夜空と眠りのイメージ

眠っている間に、脳は「明日の準備」をしている? 〜睡眠と“未来の記憶”の意外な関係〜

「寝ている間って、脳はただ休んでいるだけなのかな?」 ふと、そんなふうに思ったことはありませんか。 じつは睡眠中の脳は、思っている以上に いそがしくはたらいている ことがわかってきました。今回は、そんな研究のひとつをご紹介します。 脳は眠っている間に、「昨日までの記憶」を整理するだけでなく、「これから経験すること」の準備まで進めている ✅ 睡眠中の脳は、過去の記憶を保存する はたらきと、未来の記憶に備える はたらきを、同時に 進めていた ✅ これから覚えることを担当する細胞が、経験するより前の睡眠中に、すでに準備されている ことがわかった ✅ つまり睡眠は「ただの休み」ではなく、脳が舞台裏でせっせと働いている時間 だった(※マウスでの研究です) 目次 睡眠と記憶の、これまでの話 見つかった「明日の準備」のしくみ いま私たちにできること おわりに 睡眠と記憶の、これまでの話 私たちが眠っている間、脳は その日に見聞きしたことを整理して、しっかりした記憶に変えている ――これは以前からよく知られていました。 詳しくは、こちらの記事もどうぞ。 👉 眠っている間、脳は何をしているの? ところが今回の研究では、脳が整理しているのは「過去」だけではなかった、という新しい一面が見えてきました。 見つかった「明日の準備」のしくみ 富山大学のチームが、自由に動きまわるマウスの脳を、特別な小さな顕微鏡でのぞいて観察しました。 すると――記憶を担当する細胞のうち、「これから経験することを覚える」役の細胞 が、その経験をする より前の睡眠中に、すでに準備されている ことがわかったのです。 しかもこの“準備係”の細胞は、前の出来事を覚えたあとの睡眠中に用意される ようで、「昨日の経験」が「明日の記憶の受け皿」づくりに影響している可能性も示されました。 脳は眠っている間に、過去をしまいながら、未来の置き場所まで整えている――そんなイメージです。 ※ この研究は2025年、科学誌『Nature Communications』に発表されたものです。マウスでの研究 であり、人でまったく同じことが起きると確認されたわけではありません。 いま私たちにできること むずかしい話になりましたが、私たちにできることは、とてもシンプルです。 ✅ 睡眠時間をけずらない(記憶の整理も準備も、眠っている間に進みます) ✅ 毎日だいたい同じ時間に寝起きする(脳のリズムが整います) ✅ 寝る前のスマホ・明るい光をひかえる ✅ 昼間に体を動かす(夜の眠りが深くなります) 「しっかり眠ること」が、昨日の自分にも、明日の自分にも役立っている。そう思うと、眠る時間がちょっと愛おしく感じられますね。 具体的な眠り方のコツは、こちらにまとめています。 👉 脳が喜ぶ眠り方 おわりに 「寝る子は育つ」と言いますが、どうやら 大人の脳にとっても、睡眠は“育ちの時間” のようです。 過去を整理し、未来に備える――そんな脳の働きを思いながら、今夜もゆっくり休んでください。それが、いちばん身近な“脳のケア”なのかもしれません。 📚 あわせて読みたい一冊 PR スタンフォード式 最高の睡眠 睡眠研究の世界的な拠点・スタンフォード大学の研究者が、「眠りの質を上げるコツ」をやさしくまとめた30万部超のベストセラー。今日からできる工夫がたくさん載っています。 Amazonで見る 楽天で見る 参考にした情報 富山大学 学術研究部医学系 生化学講座の研究/井ノ口馨 卓越教授ほか 科学誌『Nature Communications』2025年発表の論文(睡眠中の記憶の並行処理) ※ 本記事は、上記の信頼できる研究・大学発表をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。紹介した内容は研究段階のものです。睡眠や体調についてご心配がある場合は、かかりつけ医にご相談ください。

