紅葉の川沿いの道を、杖をついた夫と妻が寄り添って歩く後ろ姿のイラスト

体が弱ってきたら、頭も? 〜「フレイル」の変化と、認知機能の研究から〜

「最近、ペットボトルのふたが開けにくい」「歩くのが、前より遅くなった気がする」。 ご自分のことでも、離れて暮らす親のことでも、そんな小さな変化に気づいたことはありませんか。 こうした体の弱りは「フレイル(虚弱)」と呼ばれます。そして最近、体が弱っていく人は、頭の働きも落ちやすいことを示す研究が、いくつか出てきました。 今回は、「悪くなったとき」と「戻ったとき」に注目した研究を3つ、短くご紹介します。 ✅ 元気な状態からフレイルの側へ悪化した人は、元気なままの人にくらべて、頭の働きの落ち方が少し速いという結果でした ✅ 一方、フレイルの手前から元気に戻った人は、手前のままの人にくらべて、認知症になった人が約4割少なかったという研究もあります ✅ ただし、体を鍛えるだけで頭も守れる、とまでは言えません。くじ引きで調べた試験では、運動に「頭を使う」「食べる」を組み合わせたほうがよさそうでした 目次 そもそも「フレイル」とは? 悪化すると、頭の衰えも少し速い 手前から戻った人は、認知症が少なかった 運動だけで、頭も守れるの? 現場で感じていること いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 そもそも「フレイル」とは? フレイルとは、元気な状態と、介護が必要な状態の「あいだ」のことです。日本語では「虚弱」と訳されます。 日本では、次の5つのうち、3つ以上当てはまるとフレイル、1〜2つならフレイルの手前(プレフレイル)と考えます(日本版CHS基準・2020年改定)。 チェック項目 目安 体重が減った 6か月で2kg以上、意図せずに減った 握力が弱い 男性28kg未満、女性18kg未満 疲れやすい ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする 歩くのが遅い 1秒に1m未満(横断歩道を青のうちに渡りきれないくらい) 体を動かしていない 軽い運動・体操も、定期的な運動・スポーツも、週1回もしていない あなた いくつか当てはまるかも……。もう手遅れでしょうか? Torapon いいえ。フレイルのいちばん大事な特徴は、「戻れることがある」ところなんです。だからこそ、早めに気づくことに意味があります。 悪化すると、頭の衰えも少し速い 2026年9月に、中国・イギリス・アメリカの約2万人を合わせて調べた研究が発表されました(学術誌『Alzheimer’s & Dementia』)。 フレイルの状態を2年あけて2回測り、その後数年間、頭の働き(記憶・今日の日付などの見当識・段取りする力)を追いかけています。 はじめからフレイルやその手前だった人は、元気な人にくらべて、頭の働きが少しずつ速く落ちていました 元気な状態からフレイルの側へ悪化した人も、元気なままの人にくらべて、同じように少し速く落ちていました ただし、この研究には注意点が2つあります。 ここでの「フレイル」は、筋力ではなく、持病・症状・生活の不自由・気分の落ち込みなど、健康の問題がいくつ重なっているかで測ったものです フレイルが良くなった人で、頭の衰えがゆるやかになったかは、はっきりしませんでした。研究者自身も「フレイルを改善すれば頭が守られる、とは示していない」と書いています 手前から戻った人は、認知症が少なかった もうひとつ、体の弱りで測った研究があります(上の表のような項目で見る海外の物差しを、少し変えたものです)。2026年に発表された、60歳以上の約1万6千人を合わせて調べた研究です(学術誌『Journal of Advanced Research』)。 こちらも、フレイルの状態を2回測って、その「変化」と認知症の関係を見ています。 フレイルの変化 くらべた相手 認知症になった割合 元気 → 手前・フレイルに悪化 元気なままの人 約1.6倍 手前 → フレイルに悪化 手前のままの人 約1.9倍 手前 → 元気に戻った 手前のままの人 約0.6倍(約4割少ない) あなた 戻った人は、認知症が少なかったんですね! ...

