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ビタミンB12、「基準値内」でも足りていないかも? 〜年を重ねた脳と、栄養の意外な関係〜

健康診断で「ビタミンの数値は正常ですよ」と言われると、ひと安心しますよね。 でも、こんな研究をご存じでしょうか。 「血液検査では『基準値内』でも、ビタミンB12がやや低めの高齢者は、考えるスピードが少しゆっくりになっていた」 “足りている”はずなのに、脳には影響が出ているかもしれない――。今回は、そんな少し意外な研究を、やさしくお伝えします。 ✅ B12が「基準値内でも低め」の高齢者は、考えるスピード(処理速度)がゆっくりめ で、脳の白質に小さな変化がみられた ✅ ただし「サプリをたくさん飲めば脳が良くなる」わけではない。上乗せ効果は ごくわずか という報告も ✅ まずは 食事から。気になる方は自己判断せず、血液検査でかかりつけ医に相談 を 目次 そもそもビタミンB12って? 「基準値内なのに足りない」研究の話 サプリに飛びつく前に 食事でとるには おわりに そもそもビタミンB12って? ビタミンB12は、神経や血液を元気に保つ ために欠かせない栄養素です。魚や貝、肉、卵、乳製品などに多く含まれています。 やっかいなのは、年を重ねると吸収する力が落ちやすい こと。さらに、胃の調子や一部のお薬の影響でも、吸収が下がることがあります。つまり「ちゃんと食べているつもり」でも、体の中では足りにくくなっている――そんなことが起こりうるのです。 「基準値内なのに足りない」研究の話 アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームが、認知症のない 健康な高齢者231人(平均71歳)を調べました。 すると―― B12が 「基準値内でも低め」 の人は、考えるスピード(処理速度)がゆっくりめ だった さらに、脳の 白質(はくしつ=神経の通り道)に、小さな傷のような変化が多くみられた この研究は2025年に医学誌『Annals of Neurology』に発表され、「いまの基準値は、脳にとっては少し甘いのかもしれない」という議論を呼びました。 サプリに飛びつく前に ここで、とても大事な注意点があります。 「じゃあB12のサプリをたくさん飲めばいいんだ!」――そう考えたくなりますが、話はそう単純ではありません。 別の研究では、Bビタミンのサプリで頭の働きが良くなる効果は ごくわずか にとどまった、と報告されています。足りない人が補うことには意味があっても、「たくさん飲むほど脳に効く」わけではない のです。 サプリは飲み合わせや持病との相性もあります。自己判断で大量にとるのは避け、まずは血液検査でご自分の状態を知ること から始めましょう。 ※ サプリメントや栄養の取り方については、必ずかかりつけ医にご相談ください。 食事でとるには いちばんの基本は、やっぱり毎日の食事です。B12は、こんな食材に多く含まれています。 ✅ あさり・しじみ・牡蠣 などの貝類 ✅ さんま・さば・いわし などの魚 ✅ レバー、卵、牛乳・チーズ、のり 特別なものではなく、和食の食卓に自然と並ぶもの ばかりですね。「最近、魚や貝を食べていないな」と思ったら、週に何回かは意識して取り入れてみてください。 食事と脳の関係は、こちらの記事もどうぞ。 👉 認知症を遠ざける食事のヒント おわりに 「基準値内だから大丈夫」と思っていた栄養が、実は脳にとっては少し足りていないかもしれない――。今回の研究は、そんな気づきを与えてくれました。 とはいえ、神経質になりすぎる必要はありません。魚や貝、卵を、いつもの食卓に少し増やす。 そして気になるときは、ひとりで悩まず、かかりつけの先生に相談する。その小さな積み重ねが、これからの脳を守ってくれます。 ...

