「給与明細の『控除』の欄、なんとなく見て終わりにしていませんか?」
「年金から介護保険料が引かれているけど、これって何のお金?」――
そんなふうに思ったことのある方へ。

毎月のお給料や年金から引かれているお金の多くは、健康保険・介護保険・厚生年金 という3つの「社会保険」の保険料です。名前は知っていても、「いくら・どうやって決まっているのか」 まで知っている方は、意外と少ないのではないでしょうか。

この記事では、リハビリの現場で働く理学療法士の視点も交えながら、「払う側」から見た社会保険のきほん を、できるだけやさしく整理します。

✅ 保険料は「給料の額(標準報酬月額)× 決まった率」で計算され、半分は会社が払ってくれている

✅ 介護保険料は 40歳から 給与天引きが始まり、65歳からは年金からの天引き に切り替わる

✅ 厚生年金は率が 18.3%で固定。たくさん払った人は、将来たくさん受け取れる仕組み

目次

  1. そもそも「社会保険」って何?
  2. 健康保険料のきほん
  3. 介護保険料は「40歳から」「65歳から変わる」
  4. 厚生年金の保険料はどう決まる?
  5. モデルケース:月給30万円の給与明細
  6. いま私たちにできること
  7. おわりに

そもそも「社会保険」って何?

社会保険とは、病気・介護・老後といった「人生の大きなリスク」に、みんなでお金を出し合って備える仕組み です。この記事で扱う3つは、それぞれ役割が違います。

保険の名前 何に備える? 保険料を払う人
健康保険 病気・ケガの医療費 原則すべての人(生涯)
介護保険 介護が必要になったとき 40歳以上 の人
厚生年金 老後の生活費など 会社などで働く人

健康保険証のイラスト

あなた あなた

「保険料が高い……」と思っていましたが、備えている中身がぜんぶ違うんですね。

Torapon Torapon

そうなんです。そしてもうひとつ大事なのは、会社員の場合、同じ額を会社も一緒に払ってくれている(労使折半=ろうしせっぱん)ということ。明細に見えている金額は「半分」なんですよ。


健康保険料のきほん

会社員の健康保険料は、次のかけ算で決まります。

標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2(本人負担分)

標準報酬月額(=毎月の給料を計算しやすいよう区切りのよい額に置き換えたもの)に、保険料率をかけ、それを会社と半分ずつ負担します。

中小企業の多くが入る 協会けんぽ の場合、保険料率は都道府県ごとに決まっていて、2026年度は全国平均9.90%(前年より0.1%引き下げ)。もっとも低い新潟県は9.21%、もっとも高い佐賀県は10.55%と、住んでいる場所で少し差があります。

お住まいの都道府県の料率は、こちらで確認できます。 👉 協会けんぽ「令和8年度の都道府県毎の保険料率」

なお、75歳になると全員が「後期高齢者医療制度」に移り、保険料は都道府県ごとに決まった額を、主に年金からの天引きで納めるようになります。また、自営業の方や退職後の方が入る 国民健康保険 は、市町村ごとに前年の所得などから計算される、少し別の仕組みです。

あなた あなた

2026年4月から、給与明細に「子ども・子育て支援金」という新しい項目が増えていました。あれは何ですか?

Torapon Torapon

よく気づかれましたね。子育て支援の財源として 2026年4月に始まった新しい負担 で、健康保険料と一緒に集められます。2026年度の率は0.23%(これも労使折半)なので、月給30万円の方で 本人負担は月345円ほど です。


介護保険料は「40歳から」「65歳から変わる」

車椅子のおばあさんと介護士のイラスト

介護保険料は、年齢によって払い方が大きく変わります。ここがいちばん質問の多いところです。

40〜64歳(第2号被保険者)

40歳の誕生月から、健康保険料に上乗せする形で給与から天引きされます。協会けんぽの介護保険料率は全国一律で、2026年度は1.62%(労使折半なので本人負担は0.81%分)。「40歳になったら手取りが少し減った」の正体はこれです。

65歳以上(第1号被保険者)

65歳からは給与天引きではなくなり、お住まいの市町村に直接納める 方式に変わります。年金を一定額以上受け取っている方は、年金からの天引き(特別徴収) が基本です。

金額は市町村と本人の所得によって決まり、全国平均は月6,225円(2024〜2026年度)。ただし市町村差が大きく、いちばん高い所と低い所では約2.7倍の開きがあります。

あなた あなた

65歳になった母が「年金から急に介護保険料が引かれるようになった」と驚いていました。

Torapon Torapon

リハビリの現場でも、利用者さんやご家族から 「65歳から天引きが始まってびっくりした」 という声を本当によく聞きます。制度の切り替わりを知っておくだけで、心の準備がずいぶん違いますよ。


厚生年金の保険料はどう決まる?