October 13, 2026 · 2 分
頭の体操をするシニアのイラスト

脳の「処理スピード」を鍛えると、20年後の認知症リスクが下がる? 〜数週間の脳トレが教えてくれたこと〜

「脳トレって、本当に意味があるの?」―― そう感じたことは、ありませんか? ドリルやパズルをやってはみるものの、「これで本当に認知症が防げるのかな…」と、半信半疑の方も多いと思います。 ところが最近、その問いに 20年がかりで答えを出した研究 が話題になりました。 「ある脳トレを数週間受けただけで、認知症になるリスクが下がり、その効果が最長20年続いた可能性がある」 今回は、その内容をできるだけやさしくお伝えします。 ✅ 「情報を素早く処理する力」を鍛える脳トレを受けた人は、10年後の認知症リスクが約29%低かった ✅ その効果は 最長20年 続いた可能性。途中で「追加レッスン」を受けた人ほど、効果が大きかった ✅ 特別な道具はいりません。大事なのは「素早く見て・気づく」練習を 続けること 目次 どんな脳トレだったの? 2,800人を20年追いかけた研究 カギは「追加レッスン」 おうちでできること おわりに どんな脳トレだったの? 今回の主役は、「情報処理スピードのトレーニング」(処理速度=見たものを素早く理解し、判断する力)と呼ばれる脳トレです。 やることはシンプルで、画面にパッと出てくる絵や記号を 素早く見つけて答える というもの。慣れてくると、表示時間がどんどん短くなり、まわりにじゃまな情報があっても、目的のものを素早く見分けられるようになっていきます。 車の運転で「歩行者や標識にパッと気づく」あの感覚に近い力、とイメージするとわかりやすいかもしれません。 2,800人を20年追いかけた研究 この研究は、アメリカで行われた 「ACTIVE研究」 という、とても大きな調査がもとになっています。 対象:65歳以上の 健康な高齢者 2,802人 開始:1998年ごろ から、20年以上の追跡 体制:アメリカ国立衛生研究所(NIH)が支援 参加者を、いくつかの脳トレを受けるグループと、何もしないグループに分けて比べたところ―― 情報処理スピードの脳トレを受けた人は、10年後に認知症と診断されるリスクが約29%低かった そして2026年2月、医学誌『Alzheimer’s & Dementia』に発表された最新の解析では、その効果が 最長20年 にわたってみられた可能性が報告されました。 カギは「追加レッスン」 ひとつ大事なポイントがあります。それは、一度きりで終わらせないこと。 最初の5〜6週間のトレーニングのあと、1〜3年後に 「追加レッスン」(ブースター) を受けた人ほど、認知症リスクがより下がっていました。レッスンを1回受けるごとに、リスクがさらに少しずつ下がっていく傾向もみられたそうです。 運動と同じで、脳トレも 「ときどき思い出して、また続ける」 ことが効いてくる、というわけですね。 おうちでできること 研究で使われたのは専用のパソコンプログラムですが、その「素早く見て・気づく」エッセンスは、毎日の暮らしの中にも取り入れられます。 ✅ トランプの神経衰弱や間違い探し で、「素早く見つける」練習を ✅ 会話・カラオケ・囲碁将棋 など、人と関わりながら頭を使う遊びを ✅ そして何より、ウォーキングなど体を動かす習慣 を。体を動かすことは、最強の「脳トレ」でもあります ✅ 大切なのは「完璧」より 「ときどきでも、続けること」 ...

May 31, 2026 · 1 分
ゴルフ場で仲間と一緒に体をほぐすシニアたちの水彩画

ゴルフを続けている人は、頭も元気? 〜4,575人の研究が教えてくれた「続けること」の意味〜

「そろそろ、ゴルフもやめどきかな」 「腰も痛いし、スコアも昔のようにはいかないし……」 そんなふうに、長く続けてきた趣味を手放すことを考えたことはありませんか。 2026年、国立長寿医療研究センターの島田裕之先生たちが、高齢者4,575人を対象にした研究を発表しました。テーマは、ゴルフと頭の元気との関係です。 理学療法士として現場に立っていると、趣味を手放した方から、少しずつ元気がなくなっていく——そんな場面に何度か出会うことがありました。今回の研究は、その実感に静かに重なるものでした。 ✅ 認知機能が下がっていた人の割合は、今もゴルフをしている人14.1%/やめた人20.1%/したことがない人21.6% でした ✅ 効いていそうなのは、歩く・頭を使う・人と交わる、この3つが同時にそろうこと です ✅ ただし 回数を増やす必要はありません 。関係していたのは「たくさん回ること」ではなく「続いていること」でした 目次 4,575人を、3つのグループに分けてみたら ゴルフの、何が効いているのでしょう ここは正直に——「だからゴルフをすれば安心」とは言えません では、ほかのスポーツや活動はどうなのでしょう 共通しているのは「3つ」と「続いていること」 私自身のこと いま私たちにできること おわりに 4,575人を、3つのグループに分けてみたら この研究では、高齢の方4,575人を、こんなふうに3つに分けて比べました。 今もゴルフをしている人 昔はしていたが、やめた人 ゴルフをしたことがない人 そして4種類の検査で、認知機能が下がっているかどうかを調べました。結果が、こちらです。 今も続けている人が14.1% 。やめた人が20.1%、したことがない人が21.6%でした。統計的にみても、続けている人は「したことがない人」よりはっきり低い、と報告されています。 さらに興味深いのは、次の2点です。 ゴルフ歴が長い人ほど、認知機能が下がっていない傾向がありました いっぽうで、年間のラウンド数や練習の量とは、はっきりした関係が見られませんでした あなた ゴルフをやめてしまった人は、もうダメということでしょうか……。 Torapon いいえ、そう読むのは早いです。実はこの研究、記憶に関しては「やめた人」にも良い関連がみられた と報告しています。それに、あとでお話ししますが、この数字には 逆向きの説明 も十分にあり得るんです。「頭が心配になってきたから、ゴルフをやめた」という順番ですね。 まとめると、この研究がいちばん強く示していたのは、こういうことになります。 月に何回も回っている人が良い成績だったのではありません。回数は少なくても、ゴルフをやめずに長く続けてきた人——そちらのほうに、良い結果が出ていたのです。 ゴルフの、何が効いているのでしょう では、ゴルフの何が頭に関わっているのでしょうか。研究チームは、ゴルフを「体・頭・人づきあい、いくつもの要求が重なる活動」だととらえています。 ① 歩く 18ホールを回れば、カートを使っても、けっこうな距離を歩きます。歩いて回れば8〜10km、1万歩を超えることも珍しくありません。しかも平らではありません。上り下り、傾いた足場、ラフの中。ただの散歩より、体の使い方はずっと複雑です。 ② 頭を使う ここがゴルフの、いちばん面白いところかもしれません。 風の向きと強さ、グリーンまでの残り距離、足元の傾き、池やバンカーの位置、そして今日の自分の調子。それを全部あわせて、1本のクラブを選ぶ 。しかも、状況は毎回ちがいます。同じ場面は二度とありません。 あなた 言われてみれば、ラウンド中はずっと何か考えていますね。 Torapon そうなんです。しかも「決めて、打って、結果を見て、次を考える」のくり返しでしょう。これは脳の中でも 段取りをつけたり、切り替えたりする働き をよく使います。ふだんの生活では、なかなかここまで使わないんですよ。 これを裏づける研究もあります。同じ島田先生たちが2018年に行った試験では、運動習慣のなかった65歳以上の106人を、24週間のゴルフ教室と健康講座のグループにくじ引きで分けました。その結果、ゴルフ教室のグループでは、単語を覚える力が6.8%、お話を覚える力が11.2% 高くなったと報告されています。 こちらは「くじ引きで分けて比べた試験」なので、ゴルフの側に原因があると言いやすい研究です。 ③ 人と交わる そしてもう一つ。ゴルフは、4時間前後を、だれかと一緒に過ごす遊びです。 ...

