「血圧やコレステロールの数値、毎年なんとなく見て終わりにしていませんか?」
「認知症の予防と、健診の数字って関係あるの?」――
そんなふうに思ったことのある方へ。

実は、世界的に権威のある医学誌『ランセット』の専門委員会は、認知症のリスク要因のうち 約45%は生活習慣で減らせる と報告しています。そして、その中でも大きなかたまりが、「血管」と「代謝(体の中での栄養の使われ方)」にかかわる7つの因子 です。

これらは、健診の数字で「見える」ことと、生活で「変えられる」こと が、いちばんの強みです。

✅ 高血圧・糖尿病・高LDLコレステロール・肥満・運動不足・喫煙・お酒――この7つは「血管・代謝」のなかま

✅ 日本人では、この7つを合計すると 約2割 の認知症にかかわると推計

✅ どれも 健診の数値毎日の習慣 で、今日から手をつけられる

認知症の14因子の「全体像」を先に知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。
👉 日本人の認知症、約4割は予防できる 〜カギは「難聴」と「運動不足」〜


目次

  1. なぜ「血管と代謝」が脳に関係するの?
  2. ① 高血圧 ― いちばん身近な「血管の負担」
  3. ② 糖尿病 ― 高い血糖が脳をさびつかせる
  4. ③ 高LDLコレステロール ― 2024年に加わった新しい因子
  5. ④ 肥満 ― 体の「静かな炎症」のもと
  6. ⑤ 運動不足 ― 日本人でとくに大きいカギ
  7. ⑥ 喫煙 ― 血管にも脳にも届くダメージ
  8. ⑦ お酒の飲みすぎ ― 「ほどほど」を超えると
  9. いま、私たちにできること
  10. おわりに

なぜ「血管と代謝」が脳に関係するの?

脳は、体じゅうのなかでも とくにたくさんの血液(酸素と栄養) を必要とする臓器です。全身の血管がしなやかで、血液がきれいに流れていることが、脳が元気に働くための土台になります。

ところが、血圧や血糖、コレステロールが高い状態が続くと、細い血管が少しずつ傷んで いきます。脳の奥の小さな血管がダメージを受けると、目に見えないくらい小さな「詰まり」や「もれ」が積み重なり、考えるスピードがゆっくりめになったり、もの忘れが増えたりする一因になると考えられています。

つまり、ここで紹介する7つは、「血管と代謝を通じて、じわじわ脳に効いてくる」 なかまです。逆に言えば、数字を整えること自体が、そのまま脳を守ること につながります。

このシリーズのもう1本(耳・目・心・環境の7因子)はこちら。
👉 脳を守る「刺激とつながり」 〜耳・目・心・環境の7つの危険因子〜


① 高血圧 ― いちばん身近な「血管の負担」

血圧を測るシニアのイラスト

なぜ脳に良くない?
血圧が高い状態は、いわば「血管に強い水圧がかかり続けている」ようなもの。とくに 中年期(おおむね45〜64歳)の高血圧 は、脳の細い血管を傷め、のちのちの認知症リスクにつながることが分かっています。日本人では認知症の 約2.9% にかかわると推計されています。

今日からの一手

  • 家庭で 朝晩に血圧を測る 習慣をつける(病院だけだと見逃しがち)
  • 上が135を超える日が続くなら、かかりつけ医に相談
  • 減塩(汁物を1日1杯に、麺類の汁を残す)から始める

② 糖尿病 ― 高い血糖が脳をさびつかせる

バランスのよい食事のイラスト

なぜ脳に良くない?
血液中の糖が多い状態が続くと、血管が傷みやすくなり、脳へも負担がかかります。糖尿病は日本人で認知症の 約3.0% にかかわるとされ、血管性の認知症だけでなくアルツハイマー型とも関係が指摘されています。

今日からの一手


③ 高LDLコレステロール ― 2024年に加わった新しい因子

コレステロールと血管のイラスト

なぜ脳に良くない?
LDLコレステロール(いわゆる「悪玉」)が高いと、血管の壁にたまって動脈硬化を進めます。2024年のランセット報告で新しく加わった因子 で、世界では認知症の 約7%、日本人でも 約4.5% にかかわると、影響の大きさが注目されています。

今日からの一手

  • 健診の LDLコレステロール値 を見て、高めなら放置せず相談
  • 揚げ物・脂身の多い肉を、魚や大豆製品に置きかえる日をつくる
  • 「数値が高い」と言われたら、自己判断でサプリに頼らず まず医師へ(※薬が必要かどうかは必ずかかりつけ医に相談を)

