「最近、何を食べたか思い出せない」「同じおかずばかりになっている気がする」――
食卓を見ながら、ふとそんな小さな不安を感じることはありませんか?

実は、毎日の食事が、何十年もかけて少しずつ脳の健康をつくっていることが、近年の研究でだんだんはっきりしてきました。

そして、もし軽い物忘れ=**MCI(軽度認知障害)**の段階であれば、適切な対策で 健常な状態へ戻る可能性がある ことも分かっています。


✅ 「これさえ食べれば治る」魔法の食品はありません。基本は 多様な食品をバランスよく

主食・主菜・副菜を、1日2食以上そろえることが質のよい食事の目安

年代で食事のギアチェンジを:中年期はメタボ対策、高齢期はフレイル(虚弱)対策

今日は、認知症予防やMCIからの回復を支える「食事の整え方」を、できるだけやさしくまとめてみます。


目次

  1. そもそも「食事と認知症」って関係あるの?
  2. 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる
  3. 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う
  4. 減塩・血糖・お酒の付き合い方
  5. 「共食」と五感の刺激 〜心と脳を元気に〜
  6. 私自身が実践していること(体験談)
  7. いま、私たちにできること
  8. おわりに

そもそも「食事と認知症」って関係あるの?

「食事で本当に脳が変わるの?」と思われるかもしれません。
これについて、近年こんなことが分かってきました。

  • いろいろな種類の食品を食べている人ほど、認知機能の低下が抑えられている
  • 野菜・果物・魚を豊富に含む食事(地中海食や、それを応用した MIND食 と呼ばれるもの)は、抗酸化・抗炎症のはたらきによって認知症予防に役立つと考えられている
  • 高血圧・糖尿病・高LDLコレステロールなど 血管の病気 は、認知症のリスクを高めることが分かっている。だから「血管の健康を保つ食事」が、そのまま「脳を守る食事」になる

つまり食事は、ある日突然脳に効く特効薬ではなく、毎日少しずつ、脳に栄養を貯金していくようなものなのです。


基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる

主食・主菜・副菜が揃った和食のイラスト

「何を食べたらいいの?」と聞かれたら、私はまず 3つの皿をそろえること をおすすめしています。

主食(しゅしょく)

  • ごはん、パン、麺類など
  • エネルギー源 になります

主菜(しゅさい)

  • 魚、肉、卵、大豆製品(豆腐・納豆など)
  • 筋肉や脳の材料となるたんぱく質 が豊富

副菜(ふくさい)

  • 野菜、きのこ、海藻、サラダ、煮物
  • ビタミン・ミネラル・食物繊維 で、脳の酸化ストレスを和らげます

そこに、果物・ナッツ・乳製品を少しプラスできれば、栄養バランスはほぼ整います。

1日2食以上、主食・主菜・副菜がそろっているか――
これを意識するだけで栄養バランスは完璧です。

朝・昼・夜の小さな工夫

  • 朝食:手間をかけずに ゆで卵納豆 で主菜を確保。ヨーグルト で乳製品もプラス
  • 昼食・夕食魚(鯖・イワシ・サンマなど) を週に2〜3回。緑黄色野菜 を2種類以上
  • おやつ:菓子パンやスナックの代わりに ナッツ・果物・チーズ を選ぶ

「全部きちんと」と思うと続きません。1日1回からでOK。私もそうしています。


年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う

中年期と高齢期で気をつける食生活の違いを表したイラスト

ここが、今日いちばんお伝えしたいポイントです。

40〜64歳の中年期65歳以上の高齢期では、気をつけるポイントが正反対 になります。これを知らずに同じ食事を続けていると、せっかくの努力が逆効果になることもあるのです。

中年期(40〜64歳):太らない・血管をいたわる

将来の認知症リスクを高める 糖尿病・高血圧・高LDLコレステロール を防ぐため、太りすぎないこと が大切です。

控えめにしたいもの:

  • 肉の脂身・バター(飽和脂肪酸)
  • マーガリン・ショートニングを使った菓子(トランス脂肪酸)
  • 菓子パン・甘い飲料(糖質の摂りすぎ)
  • 超加工食品(カップ麺・スナック菓子・加工肉など)

高齢期(65歳以上):痩せすぎ注意・しっかり食べる

ところが65歳を過ぎると、話が逆転します。
この年代で 「やせすぎ」や「気づかないうちの体重減少」 は、認知症や フレイル(虚弱) のリスクをぐっと高めてしまいます。

意識したいこと:

  • BMI 21.5以上 を目安にしっかり食べる(※BMI=体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m)
  • 3食欠かさない
  • 食が細くなってきたら、スキムミルクやきなこを料理に足す など、効率よく栄養を補う工夫を
  • たんぱく質(魚・肉・卵・大豆製品)を毎食ひと品は

中年期は「引き算の食事」、高齢期は「足し算の食事」――
このギアチェンジを意識できるかどうかで、10年後の脳と体は大きく変わってきます。


減塩・血糖・お酒の付き合い方

血管の健康は、そのまま脳の健康につながります。3つだけ、押さえておきたいポイントがあります。

① 減塩:1日6g未満が目標

減塩の工夫を表すイラスト

高血圧は、脳の細い血管を少しずつ傷つけます。
すぐにできる工夫はこちらです。

  • 醤油やソースは 「かける」より「つける」
  • 出汁・酢・レモン・香辛料 で味に変化をつける
  • ラーメンやうどんの 汁は残す
  • 加工食品(ハム・かまぼこ・インスタント食品)は表示を見て 塩分の少ないもの