August 11, 2026 · 2 分
朝の川沿いを歩くシニア男性のイラスト

運動した筋肉が、脳に「部品」を届けていた 〜血小板が運ぶミトコンドリアの話〜

「運動は脳にいい」――もう耳にタコができるほど聞いた言葉かもしれません。 でも、こう思ったことはありませんか。 「足を動かしているのに、どうして頭によいのだろう?」 血のめぐりがよくなるから。気分が晴れるから。よく言われる説明ですが、どこか腑に落ちない感じが残ります。筋肉と脳は、離れた場所にあるのに。 その「離れた場所」を、実はモノがやりとりされていた――そんな研究が、2026年1月に順天堂大学から発表されました。 運動でつくられたある「部品」が、血のなかを流れて、脳まで運ばれていた というのです。 ✅ 運動をすると、筋肉のなかで ミトコンドリア(細胞のエネルギー工場) が増えます ✅ 増えたミトコンドリアは血液中に放り出され、血小板(けっしょうばん) がそれを拾い上げます ✅ 血小板は 血のめぐりが悪くなった場所に集まる性質 があるため、結果的にミトコンドリアが 脳の弱った部分へ届けられて いました ⚠️ 先にお伝えしておきます。 これは マウス(ねずみ)の実験 で分かったことです。人間でも同じことが起きているかは、これから確かめる段階です。この記事では、そこを正直に書きます。 目次 そもそもミトコンドリアって何? 順天堂大学が見つけた「運び屋」 なぜ血小板だったのか ここは正直に ― まだマウスの話です 「にぎる力」の話とつながっている いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 そもそもミトコンドリアって何? 学校で聞いたことがある、という方も多いと思います。少しだけおさらいさせてください。 ミトコンドリアは、細胞のなかにある「発電所」 です。私たちが食べたものと吸った酸素から、体を動かすためのエネルギーをつくり出しています。 大事なのは、この発電所の数は、生まれつき決まっているわけではない ということです。 運動をすると、筋肉のなかのミトコンドリアは増えます。 これは以前から分かっていたことで、「持久力がついた」という状態の正体のひとつが、これです。 そして脳もまた、体のなかでとくに電気を食う臓器 です。重さでは体の2%ほどしかないのに、エネルギーの2割前後を使っています。脳にとって、発電所の元気さは死活問題なのです。 あなた 運動すると筋肉の発電所が増える、というのは分かります。でも、それが脳とどう関係するのでしょう? Torapon そこが、今回の研究のいちばん面白いところなんです。筋肉で増えた発電所が、筋肉のなかにとどまらなかった ――そういうお話です。 順天堂大学が見つけた「運び屋」 研究をしたのは、順天堂大学の稲葉俊東先生、宮元伸和先生、服部信孝先生らのグループです。成果は2026年1月15日、医学誌 『MedComm』 のオンライン版に発表されました。 研究チームがマウスで確かめたのは、こういう流れでした。 ① 運動する → 筋肉のミトコンドリアが増える まず、これは想定どおりです。 ② 増えたミトコンドリアが、血液のなかに出ていく ここが意外なところです。筋肉のなかにしまわれたままではなく、一部が血液中に放り出されて いました。 ③ 血小板が、それを拾い上げる 血液のなかを流れているミトコンドリアを、血小板が取り込んで いたのです。 ...

