窓辺で本を読み、語り合う年配のふたりの水彩画

いちばん「頭が働く」のは何歳ごろ? 〜研究が示した「55〜60歳」という答え〜

「人の名前が、すぐに出てこない」 「新しい機械の使い方を覚えるのが、若いころより時間がかかる」 そんなふうに感じて、「もう歳だから」とため息をついたことはありませんか? ところが2025年、その常識をゆさぶる研究が発表されました。心の働きを総合すると、いちばん高くなるのは20代ではなく、55〜60歳ごろだというのです。 理学療法士として現場に立っていると、年齢を重ねた方の落ち着いた判断に、何度も助けられてきました。今回は、その感覚を裏づけるような研究のお話です。 ✅ 「頭のよさ」は一つではありません。覚えるスピードは20代がピークでも、知識・ことば・経験は60代まで伸びていくことがわかっています ✅ 16の側面をまとめると、総合的なピークは55〜60歳ごろ。下がりはじめるのは65歳ごろ、下がり方が大きくなるのは75歳以降と報告されました ✅ ただし、これは平均の傾向の話です。個人差はとても大きく、「何歳だからこう」と決めつけられるものではありません 目次 「頭のよさ」は、ひとつじゃない 16の側面を足し合わせたら、山のかたちになった 70代・80代まで伸びつづけるものもある この研究には、限界もあります 現場で感じていること いま私たちにできること おわりに 「頭のよさ」は、ひとつじゃない あなた 頭の働きは、若いころがいちばんいい……そう思っていました。 Torapon 半分は当たっていて、半分はちがうんです。「頭のよさ」には少なくとも2種類あると考えられていて、その2つは年齢とともに反対の方向に動くんですよ。 心理学では、「頭のよさ」を大きく2つに分けて考えます。 覚えるスピードや、初めての問題を解く力(専門的には「流動性知能」といいます)……こちらは20代ごろがピークで、そのあとゆっくり下がっていきます 知識・ことば・積み上げた経験(「結晶性知能」といいます)……こちらは60代ごろまで伸びつづけると報告されています 「人の名前が出てこない」「新しい機械に手間取る」というのは、前者の変化です。たしかにそこは、年齢とともにゆっくりになります。 でもそのあいだに、もう一方はずっと育ち続けているのです。長年つちかった知識、ことばの豊かさ、「こういうときは、こうしたほうがいい」という勘どころ。それらは、若いころには持っていなかったものです。 脳の中で何が起きて「ゆっくりめ」になるのかは、こちらの記事でくわしくお話ししています。 👉 認知機能はなぜ衰えるの?〜脳の中で起きている4つの変化〜 16の側面を足し合わせたら、山のかたちになった ここで紹介したいのが、オーストラリアの西オーストラリア大学のジル・ギニャック博士と、ポーランドのワルシャワ大学のマルチン・ザイェンコフスキ博士による研究です。2025年に、心理学の専門誌『Intelligence(インテリジェンス)』に発表されました。 二人が取り組んだのは、こんな疑問です。 「覚える力のピークが20代なら、どうして仕事で成果を出す人のピークは、50代後半なのだろう?」 そこで研究チームは、「人生をうまく運ぶ力」に関わる9つの分野・16の側面を選び出しました。推論する力、記憶、考えるスピード、知識、感情をあつかう力、まじめさ、気持ちの安定、お金についての判断力、道徳的な考え方、思いこみに振り回されにくさ……といったものです。 そして、それぞれについて「年齢とともにどう変わるか」を既存の大規模なデータから集め、同じものさしにそろえて、一本の指標にまとめました。 その結果が、こちらです。 18歳からぐんぐん上がり、55〜60歳ごろがいちばん高い 65歳ごろから下がりはじめ、75歳以降は下がり方が大きくなる 計算の仕方を変えても、ピークはやはり55〜60歳ごろ あなた 55〜60歳がピーク……。ちょうど、いちばん忙しい時期ですね。 Torapon そうなんです。会社で責任のある立場を任される時期と、ぴったり重なります。研究チームも、「仕事で成果が出るピークと、この山の頂上はほぼ同じ」だと述べています。経験を積んだ人が現場で頼りにされるのは、気のせいではなかった、というわけですね。 なお、「経験でみがかれる力」を重く見て計算した場合、85歳ごろの高さは18歳のころと同じくらいになったとも報告されています。ただし中身は別もので、得意なことと苦手なことが入れ替わっている——そんなイメージです。 70代・80代まで伸びつづけるものもある この研究でとくに興味深いのは、60歳を過ぎても伸びつづけるものがあった点です。 「もったいない」に引きずられにくい……たとえば、あまり面白くない映画を観ていて、「お金を払ったのだから、最後まで観ないと損だ」と思って座り続けてしまう。こういう判断のくせは、だれにでもあります。ところが年齢を重ねた方は、ここで上手に切り上げられると報告されています。しかもこの力は、70代・80代まで伸びつづける可能性があるそうです お金についての判断力……60代後半ごろまで伸びていきます 道徳的な考え方……年齢とともに深まっていくと報告されています まじめさ(几帳面さ)や、気持ちの安定……60代から70代にかけて、いちばん高くなっていきます いっぽうで、中年以降にゆっくり下がっていくものもありました。頭の切り替えの早さ、相手の考えを読みとる力(65歳ごろから)、そして「あれこれ考えたい」という意欲などです。 あなた 年をとると、頑固になるものだと思っていました。 Torapon おもしろいですよね。あわてて飛びつかず、落ち着いて決められる——それも立派な力です。若さの「速さ」とはちがう種類の強さが、年齢とともに育っている、ということなんです。 この研究には、限界もあります ここは大事なところなので、正直にお伝えします。この研究には、いくつか気をつけて読むべき点があります。 多くが「横断データ」である……同じ人を何十年も追いかけたのではなく、いろいろな年齢の人を、同じ時期に比べたものが中心です。そのため、「年齢による変化」と「育った時代のちがい」が混ざっている可能性があります 欧米のデータが中心……主に欧米の豊かな国のデータから集められています。日本を含む他の地域でも同じ形になるかは、これから調べる必要があります あくまで「平均」の話……人によるちがいは、とても大きいものです 研究チームは論文の中で、「高度な判断を求められる仕事には、40歳未満や65歳以上の人は向きにくいかもしれない」という見方にも触れています。ただ、これは平均から導いた一般論です。 年齢だけを見て「この人はもう」と判断するのではなく、その人が実際にどうかを見る。研究者自身も、そこを強調しています。 現場で感じていること 理学療法士として働いていると、年齢を重ねた方の「落ち着き」に助けられる場面が、たしかにあります。 ...