June 20, 2026 · 1 分
夜の窓辺で月を眺めるおだやかなイラスト

夜中に目が覚めるのは、私だけ? 〜年代で変わる睡眠の悩みと、今夜からできる工夫〜

「夜中に何度も目が覚めてしまう」「若いころは、どこでも眠れたのに」——。 そんなふうに感じて、ため息をついたことはありませんか? じつは今年(2026年)発表された大きな調査で、日本人の眠りの「いま」 が詳しくわかってきました。そして面白いことに、睡眠の悩みの中身は、年代によって大きく変わっていく のです。 「眠れないのは自分だけ」と思っていた方にこそ、読んでいただきたい内容です。数字を見ながら、今夜からできる工夫まで、ご一緒に見ていきましょう。 ✅ 日本人の睡眠時間は平均 6.4時間。理想は 7.4時間 で、ちょうど1時間足りない 状態が続いている ✅ 睡眠の悩みは年代で変わる。若い世代は「時間が足りない」、40〜50代は「眠りが浅い」、70代は「寝つけない・夜中に目が覚める」 が中心 ✅ 年齢とともに眠りが変わるのは 自然なこと。日中の過ごし方を少し変えるだけで、眠りの質は整えやすくなる 目次 日本人の眠り、いまはどうなっている? 年代で、こんなに変わる睡眠の悩み なぜ、年をとると眠りが変わるの? 理学療法士として、現場で感じること いま、私たちにできること おわりに 日本人の眠り、いまはどうなっている? あなた 「日本人は眠れていない」ってよく聞きますけど、実際のところ、どうなんですか? Torapon 今年の春に、全国3,000人に聞いた新しい調査があるんです。数字で見ると、「1時間足りない」 という姿がはっきり見えてきますよ。 調査会社のクロス・マーケティングが2026年3月に、全国の20〜69歳・3,000人に行った「睡眠に関する調査」によると—— いまの平均睡眠時間は 6.4時間 理想の睡眠時間は 7.4時間 その差は ちょうど1時間。しかもこのギャップは、2023年からずっと変わっていない そうです さらに、眠りの「質」についてはこんな結果でした。 睡眠の状態 割合 日中、眠くなる 65% 寝ても疲れがとれない 59% 眠りが浅い 57% 半分以上の人が「昼間眠い」「疲れがとれない」と感じている——つまり、眠りに悩んでいるのは、決してあなただけではない のです。 年代で、こんなに変わる睡眠の悩み ここからが、今回いちばんお伝えしたいところです。同じ「眠れない」でも、年代によって中身がまったく違う ことが、調査からわかっています。 若い世代(10〜30代):「時間が足りない・朝がつらい」 若い世代の悩みの中心は、睡眠時間そのものの不足 です。夜ふかしなどの生活リズムの乱れが影響しやすく、「朝なかなか起きられない」「日中だるい」という声が目立ちます。 40〜50代:「眠りが浅い・疲れがとれない」 働き盛りの世代では、「眠りの浅さ」 が特に多くなります。2026年の調査では、眠りの浅さは 50代で最も多い という結果でした。 また、2025年11月に全国の18〜79歳・3,000人に行われた別の調査(クロス・マーケティング「健康に関する実態・意識調査」)では、疲れやストレスを最も強く感じているのは40〜50代 だとわかっています。全体でも、疲れを感じている人は約7割、ストレスを感じている人は約6割にのぼりました。 あなた まさに私の世代です……。あと、夫のいびきも気になっていて。 Torapon じつは調査でも、男性の50〜60代は「いびき」、女性の40〜60代は「手足の冷えやしびれ」 が睡眠時の悩みの上位なんです。年代と性別で、悩みの顔ぶれが変わるんですね。 ...

