手をつなぐ老夫婦のイラスト

認知症の種類とMCIをやさしく解説 〜母のアルツハイマーから学んだ早期対応の大切さ〜

ご家族の物忘れが増えてきた、同じことを何度も聞かれる、財布や鍵をしまった場所を忘れる…。 そんな様子を見て、**「もしかして認知症かも」**と心配されていませんか? 「でも、どこに相談したらいいの?」 「本人が病院に行きたがらない」 そう悩んで、一歩踏み出せずにいる方も多いと思います。 私の母も、2017年頃から物忘れの様子が目立つようになり、のちにアルツハイマー型認知症と診断されました。家族として辛い時期を経験しましたが、今になって、こう思うことがあります。 「もっと早く相談していれば…」 と。 この記事では、認知症の種類とMCI(軽度認知障害)をやさしく解説しつつ、私自身の家族の経験から学んだ「早期対応の大切さ」をお伝えします。 ✅ 認知症は 1種類じゃない。主に4つのタイプがあります ✅ MCI(軽度認知障害)は認知症の一歩手前。気づいた時が一番大事なタイミング ✅ まずは 地域包括支援センター へ。無料で誰でも相談できます 目次 そもそも認知症とは? 認知症の主な4種類 軽度認知障害(MCI)— 認知症の一歩手前 我が家の経験 — 母のアルツハイマーと家族の時間 困ったときの相談先 まとめ — チェックリスト おわりに そもそも認知症とは? 認知症とは、いろいろな原因で脳の働きが弱くなり、生活に支障が出てくる状態のことを言います。 「物忘れ」と「認知症」は、似ているようで違います。 加齢による物忘れ 認知症 忘れる範囲 体験の 一部 を忘れる 体験 そのもの を忘れる 自覚 本人が気づいている 本人が気づきにくい 日常生活 支障はない 支障が出てくる たとえば、こんな違いがあります。 「朝ご飯に何を食べたか思い出せない」のは 加齢の物忘れ 「朝ご飯を食べたこと自体を覚えていない」のが 認知症のサイン ここに、大きな違いがあります。 認知症の主な4種類 認知症と一口に言っても、原因となる病気は大きく分けて 4つ あります。 種類 おおよその割合 主な特徴 アルツハイマー型認知症 約 6割 物忘れから始まり、ゆっくり進行 血管性認知症 約 2割 脳梗塞・脳出血が原因。手足の麻痺を伴うことも レビー小体型認知症 約 1割 幻視、パーキンソン症状(手のふるえ・小刻み歩行) 前頭側頭型認知症 数% 性格の変化、社会のルールを守れなくなる ※ 厚生労働省・国立長寿医療研究センターの資料をもとにまとめています。 ...

May 4, 2026 · 2 分
地域の仲間と一緒に歩く高齢者のイメージ

『何を、どれくらい』のヒントが見えてきました 〜MCIから始める運動の最適解〜

「MCI(軽度認知障害) と言われたけれど、いったい何から始めればいいのか分からない…」 「運動がいいのは分かるけど、 何を、どれくらい やれば本当に効くのかしら?」 そんなお声を、地域の体操教室や介護現場でよく耳にします。 実は、2026年に入ってから MCIや軽度の認知症の方を対象にした運動研究 が立て続けに公表されました。 中身を読んでみると、これまで「とりあえず体を動かしましょう」と曖昧になっていた部分に、 具体的な答えのヒント が見えてきています。 今日は、特に注目したい 2つの研究 を、現場の目線でやさしくご紹介します。 ✅ 「何を、どれくらい」が見えてきました:複数の運動を組み合わせて、週3回以上 がひとつの目安です ✅ 続けることが何より大切:5年間の追跡では、参加率60%以上 のグループに認知機能の安定した経過傾向がみられました ✅ 一人で頑張らないこと:地域の仲間と一緒にやると 長続きしやすい——これが「効く運動」の隠れた条件かもしれません 少し長めの記事になりますので、気になるところからお読みください。 そもそも:MCI(軽度認知障害)ってどんな状態? 研究①:MCIの方に「どんな運動が効く」のか? 研究②:5年続けると、本当に差が出るのか? 「組み合わせる」と「続ける」のかけ算 家でできる組み合わせ運動の例 Toraponの現場から:地域体操教室で感じていること いま私たちにできること おわりに 〜進行しても、遅らせることはできる〜 そもそも:MCI(軽度認知障害)ってどんな状態? MCI(エム・シー・アイ) は Mild Cognitive Impairment の略で、日本語では「軽度認知障害」と呼ばれます。 ひとことで言うと、 「年相応の物忘れ」と「認知症」の あいだの状態 です。本人やご家族が「あれ?」と気付くことはあっても、まだ日常生活には大きな支障が出ていない段階のことを言います。 ただ、ここからが大事な話で、MCIは そのままにしておくと数年で認知症に進む方 もいれば、 元の状態に戻られる方や、長く安定したまま過ごされる方 もいらっしゃいます。 つまり、MCIは 「いま何をするか」で先が変わってくる段階 ——「分かれ道」のような時期です。 だからこそ、 「何を、どれくらいやればいいのか」 をできるだけ具体的に知っておきたいですよね。 研究①:MCIの方に「どんな運動が効く」のか? ひとつ目は、 MCIの方にどんな運動が一番効くのか を世界中の研究をまとめて比較した報告です(ネットワークメタ解析 と呼ばれる手法)。 複数のランダム化比較試験を集めて、 有酸素運動(ウォーキング・自転車など) 筋トレ(レジスタンス運動) バランス運動(太極拳・体操など) デュアルタスク(二重課題) 運動 を、 どれが一番認知機能を改善するか という観点で比べたものです。 ...