④ 肥満 ― 体の「静かな炎症」のもと

室内で自転車こぎ運動をするイラスト

なぜ脳に良くない?
余分な脂肪、とくにお腹まわりの脂肪は、体のあちこちで 弱い炎症(静かな火事のようなもの) を起こし、血管や脳にじわじわ影響すると考えられています。日本人での寄与は 約0.7% と数字としては小さめですが、高血圧・糖尿病・高LDLと 重なって効いてくる のが要注意な点です。

今日からの一手


⑤ 運動不足 ― 日本人でとくに大きいカギ

歩数計を持って歩くイラスト

なぜ脳に良くない?
体を動かさないと、血流が落ち、血圧・血糖・コレステロールのすべてに悪い方向に働きます。さらに運動には、脳そのものを元気にする 働きもあります。日本人では認知症の 約6.0% にかかわり、14因子のなかでも上位 という、見逃せない因子です。

今日からの一手


⑥ 喫煙 ― 血管にも脳にも届くダメージ

たばことやめる決意のイラスト

なぜ脳に良くない?
たばこの煙は血管を縮め、傷つけ、全身の血流を悪くします。脳の細い血管にも当然影響し、日本人で認知症の 約2.2% にかかわるとされています。

今日からの一手

  • 「もう歳だから今さら」は誤解。やめた時点から リスクは下がっていきます
  • 一人でやめにくい場合は 禁煙外来 という選択肢も(保険が使えることがあります)
  • まずは「本数を半分に」からでも一歩

⑦ お酒の飲みすぎ ― 「ほどほど」を超えると

お酒とお茶のイラスト

なぜ脳に良くない?
適量を超えた飲酒が続くと、脳が縮みやすくなることが知られています。日本人での寄与は 約1.3%。「少量なら体に良い」という見方も以前はありましたが、近年は 飲まないにこしたことはない という考え方が主流になりつつあります。

今日からの一手

  • 週に 2日は休肝日 をつくる
  • 「とりあえずビール」を「まずお茶やお水」に変えてみる
  • 寝つきのための寝酒は、かえって眠りを浅くするので見直しを

いま、私たちにできること

ここまでの7つを、今日からできるかたち にまとめます。ぜんぶ一度にやろうとしなくて大丈夫。ご自身に当てはまるところ から、ひとつずつで十分です。

  • ✅ 健診の 血圧・血糖(HbA1c)・LDLコレステロール の数字に、今年はしっかり目を通す
  • ✅ 家庭で 朝晩の血圧 を測る習慣を
  • 1日5,000〜7,500歩 を目安に、毎日少し体を動かす
  • ✅ 揚げ物・甘い飲み物を「減らす日」をつくる
  • ✅ たばこ・お酒は、今日から少しずつ 見直す

理学療法士として高齢の方々と接していると、毎日の活動への意識が高く、健診の数字を大事にしている方は、いきいきと元気に過ごしておられる と感じることが多いです。特別なことでなく、日々のちょっとした生活の工夫と健康意識が大切だと思います。


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おわりに

血圧、血糖、コレステロール――健診で並ぶこれらの数字は、ともすると「毎年見て終わり」になりがちです。でも、ひとつひとつが 脳の血管を守るサイン だと思うと、見え方が少し変わってきませんか。

数字を整えることは、心臓や血管のためだけでなく、5年後・10年後の「考える力」 を守ることでもある。

そう考えると、今日の食事や、ひと駅ぶんの歩きが、ぐっと前向きなものに感じられます。次の記事では、耳・目・心・環境 という、もうひとつのなかまの7因子をご紹介します。

👉 脳を守る「刺激とつながり」 〜耳・目・心・環境の7つの危険因子〜


参考にした情報

  • ケアネット「外来で役立つ!認知症Topics」連載『Lancetの14の危険因子を読み解く(その1〜その4)』(2026年)※医療者向け・会員登録が必要
  • ランセット委員会報告:Livingston G, et al. Lancet. 2024;404:572-628.
  • 日本人での推計:Wasano K, et al. Lancet Reg Health West Pac. 2026;66:101792.

※ 本記事は、上記の医療メディアおよび原著論文をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。血圧・血糖・コレステロールの数値やお薬について気になる点があれば、必ずかかりつけ医にご相談ください。