May 31, 2026 · 1 分
栄養バランスのよい和食の食卓のイラスト

その「疲れ」「やる気の出なさ」、栄養不足のサインかも? 〜ビタミンB12・葉酸と疲労の意外な関係〜

「しっかり寝ているのに、なんだか疲れがとれない」 「以前ほど、やる気がわいてこない」―― そんなふうに感じることはありませんか? 年のせいかな、と思いがちですが、実は 毎日の食事(栄養) が関係しているかもしれません。今回は、日本の研究から届いた、こんなお話です。 ビタミンB12と葉酸(ようさん)が足りない人ほど、「疲れ」や「やる気の低下」が大きかった ✅ 健康な日本人 約600人 を調べたところ、B12・葉酸が不足ぎみの人ほど、疲れやすく・やる気が出にくい 傾向があった ✅ カギになったのは「ホモシステイン」という血液中の物質。B12・葉酸が足りないと、これが増える ✅ ただし「サプリを飲めば元気になる」と決まったわけではない。まずは 食事の見直し から 目次 B12・葉酸ってどんな栄養? 「疲れ」と栄養をつないだ日本の研究 食事でとるには おわりに B12・葉酸ってどんな栄養? ビタミンB12 と 葉酸 は、どちらも血液や神経を元気に保つために欠かせない栄養素です。2つは チームのように協力して 働いています。 困ったことに、年を重ねると 吸収する力が落ちやすい うえ、葉酸は野菜不足などで足りなくなりがちです。「ちゃんと食べているつもり」でも、体の中では不足しはじめている――そんなことが起こりえます。 「疲れ」と栄養をつないだ日本の研究 大阪公立大学の叶内(かのうち)宏明教授らのチームが、健康な日本人 約600人 を対象に、血液の状態と「疲れ・やる気」の関係を調べました。 すると―― 血液中の「ホモシステイン」が高い人ほど、疲れが強く、やる気も低め だった ホモシステインは、B12・葉酸が足りないと増える 物質 つまり「栄養の不足が、疲れやすさの隠れた原因のひとつかもしれない」というわけです。この研究は2026年、栄養学の専門誌『Nutrients』に発表されました。 ※ これは「関係がみられた」という研究で、「B12・葉酸を増やせば必ず元気になる」と証明したものではありません。慢性的な疲れには、ほかの原因(病気など)も隠れていることがあります。 食事でとるには いちばんの基本は、やっぱり毎日の食事です。 ✅ ビタミンB12 … あさり・しじみ・牡蠣などの貝類、さんま・さば、レバー、卵、のり ✅ 葉酸 … ほうれん草・ブロッコリーなどの青菜、枝豆・納豆などの豆類、いちご・みかんなどの果物 どちらも、和食の食卓に自然と並ぶもの ばかりですね。「最近、魚や青菜を食べていないな」と思ったら、少し意識して取り入れてみてください。 なお「サプリで補えばいいのでは?」と思われるかもしれませんが、自己判断で大量にとるのは禁物 です。疲れが長く続くときは、ひとりで悩まず、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。 ※ サプリメントの利用や栄養の取り方については、必ずかかりつけ医にご相談ください。 ビタミンB12と脳の関係は、こちらの記事もどうぞ。 👉 ビタミンB12、「基準値内」でも足りていないかも? おわりに 「疲れ」や「やる気の出なさ」を、気持ちや年のせいだけにしてしまうのは、少しもったいないかもしれません。その背景に、栄養という整えられる原因 がかくれていることもあるのです。 魚や貝、青菜や豆を、いつもの食卓に少しだけ増やす。そんな小さな積み重ねが、毎日の元気につながっていきます。気になる疲れが続くときは、どうぞ早めにかかりつけの先生に相談してくださいね。 📚 あわせて読みたい一冊 PR 医者が教える食事術 最強の教科書 ...