May 20, 2026 · 2 分
補聴器をつけた年配の女性が、娘とお茶を飲みながら笑顔で話しているイラスト

物忘れが始まってからの補聴器、意味はある?

「物忘れが出てきたと言われたけれど、耳も遠くて……。いまから補聴器をつけて、意味はあるんでしょうか」。 ご本人からも、ご家族からも、たまに聞かれる質問です。 このブログでは、補聴器について2回取り上げてきました。どちらも、まだ物忘れのない人が中心の話でした。今回は、すでに軽い物忘れ(MCI)が始まっている人を対象にした、2026年9月発表の試験をご紹介します。 ✅ 中国・上海で、難聴とMCIのある703人を、くじ引きで「補聴器の組」と「健康教室の組」(補聴器は使わず、聞こえのケアや健康について説明を受ける組)に分け、2年間調べました ✅ いちばん確かめたかった「認知症の段階へ進むのを防げるか」では、はっきりした差は出ませんでした ✅ 一方で、物忘れが「正常」まで戻った人は、補聴器の組で約15%、健康教室の組で約2%。ただし、偶然の可能性も残るため、研究者自身が慎重に受け止めるよう注意しています これまでの補聴器の記事は、こちらです。 👉 補聴器は、いつから使えばいいの? 👉 補聴器は、つけただけでは足りませんでした 目次 MCIとは? 703人を、くじ引きで2つに分けた 認知症への進行は、防げたとは言えなかった 「正常に戻った人」は、補聴器の組で多かった いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 MCIとは? MCI(軽度認知障害)とは、物忘れなどが年齢相応より目立つけれど、日常生活はおおむね自分でできている段階のことです。認知症の「手前」にあたります。 MCIの方の中には、認知症へ進む人もいれば、正常の範囲に戻る人もいます。だからこそ、この段階で何ができるかが注目されています。 MCIについては、こちらでくわしく書いています。 👉 認知症の種類とMCIをやさしく解説 703人を、くじ引きで2つに分けた 試験の対象は、上海の病院と地域で集めた、60歳以上で、中等度以上の難聴とMCIがある703人です(平均74.5歳)。学術誌『JAMA Neurology』に、2026年9月に発表されました。 補聴器の組(353人) 健康教室の組(350人) 内容 両耳の補聴器を無料で、専門家が調整 補聴器は使わず、聞こえのケア・持病の管理・生活習慣について説明を受ける 通う回数 6・12・24か月ごとに、調整と手入れ 同じ時期に、45分ほどの説明 物忘れの検査は、補聴器を外してから、どちらの組の人か知らない担当者がおこないました。 あなた 「くじ引き」で分けると、何がいいんですか? Torapon 「もともと元気な人が補聴器を選んでいた」というかたよりが起きにくいんです。くじ引きで分けると、2つの組は、年齢や元気さなどがだいたい同じになります。ちがうのは「補聴器を使ったかどうか」だけ。だから、もし結果に差が出れば、それは補聴器のおかげだったと考えやすくなるんです。これまで紹介した研究の多くは「関係が見られた」というところまででしたが、くじ引きの試験は、もう一歩ふみこんで確かめられます。 認知症への進行は、防げたとは言えなかった いちばん確かめたかったのは、2年のあいだに、認知症の段階まで進んだ人の割合です。 補聴器の組:約3.1% 健康教室の組:約4.7% 補聴器の組のほうが少なめでしたが、偶然の範囲を超える差とは言えませんでした。 研究者たちは、その理由のひとつとして、認知症へ進んだ人が予想よりずっと少なかったことを挙げています。進む人が少ないと、差を見つけにくくなるためです。 あなた じゃあ、補聴器は意味がなかったということですか? Torapon 「認知症への進行を防げた」とは言えなかった、というのが正確なところです。ただ、もうひとつ、見ておきたい結果があります。 「正常に戻った人」は、補聴器の組で多かった 試験では、はじめから「見る」と決めていたもうひとつの項目がありました。2年後に、物忘れが「正常」の段階まで戻った人の割合です。 補聴器の組:約15% 健康教室の組:約2% ただし、研究者自身が、この結果は慎重に受け止めてほしいと書いています。この試験で「いちばん確かめたいこと」として決めていたのは、前の章の「認知症への進行」のほうでした。こちらは「あわせて見ておく」項目だったので、偶然そうなった可能性も残る、ということです。ほかにも、注意点がいくつかあります。 物忘れの程度は、聞き取り中心の1つの物差しだけで判定していた 補聴器が無料だったので、参加者の答え方が良い方向にかたよった可能性がある 参加者の9割が家族と同居。一人暮らしの方に、同じように当てはまるかは分からない 中国語は、日本語とは性質のちがう言語で、日本でも同じ結果になるかは分からない それでも研究者たちは、補聴器は、認知症予防の効果がはっきりしなくても、会話のための大事な道具だと述べています。 あなた 物忘れが始まってからでも、補聴器を考えていいんですね。 Torapon はい。「MCIと言われたから、もう遅い」ということはありません。ただ、「補聴器で物忘れが治る」と期待しすぎないこと。会話が楽になる、家族と話す時間が増える。まずはそこを目的にするのが、いちばん自然だと思います。 いま、私たちにできること ☑ 耳鼻科で、聞こえを調べてもらう……物忘れの相談と一緒に、耳の相談もしてみてください ☑ 補聴器は「調整に通う」までがセット……この試験でも、半年〜1年ごとに調整していました(前回の記事 もどうぞ) ☑ 毎日、起きている時間につける……この試験の平均は1日約6時間でした。外す時間が長いと、慣れにくくなります ☑ ご家族は「つけてね」より「話そうね」……補聴器をつけて、話す相手がいることがいちばんの支えになります 📺 テレビの音量で、もめていませんか 補聴器を使う前、使い始めのころは、テレビの音量でご家族ともめることがよくあります。手元に置くスピーカーなら、テレビ本体の音量は下げたまま、手元でだけ大きくできます。 ...