July 20, 2026 · 1 分
スマホを使うおばあさんのイラスト

スマホ時代の「目年齢」と、昼間の眠気 〜14万人のデータでわかった、目と体の深い関係〜

「夕方になると、目がしょぼしょぼする」「日中、なんだか眠くてだるい」——。 そんな日が増えていませんか? じつはその不調、スマホやパソコンを見ている時間 と、深く関わっているかもしれません。今年(2026年)、14万人以上 の目のデータを解析した大きな調査から、目の疲れと「昼間の眠気」の意外なつながりが見えてきました。今回はその内容を、やさしく解説します。 ✅ 1日 8時間以上 画面を見ている人は、全体の約3割(20〜30代は4割以上) ✅ 74.8% の人が「日中、眠気がある」と回答 ✅ 見えてきたのは 「目年齢」 という考え方。目をいたわると、昼間の調子も整いやすい 目次 私たちは、こんなに画面を見ている “目年齢"って、なんだろう? 目の疲れと「昼間の眠気」は、つながっていた 理学療法士として、現場で感じること 今日からできる、目の休め方 おわりに 私たちは、こんなに画面を見ている あなた 最近、スマホを見る時間が増えた気がします。目にも良くなさそうで……。 Torapon 気になりますよね。調査でも、1日8時間以上 画面を見ている人が、全体の約3割もいたんですよ。 ロート製薬が、大阪・関西万博の「大阪ヘルスケアパビリオン」で 14万人以上(143,086件) の目の健康データを集めて解析した調査(2025年4〜10月実施)によると—— 1日8時間以上 デジタル機器を見ている人は、全体の約3割 20〜30代 では、4割以上にのぼる スマホ、パソコン、テレビ……。気づけば一日の多くを画面とともに過ごしている——。そんな時代の姿が、数字にもはっきり表れています。シニア世代でも、スマホで連絡を取ったり動画を見たりする方が、年々増えていますね。 “目年齢"って、なんだろう? この調査でユニークなのが、「目年齢(めねんれい)」 という考え方です。これは、目のコンディションから割り出した“目の若さ”のこと。実際の年齢とは別に、目がどれくらい元気かを表します。 調査では、参加した人の—— 目年齢の平均は 43.8歳 実年齢の平均は 45.5歳 でした。そして興味深いことに、40〜60代では、画面を見る時間が短い人ほど目年齢は実年齢より若く、長い人ほど目年齢が上がっていく 傾向が見られたそうです。 あなた 見る時間が長いと、目が“年をとる”みたいな感じなんですね。 Torapon そうなんです。逆に言えば、目を休ませる工夫しだいで、目年齢は若く保ちやすい ということ。ここが希望の持てるところですね。 目の疲れと「昼間の眠気」は、つながっていた 今回いちばんお伝えしたいのが、目の疲れと「昼間の眠気」の関係 です。 調査では、74.8% もの人が「日中、眠気がある」と答えました。そして、目のコンディションが良くない層ほど、昼間の眠気を感じやすく、画面を見る時間も長い という傾向が見えてきたのです。 さらにこんな結果もありました。 モニターを見ていると症状が悪化すると感じる人:6割以上 目の乾きを自覚している人:約6割 疲れ目のスコアが高いのに、自分では気づいていない人(かくれ疲れ目):疲れ目の人の約25% つまり、目の疲れは、気づかないうちにたまり、昼間のだるさや眠気にもつながっている かもしれない、ということです。「なんだか日中ぼんやりする」の裏に、目の疲れがかくれているケースもあるのですね。 理学療法士として、現場で感じること リハビリの現場でも、「夜はしっかり寝ているのに、昼間眠くてね」という声をよく聞きます。原因は人それぞれですが、お話をうかがうと 「一日中スマホを見ている」 という方も少なくありません。 ...

July 22, 2026 · 1 分
縁側でくつろぐおだやかな老夫婦のイラスト

健康にかけるお金は年15.7万円。それでも「何を信じたらいい?」 〜あふれる健康情報との、かしこいつき合い方〜

「テレビで良いと言っていたから」「ネットで評判だったから」——。 そう思って買った健康食品やサプリが、いつの間にか戸棚にたまっていませんか? じつは今、健康にお金をかけている人ほど、「何を信じたらいいか分からない」と感じている という調査結果が出ています。今回は、その最新データを見ながら、あふれる健康情報とのかしこいつき合い方を、ご一緒に考えてみたいと思います。 ✅ 1年間に健康にかけるお金は、平均で 約15.7万円(前の年より約1.8万円アップ) ✅ 「健康の正しい情報が分からない、何を信じたらいいか分からない」と感じる人は 24.0%(3年で5.1ポイント増加) ✅ 情報にふり回されないコツは、「誰が・何人に・いつ調べたか」 を確かめること 目次 健康にかけるお金は、年15.7万円まで増えている お金をかけるほど、「迷い」も増えている 情報にふり回されないための、3つのものさし 理学療法士として、現場で感じること いま、私たちにできること おわりに 健康にかけるお金は、年15.7万円まで増えている あなた みんな、健康のためにどれくらいお金を使っているんでしょう? Torapon 最近の調査だと、1年で平均15.7万円 なんですよ。しかも、年々増えているんです。 ハルメクグループの生きかた上手研究所が、2025年に 50〜79歳の女性467人 に行った「健康に関する意識・実態調査2025」によると—— 1年間に健康にかけているお金は、平均で 約15.7万円 前の年より 約1.8万円 増えていました 内訳を見ると、「運動サービス」「マッサージ・整体」「医薬品・医療品」への出費が、それぞれ増えています。「認知症になりにくい生活を送りたい」「入院や介護のいらない体でいたい」といった 予防への意識 も、この3年で高まっているそうです。 体を大切に思う気持ちが、こうしてお金の使い方にも表れているのですね。 お金をかけるほど、「迷い」も増えている ところが、ここで少し気になる数字があります。 同じ調査で、「健康に関する正しい情報が分からない、何を信じたらよいのか分からない」 と答えた人が、こんなふうに増えているのです。 年 「何を信じたらいいか分からない」と感じる人 2023年 18.9% 2025年 24.0% 3年で 5.1ポイント も増えています。いまや、4人に1人 が情報に迷っている計算です。 あなた たしかに……。テレビ、ネット、ご近所の話。どれもそれらしく聞こえて、かえって分からなくなります。 Torapon そうなんです。情報が多すぎると、選ぶのがかえって難しくなる。だからこそ、情報を見分けるちょっとしたコツが役に立つんですよ。 健康を大切に思う気持ちが強いからこそ、たくさんの情報を集める。でも集めるほど、どれが本当か分からなくなる——。そんな“情報の渋滞”が、いま多くの方に起きているのかもしれません。 情報にふり回されないための、3つのものさし 医療の現場でも、私たちは新しい情報の「たしからしさ」を、いくつかの目印で見分けています。むずかしい知識はいりません。次の 3つのものさし を持つだけで、ぐっと惑わされにくくなります。 ものさし① 「誰が言っているか」を見る まず、その情報の 発信元 を確かめます。国や学会、大学、公的な研究機関などが出している情報は、比較的たしかです。反対に、その商品を売っている会社だけ が「効きます」と言っている場合は、少し立ち止まって考えたいところです。 ...

