「この年からやめても、もう意味はないんじゃないか」

長く吸ってきた方も、そんな方を見守るご家族も、そう思ったことがあるかもしれません。

2025年、イギリスの研究チームが、たばこをやめた人の、その後の頭の衰え方を追いかけた結果を発表しました。

✅ 12か国の約9,400人を調べた研究で、やめた人は、吸い続けた人より、やめた後の記憶などの衰え方がゆるやかでした

✅ その差は、何歳でやめた人でも同じように見られました

✅ 日本の高齢者の研究では、やめて3年以上たつと、認知症のなりやすさが、吸ったことがない人と同じくらいでした

前回の記事では、55歳のころの喫煙の有無を調べた研究をご紹介しました。今回は、その続き「やめた人はどうなったか」です。 👉 55歳ころのカラダは、その後の人生に響くのでしょうか? 〜認知症にならずに過ごせた年数という見方〜


目次

  1. やめる前は同じ、やめた後に変わった
  2. やめて何年で、差は縮まるのか
  3. 体重が増えすぎないように
  4. 加熱式たばこは、どうなのか
  5. おわりに
  6. 参考にした情報

やめる前は同じ、やめた後に変わった

研究では、イギリス・アメリカ・ヨーロッパの3つの長期調査(12か国・40〜89歳)のデータを使いました。途中でたばこをやめた4,718人と、年齢・性別・学歴・もともとの認知機能などをそろえた吸い続けた4,718人を比べています。

結果は次のとおりです。

  • やめる前の6年間 … 記憶や言葉の出やすさの衰え方は、2つのグループでほぼ同じ
  • やめた後の6年間 … やめた人のほうが、どちらも衰え方がゆるやか
  • やめた年齢による違い … 見られませんでした

禁煙マークのイラスト

あなた あなた

衰え方がゆるやかって、どれくらいですか?

Torapon Torapon

正直に言うと、差はとても小さいです。「頭がよみがえる」という話ではなく、下り坂の傾きが、少しゆるやかになったというイメージです。それでも、同じ坂を下っていた2つのグループが、やめた後に別々の道へ分かれた。そこに意味があると思っています。

※ これは観察研究(すでにある記録を追いかけて調べた研究)です。「やめたから良くなった」とまでは言い切れません。また、比べた相手は「吸い続けた人」で、「吸ったことがない人と並んだ」という結果ではありません。


やめて何年で、差は縮まるのか

「やめても、しばらくは変わらないのでは?」

その疑問に答える研究もあります。

宮城県大崎市の65歳以上・約1万2千人を、約5年半追いかけた研究では、吸ったことがない人と比べて、

  • いま吸っている人 … 認知症のなりやすさが 1.46倍
  • やめて3年以上の人 … ほぼ同じ(1.0倍前後)

でした。

アメリカの大きな調査(約3万3千人・平均60歳)でも、やめた人は、いま吸っている人より認知症のなりやすさが低くなっていました。しかも、やめてからの年数が長いほど、なりやすさは下がっていき、7年ほどたつと、吸ったことがない人に近い水準まで下がって、そこからは変わりませんでした。「何年」かは研究によって幅がありますが、やめる期間が長いほど良い方向という向きは、そろっています。

あなた あなた

じゃあ、早くやめるほどいいんですね。

Torapon Torapon

そのとおりです。ただ、「もう遅い」ということはありません。どの研究も、何歳でも、やめた後のほうがよかったという向きです。今日からが、いちばん早いスタートです。


体重が増えすぎないように

やめた後、体重が増えて悩む方は多いと思います。

先ほどのアメリカの調査では、この点も調べています。「やめた人は認知症のなりやすさが低い」という結果は、やめた後2年間の体重の増えが5kg以内の人でおもに見られ、10kg以上増えた人では、はっきりした差になりませんでした。

体重計に乗る男性のイラスト

もちろん、「体重が増えるから、やめないほうがいい」という話ではありません。大切なのは、やめたあとも歩く・体を動かすを続けて、増えすぎを防ぐことです。散歩の記事もあわせてどうぞ。

👉 1日5,000〜7,500歩で、アルツハイマー病の進行が遅くなる?


加熱式たばこは、どうなのか

「加熱式なら、体にいいんでしょう?」

そう聞かれることがあります。私が調べた範囲では、加熱式たばこや電子たばこと認知症を、長く追いかけた研究は見つかりませんでした。「加熱式なら安心」とは言えず、まだ分かっていないのが正直なところです。

加熱式たばこのイラスト


おわりに

たばこをやめると、その後の頭の衰え方が、ゆるやかになる傾向がありました。そして、その差は何歳でやめても見られました。

「もう遅い」と思っている方にこそ、この研究を知ってほしいと思います。やめるのが難しいときは、一人で頑張らず、お医者さんやご家族の力を借りる方法もあります。禁煙外来(保険が使える場合があります)も、その一つです。

※ 禁煙のお薬などを使うときは、必ずかかりつけ医や禁煙外来にご相談ください。

自分の力だけで頑張ろうとせず、家族や専門家の力も借りながら、一歩ずつ。

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禁煙の本

やめたい気持ちがあるけれど、なかなか続かない方に。禁煙のコツや、やめた後の過ごし方を読みやすくまとめた本が見つかります。ご家族が贈るときは、責めずに、そっと渡すのがおすすめです。


参考にした情報

  • Bloomberg M ほか「Cognitive decline before and after mid-to-late-life smoking cessation: a longitudinal analysis of prospective cohort studies from 12 countries」The Lancet Healthy Longevity 2025年;6(9):100753
  • Lu Y ほか「Smoking cessation and incident dementia in elderly Japanese: the Ohsaki Cohort 2006 Study」European Journal of Epidemiology 2020年;35(9):851-860
  • Chen H ほか「Smoking Cessation, Weight Change, and Risk of Dementia: A Prospective Cohort Study」Neurology 2026年;106(12):e218123

※この記事は一般的な情報提供を目的としたものです。禁煙の方法やお薬については、かかりつけ医または禁煙外来にご相談ください。