October 17, 2026 · 1 分
頭の体操をするシニアのイラスト

脳の「処理スピード」を鍛えると、20年後の認知症リスクが下がる? 〜数週間の脳トレが教えてくれたこと〜

「脳トレって、本当に意味があるの?」―― そう感じたことは、ありませんか? ドリルやパズルをやってはみるものの、「これで本当に認知症が防げるのかな…」と、半信半疑の方も多いと思います。 ところが最近、その問いに 20年がかりで答えを出した研究 が話題になりました。 「ある脳トレを数週間受けただけで、認知症になるリスクが下がり、その効果が最長20年続いた可能性がある」 今回は、その内容をできるだけやさしくお伝えします。 ✅ 「情報を素早く処理する力」を鍛える脳トレを受けた人は、10年後の認知症リスクが約29%低かった ✅ その効果は 最長20年 続いた可能性。途中で「追加レッスン」を受けた人ほど、効果が大きかった ✅ 特別な道具はいりません。大事なのは「素早く見て・気づく」練習を 続けること 目次 どんな脳トレだったの? 2,800人を20年追いかけた研究 カギは「追加レッスン」 おうちでできること おわりに どんな脳トレだったの? 今回の主役は、「情報処理スピードのトレーニング」(処理速度=見たものを素早く理解し、判断する力)と呼ばれる脳トレです。 やることはシンプルで、画面にパッと出てくる絵や記号を 素早く見つけて答える というもの。慣れてくると、表示時間がどんどん短くなり、まわりにじゃまな情報があっても、目的のものを素早く見分けられるようになっていきます。 車の運転で「歩行者や標識にパッと気づく」あの感覚に近い力、とイメージするとわかりやすいかもしれません。 2,800人を20年追いかけた研究 この研究は、アメリカで行われた 「ACTIVE研究」 という、とても大きな調査がもとになっています。 対象:65歳以上の 健康な高齢者 2,802人 開始:1998年ごろ から、20年以上の追跡 体制:アメリカ国立衛生研究所(NIH)が支援 参加者を、いくつかの脳トレを受けるグループと、何もしないグループに分けて比べたところ―― 情報処理スピードの脳トレを受けた人は、10年後に認知症と診断されるリスクが約29%低かった そして2026年2月、医学誌『Alzheimer’s & Dementia』に発表された最新の解析では、その効果が 最長20年 にわたってみられた可能性が報告されました。 カギは「追加レッスン」 ひとつ大事なポイントがあります。それは、一度きりで終わらせないこと。 最初の5〜6週間のトレーニングのあと、1〜3年後に 「追加レッスン」(ブースター) を受けた人ほど、認知症リスクがより下がっていました。レッスンを1回受けるごとに、リスクがさらに少しずつ下がっていく傾向もみられたそうです。 運動と同じで、脳トレも 「ときどき思い出して、また続ける」 ことが効いてくる、というわけですね。 おうちでできること 研究で使われたのは専用のパソコンプログラムですが、その「素早く見て・気づく」エッセンスは、毎日の暮らしの中にも取り入れられます。 ✅ トランプの神経衰弱や間違い探し で、「素早く見つける」練習を ✅ 会話・カラオケ・囲碁将棋 など、人と関わりながら頭を使う遊びを ✅ そして何より、ウォーキングなど体を動かす習慣 を。体を動かすことは、最強の「脳トレ」でもあります ✅ 大切なのは「完璧」より 「ときどきでも、続けること」 ...