August 18, 2026 · 1 分
和やかに食卓を囲むシニア夫婦のイラスト

認知症予防は「食卓」から 〜MCIからの回復にも効く食事の整え方〜

「最近、何を食べたか思い出せない」「同じおかずばかりになっている気がする」―― 食卓を見ながら、ふとそんな小さな不安を感じることはありませんか? 実は、毎日の食事が、何十年もかけて少しずつ脳の健康をつくっていることが、近年の研究でだんだんはっきりしてきました。 そして、もし軽い物忘れ=**MCI(軽度認知障害)**の段階であれば、適切な対策で 健常な状態へ戻る可能性がある ことも分かっています。 ✅ 「これさえ食べれば治る」魔法の食品はありません。基本は 多様な食品をバランスよく ✅ 主食・主菜・副菜を、1日2食以上そろえることが質のよい食事の目安 ✅ 年代で食事のギアチェンジを:中年期はメタボ対策、高齢期はフレイル(虚弱)対策 今日は、認知症予防やMCIからの回復を支える「食事の整え方」を、できるだけやさしくまとめてみます。 目次 そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う 減塩・血糖・お酒の付き合い方 「共食」と五感の刺激 〜心と脳を元気に〜 私自身が実践していること(体験談) いま、私たちにできること おわりに そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 「食事で本当に脳が変わるの?」と思われるかもしれません。 これについて、近年こんなことが分かってきました。 いろいろな種類の食品を食べている人ほど、認知機能の低下が抑えられている 野菜・果物・魚を豊富に含む食事(地中海食や、それを応用した MIND食 と呼ばれるもの)は、抗酸化・抗炎症のはたらきによって認知症予防に役立つと考えられている 高血圧・糖尿病・高LDLコレステロールなど 血管の病気 は、認知症のリスクを高めることが分かっている。だから「血管の健康を保つ食事」が、そのまま「脳を守る食事」になる つまり食事は、ある日突然脳に効く特効薬ではなく、毎日少しずつ、脳に栄養を貯金していくようなものなのです。 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 「何を食べたらいいの?」と聞かれたら、私はまず 3つの皿をそろえること をおすすめしています。 主食(しゅしょく) ごはん、パン、麺類など エネルギー源 になります 主菜(しゅさい) 魚、肉、卵、大豆製品(豆腐・納豆など) 筋肉や脳の材料となるたんぱく質 が豊富 副菜(ふくさい) 野菜、きのこ、海藻、サラダ、煮物 ビタミン・ミネラル・食物繊維 で、脳の酸化ストレスを和らげます そこに、果物・ナッツ・乳製品を少しプラスできれば、栄養バランスはほぼ整います。 1日2食以上、主食・主菜・副菜がそろっているか―― これを意識するだけで栄養バランスは完璧です。 朝・昼・夜の小さな工夫 朝食:手間をかけずに ゆで卵 や 納豆 で主菜を確保。ヨーグルト で乳製品もプラス 昼食・夕食:魚(鯖・イワシ・サンマなど) を週に2〜3回。緑黄色野菜 を2種類以上 おやつ:菓子パンやスナックの代わりに ナッツ・果物・チーズ を選ぶ 「全部きちんと」と思うと続きません。1日1回からでOK。私もそうしています。 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う ...

May 9, 2026 · 2 分
夜の台所で、ごはんとみそ汁をのせたお盆を手に、壁の時計を見上げている高齢の男性のイラスト

夕食が遅い人は、認知症が多いのでしょうか 〜日本の28万人を追いかけた調査から〜

「気がつくと、夕食が夜の9時を回っている」 「朝はあまりお腹がすかないので、コーヒーだけで済ませてしまう」 どちらも、めずらしい話ではないと思います。私自身、仕事から帰るのが遅くなった日は、そうなりがちです。 その「食べる時間」について、2026年7月、日本から大きな調査の報告が出ました。健康診断を受けた65歳以上の28万人を、その後も追いかけた ものです。 先にお伝えしておきます。この記事は「時間を守れば認知症を防げます」という話ではありません。 むしろ研究をよく読むと、そう単純ではないことが分かります。ただ、知っておくと役に立つ内容ではありました。 ✅ 九州大学のグループが、日本の65歳以上 283,166人 を追いかけました。そのあいだに新たに認知症と診断されたのは 18,056人 です ✅ 寝る2時間以内に夕食をとる日が週3回以上ある人 は、そうでない人と比べて、新たに認知症と診断された人が 1.17倍 でした。朝食を抜く日が週3回以上ある人 は、そうでない人と比べて 1.13倍 です ✅ ただしこれは 観察した研究 で、原因と結果は分かりません。「認知症になりかけていたから、食事の時間が乱れた」という逆の順番 も、じゅうぶんに考えられます 食事の中身については、こちらでまとめています。 👉 認知症予防は「食卓」から 〜MCIからの回復にも効く食事の整え方〜 目次 どんな調査だったのか 分かったことは2つ 数字の読み方をここでまとめます いちばん疑わしいのは「順番が逆」という可能性 正直に書いておきたいこの研究の弱いところ それでも生活リズムには意味があると思う理由 理学療法士として現場で思うこと いま私たちにできること おわりに 参考にした情報 どんな調査だったのか 報告したのは、九州大学の川口健悟先生 たちのグループです。2026年7月28日、『GeroScience』 という老化の研究をあつかう医学雑誌のオンライン版に発表されました。 LIFE研究という、大きな調査の一部です。使われたのは、日本の19の自治体 に残っている、健康診断・医療保険・介護保険の記録です(どなたの記録か分からないように処理したものを使っています)。 対象になった方 … 65歳以上の283,166人 平均年齢 … 72.8歳 女性の割合 … 58.5% 調査に加わった時期 … 2016年4月から2021年3月のあいだに健康診断を受けた方 その後、新たに認知症と診断された方 … 18,056人 28万人という人数は、日本の研究としてはかなり大きなものです。しかも、あとから昔を思い出して答えてもらう形ではなく、健康診断のときに先に食事の時間を聞いておいて、そのあとどうなったかを追いかける やり方(前向きコホート研究=はじめに集団を分けておいて、その後を追いかける調べ方)で行われています。 食べる時間については、健康診断の問診票 で、次の2つを「はい・いいえ」で答えてもらっています。 寝る2時間以内に夕食をとる日が、週3回以上あるか … あてはまる方は 36,609人 で、全体の12.9%です 朝食を抜く日が、週3回以上あるか … あてはまる方は 17,727人 で、全体の6.3%です あなた 28万人も調べたのなら、もうはっきりしたということですか? ...

