窓辺で本を読み、語り合う年配のふたりの水彩画

いちばん「頭が働く」のは何歳ごろ? 〜研究が示した「55〜60歳」という答え〜

「人の名前が、すぐに出てこない」 「新しい機械の使い方を覚えるのが、若いころより時間がかかる」 そんなふうに感じて、「もう歳だから」とため息をついたことはありませんか? ところが2025年、その常識をゆさぶる研究が発表されました。心の働きを総合すると、いちばん高くなるのは20代ではなく、55〜60歳ごろだというのです。 理学療法士として現場に立っていると、年齢を重ねた方の落ち着いた判断に、何度も助けられてきました。今回は、その感覚を裏づけるような研究のお話です。 ✅ 「頭のよさ」は一つではありません。覚えるスピードは20代がピークでも、知識・ことば・経験は60代まで伸びていくことがわかっています ✅ 16の側面をまとめると、総合的なピークは55〜60歳ごろ。下がりはじめるのは65歳ごろ、下がり方が大きくなるのは75歳以降と報告されました ✅ ただし、これは平均の傾向の話です。個人差はとても大きく、「何歳だからこう」と決めつけられるものではありません 目次 「頭のよさ」は、ひとつじゃない 16の側面を足し合わせたら、山のかたちになった 70代・80代まで伸びつづけるものもある この研究には、限界もあります 現場で感じていること いま私たちにできること おわりに 「頭のよさ」は、ひとつじゃない あなた 頭の働きは、若いころがいちばんいい……そう思っていました。 Torapon 半分は当たっていて、半分はちがうんです。「頭のよさ」には少なくとも2種類あると考えられていて、その2つは年齢とともに反対の方向に動くんですよ。 心理学では、「頭のよさ」を大きく2つに分けて考えます。 覚えるスピードや、初めての問題を解く力(専門的には「流動性知能」といいます)……こちらは20代ごろがピークで、そのあとゆっくり下がっていきます 知識・ことば・積み上げた経験(「結晶性知能」といいます)……こちらは60代ごろまで伸びつづけると報告されています 「人の名前が出てこない」「新しい機械に手間取る」というのは、前者の変化です。たしかにそこは、年齢とともにゆっくりになります。 でもそのあいだに、もう一方はずっと育ち続けているのです。長年つちかった知識、ことばの豊かさ、「こういうときは、こうしたほうがいい」という勘どころ。それらは、若いころには持っていなかったものです。 脳の中で何が起きて「ゆっくりめ」になるのかは、こちらの記事でくわしくお話ししています。 👉 認知機能はなぜ衰えるの?〜脳の中で起きている4つの変化〜 16の側面を足し合わせたら、山のかたちになった ここで紹介したいのが、オーストラリアの西オーストラリア大学のジル・ギニャック博士と、ポーランドのワルシャワ大学のマルチン・ザイェンコフスキ博士による研究です。2025年に、心理学の専門誌『Intelligence(インテリジェンス)』に発表されました。 二人が取り組んだのは、こんな疑問です。 「覚える力のピークが20代なら、どうして仕事で成果を出す人のピークは、50代後半なのだろう?」 そこで研究チームは、「人生をうまく運ぶ力」に関わる9つの分野・16の側面を選び出しました。推論する力、記憶、考えるスピード、知識、感情をあつかう力、まじめさ、気持ちの安定、お金についての判断力、道徳的な考え方、思いこみに振り回されにくさ……といったものです。 そして、それぞれについて「年齢とともにどう変わるか」を既存の大規模なデータから集め、同じものさしにそろえて、一本の指標にまとめました。 その結果が、こちらです。 18歳からぐんぐん上がり、55〜60歳ごろがいちばん高い 65歳ごろから下がりはじめ、75歳以降は下がり方が大きくなる 計算の仕方を変えても、ピークはやはり55〜60歳ごろ あなた 55〜60歳がピーク……。ちょうど、いちばん忙しい時期ですね。 Torapon そうなんです。会社で責任のある立場を任される時期と、ぴったり重なります。研究チームも、「仕事で成果が出るピークと、この山の頂上はほぼ同じ」だと述べています。経験を積んだ人が現場で頼りにされるのは、気のせいではなかった、というわけですね。 なお、「経験でみがかれる力」を重く見て計算した場合、85歳ごろの高さは18歳のころと同じくらいになったとも報告されています。ただし中身は別もので、得意なことと苦手なことが入れ替わっている——そんなイメージです。 70代・80代まで伸びつづけるものもある この研究でとくに興味深いのは、60歳を過ぎても伸びつづけるものがあった点です。 「もったいない」に引きずられにくい……たとえば、あまり面白くない映画を観ていて、「お金を払ったのだから、最後まで観ないと損だ」と思って座り続けてしまう。こういう判断のくせは、だれにでもあります。ところが年齢を重ねた方は、ここで上手に切り上げられると報告されています。しかもこの力は、70代・80代まで伸びつづける可能性があるそうです お金についての判断力……60代後半ごろまで伸びていきます 道徳的な考え方……年齢とともに深まっていくと報告されています まじめさ(几帳面さ)や、気持ちの安定……60代から70代にかけて、いちばん高くなっていきます いっぽうで、中年以降にゆっくり下がっていくものもありました。頭の切り替えの早さ、相手の考えを読みとる力(65歳ごろから)、そして「あれこれ考えたい」という意欲などです。 あなた 年をとると、頑固になるものだと思っていました。 Torapon おもしろいですよね。あわてて飛びつかず、落ち着いて決められる——それも立派な力です。若さの「速さ」とはちがう種類の強さが、年齢とともに育っている、ということなんです。 この研究には、限界もあります ここは大事なところなので、正直にお伝えします。この研究には、いくつか気をつけて読むべき点があります。 多くが「横断データ」である……同じ人を何十年も追いかけたのではなく、いろいろな年齢の人を、同じ時期に比べたものが中心です。そのため、「年齢による変化」と「育った時代のちがい」が混ざっている可能性があります 欧米のデータが中心……主に欧米の豊かな国のデータから集められています。日本を含む他の地域でも同じ形になるかは、これから調べる必要があります あくまで「平均」の話……人によるちがいは、とても大きいものです 研究チームは論文の中で、「高度な判断を求められる仕事には、40歳未満や65歳以上の人は向きにくいかもしれない」という見方にも触れています。ただ、これは平均から導いた一般論です。 年齢だけを見て「この人はもう」と判断するのではなく、その人が実際にどうかを見る。研究者自身も、そこを強調しています。 現場で感じていること 理学療法士として働いていると、年齢を重ねた方の「落ち着き」に助けられる場面が、たしかにあります。 ...