July 30, 2026 · 1 分
野球を応援して喜ぶシニアのイラスト

"好きなこと"が、認知症の心をほどく? 〜阪神優勝とBPSDの研究から〜

認知症のご家族が、以前より 怒りっぽくなった、あるいは 元気がなくなって一日ぼんやり過ごすようになった――そんな変化に、戸惑ったことはありませんか? こうした、もの忘れ以外の「心と行動の変化」は、ご本人にとっても、支えるご家族にとっても、とてもつらいものです。 そんな中、ちょっと驚くような、でも心があたたかくなる研究が報告されました。テーマは、なんと 「プロ野球」。阪神タイガースが優勝したあと、ファンの認知症の方の “心の症状” がやわらいだ というのです。 理学療法士として長く介護の現場にいる私自身、学生時代は野球部で、いまも阪神ファンのひとり。この話には、つい身を乗り出してしまいました。今日は、この研究から見えてくる 「好きなこと・楽しみの力」 について、ごいっしょに考えてみたいと思います。 ✅ 阪神ファンの認知症の方 19名 で、2023年の優勝後に BPSD(ビーピーエスディー=認知症にともなう心と行動の症状)が やわらいだ と報告された ✅ 怒りっぽさ・無気力・興奮・昼夜逆転・気分の落ち込みなど、幅広い症状 で良い変化がみられた ✅ ただし 19名の小さな探索的な研究。「好きなこと・楽しみが心に効くかもしれない」という ヒント として受け止めたい 目次 そもそも「BPSD」って何? どんな研究だったの? どんな症状が、やわらいだの? なぜ「好きなこと」が、心に効くのでしょう 理学療法士として、私自身のこと いま、私たちにできること おわりに そもそも「BPSD」って何? 認知症というと、「もの忘れ」を思い浮かべる方が多いと思います。これは 中核症状(ちゅうかくしょうじょう)と呼ばれる、脳のはたらきが直接およぼす症状です。 いっぽうで、それを取り巻くように現れるのが BPSD(行動・心理症状)です。たとえば、 怒りっぽくなる、強い言葉が出る 不安そうにする、落ち着かず動き回る 元気がなくなる、何ごとにも関心をしめさなくなる 昼と夜が逆転する 気分が沈む といったものです。BPSDは、ご本人の体調・気持ち・まわりの環境 などによって、強くなったり、やわらいだりします。裏を返せば、接し方や環境を整えることで、和らげられる可能性がある ということでもあります。 どんな研究だったの? 今回の研究は、大阪・脳神経内科はつたクリニックの 初田裕幸(はつた ひろゆき)医師 らによるもので、医学誌 Geriatrics & Gerontology International(2026年5月号)に報告されました。 研究では、関西地方にお住まいの認知症の方 855名 を対象に、プロ野球の試合結果 と BPSDの変化 に関係がないかを調べました。 そして、そのうち 阪神タイガースのファンだった19名 に注目したところ、2023年にチームがセ・リーグで優勝したあと、BPSDのスコア(症状の強さを表す点数)が、はっきりと下がっていた(=症状がやわらいでいた)のです。 ここで、ひとつ大切なことを正直にお伝えします。これは 「探索的レトロスペクティブ研究」 といって、過去の記録をふり返って関係を探す、最初の手がかりを見つけるタイプ の研究です。注目したのも19名という小さな人数。ですから、「優勝すれば症状が必ず良くなる」と言い切れるものではありません。あくまで 「こういう面白い関係がありそうだ」という、出発点の発見 です。 ...