June 1, 2026 · 1 分
台所のテーブルでサプリメントの瓶を手に取り、考えている女性のイラスト

ひざのために飲んでいたサプリが、脳には? 〜グルコサミンをめぐる新しい報告〜

「ひざにいいらしいよ」 そう聞いて、グルコサミンを飲みはじめた。あるいは、親御さんに送っている。テレビでも新聞でも見かけますし、ドラッグストアの棚には、いつも大きく並んでいます。 そのグルコサミンについて、2026年6月、少し気になる報告が出ました。 先にお伝えしておきます。この記事は「いますぐやめてください」という話ではありません。 むしろ研究をよく読むと、そう単純な話ではないことが分かります。ただ、知っておいたほうがいい内容ではありました。 ✅ アメリカの研究で、グルコサミンを使っていた人は、軽い物忘れ(MCI)から認知症に進む割合が25%高かったという報告が出ました ✅ ただし動物実験では、健康な脳ではまったく変化が起きませんでした。影響が出たのは、すでにアルツハイマー病の状態にあった場合だけです ✅ 研究者自身が「関連が見えただけで、原因と決まったわけではない」と述べています。やめるかどうかは、かかりつけの先生と相談して決めることです サプリとのつき合い方全般については、こちらもあわせてどうぞ。 👉 健康にかけるお金は年15.7万円。それでも「何を信じたらいい?」 目次 そもそもグルコサミンとは 何が報告されたのか ここがいちばん大事なところ 正直に書いておきたいこの研究の弱いところ ひざには効いているのでしょうか 天秤にかけ直してみませんか 理学療法士として現場で思うこと いま私たちにできること おわりに 参考にした情報 そもそもグルコサミンとは グルコサミンは、糖の仲間 です。名前に「グルコ」とついているとおり、ブドウ糖に近い形をしています。 体の中では、関節の軟骨(なんこつ=骨と骨の間のクッション)をつくる材料のひとつとして使われています。ですから「すり減った軟骨の材料を、飲んで補おう」という考え方で、サプリとして売られてきました。 考え方としては、とても分かりやすいですよね。減ったものを足す。だからこれだけ広まったのだと思います。 ただ、ここで一つ、頭の隅に置いておいていただきたいことがあります。 飲んだグルコサミンは、ひざにだけ届くわけではありません。 体じゅうを巡ります。当然、脳にも届きます。今回の研究は、その「脳に届いたあと」の話です。 あなた ひざのために飲んでいるのに、脳の話になるんですか? Torapon そこが、今回いちばん意外だったところです。口から入れたものは、行き先を選べません。 ひざに効かせたくても、体じゅうに配られてしまう。だから研究者の方たちは「では、ほかの場所では何が起きているのだろう」と調べたわけですね。 何が報告されたのか 報告したのは、アメリカ・フロリダ大学 の研究チームです。2026年6月9日、『nature』の姉妹誌である 『Nature Metabolism』 に発表されました。 この研究のおもしろいところは、まったく違う3つの方法で、同じ方向の結果が出た ことです。ひとつずつ見ていきます。 ① 病院の記録を、大量に調べた フロリダ大学の病院に残っていた、2012年から2024年までの患者さんの記録(お名前などが分からないように処理したもの)を調べました。人数はこうです。 グループ 人数 うちグルコサミンを使っていた人 認知症の診断がある方 24,481人 1,896人(約8%) 軽度認知障害(MCI)の方 41,884人 2,750人(約8%) ※ 軽度認知障害(MCI) … 物忘れは出ているけれど、日常生活はまだ自分でできる段階。認知症の一歩手前と言われます。 追いかけた期間は、中央値でおよそ5年 でした。その結果、こうなりました。 軽度認知障害の方 … グルコサミンを使っていた人は、認知症に進んだ割合が25%高かった すでに認知症の診断がある方 … 1年以上使っていた人は、亡くなる割合が25%高かった ② 亡くなった方の脳を、直接調べた 次に研究チームは、アルツハイマー病の方20人の脳(前頭葉の表面) を、特殊な質量分析という方法で調べました。 ...

