「最近、何を食べたか思い出せない」「同じおかずばかりになっている気がする」――
食卓を見ながら、ふとそんな小さな不安を感じることはありませんか?
実は、毎日の食事が、何十年もかけて少しずつ脳の健康をつくっていることが、近年の研究でだんだんはっきりしてきました。
そして、もし軽い物忘れ=**MCI(軽度認知障害)**の段階であれば、適切な対策で 健常な状態へ戻る可能性がある ことも分かっています。
✅ 「これさえ食べれば治る」魔法の食品はありません。基本は 多様な食品をバランスよく
✅ 主食・主菜・副菜を、1日2食以上そろえることが質のよい食事の目安
✅ 年代で食事のギアチェンジを:中年期はメタボ対策、高齢期はフレイル(虚弱)対策
今日は、認知症予防やMCIからの回復を支える「食事の整え方」を、できるだけやさしくまとめてみます。
目次
- そもそも「食事と認知症」って関係あるの?
- 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる
- 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う
- 減塩・血糖・お酒の付き合い方
- 「共食」と五感の刺激 〜心と脳を元気に〜
- 私自身が実践していること(体験談)
- いま、私たちにできること
- おわりに
そもそも「食事と認知症」って関係あるの?
「食事で本当に脳が変わるの?」と思われるかもしれません。
これについて、近年こんなことが分かってきました。
- いろいろな種類の食品を食べている人ほど、認知機能の低下が抑えられている
- 野菜・果物・魚を豊富に含む食事(地中海食や、それを応用した MIND食 と呼ばれるもの)は、抗酸化・抗炎症のはたらきによって認知症予防に役立つと考えられている
- 高血圧・糖尿病・高LDLコレステロールなど 血管の病気 は、認知症のリスクを高めることが分かっている。だから「血管の健康を保つ食事」が、そのまま「脳を守る食事」になる
つまり食事は、ある日突然脳に効く特効薬ではなく、毎日少しずつ、脳に栄養を貯金していくようなものなのです。
基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる

「何を食べたらいいの?」と聞かれたら、私はまず 3つの皿をそろえること をおすすめしています。
主食(しゅしょく)
- ごはん、パン、麺類など
- エネルギー源 になります
主菜(しゅさい)
- 魚、肉、卵、大豆製品(豆腐・納豆など)
- 筋肉や脳の材料となるたんぱく質 が豊富
副菜(ふくさい)
- 野菜、きのこ、海藻、サラダ、煮物
- ビタミン・ミネラル・食物繊維 で、脳の酸化ストレスを和らげます
そこに、果物・ナッツ・乳製品を少しプラスできれば、栄養バランスはほぼ整います。
1日2食以上、主食・主菜・副菜がそろっているか――
これを意識するだけで栄養バランスは完璧です。
朝・昼・夜の小さな工夫
- 朝食:手間をかけずに ゆで卵 や 納豆 で主菜を確保。ヨーグルト で乳製品もプラス
- 昼食・夕食:魚(鯖・イワシ・サンマなど) を週に2〜3回。緑黄色野菜 を2種類以上
- おやつ:菓子パンやスナックの代わりに ナッツ・果物・チーズ を選ぶ
「全部きちんと」と思うと続きません。1日1回からでOK。私もそうしています。
年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う

ここが、今日いちばんお伝えしたいポイントです。
40〜64歳の中年期と65歳以上の高齢期では、気をつけるポイントが正反対 になります。これを知らずに同じ食事を続けていると、せっかくの努力が逆効果になることもあるのです。
中年期(40〜64歳):太らない・血管をいたわる
将来の認知症リスクを高める 糖尿病・高血圧・高LDLコレステロール を防ぐため、太りすぎないこと が大切です。
控えめにしたいもの:
- 肉の脂身・バター(飽和脂肪酸)
- マーガリン・ショートニングを使った菓子(トランス脂肪酸)
- 菓子パン・甘い飲料(糖質の摂りすぎ)
- 超加工食品(カップ麺・スナック菓子・加工肉など)
高齢期(65歳以上):痩せすぎ注意・しっかり食べる
ところが65歳を過ぎると、話が逆転します。
この年代で 「やせすぎ」や「気づかないうちの体重減少」 は、認知症や フレイル(虚弱) のリスクをぐっと高めてしまいます。
意識したいこと:
- BMI 21.5以上 を目安にしっかり食べる(※BMI=体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m)
- 3食欠かさない
- 食が細くなってきたら、スキムミルクやきなこを料理に足す など、効率よく栄養を補う工夫を
- たんぱく質(魚・肉・卵・大豆製品)を毎食ひと品は
中年期は「引き算の食事」、高齢期は「足し算の食事」――
このギアチェンジを意識できるかどうかで、10年後の脳と体は大きく変わってきます。
減塩・血糖・お酒の付き合い方
血管の健康は、そのまま脳の健康につながります。3つだけ、押さえておきたいポイントがあります。
① 減塩:1日6g未満が目標

高血圧は、脳の細い血管を少しずつ傷つけます。
すぐにできる工夫はこちらです。
- 醤油やソースは 「かける」より「つける」
- 出汁・酢・レモン・香辛料 で味に変化をつける
- ラーメンやうどんの 汁は残す
- 加工食品(ハム・かまぼこ・インスタント食品)は表示を見て 塩分の少ないもの を
② 血糖:甘い飲料と間食を見直す
血糖値の急な上下は、血管に負担をかけます。
- 甘い飲料(コーラ・甘い缶コーヒー)は週に数本まで
- 間食は 果物やナッツ に置き換える
- 食物繊維(野菜・きのこ・海藻)を先に食べると、血糖の上がり方がゆるやかに
③ お酒:飲むなら適量を守る
過度の飲酒は脳を萎縮させることが分かっています。一方で、少量なら必ずしも悪者ではないとの報告もあります。
日本の目安は、1日に純アルコール20g程度まで。
これは、日本酒で1合、ビール中瓶1本(500ml)、ワインなら小さめのグラス2杯 くらいです。
休肝日を週2日以上――この習慣も、ぜひセットで。
「共食」と五感の刺激 〜心と脳を元気に〜