September 13, 2026 · 2 分
朝の窓辺で、年配の夫婦がコーヒーカップを手に、ゆったりと過ごしているイラスト

コーヒーを飲む人は、認知症が少なかった? 〜13万人を最長43年追った研究から〜

「コーヒーは、体にいいの? 悪いの?」。 昔から、よく話題になるテーマです。脳についても、「良い」という研究と「はっきりしない」という研究があり、決着がついていませんでした。 2026年2月、アメリカの医学雑誌『JAMA』に、13万人あまりを最長43年追いかけた研究が発表されました。この研究のポイントは、カフェイン入りのコーヒーと、カフェインレスのコーヒーを分けて調べたことです。 ✅ アメリカの約13万2千人を最長43年追った研究で、カフェイン入りコーヒーをいちばん多く飲むグループは、いちばん少ないグループにくらべて、認知症になる危険が18%低いという関係が見られました ✅ お茶でも似た関係が見られました。一方、カフェインレスのコーヒーでは、関係は見られませんでした ✅ 関係がいちばんはっきりしていたのは、コーヒーなら1日2〜3杯、お茶なら1〜2杯ほど。ただし「関係が見られた」研究で、「飲めば防げる」と証明したものではありません 目次 どんな研究だったのか カフェイン入りを多く飲む人は、認知症が少なかった カフェインレスでは、関係が見られなかった 「たくさん飲むほど良い」わけではない いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 どんな研究だったのか 研究したのは、アメリカのハーバード大学などのチームです。使ったのは、長く続いている2つの健康調査でした。 女性の看護師 約8万7千人(1980年から2023年まで) 男性の医療職 約4万5千人(1986年から2023年まで) 合わせて13万1,821人です。はじめの時点で、がん・パーキンソン病・認知症のない人たちでした。始めたときの平均年齢は、女性が46歳、男性が54歳ほどで、まだ働き盛りの世代です。 参加者は、2〜4年ごとに、何をどれくらい食べたり飲んだりしているかのアンケートに答えてきました。追いかけた期間は最長43年、半分の人は37年ほど以上。その間に、1万1,033人が認知症と診断されています。 あなた 40年以上も! そんなに長く調べた研究なんですね。 Torapon そうなんです。認知症は、症状が出る何十年も前から、脳の変化が始まるといわれています。中年のころの習慣と、何十年も後の認知症を結びつけて見られるのが、この研究の強みです。 カフェイン入りを多く飲む人は、認知症が少なかった 研究チームは、カフェイン入りコーヒーを飲む量で、参加者を4つのグループに分けました。 そして、結果に影響しそうなほかの要因をできるだけ差し引いて比べると、 いちばん多く飲むグループは、いちばん少ないグループにくらべて、認知症になる危険が18%低かった 「最近、もの忘れが増えた」と自分で感じている人の割合も、いちばん多く飲むグループで7.8%、いちばん少ないグループで9.5%と、少なめでした 女性の看護師の調査では、電話で頭の働きを確かめるテストも行われています。こちらでも、いちばん多く飲むグループのほうが、点数が少し高めでした。 ただ、その差は41点満点で0.11点ほど。とても小さな差です。いくつかのテストを合わせた成績では、偶然でも起こりうる程度の差にとどまりました。研究チーム自身も「わずかに良い(modestly better)」という言い方をしています。 お茶でも、似た関係が見られました。なお、要旨からは、お茶の種類(紅茶・緑茶など)の内訳は分かりません。 カフェインレスでは、関係が見られなかった この研究でいちばん目を引くのが、ここです。 カフェインレスのコーヒーを多く飲む人では、認知症の少なさとも、頭の働きのテストとも、関係が見られませんでした。 研究チームによると、これまでの研究の多くは、カフェイン入りとカフェインレスを区別せずに「コーヒー」としてまとめて調べていました。結果がそろわなかった理由のひとつは、そこにあったのかもしれません。今回は2つを分けて見たことで、「同じコーヒーでも、カフェイン入りのほうにだけ関係があった」ことが見えてきました。 あなた ということは、カフェインが脳に良いということですか? Torapon そう考えたくなりますよね。ただ、この研究は飲む量を割り振って比べたものではなく、ふだんの習慣を調べたものです。カフェインそのものが効いているのか、カフェイン入りを飲む人の暮らし方に何か違いがあるのかは、この研究だけでは分かりません。「カフェイン入りのほうに関係があった」と受け止めておくのが正確です。 「たくさん飲むほど良い」わけではない 量と認知症の関係を細かく見ると、まっすぐな関係ではありませんでした。 関係がいちばんはっきりしていたのは、 カフェイン入りコーヒーなら、1日2〜3杯ほど お茶なら、1日1〜2杯ほど 研究チームのまとめも「ほどほどの量で、関係がいちばん強かった」というものです。 なお、要旨には「1杯」が何ミリリットルかは書かれていません。また、砂糖やミルクの量、飲む時間帯について調べたかどうかも、要旨からは分かりません。 あなた じゃあ、今日から1日3杯にしようかな。 Torapon すでにコーヒーが好きな方は、「ほどほどに楽しんでいれば十分」と受け取ってください。飲めない方、苦手な方が、無理に飲み始める必要はありません。この研究は、そこまでは示していません。 いま、私たちにできること ☑ 好きな人は、ほどほどに楽しむ……研究で関係がいちばんはっきりしていたのは、1日2〜3杯ほど。増やすほど良い、という結果ではありませんでした ☑ 砂糖やミルクは控えめに……この研究で調べたことではありませんが、甘い飲み物を何杯も、となると、ほかの面が心配になります ☑ 夕方以降は控えめに……カフェインで眠りが浅くなると、元も子もありません。睡眠と脳の関係は、こちらで紹介しています。 👉 「何時間寝たか」より「毎日同じ時刻か」? ☑ 合わない人は、無理に飲まなくてよい……胃が荒れる、動悸がする、眠れなくなる方、心臓の病気や妊娠中などでカフェインを控えるよう言われている方は、主治医の指示を優先してください 🔎 家でゆっくり、コーヒーを淹れたい方へ 豆を挽いて、ゆっくり淹れる時間そのものが、ひと息つく習慣になります。今回の研究で関係が見られたのはカフェイン入りのコーヒーでした。 ...