May 31, 2026 · 1 分
和やかに食卓を囲むシニア夫婦のイラスト

認知症予防は「食卓」から 〜MCIからの回復にも効く食事の整え方〜

「最近、何を食べたか思い出せない」「同じおかずばかりになっている気がする」―― 食卓を見ながら、ふとそんな小さな不安を感じることはありませんか? 実は、毎日の食事が、何十年もかけて少しずつ脳の健康をつくっていることが、近年の研究でだんだんはっきりしてきました。 そして、もし軽い物忘れ=**MCI(軽度認知障害)**の段階であれば、適切な対策で 健常な状態へ戻る可能性がある ことも分かっています。 ✅ 「これさえ食べれば治る」魔法の食品はありません。基本は 多様な食品をバランスよく ✅ 主食・主菜・副菜を、1日2食以上そろえることが質のよい食事の目安 ✅ 年代で食事のギアチェンジを:中年期はメタボ対策、高齢期はフレイル(虚弱)対策 今日は、認知症予防やMCIからの回復を支える「食事の整え方」を、できるだけやさしくまとめてみます。 目次 そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う 減塩・血糖・お酒の付き合い方 「共食」と五感の刺激 〜心と脳を元気に〜 私自身が実践していること(体験談) いま、私たちにできること おわりに そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 「食事で本当に脳が変わるの?」と思われるかもしれません。 これについて、近年こんなことが分かってきました。 いろいろな種類の食品を食べている人ほど、認知機能の低下が抑えられている 野菜・果物・魚を豊富に含む食事(地中海食や、それを応用した MIND食 と呼ばれるもの)は、抗酸化・抗炎症のはたらきによって認知症予防に役立つと考えられている 高血圧・糖尿病・高LDLコレステロールなど 血管の病気 は、認知症のリスクを高めることが分かっている。だから「血管の健康を保つ食事」が、そのまま「脳を守る食事」になる つまり食事は、ある日突然脳に効く特効薬ではなく、毎日少しずつ、脳に栄養を貯金していくようなものなのです。 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 「何を食べたらいいの?」と聞かれたら、私はまず 3つの皿をそろえること をおすすめしています。 主食(しゅしょく) ごはん、パン、麺類など エネルギー源 になります 主菜(しゅさい) 魚、肉、卵、大豆製品(豆腐・納豆など) 筋肉や脳の材料となるたんぱく質 が豊富 副菜(ふくさい) 野菜、きのこ、海藻、サラダ、煮物 ビタミン・ミネラル・食物繊維 で、脳の酸化ストレスを和らげます そこに、果物・ナッツ・乳製品を少しプラスできれば、栄養バランスはほぼ整います。 1日2食以上、主食・主菜・副菜がそろっているか―― これを意識するだけで栄養バランスは完璧です。 朝・昼・夜の小さな工夫 朝食:手間をかけずに ゆで卵 や 納豆 で主菜を確保。ヨーグルト で乳製品もプラス 昼食・夕食:魚(鯖・イワシ・サンマなど) を週に2〜3回。緑黄色野菜 を2種類以上 おやつ:菓子パンやスナックの代わりに ナッツ・果物・チーズ を選ぶ 「全部きちんと」と思うと続きません。1日1回からでOK。私もそうしています。 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う ...

May 9, 2026 · 2 分