全粒の穀類と食物繊維 ポリフェノールたっぷりの赤ワインを少々 国立長寿医療研究センターも「認知症予防効果が期待できます」と紹介しており、糖尿病の予防にもよいとされています。 ただ、毎日オリーブ油でパスタを食べる暮らしには無理がある――それが日本に住む多くの人の本音だと思います。 日本食スコアという発見 ここで嬉しいニュースがあります。 国立長寿医療研究センターの 佐治直樹副センター長 たちのチームは、日本食をよく食べている人ほど認知症になりにくいことを、実際の患者さんを調べて確かめました(Nutrition誌、2021年)。 研究チームが使った「日本食スコア」は、こんな食品を組み合わせて点数化したものです。 JDI9(基本の9品目) 米・味噌・魚介類・緑黄色野菜・海藻類・漬物・緑茶・牛肉/豚肉・コーヒー JDI12(拡張版) ↑に加えて、大豆・大豆製品/果物/きのこ 点数のつけ方 それぞれの食品について、ふだんよく食べている人は「1点」/あまり食べていない人は「0点」 ただし、牛肉・豚肉は逆(伝統的な和食では魚を主役にするので、たくさん食べていると0点になります) これを9品目すべて足すと、最大9点・最小0点(拡張版なら最大12点) **点数が高いほど"日本食らしい食事"**ということになります つまり「7点」というのは、9品目のうち7つは日常的によく食べているくらいの感覚です。 結果はとても分かりやすいものでした。 認知症のない人 vs 認知症のある人:JDI9 スコア 7点 vs 5点 同じく JDI12 スコア 8点 vs 7点 特に 魚介類・きのこ・大豆・コーヒー をよく食べている人で差が大きかった これらの食品が多い人は、腸内環境がよく整っており、認知症のリスクと結びつくと言われる物質も少ない 傾向(腸内細菌が出す"体に負担をかける成分"のこと) つまり、お味噌汁・焼き魚・きのこ・豆腐・コーヒーといった、ふだんの和食の延長線上にあるものが、ちゃんと脳の健康と結びついていた、ということです。 ...

May 21, 2026 · 1 分