June 24, 2026 · 1 分
猛暑の中で涼をとるシニアのイラスト

夏の暑さは、脳にも効いていた? 〜猛暑と認知症リスク、今年からできる対策〜

年々きびしくなる夏の暑さ。「ご高齢のご家族が心配」「自分も夏になると体がつらい」と感じている方は、多いのではないでしょうか。 暑さといえば、まず気になるのは 熱中症。けれど最近、それだけではない可能性を示す研究が報告されました。テーマは 「長く続く猛暑と、認知症のリスク」 です。 日本の大規模な調査で、極端な暑さに何年もさらされることが、認知症の発症リスクと関係していそうだ という結果が出たのです。少し心配な話に聞こえるかもしれませんが、大事なのは 「だからこそ、今年の夏からできる対策がある」 ということ。今日は、研究の中身と、すぐに実践できる暑さ対策を、ごいっしょに見ていきます。 ✅ 日本の高齢者 約5万7千人 の調査で、極端な暑さに多くさらされた人ほど、認知症の発症リスクがやや高まる傾向がみられた ✅ 目安として、猛烈に暑い日が7日増えるごとに、認知症のリスクが約9%・亡くなるリスクが約13% 高まる計算だった ✅ ただし「暑さが原因」と言い切れる段階ではない。だからこそ 今年の夏から、エアコン・水分・室温の対策 を大切にしたい 目次 どんな研究だったの? どれくらい、リスクが上がるの? なぜ暑さが、脳に関わるのでしょう 理学療法士として、夏の現場で感じること いま、私たちにできること おわりに どんな研究だったの? あなた 暑さで「熱中症」はよく聞きますけど、「認知症」にも関係があるなんて初耳です。どんな調査だったんですか? Torapon 日本の高齢者 約5万7千人 を長く追いかけた、とても大きな調査なんです。順番に見ていきましょう。 この研究は、東京科学大学・公衆衛生学分野の 森田彩子(もりた あやこ)氏 らによるもので、認知症の世界的な医学誌 Alzheimer’s & Dementia(2026年1月4日号)に報告されました。 使われたのは、JAGES(ジェイジス=日本老年学的評価研究) という、日本の高齢者を長く追いかけた大規模な調査のデータ(2016〜2019年)です。対象になったのは、同じ町に30年以上住み、認知症がなく、自立して生活している65歳以上の方 約5万7千人。これだけ多くの方を追跡した、信頼性の高い調査です。 研究では、それぞれの地域の ふだんの気候とくらべて「極端に暑い日」が何日あったか を計算し、その暑さへの「のべの量」が多い人と少ない人で、その後の 認知症の発症 や 死亡 に差が出るかを調べました。 追跡のあいだに、2,454名(4.3%)が認知症を発症し、2,375名(4.2%)が亡くなっていました。 どれくらい、リスクが上がるの? 結果は、「極端な暑さにさらされた量が多い人ほど、認知症や死亡のリスクがやや高くなる」 という傾向を示すものでした。 数字でいうと、わかりやすい目安はこちらです。 猛烈に暑い日が7日ふえるごとに、認知症になるリスクは約 9%、亡くなるリスクは約 13% 高まる計算だった さらに研究チームは、2016〜18年に実際にあったレベルの猛暑 にあてはめると、認知症のリスクは 約1.43倍、死亡のリスクは約1.63倍になると試算した あなた 「1.43倍」って聞くと、ちょっとこわい数字です……。 Torapon どきっとしますよね。でも、ここで落ち着いて受け止めたい点があるんです。 これは たくさんの人を集めて見たときの「全体の傾向」 であって、「暑い夏を過ごした人が必ず認知症になる」という意味ではありません。また、この種の研究は 「関係がありそうだ」を示すもの で、暑さが直接の原因だと断定できる段階ではない、ということも大切です。 ...