July 30, 2026 · 1 分
猛暑の中で涼をとるシニアのイラスト

夏の暑さは、脳にも効いていた? 〜猛暑と認知症リスク、今年からできる対策〜

年々きびしくなる夏の暑さ。「ご高齢のご家族が心配」「自分も夏になると体がつらい」と感じている方は、多いのではないでしょうか。 暑さといえば、まず気になるのは 熱中症。けれど最近、それだけではない可能性を示す研究が報告されました。テーマは 「長く続く猛暑と、認知症のリスク」 です。 日本の大規模な調査で、極端な暑さに何年もさらされることが、認知症の発症リスクと関係していそうだ という結果が出たのです。少し心配な話に聞こえるかもしれませんが、大事なのは 「だからこそ、今年の夏からできる対策がある」 ということ。今日は、研究の中身と、すぐに実践できる暑さ対策を、ごいっしょに見ていきます。 ✅ 日本の高齢者 約5万7千人 の調査で、極端な暑さに多くさらされた人ほど、認知症の発症リスクがやや高まる傾向がみられた ✅ 目安として、猛烈に暑い日が7日増えるごとに、認知症のリスクが約9%・亡くなるリスクが約13% 高まる計算だった ✅ ただし「暑さが原因」と言い切れる段階ではない。だからこそ 今年の夏から、エアコン・水分・室温の対策 を大切にしたい 目次 どんな研究だったの? どれくらい、リスクが上がるの? なぜ暑さが、脳に関わるのでしょう 理学療法士として、夏の現場で感じること いま、私たちにできること おわりに どんな研究だったの? あなた 暑さで「熱中症」はよく聞きますけど、「認知症」にも関係があるなんて初耳です。どんな調査だったんですか? Torapon 日本の高齢者 約5万7千人 を長く追いかけた、とても大きな調査なんです。順番に見ていきましょう。 この研究は、東京科学大学・公衆衛生学分野の 森田彩子(もりた あやこ)氏 らによるもので、認知症の世界的な医学誌 Alzheimer’s & Dementia(2026年1月4日号)に報告されました。 使われたのは、JAGES(ジェイジス=日本老年学的評価研究) という、日本の高齢者を長く追いかけた大規模な調査のデータ(2016〜2019年)です。対象になったのは、同じ町に30年以上住み、認知症がなく、自立して生活している65歳以上の方 約5万7千人。これだけ多くの方を追跡した、信頼性の高い調査です。 研究では、それぞれの地域の ふだんの気候とくらべて「極端に暑い日」が何日あったか を計算し、その暑さへの「のべの量」が多い人と少ない人で、その後の 認知症の発症 や 死亡 に差が出るかを調べました。 追跡のあいだに、2,454名(4.3%)が認知症を発症し、2,375名(4.2%)が亡くなっていました。 どれくらい、リスクが上がるの? 結果は、「極端な暑さにさらされた量が多い人ほど、認知症や死亡のリスクがやや高くなる」 という傾向を示すものでした。 数字でいうと、わかりやすい目安はこちらです。 猛烈に暑い日が7日ふえるごとに、認知症になるリスクは約 9%、亡くなるリスクは約 13% 高まる計算だった さらに研究チームは、2016〜18年に実際にあったレベルの猛暑 にあてはめると、認知症のリスクは 約1.43倍、死亡のリスクは約1.63倍になると試算した あなた 「1.43倍」って聞くと、ちょっとこわい数字です……。 Torapon どきっとしますよね。でも、ここで落ち着いて受け止めたい点があるんです。 これは たくさんの人を集めて見たときの「全体の傾向」 であって、「暑い夏を過ごした人が必ず認知症になる」という意味ではありません。また、この種の研究は 「関係がありそうだ」を示すもの で、暑さが直接の原因だと断定できる段階ではない、ということも大切です。 ...