August 22, 2026 · 2 分
食卓に置かれた焼き魚と、その隣に並ぶサプリメントの瓶のイラスト

脳には、ちゃんと届いていました 〜DHAのサプリと、2年後の脳の話〜

「頭のために、DHAを飲んでいます」 外来やリハビリの場で、何度も聞いた言葉です。テレビでも、新聞の広告でも、よく見かけます。魚の油が脳にいいというのは、もうすっかり定着した話になりました。 私自身、長いあいだ「まあ、悪いことではないだろう」と思っていました。 ところが2026年、その考え方をひとつ整理し直す研究が出ました。しかも、期待はずれだったからではありません。期待どおりだったのに、その先が続かなかったからです。 ✅ DHAのサプリを2年間しっかり飲んだ方の髄液を調べたら、脳にはちゃんと届いていました。ここは、はっきり証明されました ✅ ところが2年後の脳の大きさも、考える力も、飲まなかった方と差は見つかりませんでした ✅ 一方で、食べものとしての魚については、たくさん食べる方のほうが認知症が2割ほど少ないという報告が続いています。魚とカプセルは、別の話として考えたほうがよさそうです ひざのサプリについても、似た構図の記事を書いています。あわせてお読みください。 👉 ひざのために飲んでいたサプリが、脳には 目次 まず、この研究のすごいところ 脳には、たしかに届いていた それでも、2年後は変わらなかった 正直に書いておきたい、この研究の限界 「かえって早いのでは」という報告と、その反論 これまでの研究をまとめると では、魚そのものはどうなのか 公的機関は、どう言っているか いま飲んでいる方へ 現場で見てきたこと いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 まず、この研究のすごいところ アメリカ・南カリフォルニア大学のグループが行った「PreventE4」という試験です。 サプリの研究というと、「飲んでいる人と飲んでいない人を比べた」というものが大半です。それでは、もともと健康に気をつかう人がサプリを飲んでいるだけかもしれません。 この試験は違います。 くじ引きで、DHAを飲むグループと、見た目が同じ偽物を飲むグループに分けた 本人にも、調べる側にも、どちらか分からないようにした 739人を調べて、条件に合う365人を追いかけた 期間は2年間 対象になったのは、平均66歳で、まだ認知症のない方たち。しかも「ふだん魚をあまり食べない方」(食事からのDHAが1日200mg未満)に絞っています。もともと足りていない人に足したら、どうなるか。よく考えられた設計です。 飲んだ量は1日2グラム。 市販のサプリよりかなり多い量です。 脳には、たしかに届いていた この試験がいちばん知りたかったのは、実は「頭が良くなるか」ではありませんでした。 飲んだDHAが、本当に脳まで届くのか。 そこを確かめることが第一の目的でした。 そのために、背中から針を刺して髄液(脳と脊髄をひたしている液体)を採るという、かなり大変な検査をしています。 結果は、はっきりしていました。 髄液のDHAの変わり方 DHAを飲んだ方 増えた(+0.17) 偽物を飲んだ方 ほぼ変わらず(−0.02) 血液のほうでも、オメガ3の指標が4.9%から11.0%へと、しっかり上がっていました。 飲めば届く。 これは、この試験が証明したことです。 あなた 届いているなら、いいことなのでは? Torapon 私も最初にそう思いました。ここまでは、期待どおりだったんです。 問題は、その先でした。届いたのに、その先で何かが変わったようには見えなかったんですね。 それでも、2年後は変わらなかった 2年後、参加した方たちの脳をMRIで調べ、考える力の検査も行いました。 海馬(記憶にかかわる部分)の大きさ……差は見つからず 大脳皮質の厚み……差は見つからず 考える力の検査……差は見つからず 脳には届いた。でも、脳は変わらなかった。 これがこの試験の結論です。研究者たちは論文の最後で、「今後は、サプリを飲ませる試験よりも、脳のなかでDHAがどう使われているかの研究を優先すべきだ」と書いています。かなり踏み込んだ書き方だと思います。 正直に書いておきたい、この研究の限界 ただし、この結果も慎重に読む必要があります。 ひとつめ。考える力の検査は、この試験の「おまけ」でした。 この試験がいちばん確かめたかったのは、あくまで髄液にDHAが増えるかです。考える力の検査は「探索的」、つまり参考として調べた項目でした。ですから、認知機能に効かないことが証明された、とまでは言えません。 ふたつめ。途中でやめた方が4割近くいました。 ...

