「犬を飼うと、ボケにくいって本当?」
そんな話を聞いたことはありませんか。
東京都健康長寿医療センターのグループが、東京都大田区の高齢者約1万1千人を追いかけた研究で、この問いに答えています。結果は、ちょっとうれしいものでした。
✅ 犬を飼っている人は、介護が必要になるほどの認知症になりにくい傾向がありました
✅ とくに差が大きかったのは、犬と一緒に運動の習慣がある人と、人とのつながりがある人でした
✅ 犬の散歩は、転倒に気をつければ、毎日歩く最高の理由になります
目次
約1万1千人を追いかけた研究
2016年に、大田区に住む高齢の方に「いま犬や猫を飼っていますか」とたずね、その後、介護保険で認知症と判定されたかどうかを追いかけました。

約4年後の結果(2023年発表)はこうです。
- いま犬を飼っている人は、飼っていない人(昔飼っていた人を含む)に比べて、認知症の起きやすさ(オッズ比)が 0.60
- 猫を飼っている人は 0.98 で、差はありませんでした
さらに約7年半まで追いかけた続報(2026年発表)でも、いま犬を飼っている人は、一度も飼ったことがない人に比べて 0.53 でした。一方、昔飼っていたけれど今は飼っていない人は 0.97 で、差はありませんでした。
猫ではダメなんですか?
猫がいけないわけではありません。猫との暮らしにも、心の支えなど良いところはたくさんあります。ただ、この研究で差が出たのは犬だけでした。そのヒントが、次の章にあります。
カギは「散歩」と「つながり」
研究チームは、犬の飼い主をさらに細かく分けて比べました。
- 犬を飼っていて、運動の習慣がある人 … 犬を飼っておらず運動の習慣もない人と比べて 0.37
- 犬を飼っていて、人づきあいがある人 … 犬を飼っておらず、人づきあいが少ない人と比べて 0.41
犬は、雨の日も寒い日も「散歩に行こう」と誘ってくれます。散歩の途中で、ご近所の方と自然に言葉を交わすことも増えます。
つまり、効いていたのは犬そのものより、毎日の散歩と、そこで生まれる人とのつながりだった、と考えられます。猫や、今は飼っていない人で差がなかったことも、この考えと合っています。

年齢的に、今から犬を飼うのはちょっと……。
それで大丈夫です。犬は十数年生きますから、無理をする必要はありません。大事なのは「毎日歩く理由」と「話す相手」です。近所の犬好きさんと散歩仲間になる、ご家族の犬の散歩を手伝う、それだけでも十分です。
※ これは観察研究(すでにある記録を追いかけて調べた研究)です。もともと元気な人ほど犬を飼える、という面もあり、「犬を飼えば防げる」とまでは言えません。
人とのつながりと脳の関係は、こちらでもまとめています。 👉 脳を守る「刺激とつながり」
理学療法士から:犬の散歩で転ばないために
うれしい話の一方で、理学療法士として必ずお伝えしたいことがあります。
アメリカの救急外来のデータ(20年分)では、犬の散歩中のけがの 55% が、リードに引っぱられたり、足を取られたりして転んだものでした。骨折は、65歳以上の人は65歳未満の人に比べて2.1倍起きやすくなっていました。

転ばないためのコツは、次の4つです。
- ✅ リードを手首や指に巻きつけない(急に引かれると、そのまま倒れたり、指を骨折したりします)
- ✅ リードは短めに持ち、犬を体の横に(前に出すと、急な飛び出しで引っぱられます)
- ✅ 滑りにくく、足に合った靴をはく
- ✅ 夜や早朝は明るい服とライトで。足元が不安な日は、ご家族と一緒に
うちの犬は力が強くて、よく引っぱられます……。
それは要注意です。無理に一人で散歩せず、しつけ教室に相談したり、引っぱりにくい胴輪(ハーネス)に替えたりするのも一つの方法です。散歩は「安全に続けられること」がいちばん大切ですよ。
暗い時間の散歩には、光るグッズがあると安心です。
犬の散歩用ライト・反射グッズ
首輪やリードに付けるライトや、光を反射するグッズです。車や自転車から見つけてもらいやすくなり、足元も照らせます。早朝や夕方の散歩が多い方に。
毎日歩くなら、足元の準備も大切です。
ウォーキングシューズ(軽量)
軽くて、かかとがしっかりした靴を選ぶと、つまずきにくくなります。お店で試すときは、夕方の少しむくんだ時間に合わせるのがおすすめです。
おわりに
犬と暮らす人は、認知症になりにくい傾向がありました。そして、その理由は毎日の散歩と、人とのつながりにありそうです。
犬がいても、いなくても、今日できることは同じです。外に出て、少し歩いて、誰かとあいさつをする。その積み重ねが、脳の元気を支えてくれると思います。
参考にした情報
- Taniguchi Y ほか「Protective effects of dog ownership against the onset of disabling dementia in older community-dwelling Japanese: A longitudinal study」Preventive Medicine Reports 2023年;36:102465
- Taniguchi Y ほか「Investigating the Potential Protective Effect of Dog Ownership on Incident Disabling Dementia and Its Cost-Effectiveness」International Journal of Environmental Research and Public Health 2026年;23(7):938
- Maxson R ほか「Epidemiology of Dog Walking-Related Injuries among Adults Presenting to US Emergency Departments, 2001-2020」Medicine & Science in Sports & Exercise 2023年;55(9):1577-1583
※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。持病のある方や足腰に不安のある方は、散歩の距離や方法について、かかりつけ医にご相談ください。