June 25, 2026 · 1 分
予防接種と健康を考えるイメージ

帯状疱疹のワクチンで、認知症が減る? 〜50万人の調査が示したこと〜

「帯状疱疹のワクチン、打ったほうがいいのかしら」 「役所から案内が届いたけれど、どうしよう」 そんなふうに迷っておられる方が、まわりにいらっしゃるかもしれません。 いま、この帯状疱疹のワクチンについて、「打った人は、認知症になる人が少なかった」という研究が、世界のあちこちから報告されています。 ただ、はじめにお伝えしておきたいことがあります。この記事は、ワクチンを勧めるためのものではありません。どんな研究が出ているのかを正確にお伝えして、かかりつけの先生と相談するときの材料にしていただくためのものです。 ✅ アメリカで66歳以上 約51万人を4年間追いかけた調査で、ワクチンを打った人の認知症の割合は 18.8%、打っていない人は 24.6% でした ✅ イギリス・ウェールズの28万人の調査でも、同じ方向の結果(認知症の診断が約20%少ない)が報告されています ✅ ただし、いずれも「打ったから減った」と証明したものではありません。打つかどうかは、持病やお薬とあわせて、かかりつけの医師とご相談ください 目次 帯状疱疹って、どんな病気? 51万人の調査でわかったこと もうひとつの手がかり「自然の実験」 なぜ、ウイルスと認知症がつながるの? ここは、慎重に見てください 日本では、いまどうなっている? 現場で感じていること いま私たちにできること おわりに 帯状疱疹って、どんな病気? 子どものころにかかった水ぼうそう。あのウイルスは、治ったあとも体からいなくなるわけではありません。神経のそばに、じっと隠れて眠っています。 そして、年齢を重ねたり、疲れや病気で体の守る力(免疫)が弱まったりすると、眠っていたウイルスが目を覚まします。神経に沿って皮膚に出てくるのが、帯状疱疹です。 体の左右どちらかに、帯のように痛みと発疹が出るのが特徴で、ピリピリ、ズキズキとした強い痛みをともないます。 あなた 発疹が治れば、それで終わりなのでしょうか。 Torapon それが、そうとも限らないんです。発疹が治ったあとも痛みだけが長く残ることがあって、これを帯状疱疹後神経痛と呼びます。数か月から、ときには年単位で続く方もいらっしゃいます。帯状疱疹がやっかいなのは、この痛みの後遺症なんですね。 51万人の調査でわかったこと ここからが本題です。近年、この帯状疱疹のワクチンと、認知症との関係を調べた研究が、次々と発表されています。 2026年6月、アメリカのブラウン大学の研究チームが、医学誌『Annals of Internal Medicine』に大きな調査結果を発表しました。 対象は、アメリカの医療施設にいた 66歳以上の50万9926人 4年間、認知症になるかどうかを追いかけた 使われたのは、いま日本でも使える組換えワクチン(シングリックス) その結果が、こちらです。 打っていない人の 24.6% に対して、打った人は 18.8%。差は5.8ポイント、割合にすると約24%低いという結果でした。研究チームは「およそ17人に1人の認知症を防げる可能性がある」と述べています。 もうひとつの手がかり「自然の実験」 「たまたまそうなっただけでは?」と思われるかもしれません。実は、それを確かめるのにとてもよくできた研究が、2025年に科学誌『Nature』に発表されています。 舞台はイギリスのウェールズ。ここでは以前、「1933年9月2日以降に生まれた人はワクチンを打てるが、それより前に生まれた人は一生打てない」という、誕生日で区切る制度がありました。 あなた たった数日の差で、打てる人と打てない人に分かれてしまったのですね。 Torapon そうなんです。そして研究者たちは、そこに目をつけました。生まれた日が1週間違うだけの人たちは、体質も暮らしぶりも、ほとんど同じはず。それなのに、ワクチンを打てたかどうかだけが違う。これなら「くじ引きで分けた実験」に近い形で比べられる、というわけです。 28万2541人を7年間追いかけた結果、ワクチンを打てた側では、認知症と診断された人が3.5ポイント少なく、割合にすると約20%低いという結果でした。とくに女性で、この傾向がはっきりしていました。 こちらは古いタイプの生ワクチンを使った研究です。種類の違うワクチンで、別々の国で、同じ方向の結果が出た——ここが、研究者たちが注目している理由です。 なぜ、ウイルスと認知症がつながるの? しくみは、まだはっきりとはわかっていません。ただ、いくつかの考え方があります。 ウイルスが神経を傷つける……目を覚ましたウイルスは神経に炎症を起こします。それが脳にも影響するのではないか、という考え方です 血管が傷む……帯状疱疹のあと、脳卒中や心筋梗塞が増えるという報告があります。血管の傷みは、認知症とも関わりの深いものです ワクチンが免疫全体を整える……ウイルスを抑えるだけでなく、体の守るしくみそのものによい影響があるのではないか、という見方もあります 血管の状態が脳を守るという話は、こちらの記事でもお話ししています。 👉 認知症を防ぐ「血管と代謝」の整え方 ここは、慎重に見てください 大事なところなので、はっきり書いておきます。これらの研究は、「ワクチンを打てば認知症を防げる」と証明したものではありません。 打つ人と打たない人は、もともと違う……ワクチンを打つ方は、健康に気を配っている方が多い傾向があります。研究チームはその影響を計算で取り除こうとしていますが、完全には取り除けません 研究チーム自身が慎重……ブラウン大学のチームも「ワクチンが理由だと確実には言えない」と明言し、今後さらに検証が必要だとしています 認知症を防ぐための薬ではありません……帯状疱疹ワクチンは、あくまで帯状疱疹を防ぐためのものです あなた では、この研究はあまり意味がないということでしょうか。 ...