October 23, 2026 · 1 分
地中海食と日本食が並ぶ食卓のイラスト

地中海食と日本食、合わせるとどうなる? 〜認知症予防の食卓に並べたい3つの食材習慣〜

「毎日同じおかずばかりで、なんだか脳によくない気がする」 「地中海食がいいって聞くけれど、急にオリーブオイル中心の食卓には変えられない」―― そんなふうに、自分の食卓と"理想の食事"のあいだで迷っていることはありませんか? 実は近年、地中海食と日本食、どちらも認知症予防によいことが分かってきました。 そして国立長寿医療研究センターの研究では、日本食をよく食べている人ほど認知症になりにくく、腸内環境にも違いが出ることが明らかになっています。 「地中海風」か「和食」かで悩む必要はありません。いいとこ取りで、今日からの食卓を少しずつ整えていくのが現実的な答えです。 ✅ **「単品サプリ」より「食事全体のパターン」**が認知症予防のカギ ✅ 地中海食と日本食はどちらも理にかなっている――両方のいいとこ取りでOK ✅ 注目したい4つの食材:魚介・きのこ・大豆・コーヒー(日本食スコア研究より) 今日は、地中海食と日本食をどう"合体"させるか――そして私の食卓によく並ぶ3つのメニューを、やさしくご紹介します。 目次 そもそも「脳によい食事」って? 地中海食のここがいい 日本食スコアという発見 地中海食×日本食という選択肢 私の食卓によく並ぶ3つの一皿 いま私たちにできること おすすめの一冊 そもそも「脳によい食事」って? 国立長寿医療研究センターは、認知症予防の食事についてはっきりこう言っています。 単一の栄養素(サプリメント等)を摂取しても、認知症予防には効果がありません。 つまり、「これさえ飲めば」という魔法のサプリは無く、実際の食品から、いろいろな栄養をパターンで摂ることが大事だ、ということです。 そのうえで、これまでの研究で繰り返し名前が挙がるのが、地中海食と日本食の二つの食事パターンです。 地中海食のここがいい 地中海食とは、イタリア南部やギリシャ沿岸で昔から食べられてきた食事のことです。 特徴をひと言でまとめると―― 色とりどりの野菜・果物(赤・黄・緑) 魚介類が豊富 オリーブ油を使う 全粒の穀類と食物繊維 ポリフェノールたっぷりの赤ワインを少々 国立長寿医療研究センターも「認知症予防効果が期待できます」と紹介しており、糖尿病の予防にもよいとされています。 ただ、毎日オリーブ油でパスタを食べる暮らしには無理がある――それが日本に住む多くの人の本音だと思います。 日本食スコアという発見 ここで嬉しいニュースがあります。 国立長寿医療研究センターの 佐治直樹副センター長 たちのチームは、日本食をよく食べている人ほど認知症になりにくいことを、実際の患者さんを調べて確かめました(Nutrition誌、2021年)。 研究チームが使った「日本食スコア」は、こんな食品を組み合わせて点数化したものです。 JDI9(基本の9品目) 米・味噌・魚介類・緑黄色野菜・海藻類・漬物・緑茶・牛肉/豚肉・コーヒー JDI12(拡張版) ↑に加えて、大豆・大豆製品/果物/きのこ 点数のつけ方 それぞれの食品について、ふだんよく食べている人は「1点」/あまり食べていない人は「0点」 ただし、牛肉・豚肉は逆(伝統的な和食では魚を主役にするので、たくさん食べていると0点になります) これを9品目すべて足すと、最大9点・最小0点(拡張版なら最大12点) **点数が高いほど"日本食らしい食事"**ということになります つまり「7点」というのは、9品目のうち7つは日常的によく食べているくらいの感覚です。 結果はとても分かりやすいものでした。 認知症のない人 vs 認知症のある人:JDI9 スコア 7点 vs 5点 同じく JDI12 スコア 8点 vs 7点 特に 魚介類・きのこ・大豆・コーヒー をよく食べている人で差が大きかった これらの食品が多い人は、腸内環境がよく整っており、認知症のリスクと結びつくと言われる物質も少ない 傾向(腸内細菌が出す"体に負担をかける成分"のこと) つまり、お味噌汁・焼き魚・きのこ・豆腐・コーヒーといった、ふだんの和食の延長線上にあるものが、ちゃんと脳の健康と結びついていた、ということです。 ...