June 25, 2026 · 1 分
予防接種と健康を考えるイメージ

帯状疱疹のワクチンで、認知症が減る? 〜50万人の調査が示したこと〜

「帯状疱疹のワクチン、打ったほうがいいのかしら」 「役所から案内が届いたけれど、どうしよう」 そんなふうに迷っておられる方が、まわりにいらっしゃるかもしれません。 いま、この帯状疱疹のワクチンについて、「打った人は、認知症になる人が少なかった」という研究が、世界のあちこちから報告されています。 ただ、はじめにお伝えしておきたいことがあります。この記事は、ワクチンを勧めるためのものではありません。どんな研究が出ているのかを正確にお伝えして、かかりつけの先生と相談するときの材料にしていただくためのものです。 ✅ アメリカで66歳以上 約51万人を4年間追いかけた調査で、ワクチンを打った人の認知症の割合は 18.8%、打っていない人は 24.6% でした ✅ イギリス・ウェールズの28万人の調査でも、同じ方向の結果(認知症の診断が約20%少ない)が報告されています ✅ ただし、いずれも「打ったから減った」と証明したものではありません。打つかどうかは、持病やお薬とあわせて、かかりつけの医師とご相談ください 目次 帯状疱疹って、どんな病気? 51万人の調査でわかったこと もうひとつの手がかり「自然の実験」 なぜ、ウイルスと認知症がつながるの? ここは、慎重に見てください 日本では、いまどうなっている? 現場で感じていること いま私たちにできること おわりに 帯状疱疹って、どんな病気? 子どものころにかかった水ぼうそう。あのウイルスは、治ったあとも体からいなくなるわけではありません。神経のそばに、じっと隠れて眠っています。 そして、年齢を重ねたり、疲れや病気で体の守る力(免疫)が弱まったりすると、眠っていたウイルスが目を覚まします。神経に沿って皮膚に出てくるのが、帯状疱疹です。 体の左右どちらかに、帯のように痛みと発疹が出るのが特徴で、ピリピリ、ズキズキとした強い痛みをともないます。 あなた 発疹が治れば、それで終わりなのでしょうか。 Torapon それが、そうとも限らないんです。発疹が治ったあとも痛みだけが長く残ることがあって、これを帯状疱疹後神経痛と呼びます。数か月から、ときには年単位で続く方もいらっしゃいます。帯状疱疹がやっかいなのは、この痛みの後遺症なんですね。 51万人の調査でわかったこと ここからが本題です。近年、この帯状疱疹のワクチンと、認知症との関係を調べた研究が、次々と発表されています。 2026年6月、アメリカのブラウン大学の研究チームが、医学誌『Annals of Internal Medicine』に大きな調査結果を発表しました。 対象は、アメリカの医療施設にいた 66歳以上の50万9926人 4年間、認知症になるかどうかを追いかけた 使われたのは、いま日本でも使える組換えワクチン(シングリックス) その結果が、こちらです。 打っていない人の 24.6% に対して、打った人は 18.8%。差は5.8ポイント、割合にすると約24%低いという結果でした。研究チームは「およそ17人に1人の認知症を防げる可能性がある」と述べています。 もうひとつの手がかり「自然の実験」 「たまたまそうなっただけでは?」と思われるかもしれません。実は、それを確かめるのにとてもよくできた研究が、2025年に科学誌『Nature』に発表されています。 舞台はイギリスのウェールズ。ここでは以前、「1933年9月2日以降に生まれた人はワクチンを打てるが、それより前に生まれた人は一生打てない」という、誕生日で区切る制度がありました。 あなた たった数日の差で、打てる人と打てない人に分かれてしまったのですね。 Torapon そうなんです。そして研究者たちは、そこに目をつけました。生まれた日が1週間違うだけの人たちは、体質も暮らしぶりも、ほとんど同じはず。それなのに、ワクチンを打てたかどうかだけが違う。これなら「くじ引きで分けた実験」に近い形で比べられる、というわけです。 28万2541人を7年間追いかけた結果、ワクチンを打てた側では、認知症と診断された人が3.5ポイント少なく、割合にすると約20%低いという結果でした。とくに女性で、この傾向がはっきりしていました。 こちらは古いタイプの生ワクチンを使った研究です。種類の違うワクチンで、別々の国で、同じ方向の結果が出た——ここが、研究者たちが注目している理由です。 なぜ、ウイルスと認知症がつながるの? しくみは、まだはっきりとはわかっていません。ただ、いくつかの考え方があります。 ウイルスが神経を傷つける……目を覚ましたウイルスは神経に炎症を起こします。それが脳にも影響するのではないか、という考え方です 血管が傷む……帯状疱疹のあと、脳卒中や心筋梗塞が増えるという報告があります。血管の傷みは、認知症とも関わりの深いものです ワクチンが免疫全体を整える……ウイルスを抑えるだけでなく、体の守るしくみそのものによい影響があるのではないか、という見方もあります 血管の状態が脳を守るという話は、こちらの記事でもお話ししています。 👉 認知症を防ぐ「血管と代謝」の整え方 ここは、慎重に見てください 大事なところなので、はっきり書いておきます。これらの研究は、「ワクチンを打てば認知症を防げる」と証明したものではありません。 打つ人と打たない人は、もともと違う……ワクチンを打つ方は、健康に気を配っている方が多い傾向があります。研究チームはその影響を計算で取り除こうとしていますが、完全には取り除けません 研究チーム自身が慎重……ブラウン大学のチームも「ワクチンが理由だと確実には言えない」と明言し、今後さらに検証が必要だとしています 認知症を防ぐための薬ではありません……帯状疱疹ワクチンは、あくまで帯状疱疹を防ぐためのものです あなた では、この研究はあまり意味がないということでしょうか。 ...