August 1, 2026 · 1 分
頭の体操をするシニアのイラスト

脳の「処理スピード」を鍛えると、20年後の認知症リスクが下がる? 〜数週間の脳トレが教えてくれたこと〜

「脳トレって、本当に意味があるの?」―― そう感じたことは、ありませんか? ドリルやパズルをやってはみるものの、「これで本当に認知症が防げるのかな…」と、半信半疑の方も多いと思います。 ところが最近、その問いに 20年がかりで答えを出した研究 が話題になりました。 「ある脳トレを数週間受けただけで、認知症になるリスクが下がり、その効果が最長20年続いた可能性がある」 今回は、その内容をできるだけやさしくお伝えします。 ✅ 「情報を素早く処理する力」を鍛える脳トレを受けた人は、10年後の認知症リスクが約29%低かった ✅ その効果は 最長20年 続いた可能性。途中で「追加レッスン」を受けた人ほど、効果が大きかった ✅ 特別な道具はいりません。大事なのは「素早く見て・気づく」練習を 続けること 目次 どんな脳トレだったの? 2,800人を20年追いかけた研究 カギは「追加レッスン」 おうちでできること おわりに どんな脳トレだったの? 今回の主役は、「情報処理スピードのトレーニング」(処理速度=見たものを素早く理解し、判断する力)と呼ばれる脳トレです。 やることはシンプルで、画面にパッと出てくる絵や記号を 素早く見つけて答える というもの。慣れてくると、表示時間がどんどん短くなり、まわりにじゃまな情報があっても、目的のものを素早く見分けられるようになっていきます。 車の運転で「歩行者や標識にパッと気づく」あの感覚に近い力、とイメージするとわかりやすいかもしれません。 2,800人を20年追いかけた研究 この研究は、アメリカで行われた 「ACTIVE研究」 という、とても大きな調査がもとになっています。 対象:65歳以上の 健康な高齢者 2,802人 開始:1998年ごろ から、20年以上の追跡 体制:アメリカ国立衛生研究所(NIH)が支援 参加者を、いくつかの脳トレを受けるグループと、何もしないグループに分けて比べたところ―― 情報処理スピードの脳トレを受けた人は、10年後に認知症と診断されるリスクが約29%低かった そして2026年2月、医学誌『Alzheimer’s & Dementia』に発表された最新の解析では、その効果が 最長20年 にわたってみられた可能性が報告されました。 カギは「追加レッスン」 ひとつ大事なポイントがあります。それは、一度きりで終わらせないこと。 最初の5〜6週間のトレーニングのあと、1〜3年後に 「追加レッスン」(ブースター) を受けた人ほど、認知症リスクがより下がっていました。レッスンを1回受けるごとに、リスクがさらに少しずつ下がっていく傾向もみられたそうです。 運動と同じで、脳トレも 「ときどき思い出して、また続ける」 ことが効いてくる、というわけですね。 おうちでできること 研究で使われたのは専用のパソコンプログラムですが、その「素早く見て・気づく」エッセンスは、毎日の暮らしの中にも取り入れられます。 ✅ トランプの神経衰弱や間違い探し で、「素早く見つける」練習を ✅ 会話・カラオケ・囲碁将棋 など、人と関わりながら頭を使う遊びを ✅ そして何より、ウォーキングなど体を動かす習慣 を。体を動かすことは、最強の「脳トレ」でもあります ✅ 大切なのは「完璧」より 「ときどきでも、続けること」 ...