May 21, 2026 · 1 分
朝の食卓で、ぬか漬けや野菜のおかず、ごはんとみそ汁を前に、年配の夫婦がくつろいでいるイラスト

おなかの中と『脳の年齢』は、つながっている? 〜腸内細菌と脳の老け具合の研究から〜

「腸は第二の脳」。そんな言葉を、テレビや雑誌で見かけたことがあるかもしれません。 2026年9月、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)などのチームが、腸内細菌(おなかの中にすむ細菌)や便に含まれる物質が、脳の「老け具合」と関係していたという研究を発表しました。 ただ、中身をよく読むと、「この菌を増やせば脳が若返る」という話ではありません。どこまで分かって、どこから先が分からないのか。一緒に見ていきましょう。 ✅ 約1,500人の脳をMRIで調べると、実際の年齢より脳が老けて見える人は、記憶や段取りの力がやや低く、気分も落ち込みぎみでした ✅ 便を調べた182人では、いくつかの腸内細菌や便の中の物質が、脳の老け具合と関係していました。ただし、その関係はごく小さなものでした ✅ ある1回の時点で調べた研究で、腸が先か脳が先かは分かりません。参加者の多くは30歳前後で、食事も調べていません 目次 「脳の年齢」って、どうやって測るの? 脳が老けて見える人は、記憶や気分も おなかの中を調べてみると 「良い菌・悪い菌」とは言えない理由 いま、私たちにできること おわりに 参考にした情報 「脳の年齢」って、どうやって測るの? 研究チームは、脳がぼんやり休んでいるときの様子を、MRI(磁気で体の中を写す検査)で撮影しました。 休んでいるときでも、脳のあちこちの部分は、互いに連絡を取り合っています。その「つながり方」は、年齢とともに少しずつ変わっていきます。 そこで、たくさんの人のデータをコンピューターに学ばせて、つながり方から「この脳は何歳くらいに見えるか」を当てるしくみを作りました。 脳から見た年齢が、実際の年齢より上 → 脳が「老けて見える」 脳から見た年齢が、実際の年齢より下 → 脳が「若く見える」 この差を、研究では「脳の老け具合」の目安にしています。 あなた 脳のシワや縮み具合を見るのとは、ちがうんですね。 Torapon そうなんです。今回は形ではなく、脳の部分どうしの「連絡のとり方」を見ています。ですから、ここでいう「老けて見える」は、病気があるという意味ではありません。あくまで、たくさんの人とくらべたときの「個人差」です。 脳が老けて見える人は、記憶や気分も 研究に参加したのは、病気のない18〜65歳の約1,500人(1,462人)です。年齢の真ん中は30歳前後で、若い人や働き盛りの人が中心でした(学術誌『eBioMedicine』2026年10月号、オンライン公開は9月)。 使われたデータは、アメリカのほか、日本の研究で集められた690人分も含まれています。 3つのグループ(674人・444人・344人)に分けて、同じ結果がくり返し出るかを確かめています。 結果は、次のとおりでした。 脳が老けて見える人ほど、少しのあいだ覚えておく力(ワーキングメモリ)や、段取りよく物事を進める力のテストの点が、やや低め 脳が老けて見える人ほど、気分の落ち込みの点数が、やや高め この傾向は、3つのグループで、くり返し見られた ただし、論文自身も「関係の強さは控えめ」と書いています。脳の老け具合は、記憶や気分を左右するたくさんある要因の1つ、と考えるのがよさそうです。 おなかの中を調べてみると ここからが、腸の話です。 3つめのグループ(ロサンゼルスの344人)のうち、脳の検査と便の検査がそろった182人について、便の中の細菌の種類と物質をくわしく調べました。 その結果、次のようなものが、脳の老け具合と関係していました。 便の中で見つかったもの 脳が老けて見える人で クロストリジウム、コリンセラなど、いくつかの細菌 多い傾向 セラミド(脂の一種で、体の炎症にも関わる物質) 多い傾向 24-ヒドロキシコレステロール(コレステロールが形を変えたもの) 多い傾向 エステトロール(女性ホルモンの仲間) 少ない傾向 では、なぜ便の中の菌や物質が、脳の老け具合と関係するのでしょうか。 研究チームは、これらの菌や物質が、体の中の炎症や血管の働き、脳の神経どうしのつながり、細胞がエネルギーを作るしくみなどを通して、脳に影響しているのではないか、と考えています。ただし、これはまだ「そうかもしれない」という段階の考えです。 ただ、気をつけたい点が2つあります。 関係の大きさは、ごく小さい……脳の老け具合は、同じ年齢でも人によって差があります。その差のうち、腸の様子で説明がついたのは、計算上わずか2%ほどでした。残りの大部分は、腸とは別の理由によるものです 調べた人にかたよりがある……182人を含むこのグループは、9割ほどが女性(344人中312人)でした。研究チームも「男女半々の、もっと大きな集団で確かめる必要がある」と書いています あなた たった2%なんですか。もっと大きな話かと思いました。 Torapon 報道の見出しだけだと、そう感じますよね。でも、腸と脳を同じ人で同時に調べた研究は、まだ少ないんです。「関係の手がかりが見えてきた」という、入り口の研究として受け取るのがちょうどいいと思います。 「良い菌・悪い菌」とは言えない理由 「脳が老けて見える人に多かった菌」と聞くと、つい「悪い菌だ」と思いたくなります。でも、そう決めつけるのは早すぎます。 ① どちらが先か、分からない この研究は、ある1回の時点で、脳と便を調べたものです。時間を追って変化を見たわけではありません。 腸の状態が、脳に影響したのか 脳やストレスの状態が、腸に影響したのか 食事や睡眠など、別の何かが両方に影響したのか このどれなのかは、分かりません。論文でも「原因や順番は言えない」と、はっきり書かれています。 ...