September 6, 2026 · 2 分
夫のいびきに気づいて、静かに心配している妻のイラスト

いびきは、うるさいだけではありませんでした 〜777人を10年追いかけた調査から〜

「お父さん、夜中に息が止まってるよ」 ご家族にそう言われたことはありませんか。あるいは、ご自分が言った側かもしれません。 多くの場合、この話は笑い話で終わります。「うるさくてかなわん」「疲れてるんだろう」。そう言って、それきりになる。 けれど2026年に発表された調査は、そこにひとつ、重い数字を置いていきました。65歳以上の777人を10年間追いかけた研究です。 ✅ 眠っているあいだに呼吸が止まる「睡眠時無呼吸」の方を10年追ったところ、治療を受けていなかった人たちのほうが、考える力の衰え方が速いという結果でした ✅ ただしこれは観察した研究です。「治療すれば防げる」と証明したものではありません。もともとの条件にも差がありました ✅ それでも、検査は一晩で受けられます。日本では中等症以上の方が成人男性の約4人に1人。まず調べてみる価値のある数字だと思います 眠っているあいだに脳で何が起きているかは、こちらに書いています。 👉 ぐっすり眠ると、脳が掃除される 目次 そもそも「睡眠時無呼吸」とは 777人を、10年追いかけた 「69%速い」とは、どういう意味か 正直に書いておきたい、この研究の限界 もうひとつの研究は、少し違う景色を見せた 日本では、どのくらいの方にあるのか 検査と治療は、どう進むのか 現場で見てきたこと いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 そもそも「睡眠時無呼吸」とは 眠っているあいだに、のどの奥がふさがって呼吸が止まってしまう状態です。正しくは「閉塞性睡眠時無呼吸」といいます。 止まるといっても、そのまま息が止まりっぱなしになるわけではありません。体が苦しくなって、いったん目を覚ましかけて、また息を吸う。 これを一晩に何十回、多い方では何百回もくり返します。 問題は2つあります。 血液の酸素が下がる……息が止まっているあいだ、体じゅうの酸素が薄くなります。脳も例外ではありません 深く眠れない……目を覚ましかけるたびに、眠りが浅いところへ引き戻されます。本人はまったく覚えていません ご本人に自覚がないのが、この病気のいちばんやっかいなところです。気づくのは、たいてい隣で寝ている方です。 あなた 毎晩ぐっすり眠っているつもりなんですが……。 Torapon そこなんです。眠っている本人には、まず分かりません。 手がかりになるのは、朝の状態です。起きたときに頭が重い、口がからからに乾いている、しっかり寝たのに昼間に眠くなる。こういうことが続くようなら、一度調べてみる価値があります。 777人を、10年追いかけた 2026年7月、アルツハイマー病協会が出している学術誌に、フロリダ大学のグループの調査が載りました。 対象は、睡眠時無呼吸のある65歳以上の777人 アメリカで高齢者の健康と老いの変化を追い続けている全国調査(NHATS)に、公的医療保険の記録を突き合わせたもの 2011年から2021年まで、毎年、考える力を測り続けた 777人は、2つに分かれます。 人数 CPAP治療を受けていた方 354人(46%) 受けていなかった方 423人(54%) CPAPというのは、鼻や口にマスクを当てて、空気を送り込み、のどがふさがらないようにする装置です。いまのところ、この病気のいちばん確実な治療法とされています。 結果はこうでした。どちらのグループも、10年のあいだに考える力は少しずつ落ちていきました。 これは年齢を重ねれば自然なことです。 違ったのは、落ちる速さでした。 「69%速い」とは、どういう意味か ここは大事なところなので、ていねいに書きます。 研究チームが使ったのは、いくつかの検査をまとめた「考える力の総合点」です。10個の単語を聞いて、すぐに思い出せるだけ言う。しばらくしてから、もう一度思い出す。今日が何月何日か答える。大統領の名前を答える。こうしたものを合わせた点数です。 1年あたりの下がり方は、こうなりました。 1年あたりの下がり方 CPAP治療を受けていた方 0.03 受けていなかった方 0.05 この0.05と0.03を比べると、約1.7倍。報道で「69%速い」と紹介されたのは、この比のことです。 あなた 0.03と0.05……。正直、大きいのか小さいのかピンときません。 Torapon そう感じられて当然だと思います。これは点数そのものではなく、ばらつきを目盛りにした数字なので、直感的には分かりにくいんです。 ですから私は、倍率のほうで受け取っています。「10年たったとき、片方はもう片方の1.7倍ほど進んでいた」。それくらいの受け取り方が、ちょうどよいと思います。 ...