May 31, 2026 · 1 分
変化していく脳のイメージ

脳は、いくつになっても変われる 〜リハビリでわかった『脳の可塑性』のお話〜

「もう年だから、これ以上は良くならないよ」 リハビリの現場でも、ご本人やご家族から、そんな声をよく耳にします。 でも、私が理学療法士として毎日のように見ているのは、それとは少し違う光景です。 脳の病気やケガのあとでも、練習を重ねるうちに、できなかった動きが少しずつ戻ってくる――。そんな場面が、たしかにあるのです。 その背景には、脳がもともと持っている 「変わる力」 があります。今回はその力、「脳の可塑性(のうかそせい)」 について、やさしくお話しします。 ✅ 脳には、経験や練習に応じて、神経のつながりを作りかえる力 「脳の可塑性」 があります ✅ 脳卒中などで脳の一部が傷んでも、残った部分が役割を肩代わりしようとする(脳の再構成)。リハビリは、その力を引き出す手助けです ✅ この力は 高齢になってもゼロにはなりません。日々の運動・学び・人との関わりが、脳の“余力”を育てます 目次 そもそも「脳の可塑性」って? 脳が自分を作りかえる「再構成」の話 リハビリは「脳の変化」を引き出すお手伝い 現場で感じていること 高齢になっても、脳は変われる いま私たちにできること おわりに そもそも「脳の可塑性」って? あなた 脳って、一度できあがったらもう変わらないものだと思っていました……。 Torapon よく聞くお話ですね。でも実は、脳のつながり方は生まれたまま固定されているわけではないんです。練習や経験に応じて作りかわる力 ——それが『脳の可塑性』なんですよ。 私たちの脳の中には、「神経細胞(しんけいさいぼう)」 が、数えきれないほどたくさんあります。この細胞どうしは、手をつなぐように 「シナプス」 という接ぎ目でつながり、網の目のようなネットワークをつくっています。 このつながり方は、生まれたときのまま固定されているわけではありません。何かを練習したり、新しい経験をしたりすると、つながりが太くなったり、新しくできたりします。この「経験に応じて、脳の回路を作りかえる力」のことを、「脳の可塑性(かそせい)」 と呼びます。 たとえば、よく使う神経のつながりは、信号が伝わりやすくなっていきます。これは専門的には 「長期増強(ちょうきぞうきょう、LTP)」 と呼ばれ、学習や記憶の土台になっている仕組みです。「習うより慣れろ」という言葉は、まさに脳の可塑性のことを言い当てているのかもしれません。 脳が自分を作りかえる「再構成」の話 この「変わる力」が、いちばん頼もしくはたらくのが、脳卒中(のうそっちゅう)などで脳の一部が傷ついたあとです。 脳のある場所が傷んで、そこが担っていた役割(手を動かす、言葉を話すなど)がうまくいかなくなったとき――傷つかずに残った部分が、ネットワークを組み替えて、その役割を肩代わりしようとすることがあります。これを 「脳の再構成(さいこうせい)」 といいます。 休んでいた回路が活性化したり、残った神経どうしが新しいつながりをつくったりして、失われかけた働きが、少しずつ再び組み立て直されていくのです。 ただし、いいことばかりではありません。脳が傷ついたあとには、回復のじゃまをするタンパク質が現れることもわかってきており、これが回復の壁になる場合があります。だからこそ、早めに・適切にはたらきかけることが大切だと考えられています。 リハビリは「脳の変化」を引き出すお手伝い あなた リハビリって、ただ我慢して頑張るだけの、つらいものだと思っていました。 Torapon がむしゃらに頑張ればいい、というものではないんです。リハビリは、脳が変わりやすい状況を外から手伝ってあげる もの。運動や繰り返しの練習が、その『変わる力』をそっと引き出してくれるんですよ。 では、その「変わる力」を、どうやって引き出すのでしょうか。 そこで登場するのが、リハビリテーションです。 リハビリは、運動や、同じ動きの反復練習といった刺激を通して、脳の可塑性を 意図的に引き出し、失われた機能の回復を促していくプロセスだと考えられています。やみくもに頑張るのではなく、「脳が変わりやすい状況」を、外から手伝ってあげるイメージです。 カギをにぎるのが、脳の中で出る アセチルコリン という物質です。記憶や注意に深くかかわる脳の部位(マイネルト神経核)から出るこの物質が、脳の可塑性を後押しするスイッチのような役割をすると考えられています。さらに、こうした物質を調整して人工的に可塑性を高め、リハビリの効果を底上げしようという研究も進められています。 そしてもう一つ大切なのが、環境と経験です。ヒトの脳は、まわりの環境や、積み重ねる経験によって育ちます。刺激の豊かな環境――人と話す、手先を使う、体を動かす――が、脳の作りかえを後押しすると考えられています。 運動が脳を元気にする話は、こちらの記事もあわせてどうぞ。 👉 運動でつくられる“脳の若返り物質”の話 現場で感じていること 理学療法士として現場に立っていると、教科書の言葉以上に、この「脳の可塑性」を実感する場面があります。 最初はわずかな動きしか戻らなくても、あきらめずに、こつこつ続けた方ほど、半年・一年と経つうちに、できることが増えていく――そんな姿を、何度も見てきました。派手な特効薬があるわけではありません。地道な繰り返しこそが、脳の変化を引き出す確かな道なのだと、現場で教えられています。 高齢になっても、脳は変われる ...