July 22, 2026 · 1 分
腰に手をあてて痛みをこらえる人のおだやかなイラスト

「レントゲンは異常なしなのに、なぜ痛い?」 〜腰痛と脳の、意外な関係のお話〜

「画像を撮っても、骨に異常はないと言われた。でも、腰は痛いまま」——。 そんな経験は、ありませんか? じつはこれ、とても多いお悩みです。そして最近の「痛みの研究」では、その理由がだんだんと分かってきました。 キーワードは、「脳」 です。腰の痛みなのに脳?と思われるかもしれませんが、慢性的な腰痛ほど、脳とのつながりが深い ことが分かってきているのです。今回はそのしくみを、できるだけやさしく解説します。 ✅ 痛みは「ケガの大きさ」そのものではなく、脳が出す “警報” のようなもの ✅ 痛みが長く続くと、神経や脳が 過敏(かびん) になり、傷が治っても痛みが残りやすくなる ✅ 焦らず、安全な範囲で 少しずつ動く ことが、回復への近道になる 目次 痛みは「ケガの大きさ」を測る目盛りではない 痛みが長引くと、脳と神経が“過敏”になる 不安や「動くのが怖い」が、痛みをさらに強める だからこそ、「動くこと」が回復のカギ 理学療法士として、現場で感じること まとめ 参考(すこし専門的な補足) 痛みは「ケガの大きさ」を測る目盛りではない あなた 検査では「異常なし」って言われたのに、こんなに痛いんです。気のせいなんでしょうか……。 Torapon 気のせいなんかじゃないですよ。痛みは、ケガの大きさをそのまま数字で表しているわけではない んです。まずはそこからお話ししますね。 多くの人は「痛み=体が壊れているサイン」だと思っています。もちろん、ぎっくり腰のような急な痛みは、実際に組織へのダメージが原因です。 ただ、痛みの正体はもう少し複雑です。痛みは、脳が「これは危険かも」と判断したときに鳴らす“警報” のようなもの。ケガの大きさを、そのまま目盛りで示しているわけではありません。 だから、こんなことが起こります。 大きなケガでも、夢中になっていると痛みを感じない 小さな変化でも、不安な状況だと強く痛む 痛みは「体の状態」だけでなく、「脳がどう受け取ったか」 で大きく変わるのです。 痛みが長引くと、脳と神経が“過敏”になる やっかいなのは、痛みが 3か月以上 続くと、体の傷が治った後も痛みが残りやすいことです。 これは、痛みを伝える神経のシステム自体が敏感になってしまうために起こります。専門的には 「中枢性感作(ちゅうすうせいかんさ)」 と呼びます。 あなた 中枢性感作……。むずかしそうな言葉ですね。 Torapon イメージは、鳴りっぱなしの車の防犯アラーム なんです。もう泥棒はいないのに、警報だけが鳴り続けている——そんな状態が、体の中で起きているんですよ。 危険はもう去ったのに、痛みのスイッチだけがオンのまま。これが、慢性腰痛でよく起きていることです。 さらに、痛みが長引くと、脳の中で 痛み・感情・注意 をあつかう部分の働きにも変化が現れることが報告されています。痛みが「ただの感覚」ではなく、気分や集中力とも結びついてしまうのですね。 不安や「動くのが怖い」が、痛みをさらに強める ここで大切なのが、心の状態も痛みに直結している という点です。 「また痛くなったらどうしよう」という不安 「これ以上ひどくなるかも」という考え 「動いたら悪化しそう」という、動くことへの恐怖 こうした気持ちがあると、人は自然と体を動かさなくなります。ところが、動かさないでいると筋力や柔軟性が落ち、神経はますます過敏に。結果として、痛みがさらに長引く悪循環 に入ってしまいます。 つまり腰痛は、「腰そのものの問題」だけでなく、体・心・生活環境が絡み合った問題 として捉える必要があるのです(これを「生物心理社会モデル」と言います)。 だからこそ、「動くこと」が回復のカギ ...

July 22, 2026 · 1 分