August 1, 2026 · 1 分
ゴルフ場で仲間と一緒に体をほぐすシニアたちの水彩画

ゴルフを続けている人は、頭も元気? 〜4,575人の研究が教えてくれた「続けること」の意味〜

「そろそろ、ゴルフもやめどきかな」 「腰も痛いし、スコアも昔のようにはいかないし……」 そんなふうに、長く続けてきた趣味を手放すことを考えたことはありませんか。 2026年、国立長寿医療研究センターの島田裕之先生たちが、高齢者4,575人を対象にした研究を発表しました。テーマは、ゴルフと頭の元気との関係です。 理学療法士として現場に立っていると、趣味を手放した方から、少しずつ元気がなくなっていく——そんな場面に何度か出会うことがありました。今回の研究は、その実感に静かに重なるものでした。 ✅ 認知機能が下がっていた人の割合は、今もゴルフをしている人14.1%/やめた人20.1%/したことがない人21.6% でした ✅ 効いていそうなのは、歩く・頭を使う・人と交わる、この3つが同時にそろうこと です ✅ ただし 回数を増やす必要はありません 。関係していたのは「たくさん回ること」ではなく「続いていること」でした 目次 4,575人を、3つのグループに分けてみたら ゴルフの、何が効いているのでしょう ここは正直に——「だからゴルフをすれば安心」とは言えません では、ほかのスポーツや活動はどうなのでしょう 共通しているのは「3つ」と「続いていること」 私自身のこと いま私たちにできること おわりに 4,575人を、3つのグループに分けてみたら この研究では、高齢の方4,575人を、こんなふうに3つに分けて比べました。 今もゴルフをしている人 昔はしていたが、やめた人 ゴルフをしたことがない人 そして4種類の検査で、認知機能が下がっているかどうかを調べました。結果が、こちらです。 今も続けている人が14.1% 。やめた人が20.1%、したことがない人が21.6%でした。統計的にみても、続けている人は「したことがない人」よりはっきり低い、と報告されています。 さらに興味深いのは、次の2点です。 ゴルフ歴が長い人ほど、認知機能が下がっていない傾向がありました いっぽうで、年間のラウンド数や練習の量とは、はっきりした関係が見られませんでした あなた ゴルフをやめてしまった人は、もうダメということでしょうか……。 Torapon いいえ、そう読むのは早いです。実はこの研究、記憶に関しては「やめた人」にも良い関連がみられた と報告しています。それに、あとでお話ししますが、この数字には 逆向きの説明 も十分にあり得るんです。「頭が心配になってきたから、ゴルフをやめた」という順番ですね。 まとめると、この研究がいちばん強く示していたのは、こういうことになります。 月に何回も回っている人が良い成績だったのではありません。回数は少なくても、ゴルフをやめずに長く続けてきた人——そちらのほうに、良い結果が出ていたのです。 ゴルフの、何が効いているのでしょう では、ゴルフの何が頭に関わっているのでしょうか。研究チームは、ゴルフを「体・頭・人づきあい、いくつもの要求が重なる活動」だととらえています。 ① 歩く 18ホールを回れば、カートを使っても、けっこうな距離を歩きます。歩いて回れば8〜10km、1万歩を超えることも珍しくありません。しかも平らではありません。上り下り、傾いた足場、ラフの中。ただの散歩より、体の使い方はずっと複雑です。 ② 頭を使う ここがゴルフの、いちばん面白いところかもしれません。 風の向きと強さ、グリーンまでの残り距離、足元の傾き、池やバンカーの位置、そして今日の自分の調子。それを全部あわせて、1本のクラブを選ぶ 。しかも、状況は毎回ちがいます。同じ場面は二度とありません。 あなた 言われてみれば、ラウンド中はずっと何か考えていますね。 Torapon そうなんです。しかも「決めて、打って、結果を見て、次を考える」のくり返しでしょう。これは脳の中でも 段取りをつけたり、切り替えたりする働き をよく使います。ふだんの生活では、なかなかここまで使わないんですよ。 これを裏づける研究もあります。同じ島田先生たちが2018年に行った試験では、運動習慣のなかった65歳以上の106人を、24週間のゴルフ教室と健康講座のグループにくじ引きで分けました。その結果、ゴルフ教室のグループでは、単語を覚える力が6.8%、お話を覚える力が11.2% 高くなったと報告されています。 こちらは「くじ引きで分けて比べた試験」なので、ゴルフの側に原因があると言いやすい研究です。 ③ 人と交わる そしてもう一つ。ゴルフは、4時間前後を、だれかと一緒に過ごす遊びです。 ...

August 11, 2026 · 2 分
夜空と眠りのイメージ

眠っている間に、脳は「明日の準備」をしている? 〜睡眠と“未来の記憶”の意外な関係〜

「寝ている間って、脳はただ休んでいるだけなのかな?」 ふと、そんなふうに思ったことはありませんか。 じつは睡眠中の脳は、思っている以上に いそがしくはたらいている ことがわかってきました。今回は、そんな研究のひとつをご紹介します。 脳は眠っている間に、「昨日までの記憶」を整理するだけでなく、「これから経験すること」の準備まで進めている ✅ 睡眠中の脳は、過去の記憶を保存する はたらきと、未来の記憶に備える はたらきを、同時に 進めていた ✅ これから覚えることを担当する細胞が、経験するより前の睡眠中に、すでに準備されている ことがわかった ✅ つまり睡眠は「ただの休み」ではなく、脳が舞台裏でせっせと働いている時間 だった(※マウスでの研究です) 目次 睡眠と記憶の、これまでの話 見つかった「明日の準備」のしくみ いま私たちにできること おわりに 睡眠と記憶の、これまでの話 私たちが眠っている間、脳は その日に見聞きしたことを整理して、しっかりした記憶に変えている ――これは以前からよく知られていました。 詳しくは、こちらの記事もどうぞ。 👉 眠っている間、脳は何をしているの? ところが今回の研究では、脳が整理しているのは「過去」だけではなかった、という新しい一面が見えてきました。 見つかった「明日の準備」のしくみ 富山大学のチームが、自由に動きまわるマウスの脳を、特別な小さな顕微鏡でのぞいて観察しました。 すると――記憶を担当する細胞のうち、「これから経験することを覚える」役の細胞 が、その経験をする より前の睡眠中に、すでに準備されている ことがわかったのです。 しかもこの“準備係”の細胞は、前の出来事を覚えたあとの睡眠中に用意される ようで、「昨日の経験」が「明日の記憶の受け皿」づくりに影響している可能性も示されました。 脳は眠っている間に、過去をしまいながら、未来の置き場所まで整えている――そんなイメージです。 ※ この研究は2025年、科学誌『Nature Communications』に発表されたものです。マウスでの研究 であり、人でまったく同じことが起きると確認されたわけではありません。 いま私たちにできること むずかしい話になりましたが、私たちにできることは、とてもシンプルです。 ✅ 睡眠時間をけずらない(記憶の整理も準備も、眠っている間に進みます) ✅ 毎日だいたい同じ時間に寝起きする(脳のリズムが整います) ✅ 寝る前のスマホ・明るい光をひかえる ✅ 昼間に体を動かす(夜の眠りが深くなります) 「しっかり眠ること」が、昨日の自分にも、明日の自分にも役立っている。そう思うと、眠る時間がちょっと愛おしく感じられますね。 具体的な眠り方のコツは、こちらにまとめています。 👉 脳が喜ぶ眠り方 おわりに 「寝る子は育つ」と言いますが、どうやら 大人の脳にとっても、睡眠は“育ちの時間” のようです。 過去を整理し、未来に備える――そんな脳の働きを思いながら、今夜もゆっくり休んでください。それが、いちばん身近な“脳のケア”なのかもしれません。 📚 あわせて読みたい一冊 PR スタンフォード式 最高の睡眠 睡眠研究の世界的な拠点・スタンフォード大学の研究者が、「眠りの質を上げるコツ」をやさしくまとめた30万部超のベストセラー。今日からできる工夫がたくさん載っています。 Amazonで見る 楽天で見る 参考にした情報 富山大学 学術研究部医学系 生化学講座の研究/井ノ口馨 卓越教授ほか 科学誌『Nature Communications』2025年発表の論文(睡眠中の記憶の並行処理) ※ 本記事は、上記の信頼できる研究・大学発表をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。紹介した内容は研究段階のものです。睡眠や体調についてご心配がある場合は、かかりつけ医にご相談ください。