June 27, 2026 · 1 分
運動で体と脳を元気にするイメージ

「にぎる力」が、脳を守る? 〜筋肉と脳の、新しい関係のお話〜

「このごろ、ペットボトルのフタが開けにくくなった」 「握手した手に、昔ほど力が入らない気がする」 そんなふうに、手の力(握力)の衰えを感じたことはありませんか? 「年のせいだから、しかたない」と思ってしまいがちですが、実はいま、この“にぎる力”と、脳の元気との関係に、世界中の研究者が注目しています。 理学療法士として現場に立っていると、「体の力」と「頭の元気」は、思っている以上に深くつながっていると感じます。今回は、筋肉と脳の、新しい関係について、やさしくお話しします。 ✅ 握力は「体全体の筋力の鏡」。大規模な研究で、握力が強い人ほど、将来アルツハイマー病になりにくい傾向が報告されています ✅ アメリカの有名な研究所が、**2026年を「脳の健康の年」**と位置づけました。運動が、脳を元気にする物質 「BDNF」 を増やすことがわかっています ✅ カギは、中年期からの筋力づくり。歩くなどの有酸素運動だけでなく、「筋トレ(筋力を保つこと)」も脳を守る、という新しい視点が広がっています 目次 そもそも、握力と脳って関係あるの? 世界が注目「2026年は、脳の健康の年」 握力は「体全体の筋力の鏡」 なぜ、筋肉が脳を守るの? 現場で感じていること いま私たちにできること おわりに そもそも、握力と脳って関係あるの? あなた 手の力と、脳の元気……。まったく別のもののように思えるのですが。 Torapon そう感じますよね。でも、握力は「体ぜんたいの筋力」をうつす鏡のようなもの。手の力が保てている方は、体全体の筋肉も元気なことが多いんです。そして、その体の元気が、脳の元気ともつながっている——そんなことが、少しずつわかってきたんですよ。 握力とは、文字どおり「手でにぎる力」のことです。健康診断で測ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。 この握力、じつは 「体全体の筋力の目安」 として、医療の現場でよく使われています。手の力だけを特別にはかっているのではなく、握力が保てている人は、全身の筋肉も元気なことが多いからです。 そして近年、この握力と、脳の健康・認知症のリスクとの関係を調べる研究が、世界中で相次いで報告されるようになりました。順番に見ていきましょう。 世界が注目「2026年は、脳の健康の年」 アメリカに、ソーク研究所(Salk Institute) という、脳科学で世界的に知られる研究所があります。この研究所が、2026年を「脳の健康の年(Year of Brain Health)」 と位置づけ、脳を守るしくみの解明に力を入れると発表しました。 その中で、大きなテーマの一つとされているのが 「運動」 です。 運動をすると、脳の中で 「BDNF(ビーディーエヌエフ)」 という物質が増えることがわかっています。これは 「脳を元気にする栄養」 のようなもので、神経細胞が生き延びるのを助け、学びや記憶を後押しし、新しい神経細胞が育つのを支えるはたらきがあると考えられています。 あなた 運動が、脳の栄養を増やしてくれるんですね。ちょっと意外です。 Torapon そうなんです。しかも研究所は、「有酸素運動」だけでなく「筋力(筋トレ)」も、脳を守るのではないかと考えて、くわしく調べはじめています。歩くことに加えて、筋肉を保つことも大事、というわけですね。 これまで「運動といえば、ウォーキングなどの有酸素運動」というイメージが強かったかもしれません。でもいま注目されているのは、筋力そのもの。筋肉が強い人ほど、脳が守られやすいのではないかという、新しい視点です。 運動でつくられる“脳の若返り物質”の話は、こちらの記事もあわせてどうぞ。 👉 運動でつくられる“脳の若返り物質”の話 握力は「体全体の筋力の鏡」 「筋力が脳を守る」という話を、より具体的に示したのが、握力を使った大規模な研究です。 ある研究では、約8万6千人という、とても多くの人を長い期間にわたって追いかけました。その結果、握力が強い人ほど、将来アルツハイマー病になるリスクが低い、という関係が、段階的にみられたと報告されています。握力が強いほどリスクが下がっていく——そんなゆるやかな傾向です。 また、2025年に発表された別の大規模な追跡研究でも、筋力が弱い人は、将来認知症になるリスクがやや高いという結果が示されました。握力や全身の筋力の低下が、将来の脳の健康を映すサインの一つになりうる、というわけです。 あなた 握力が弱いと、もう手おくれ……ということでしょうか。 Torapon いいえ、そうではありません。これらはあくまで「傾向」であって、握力が弱いから必ずそうなる、という話ではないんです。むしろ大切なのは、筋力は、いくつからでも育てられるということ。とくに 40〜60代の中年期から筋力を保つことが、将来の脳を守る土台になると考えられているんですよ。 ここで大事なのは、「握力の数字におびえること」ではありません。握力は、あくまで体の状態を知る手がかりの一つです。数字そのものより、**「これから、体の筋力をどう保っていくか」**のほうが、ずっと大切です。 なぜ、筋肉が脳を守るの? では、どうして筋肉が、脳を守ってくれるのでしょうか。そのしくみは、まだ研究の途中で、すべてが解明されたわけではありません。ただ、いくつかの道すじが考えられています。 運動が「脳の栄養(BDNF)」を増やす……体を動かすことで、神経を元気に保つ物質が増えると考えられています 筋肉そのものが、脳によい物質を出す……近年、筋肉は「動くための器官」であるだけでなく、体じゅうに“よい信号”を送り出す器官でもあることがわかってきました 血のめぐりがよくなる……運動や筋力の維持は、脳へ届く血の流れを助けます 生活習慣が整う……体を動かす習慣は、睡眠・血圧・血糖など、脳に関わる多くのことを、よい方向へ導きます ソーク研究所も、「筋肉を育てるしくみ」が、年をとった脳を守る手がかりになるのではないか、と考えて研究を進めています。つまり、筋肉を保つことは、脳への“うれしい贈りもの”を増やすことでもあるのです。 ...