年金手帳のイラスト

会社などで働く人が入る厚生年金の保険料は、とてもシンプルです。

標準報酬月額 × 18.3% ÷ 2(本人負担分)

この 18.3%という率は2017年に引き上げが終わり、現在は固定 されています。健康保険と同じく労使折半なので、本人が負担するのは9.15%分。ボーナスからも同じ率で引かれます。

大切なポイントは2つあります。

  • 標準報酬月額には上限(現在65万円)がある:月給がそれ以上高くても、保険料はそれ以上増えません(この上限は2027年9月から段階的に引き上げられる予定です)
  • たくさん払った人は、将来たくさん受け取る:厚生年金の受取額は「現役時代の給料と加入期間」に比例します。払い損に感じやすいお金ですが、将来の自分への積み立ての性格を持っています

ご自身が「いくら払って、将来いくら受け取れそうか」は、毎年誕生月に届く 「ねんきん定期便」 で確認できます。


モデルケース:月給30万円の給与明細

電卓で家計簿をつける人のイラスト

ここまでの話を、月給30万円・40歳以上の会社員(協会けんぽ・全国平均の料率)で計算してみます。

項目 計算 本人負担(月)
健康保険料 30万円 × 9.90% ÷ 2 14,850円
介護保険料 30万円 × 1.62% ÷ 2 2,430円
厚生年金保険料 30万円 × 18.3% ÷ 2 27,450円
子ども・子育て支援金 30万円 × 0.23% ÷ 2 345円
合計 約45,000円

※2026年度・全国平均の料率で計算した目安です。都道府県や勤め先の健康保険組合によって少し変わります。このほかに雇用保険料や税金(所得税・住民税)も給与から引かれます。

あなた あなた

月4万5千円……。合計すると、思っていたより大きな金額ですね。

Torapon Torapon

そう感じますよね。ただ、会社も同じ約4万5千円を負担してくれている こと、そしてこのお金が医療費の窓口負担を1〜3割に抑え、介護サービスや老後の年金を支えていることも、あわせて知っておきたいところです。実際に「使うとき」いくらになるかは、次の記事で詳しくお話しします。

「使う側」の話はこちらの記事へ。 👉 病院や介護サービスを使ったとき、実際いくら払う?


いま私たちにできること

制度は変えられなくても、「知らないまま」を減らすことはできます。今日からできるチェックリストです。

  • 給与明細の「控除」欄を一度じっくり見てみる(健康保険・介護保険・厚生年金の3つを探してみる)
  • 誕生月に届く「ねんきん定期便」を捨てずに開く(将来の受取見込み額が書いてあります)
  • 65歳前後のご家族がいる方は、介護保険料の切り替わりを伝えておく(年金天引きに変わります)
  • ☑ 保険料の正確な金額は、お住まいの市町村やご加入の健康保険(協会けんぽ・健保組合)の通知・サイトで確認する

笑顔のシニア夫婦のイラスト


おわりに

社会保険料は、毎月確実に引かれていくのに、中身を教わる機会がほとんどないお金です。だからこそ、「何のために・どう決まっているか」を一度知っておくと、給与明細や年金の通知を見る目が少し変わります。

保険料率や金額は毎年少しずつ見直されます。この記事の数字は 2026年度時点 のものですので、最新の金額は必ず公式の窓口でご確認ください。

次回は、いよいよ「使う側」――病院や介護サービスを利用したとき、実際にいくら払うのか を見ていきます。


参考にした情報

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「令和8年度保険料率のお知らせ」
  • 厚生労働省「第9期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料について」(2024年)
  • 日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
  • こども家庭庁「子ども・子育て支援金制度について」

※ 本記事は、上記の公的機関の公表資料をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。保険料率・金額は2026年度時点のもので、毎年見直されます。ご自身の正確な保険料は、お住まいの市町村・ご加入の健康保険・年金事務所にご確認ください。