September 4, 2026 · 2 分
Torapon

1日8時間以上座っていませんか? 〜『動く・座らない・眠る』で守る24時間〜

「気がつくと、朝から夕方までずっと椅子に座っていた…」 そんな日が続いていませんか? 最近の大規模研究で、 1日8時間以上の座りすぎ が認知症リスクを大きく上げることが分かってきました。今回は、 動く・座らない・眠る の3点セットで考える、これからの「24時間の整え方」を平易にお伝えします。 この記事のポイント ✅ 1日8時間を超えて座っていると、認知症リスクが約27%上がるという報告 ✅ 「動く・座らない・眠る」の3点セットで、リスクは大きく下がる ✅ 大切なのは 「1時間に1回、立ち上がる」 という小さな習慣 研究:座位8時間超で認知症リスクが27%増 イギリス・York大学のOye-Somefunらが、2026年4月にPLOS One誌に発表したメタ解析です。 35歳以上の 数百万人規模・69件の前向きコホート研究 を統合した、現時点でとても信頼性の高い分析です。 研究のポイントを3つにまとめると: 座っている時間が1日8時間を超えると、認知症リスクが約27%増える 一方、 身体活動が多い・座位が短い・睡眠7〜8時間 の3条件を満たす人は、平均よりリスクが大きく低下した 1日の中で「動く」「座らない」「眠る」をどう配分するかが鍵になる 「動く・座らない・眠る」は3点セット これまで、運動・睡眠は別々に語られることが多かったのですが、この研究では 3つを1セットにして考える ことの大切さが浮かび上がりました。 要素 目安 動く(身体活動) 1日合計30分程度の中等度活動(早歩きなど) 座らない 連続して座る時間を短くする(理想は1時間に1回立つ) 眠る 7〜8時間程度の睡眠 どれか1つを頑張るより、 3つを少しずつ整える ほうが、認知症リスクの低下につながりやすいということです。 「1時間に1回、立ち上がる」だけでも違う 「座らない」と聞くと、立ち仕事に変えなきゃいけないように感じますが、そんな必要はありません。 私(Torapon)が地域の講座でお伝えしているのは、 「1時間に1回、立ち上がりましょう。立つだけでもOKです」 という、ごくシンプルな合言葉です。テレビのCM、家事の合間、家族の声かけ──きっかけは何でも構いません。 立ち上がって2〜3歩あるく、お茶を入れる、洗濯物を1枚たたむ。それだけで、ふくらはぎの筋ポンプが働いて全身の血流が動き出します。 雨の日でも続けたいなら、家でできる工夫を 「外を歩きたくても、雨の日や暑い日が続いて…」というご相談はとても多いです。 そんな日のために、私は 家の中で『座りすぎ』を断ち切る道具 をひとつ持っておくことをおすすめしています。 私自身は STEADYのミニフィットネスバイク(足元タイプ) を居間に置いていて、テレビを見ながら時々ペダルを回しています。 「座りすぎの座位」を「動く座位」に置きかえる イメージです。膝や腰への負担も少なく、年齢に関係なく始めやすいです。 PR ミニフィットネスバイク STEADY ST121 足元に置いて、テレビを見ながら時々ペダルを回すだけ。電源不要・静音・マグネット式で、夜のリビングでもご家族の迷惑になりにくい設計です。負荷は16段階で、年齢や体力に合わせて調節できます。「座りすぎの座位」を「動く座位」に置きかえる入り口にちょうど良い1台です。 楽天で見る 体を動かす習慣は、家の中だけでなく「通える場所」をつくるのも続けるコツ。外でしっかり運動したい方には、こんな選択肢もあります。 ...