June 20, 2026 · 1 分
朝日のイラスト

アルツハイマー病に明るい光? 〜『NAD+』研究の進展と、いま私たちにできること〜

ご家族にアルツハイマー病の方がいらっしゃる、あるいは「もしかして自分も…」と気になっている。 そんな方にとって、「いつか治る薬は出るのだろうか」 という思いは、いつも心のどこかにあるのではないでしょうか。 最近、医療ニュースで興味深い研究が紹介されました。 「進行したアルツハイマー病が『元に戻る』可能性」 そんな見出しが踊る、最新の研究レポートです。 私自身、母がアルツハイマー型認知症で施設に入所しているので、この記事を読んだとき、思わず食い入るように画面を見つめました。 今回は、その内容を 冷静に、わかりやすく お伝えしつつ、いま私たちにできることを一緒に考えてみたいと思います。 ✅ 海外で「進行したアルツハイマー病から脳の機能を取り戻す可能性」を示す研究が発表されました ✅ 鍵となるのは 「NAD+(ナドプラス)」 という、細胞のエネルギー源となる物質 ✅ ただし まだマウスの段階。すぐ使える治療ではないけれど、これまでにない新しい希望が見えてきました 目次 これまでの治療と、何が違うの? NAD+(ナドプラス)ってどんな物質? 研究でわかったこと でも、すぐ人に使えるわけじゃない理由 私が感じたこと いま、私たちにできること おわりに これまでの治療と、何が違うの? これまでのアルツハイマー病の治療や薬は、「進行を遅らせる」ことが目標でした。 最近話題になった抗体薬(レカネマブなど)も、脳にたまる「アミロイドβ」というゴミを取り除いて、進行をゆっくりにする働きをします。とても大切な進歩ですが、「失われた記憶や能力が戻ってくる」わけではありません。 ところが今回の研究では── これまでの治療 今回の研究 目標 進行を 遅らせる 失われた機能を 取り戻す ねらい アミロイドβの除去 脳の 修復力 を取り戻す 段階 一部すでに使用中 まだマウス実験 「取り戻す可能性」というのは、これまでなかった視点です。だから医療界では 画期的 と評価されています。 NAD+(ナドプラス)ってどんな物質? NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド) という名前は難しいですが、はたらきはシンプルです。 私たちの すべての細胞の中 に存在し、エネルギーを生み出したり、傷ついた DNA を修復したり するために欠かせない、いわば「燃料」のような物質です。 体が元気に動くにも、傷を治すにも、NAD+ が必要です。 NAD+ が枯渇すると… 研究チームは、アルツハイマー病のマウスの脳と、実際の人間の患者さんの脳でも、この NAD+ のバランスが崩れて、枯渇している ことを突き止めました。 つまり── 脳がダメージを受けても、それを 修復するための「燃料」が足りない。 結果として、脳の防御システムが崩れ、アルツハイマー病が進んでいく。 ...