② 血糖:甘い飲料と間食を見直す

血糖値の急な上下は、血管に負担をかけます。

  • 甘い飲料(コーラ・甘い缶コーヒー)は週に数本まで
  • 間食は 果物やナッツ に置き換える
  • 食物繊維(野菜・きのこ・海藻)を先に食べると、血糖の上がり方がゆるやかに

③ お酒:飲むなら適量を守る

過度の飲酒は脳を萎縮させることが分かっています。一方で、少量なら必ずしも悪者ではないとの報告もあります。

日本の目安は、1日に純アルコール20g程度まで
これは、日本酒で1合、ビール中瓶1本(500ml)、ワインなら小さめのグラス2杯 くらいです。

休肝日を週2日以上――この習慣も、ぜひセットで。


「共食」と五感の刺激 〜心と脳を元気に〜

家族や仲間と笑顔で食卓を囲むイラスト

意外に思われるかもしれませんが、「誰と、どんな気持ちで食べるか」 も、認知機能にとても影響します。

「共食(きょうしょく)」のすすめ

ひとりで黙々と食べる「孤食」よりも、誰かと会話しながら食べるほうが、

  • 食欲が増し、栄養バランスが自然と整う
  • 会話によって脳が刺激され、社会的なつながり が保たれる
  • 食べるときの幸福感が、ストレスを和らげる

ご家族と一緒でも、地域の食事会でも、月に1〜2回ご友人とのランチでもかまいません。
誰かと食べる時間」を、意識して暮らしに組み込んでみてください。

五感を刺激する

旬の食材、彩り、温度、香り――こうしたものを楽しむことも、立派な脳トレです。

  • 季節の野菜を一品取り入れる
  • 器を変えてみる
  • 外に出て、レストランや公園で食べる

「おいしいなあ」と感じる時間そのものが、脳と心を元気にしてくれます。

サプリは「脇役」にとどめる

葉酸やDHAなどのサプリメントは、研究で一時的に効果が示されることもありますが、長期的な認知症予防効果は十分には証明されていません

サプリに頼りすぎず、まずは食事から――これが、いまのところ最も確実な道です。

※ サプリや薬を新しく始めるときは、必ずかかりつけ医にひとこと相談してくださいね。


私自身が実践していること(体験談)

ここで少し、私の話をさせてください。

実は私自身、LDLコレステロール値が少し高め で、健診のたびに気にしている一人です。
理学療法士として食事のアドバイスをする立場でもあるのですが、自分のこととなると、なかなか完璧にはいかないものです。

それでも、いまは無理のない範囲で、3つのことだけ を続けています。

① 肉の脂身・バターは控えめに

ステーキの脂身を残す、バターをマーガリンより少なめのオリーブオイルに変える――
「全部やめる」のではなく「減らす」 というゆるい気持ちで取り組んでいます。

② 魚(鯖・イワシなど)を意識して食べる

週に2〜3回は、青魚 を食卓に。
缶詰(鯖缶・イワシ缶)も気軽に使えて、調理も楽です。
n-3系脂肪酸(EPA・DHA)が、血管にも脳にもやさしくはたらいてくれると言われています。

③ 野菜・豆類・きのこ・海藻を増やす

食物繊維 は、コレステロール対策にも、血糖対策にも、お通じにも効きます。
味噌汁の具に、きのこ・海藻・豆腐をたっぷり入れるだけでも、ぐっとバランスが良くなります。


完璧な食事を毎日続けるのは、本当に難しいことです。
それでも、「自分が無理なく続けられる、3つの工夫」 を持っておくと、不思議と続きます。

気にしすぎないこと」も、長く続けるうえでとても大切です。
私自身、外食したり、たまには甘いものを楽しんだりもしています。それでいいのだと思っています。


いま、私たちにできること

ここまでの内容を、今日からできるかたち にまとめます。

  • 1日2食以上、主食・主菜・副菜の3つをそろえる
  • 魚(鯖・イワシ・サンマなど) を週に2〜3回食卓へ
  • 野菜・きのこ・海藻 を、味噌汁や副菜でしっかり
  • 菓子パン・甘い飲料・カップ麺 の頻度を減らす
  • 減塩:醤油は「つける」、麺の汁は残す
  • ✅ 月に1〜2回は 誰かと食卓を囲む「共食」を
  • ✅ 65歳以上の方は 痩せすぎ注意。たんぱく質と3食を欠かさず
  • ✅ 持病のある方は、かかりつけ医にひとこと相談

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おわりに

「これを食べれば認知症にならない」という魔法の食品は、残念ながらありません。
でも、毎日の食卓を少しだけ整えることが、5年後・10年後のあなたの脳を確かに守ってくれます。

そしてもし、いまMCI(軽度認知障害)の段階だとしても、「もう手遅れ」ではありません
食事を整え運動習慣をつけることで、健常な状態に戻る可能性も十分にあると分かってきています。

まずは、毎日体重を測ること、そして「1日1回、主食・主菜・副菜をそろえてみる」――
そんな小さな一歩から、ご一緒に始めてみませんか。


参考にした情報

  • ランセット委員会 2024年報告(認知症予防可能な14のリスク要因)
  • 国立長寿医療研究センター「あたまとからだを元気にする MCIハンドブック」
  • 厚生労働省 認知症施策関連資料
  • 日本高血圧学会・日本動脈硬化学会のガイドライン

※ 本記事は、上記の信頼できる医療・公的資料をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。持病のある方や、現在治療中の方は、必ずかかりつけ医にご相談のうえ、ご自身に合った食事のかたちを見つけてください。