July 3, 2026 · 1 分
栄養バランスのよい食卓のイラスト

ビタミンB12、「基準値内」でも足りていないかも? 〜年を重ねた脳と、栄養の意外な関係〜

健康診断で「ビタミンの数値は正常ですよ」と言われると、ひと安心しますよね。 でも、こんな研究をご存じでしょうか。 「血液検査では『基準値内』でも、ビタミンB12がやや低めの高齢者は、考えるスピードが少しゆっくりになっていた」 “足りている”はずなのに、脳には影響が出ているかもしれない――。今回は、そんな少し意外な研究を、やさしくお伝えします。 ✅ B12が「基準値内でも低め」の高齢者は、考えるスピード(処理速度)がゆっくりめ で、脳の白質に小さな変化がみられた ✅ ただし「サプリをたくさん飲めば脳が良くなる」わけではない。上乗せ効果は ごくわずか という報告も ✅ まずは 食事から。気になる方は自己判断せず、血液検査でかかりつけ医に相談 を 目次 そもそもビタミンB12って? 「基準値内なのに足りない」研究の話 サプリに飛びつく前に 食事でとるには おわりに そもそもビタミンB12って? ビタミンB12は、神経や血液を元気に保つ ために欠かせない栄養素です。魚や貝、肉、卵、乳製品などに多く含まれています。 やっかいなのは、年を重ねると吸収する力が落ちやすい こと。さらに、胃の調子や一部のお薬の影響でも、吸収が下がることがあります。つまり「ちゃんと食べているつもり」でも、体の中では足りにくくなっている――そんなことが起こりうるのです。 「基準値内なのに足りない」研究の話 アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームが、認知症のない 健康な高齢者231人(平均71歳)を調べました。 すると―― B12が 「基準値内でも低め」 の人は、考えるスピード(処理速度)がゆっくりめ だった さらに、脳の 白質(はくしつ=神経の通り道)に、小さな傷のような変化が多くみられた この研究は2025年に医学誌『Annals of Neurology』に発表され、「いまの基準値は、脳にとっては少し甘いのかもしれない」という議論を呼びました。 サプリに飛びつく前に ここで、とても大事な注意点があります。 「じゃあB12のサプリをたくさん飲めばいいんだ!」――そう考えたくなりますが、話はそう単純ではありません。 別の研究では、Bビタミンのサプリで頭の働きが良くなる効果は ごくわずか にとどまった、と報告されています。足りない人が補うことには意味があっても、「たくさん飲むほど脳に効く」わけではない のです。 サプリは飲み合わせや持病との相性もあります。自己判断で大量にとるのは避け、まずは血液検査でご自分の状態を知ること から始めましょう。 ※ サプリメントや栄養の取り方については、必ずかかりつけ医にご相談ください。 食事でとるには いちばんの基本は、やっぱり毎日の食事です。B12は、こんな食材に多く含まれています。 ✅ あさり・しじみ・牡蠣 などの貝類 ✅ さんま・さば・いわし などの魚 ✅ レバー、卵、牛乳・チーズ、のり 特別なものではなく、和食の食卓に自然と並ぶもの ばかりですね。「最近、魚や貝を食べていないな」と思ったら、週に何回かは意識して取り入れてみてください。 食事と脳の関係は、こちらの記事もどうぞ。 👉 認知症を遠ざける食事のヒント おわりに 「基準値内だから大丈夫」と思っていた栄養が、実は脳にとっては少し足りていないかもしれない――。今回の研究は、そんな気づきを与えてくれました。 とはいえ、神経質になりすぎる必要はありません。魚や貝、卵を、いつもの食卓に少し増やす。 そして気になるときは、ひとりで悩まず、かかりつけの先生に相談する。その小さな積み重ねが、これからの脳を守ってくれます。 ...