意外に思われるかもしれませんが、「誰と、どんな気持ちで食べるか」 も、認知機能にとても影響します。
「共食(きょうしょく)」のすすめ
ひとりで黙々と食べる「孤食」よりも、誰かと会話しながら食べるほうが、
- 食欲が増し、栄養バランスが自然と整う
- 会話によって脳が刺激され、社会的なつながり が保たれる
- 食べるときの幸福感が、ストレスを和らげる
ご家族と一緒でも、地域の食事会でも、月に1〜2回ご友人とのランチでもかまいません。
「誰かと食べる時間」を、意識して暮らしに組み込んでみてください。
五感を刺激する
旬の食材、彩り、温度、香り――こうしたものを楽しむことも、立派な脳トレです。
- 季節の野菜を一品取り入れる
- 器を変えてみる
- 外に出て、レストランや公園で食べる
「おいしいなあ」と感じる時間そのものが、脳と心を元気にしてくれます。
サプリは「脇役」にとどめる
葉酸やDHAなどのサプリメントは、研究で一時的に効果が示されることもありますが、長期的な認知症予防効果は十分には証明されていません。
サプリに頼りすぎず、まずは食事から――これが、いまのところ最も確実な道です。
※ サプリや薬を新しく始めるときは、必ずかかりつけ医にひとこと相談してくださいね。
私自身が実践していること(体験談)
ここで少し、私の話をさせてください。
実は私自身、LDLコレステロール値が少し高め で、健診のたびに気にしている一人です。
理学療法士として食事のアドバイスをする立場でもあるのですが、自分のこととなると、なかなか完璧にはいかないものです。
それでも、いまは無理のない範囲で、3つのことだけ を続けています。
① 肉の脂身・バターは控えめに
ステーキの脂身を残す、バターをマーガリンより少なめのオリーブオイルに変える――
「全部やめる」のではなく「減らす」 というゆるい気持ちで取り組んでいます。
② 魚(鯖・イワシなど)を意識して食べる
週に2〜3回は、青魚 を食卓に。
缶詰(鯖缶・イワシ缶)も気軽に使えて、調理も楽です。
n-3系脂肪酸(EPA・DHA)が、血管にも脳にもやさしくはたらいてくれると言われています。
③ 野菜・豆類・きのこ・海藻を増やす
食物繊維 は、コレステロール対策にも、血糖対策にも、お通じにも効きます。
味噌汁の具に、きのこ・海藻・豆腐をたっぷり入れるだけでも、ぐっとバランスが良くなります。
完璧な食事を毎日続けるのは、本当に難しいことです。
それでも、「自分が無理なく続けられる、3つの工夫」 を持っておくと、不思議と続きます。
「気にしすぎないこと」も、長く続けるうえでとても大切です。
私自身、外食したり、たまには甘いものを楽しんだりもしています。それでいいのだと思っています。
いま、私たちにできること
ここまでの内容を、今日からできるかたち にまとめます。
- ✅ 1日2食以上、主食・主菜・副菜の3つをそろえる
- ✅ 魚(鯖・イワシ・サンマなど) を週に2〜3回食卓へ
- ✅ 野菜・きのこ・海藻 を、味噌汁や副菜でしっかり
- ✅ 菓子パン・甘い飲料・カップ麺 の頻度を減らす
- ✅ 減塩:醤油は「つける」、麺の汁は残す
- ✅ 月に1〜2回は 誰かと食卓を囲む「共食」を
- ✅ 65歳以上の方は 痩せすぎ注意。たんぱく質と3食を欠かさず
- ✅ 持病のある方は、かかりつけ医にひとこと相談を
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📚 あわせて読みたい本
最高の体調
「なぜ私たちは現代食で不調になるのか」を、進化医学の視点からやさしく整理した一冊。食事だけでなく、睡眠・運動・腸内環境まで含めて『最高の体調』を整える方法が、シニア世代にも分かりやすく書かれています。
脳の毒を出す食事
抗加齢医学の第一人者・白澤卓二先生による、認知症予防のための食事レシピ本。アルミニウム・糖化・酸化など、脳にたまりやすい「毒」をどう食事で減らしていくか――具体的な献立と買い物リストまで載っていて、明日からの食卓にすぐ取り入れられます。
おわりに
「これを食べれば認知症にならない」という魔法の食品は、残念ながらありません。
でも、毎日の食卓を少しだけ整えることが、5年後・10年後のあなたの脳を確かに守ってくれます。
そしてもし、いまMCI(軽度認知障害)の段階だとしても、「もう手遅れ」ではありません。
食事を整え運動習慣をつけることで、健常な状態に戻る可能性も十分にあると分かってきています。
まずは、毎日体重を測ること、そして「1日1回、主食・主菜・副菜をそろえてみる」――
そんな小さな一歩から、ご一緒に始めてみませんか。
参考にした情報
- ランセット委員会 2024年報告(認知症予防可能な14のリスク要因)
- 国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック」
- 厚生労働省 認知症施策関連資料
- 日本高血圧学会・日本動脈硬化学会のガイドライン
※ 本記事は、上記の信頼できる医療・公的資料をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。持病のある方や、現在治療中の方は、必ずかかりつけ医にご相談のうえ、ご自身に合った食事のかたちを見つけてください。