May 4, 2026 · 1 分
脳のイラスト

脳は「自分で治す力」を取り戻せる? 〜改良型ビタミンKと神経再生の研究〜

「一度こわれた脳の神経は、もう元には戻らない」―― 長いあいだ、そう考えられてきました。 でも、その常識を少しずつ書きかえるような研究が出てきています。今回は、日本の大学から届いた、こんなお話です。 ビタミンKを改良した新しい物質が、「神経のもと」から神経細胞が育つのを、約3倍も後押しした ワクワクする話ですが、これも まだ研究の入り口 の段階です。「将来が楽しみな芽」として、やさしくお伝えします。 ✅ 芝浦工業大学のチームが、ビタミンKを改良した新しい化合物 をつくった ✅ その化合物は、「神経のもと(神経幹細胞)」を神経細胞に変える力が、天然のビタミンKの約3倍 だった ✅ ただし、これは 培養した細胞での実験。市販のビタミンKサプリとは 別物 で、「飲めば脳が再生する」話ではありません 目次 神経細胞は、本当に増えないの? 改良型ビタミンKの研究 ここを誤解しないで おわりに 神経細胞は、本当に増えないの? 私たちの脳は、たくさんの 神経細胞 がつながり合ってできています。これらは増えにくく、傷つくと戻りにくい――それが長年の「常識」でした。 ところが近年、脳の中には「神経のもと(神経幹細胞=しんけいかんさいぼう)」が残っていて、条件がそろえば 新しい神経細胞が生まれうる ことが分かってきました。そこで「このもとを、上手に神経細胞へ育てられないか?」という研究が進んでいるのです。 改良型ビタミンKの研究 芝浦工業大学のチームは、ビタミンK に注目しました。ビタミンKをそのまま使うのではなく、ビタミンAに関係する成分と組み合わせて、新しい化合物を設計したのです。 すると、その化合物は「神経のもと」を神経細胞に変える力が、天然のビタミンKのおよそ3倍 にもなりました。研究チームは、将来的に アルツハイマー病やパーキンソン病 のように神経が失われる病気の治療に、役立つ可能性があると期待しています。 この研究は2026年、専門誌『ACS Chemical Neuroscience』に発表されました。 ここを誤解しないで とても大事な注意点があります。 今回すごい働きを見せたのは、研究者が 新しく設計した特別な化合物 です。納豆や青菜に含まれる、ふだんのビタミンKとは別物 ですし、市販のビタミンKサプリを飲めば脳が再生する、という話ではありません。 また、実験は 培養した細胞 で行われたもので、人や動物の体で確かめるのはこれからです。期待しすぎず、研究の進み具合を見守りたいですね。 ⚠️ 血液をさらさらにするお薬(ワルファリンなど)を飲んでいる方 は、ビタミンKのとり方に注意が必要です。食事やサプリを変える前に、必ずかかりつけ医にご相談ください。 ビタミンKそのものは、骨や血管の健康に欠かせない大切な栄養です。納豆・ほうれん草・ブロッコリーなどから、ふだんの食事でバランスよく とるのがおすすめです。 おわりに 「こわれた脳は戻らない」という常識が、研究の進歩で少しずつ変わろうとしています。脳が 自分自身を修復する力 を引き出す――そんな未来の入り口に、私たちは立っているのかもしれません。 すぐに治療が変わるわけではありませんが、こうした地道な研究の積み重ねが、いつか大きな希望につながります。今日できることは、バランスのよい食事と、無理のない生活。基本を大切にしながら、明るいニュースを待ちましょう。 📚 あわせて読みたい一冊 PR LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界 ハーバード大学の老化研究の第一人者が、「老い」を科学の力でどこまで遅らせ、若返らせられるのかを語った世界的ベストセラー。体や脳が自分を修復する力という、今回の話とも通じるテーマを大きな視野で学べます。 Amazonで見る 楽天で見る 参考にした情報 芝浦工業大学の研究チーム(ビタミンKを改良した神経再生化合物) 専門誌『ACS Chemical Neuroscience』2026年発表の論文 ※ 本記事は、上記の信頼できる研究・大学発表をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。紹介した内容は培養細胞を用いた研究段階のものであり、治療効果やサプリメントの効果を示すものではありません。お薬の服用中の方・治療中の方は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

June 1, 2026 · 1 分
朝日と研究のイメージ

アルツハイマーの「炎症スイッチ」が見つかった? 〜脳の火を消す研究の最前線〜

「認知症の薬や治療は、これからどうなっていくの?」 ご家族のことを思って、そんなふうに気になっている方も多いと思います。 今回は、アルツハイマー病の研究の最前線から、ひとつ明るいニュースが届きました。 アルツハイマー病の脳で「炎症を止まらなくするスイッチ」になっているタンパク質が見つかった ただし、これは まだ研究の段階 の話です。期待しすぎず、でも前向きに――そんな気持ちで読んでいただければと思います。 ✅ アルツハイマー病の脳では「STING(スティング)」というタンパク質が、炎症をいつまでも続けさせるスイッチ になっていた ✅ マウスの実験で、このスイッチが入るのを防いだところ、脳の炎症がやわらいだ ✅ ただし 動物実験の段階 で、すぐに使える薬ではない。「新しい治療の的(まと)が見つかった」というニュースです 目次 そもそも「脳の炎症」って? 見つかった「炎症スイッチ」の話 いま私たちにできること おわりに そもそも「脳の炎症」って? 私たちの体には、ばい菌やケガから身を守る「免疫(めんえき)」のしくみがあります。脳にも、同じように見張り役の細胞がいて、異常があると 炎症 を起こして対応します。 ところが、この炎症が 必要もないのにずっと続いてしまう と、今度は脳そのものを傷つけてしまいます。アルツハイマー病では、この「消えない炎症」が、神経のつながりを弱らせる一因と考えられてきました。 見つかった「炎症スイッチ」の話 アメリカのスクリプス研究所のチームが、この「消えない炎症」の犯人をつきとめました。 カギになっていたのは、免疫の見張り役として働く「STING(スティング)」というタンパク質です。アルツハイマー病の脳では、このSTINGが 化学的に変化 してしまい、炎症のスイッチが入りっぱなしになっていたのです。 そこで研究チームが、マウスの実験で この変化が起きないように したところ――脳の炎症がやわらいだことが確認されました。研究を率いた神経内科医のスチュアート・リプトン博士は、これを「アルツハイマー病の新しい、重要な治療の的(まと)になる」と話しています。 ※ この研究は2026年、医学誌『Cell Chemical Biology』に発表されたものです。マウスでの段階 であり、人に使える薬ができたわけではありません。 いま私たちにできること 「新しい薬を待つ」だけでなく、今日からできること もあります。脳の余計な炎症を抑えるには、こんな生活習慣が役立つと考えられています。 ✅ 適度な運動 を続ける(歩く・体操など) ✅ しっかり眠る(睡眠中に脳の掃除が進みます) ✅ 野菜・魚を中心としたバランスのよい食事 ✅ 歯みがき・歯科受診など 口の中を清潔に保つ(歯周病の炎症も関係するといわれます) 特別なことではなく、いつもの暮らしの延長です。 運動と脳の関係は、こちらの記事もどうぞ。 👉 認知症を遠ざける運動のヒント おわりに 炎症という「脳の中の火」を、どこで消せばいいのか――その スイッチの場所 が見えてきた。これは、これからの認知症研究にとって大きな一歩です。 すぐに治療が変わるわけではありませんが、世界中の研究者が一歩ずつ前に進んでいます。私たちは過度に不安にならず、今できる生活習慣を大切にしながら、こうした明るいニュースを待ちたいですね。 📚 あわせて読みたい一冊 PR アルツハイマー病 真実と終焉 アルツハイマー病を「炎症・栄養・毒素」など複数の原因から見直す、世界的に話題になった一冊(白澤卓二先生監修)。今回の炎症の話とも通じる、生活習慣からのアプローチがやさしく整理されています。 Amazonで見る 楽天で見る 参考にした情報 スクリプス研究所(米国)の研究/責任著者:スチュアート・リプトン博士 医学誌『Cell Chemical Biology』2026年発表の論文(STINGタンパク質と脳の炎症) ※ 本記事は、上記の信頼できる研究・大学発表をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。紹介した内容は研究段階のものであり、治療効果を保証するものではありません。治療やお薬については、必ず主治医・かかりつけ医にご相談ください。