October 21, 2026 · 1 分
Torapon

野菜中心でも油断できない? 〜超加工食品と『注意力』のはなし〜

「お野菜もちゃんと食べているし、そんなに偏ってはいないはず…」 そう思っていても、菓子パンや即席麺、加工肉が毎日の食卓に並んでいませんか? 最近の研究で、こうした 超加工食品(UPF) が増えると 「注意力」が落ちやすい ことが分かってきました。今回は、難しいお話を平易にまとめてみます。 この記事のポイント ✅ 超加工食品(UPF)が10%増えるごとに、注意力スコアが下がるというデータが出た ✅ 「食事全体の質」とは別の影響なので、野菜中心の人も油断できない ✅ 大切なのは 「ゼロにする」ではなく「頻度を下げる」 そもそも「超加工食品(UPF)」って? UPFは Ultra-Processed Foods の略で、工場で何段階も加工された食品をさします。代表的なものは: 菓子パン、市販の菓子 加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン) 即席麺、冷凍ピザ 清涼飲料水、エナジードリンク スナック菓子 これらは塩・砂糖・脂質に加え、家庭ではあまり使わない添加物(乳化剤・保存料など)が含まれているのが特徴です。 研究:UPF 10%増ごとに「注意力」が落ちる オーストラリアの研究(Monash大学、Cardosoら、2026年4月発表)は、40〜70歳の成人 2,192人 の食事を分析しました。「Nova分類」という方法でUPFの割合を出し、認知機能との関連を調べたところ、 UPFが食事全体で10%増えるごとに、注意力スコアが有意に低下していた ことが分かりました。一方で 記憶のテストとの関連は見られなかった とのこと。注意力という、毎日の生活の中で「うっかり」「気が散る」につながる部分にじわっと影響していたわけです。 大事なのは「食事全体の質」と独立だったこと ここがポイントです。研究では「食事全体の質(野菜・果物の摂取量など)」を補正しても、 UPFそのものの影響が残った といいます。 つまり、 野菜をしっかり食べている方 魚や大豆もとっている方 でも、 菓子パン・加工肉・即席麺・清涼飲料を放っておくと注意力が落ちる可能性がある ということ。「いいものを足す」だけでは足りず、「困るものを少し減らす」両輪が大切なんですね。 現場で私が伝えていること 私(Torapon)は患者さんやご家族にお話しするときに、こんなふうにお伝えしています。 「ゼロにしなくて大丈夫です。それ以外にも、おいしいものはいっぱいありますし、お楽しみとして時々食べる分には良いと思いますよ」 UPFを「悪者扱い」して全部禁止してしまうと、食卓がさみしくなり、長続きしません。 頻度を下げる ことを意識するだけで、注意力の維持にぐっと近づけます。 いま私たちにできること 具体的に、無理なく続けやすい工夫を5つご紹介します。 ✅ 朝食の 菓子パンを週に1〜2回に(残りはご飯・パン+たんぱく質に) ✅ ハム・ソーセージは 週2〜3回まで、メインは魚・卵・豆製品で ✅ 即席麺は 「忙しい日のお守り」 として常備、毎日にはしない ✅ 清涼飲料水を お茶・水・無糖炭酸 に置きかえる ✅ おやつは 果物・ナッツ・ヨーグルト を選ぶ日を増やす ...

May 23, 2026 · 1 分