May 24, 2026 · 1 分
和食の朝ごはんの前で椅子から立ち上がろうとする高齢男性のイラスト

やせる薬で減るのは、脂肪だけではありません 〜筋肉を守りながら使うために〜

前回、「やせる薬」(GLP-1受容体作動薬といいます)が認知症に効くのかどうかを書きました。 前回の記事はこちらです。 👉 「やせる薬」は、認知症に効くのか あの記事を書いたあと、ずっと引っかかっていたことがあります。理学療法士として、いちばん気になるところに触れていなかったのです。 体重が減るのは分かりました。では、減っているのは何なのでしょうか。 ✅ 高齢の糖尿病の方432人を24か月追いかけたところ、薬を使った方は筋肉の量・握力・歩く速さが、使わなかった方より低下していました ✅ これは薬を否定する話ではありません。使うなら、筋肉を守る手を一緒に打っておきたい、という話です ✅ 守り方は地味です。たんぱく質をしっかり摂り、筋肉に力を出させること。それだけです 目次 体重が減るとき、何が減っているのか 432人を24か月追いかけた研究 この研究の弱いところも書いておきます なぜ高齢の方でとくに心配なのか 筋肉を守るために、できること 現場で見てきたこと おわりに 参考にした情報 体重が減るとき、何が減っているのか 体重計の数字は、脂肪と筋肉を区別してくれません。 食事の量が減れば、体は脂肪だけでなく筋肉も一緒に手放します。これは薬にかぎった話ではなく、どんなやせ方でも起きることです。 ただ、若い方と高齢の方では、意味がまるで違います。 あなた どう違うんですか? Torapon 若い方は、あとから筋肉を取り戻せます。でも年を重ねると、減らすのは簡単で、戻すのは何倍も大変なんです。そして高齢の方にとって筋肉は、見た目の話ではありません。立ち上がる、歩く、転ばない——暮らしそのものを支えているものなんですね。 432人を24か月追いかけた研究 2025年、中国のグループがこんな報告を出しました。 対象は65歳以上で2型糖尿病のある432人 セマグルチド(やせる薬の一種)を使った220人と、使わなかった212人を比べた 24か月追いかけて、筋肉の量・握力・歩く速さを測った 結果、薬を使ったグループは、使わなかったグループと比べて、 手足の筋肉の量が低下 握力が低下 歩く速さが低下 していました。しかも薬の量が多い方ほど、影響が大きいという関係も見えています。 もうひとつ気になるのは、参加した方の27.7%が、はじめからサルコペニア(筋肉が減って力が落ちた状態のこと)だったことです。もともと少ない方が、さらに減らしていた可能性があります。 この研究の弱いところも書いておきます 大事な但し書きです。この研究は、あとから記録をさかのぼって調べたものでした。 くじ引きで薬を使う人と使わない人を分けた研究(そのほうが確かなことが言えます)ではありません。ですから、「薬のせいで筋肉が減った」と断定はできません。 「薬を使った方には、そういう変化が見られた」——いまはそこまでです。 あなた じゃあ、そんなに心配しなくてもいいのでしょうか。 Torapon 私は、心配しすぎず、備えはしておくくらいがちょうどいいと思っています。というのも、筋肉を守る手立てはどれも、やって損のないことばかりだからです。研究の結論を待たなくても、今日から始められます。 なぜ高齢の方でとくに心配なのか 理由は単純です。筋肉が減ると、生活の自由が減るからです。 立ち上がりにくくなる 歩く速さが落ちる 転びやすくなる 転んで骨折すると、そこから寝たきりにつながることがある 体重が10キロ減って血糖値がよくなっても、歩けなくなってしまったら、差し引きで損です。そこは天秤にかけ直したいところです。 筋肉を守るために、できること やることは、たった2つです。 ・たんぱく質を、いつもより意識して摂る 食事の量が減るぶん、中身の密度を上げます。 目安は体重1キロあたり1.0〜1.2グラム。体重60キロの方なら、1日60〜72グラムです。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を、毎食ひと品ずつ入れるとおおよそ届きます。 ※腎臓の病気がある方は、たんぱく質を増やすと負担になることがあります。必ずかかりつけの先生に相談してからにしてください。 ・筋肉に、力を出させる 歩くだけでは、筋肉は増えません。「よいしょ」と力を出す動きが要ります。 椅子から立ち上がる。10回を1セット、朝と晩に かかとの上げ下げ。台所で、10回 ペットボトルを持って、ひじの曲げ伸ばし。10回 きつくなくて大丈夫です。続くことのほうが、はるかに大事です。 ...

August 27, 2026 · 1 分