June 1, 2026 · 1 分
研究と希望のイメージ

アルツハイマー病に「もうひとつの引き金」? 〜脳の“発電所”をふさぐタンパク質の発見〜

「認知症の研究は、いまどこまで進んでいるの?」 ご家族のことを思って、そんなふうに気になっている方も多いと思います。 今回は、アルツハイマー病の研究の最前線から、また新しい発見が届きました。 アルツハイマー病の脳で「細胞のエネルギー工場」をふさいでしまうタンパク質が見つかった ただし、これは まだ研究の段階 の話です。期待しすぎず、でも前向きに――そんな気持ちで読んでいただければと思います。 ✅ アルツハイマー病の脳では「GRK2(ジーアールケーツー)」というタンパク質がかたまり、細胞の“発電所”であるミトコンドリアをふさいでいた ✅ それによって、認知症のもとと言われる アミロイドβ(ベータ)が増える悪循環 が起きていた ✅ マウスの実験で、このかたまりを防ぐ候補の物質を使うと、神経細胞の傷みがやわらいだ。ただし まだ動物実験の段階 で、すぐ使える薬ではありません 目次 そもそも「ミトコンドリア」って? 見つかった新しい「悪循環」の話 いま私たちにできること おわりに そもそも「ミトコンドリア」って? 私たちの体は、目に見えないほど小さな「細胞(さいぼう)」が、たくさん集まってできています。その細胞の一つひとつの中に、体を動かすためのエネルギーをつくる、小さな工場 があります。これが「ミトコンドリア」です。車でいえばエンジン、家でいえば電気をつくる発電所のような、大切な役わりをしています。 脳の神経細胞は、とてもたくさんのエネルギーを使います。ですから、このミトコンドリアが元気でないと、神経細胞もうまくはたらけません。ミトコンドリアの元気と脳の元気は、深くつながっている と考えられています。 見つかった新しい「悪循環」の話 スイスの工科大学(ETHチューリッヒ)のチームが、この「発電所のトラブル」の犯人のひとつをつきとめました。 カギになっていたのは、「GRK2(ジーアールケーツー)」というタンパク質です。アルツハイマー病の脳では、このGRK2の“はたらかなくなった形”が かたまりになってたまり、ミトコンドリアの出入り口をふさいでいたのです。 すると発電所がうまく回らなくなり、認知症のもとと言われる アミロイドβ(ベータ)が増える。そのアミロイドβが、またGRK2のかたまりを増やす――という 「悪循環」 が起きていました。 そこで研究チームが、このかたまりができるのを防ぐ候補の物質(「化合物10」と呼ばれるもの)をマウスに使ったところ――発電所のはたらきが戻り、神経細胞の傷みがやわらいだ ことが確認されました。 ※ この研究は2026年、医学誌『Cell Reports Medicine』に発表されたものです。ヒトの脳の組織とマウスで調べた段階 であり、人に使える薬ができたわけではありません。研究チームはこれから、薬の開発を一緒に進める企業を探す段階だとしています。 以前ご紹介した「炎症スイッチ」の話と同じく、これも 「新しい治療の的(まと)が見つかった」 という前向きなニュースです。 あわせて、こちらの記事もどうぞ。 👉 アルツハイマーの「炎症スイッチ」が見つかった? いま私たちにできること 「新しい薬を待つ」だけでなく、今日からできること もあります。細胞の発電所(ミトコンドリア)を元気に保つには、こんな生活習慣が役立つと考えられています。 ✅ 適度な運動 を続ける(歩く・体操など。ミトコンドリアは運動で増えるといわれます) ✅ しっかり眠る(睡眠中に脳の掃除が進みます) ✅ 野菜・魚を中心としたバランスのよい食事 ✅ 食べすぎに気をつける(腹八分目も体にやさしいといわれます) 特別なことではなく、いつもの暮らしの延長です。 おわりに 「炎症」に続いて、今度は「細胞の発電所」。アルツハイマー病を、いろいろな角度から見直す研究が、世界中で一歩ずつ進んでいます。 すぐに治療が変わるわけではありませんが、手がかりは確実に増えています。私たちは過度に不安にならず、今できる生活習慣を大切にしながら、こうした明るいニュースを待ちたいですね。 📚 あわせて読みたい二冊 PR 生涯健康脳 こんなカンタンなことで脳は一生、健康でいられる! ...

June 19, 2026 · 1 分