May 31, 2026 · 1 分
栄養バランスのよい和食の食卓のイラスト

その「疲れ」「やる気の出なさ」、栄養不足のサインかも? 〜ビタミンB12・葉酸と疲労の意外な関係〜

「しっかり寝ているのに、なんだか疲れがとれない」 「以前ほど、やる気がわいてこない」―― そんなふうに感じることはありませんか? 年のせいかな、と思いがちですが、実は 毎日の食事(栄養) が関係しているかもしれません。今回は、日本の研究から届いた、こんなお話です。 ビタミンB12と葉酸(ようさん)が足りない人ほど、「疲れ」や「やる気の低下」が大きかった ✅ 健康な日本人 約600人 を調べたところ、B12・葉酸が不足ぎみの人ほど、疲れやすく・やる気が出にくい 傾向があった ✅ カギになったのは「ホモシステイン」という血液中の物質。B12・葉酸が足りないと、これが増える ✅ ただし「サプリを飲めば元気になる」と決まったわけではない。まずは 食事の見直し から 目次 B12・葉酸ってどんな栄養? 「疲れ」と栄養をつないだ日本の研究 食事でとるには おわりに B12・葉酸ってどんな栄養? ビタミンB12 と 葉酸 は、どちらも血液や神経を元気に保つために欠かせない栄養素です。2つは チームのように協力して 働いています。 困ったことに、年を重ねると 吸収する力が落ちやすい うえ、葉酸は野菜不足などで足りなくなりがちです。「ちゃんと食べているつもり」でも、体の中では不足しはじめている――そんなことが起こりえます。 「疲れ」と栄養をつないだ日本の研究 大阪公立大学の叶内(かのうち)宏明教授らのチームが、健康な日本人 約600人 を対象に、血液の状態と「疲れ・やる気」の関係を調べました。 すると―― 血液中の「ホモシステイン」が高い人ほど、疲れが強く、やる気も低め だった ホモシステインは、B12・葉酸が足りないと増える 物質 つまり「栄養の不足が、疲れやすさの隠れた原因のひとつかもしれない」というわけです。この研究は2026年、栄養学の専門誌『Nutrients』に発表されました。 ※ これは「関係がみられた」という研究で、「B12・葉酸を増やせば必ず元気になる」と証明したものではありません。慢性的な疲れには、ほかの原因(病気など)も隠れていることがあります。 食事でとるには いちばんの基本は、やっぱり毎日の食事です。 ✅ ビタミンB12 … あさり・しじみ・牡蠣などの貝類、さんま・さば、レバー、卵、のり ✅ 葉酸 … ほうれん草・ブロッコリーなどの青菜、枝豆・納豆などの豆類、いちご・みかんなどの果物 どちらも、和食の食卓に自然と並ぶもの ばかりですね。「最近、魚や青菜を食べていないな」と思ったら、少し意識して取り入れてみてください。 なお「サプリで補えばいいのでは?」と思われるかもしれませんが、自己判断で大量にとるのは禁物 です。疲れが長く続くときは、ひとりで悩まず、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。 ※ サプリメントの利用や栄養の取り方については、必ずかかりつけ医にご相談ください。 ビタミンB12と脳の関係は、こちらの記事もどうぞ。 👉 ビタミンB12、「基準値内」でも足りていないかも? おわりに 「疲れ」や「やる気の出なさ」を、気持ちや年のせいだけにしてしまうのは、少しもったいないかもしれません。その背景に、栄養という整えられる原因 がかくれていることもあるのです。 魚や貝、青菜や豆を、いつもの食卓に少しだけ増やす。そんな小さな積み重ねが、毎日の元気につながっていきます。気になる疲れが続くときは、どうぞ早めにかかりつけの先生に相談してくださいね。 📚 あわせて読みたい一冊 PR 医者が教える食事術 最強の教科書 ...

June 1, 2026 · 1 分
和食の朝ごはんの前で椅子から立ち上がろうとする高齢男性のイラスト

やせる薬で減るのは、脂肪だけではありません 〜筋肉を守りながら使うために〜

前回、「やせる薬」(GLP-1受容体作動薬といいます)が認知症に効くのかどうかを書きました。 前回の記事はこちらです。 👉 「やせる薬」は、認知症に効くのか あの記事を書いたあと、ずっと引っかかっていたことがあります。理学療法士として、いちばん気になるところに触れていなかったのです。 体重が減るのは分かりました。では、減っているのは何なのでしょうか。 ✅ 高齢の糖尿病の方432人を24か月追いかけたところ、薬を使った方は筋肉の量・握力・歩く速さが、使わなかった方より低下していました ✅ これは薬を否定する話ではありません。使うなら、筋肉を守る手を一緒に打っておきたい、という話です ✅ 守り方は地味です。たんぱく質をしっかり摂り、筋肉に力を出させること。それだけです 目次 体重が減るとき、何が減っているのか 432人を24か月追いかけた研究 この研究の弱いところも書いておきます なぜ高齢の方でとくに心配なのか 筋肉を守るために、できること 現場で見てきたこと おわりに 参考にした情報 体重が減るとき、何が減っているのか 体重計の数字は、脂肪と筋肉を区別してくれません。 食事の量が減れば、体は脂肪だけでなく筋肉も一緒に手放します。これは薬にかぎった話ではなく、どんなやせ方でも起きることです。 ただ、若い方と高齢の方では、意味がまるで違います。 あなた どう違うんですか? Torapon 若い方は、あとから筋肉を取り戻せます。でも年を重ねると、減らすのは簡単で、戻すのは何倍も大変なんです。そして高齢の方にとって筋肉は、見た目の話ではありません。立ち上がる、歩く、転ばない——暮らしそのものを支えているものなんですね。 432人を24か月追いかけた研究 2025年、中国のグループがこんな報告を出しました。 対象は65歳以上で2型糖尿病のある432人 セマグルチド(やせる薬の一種)を使った220人と、使わなかった212人を比べた 24か月追いかけて、筋肉の量・握力・歩く速さを測った 結果、薬を使ったグループは、使わなかったグループと比べて、 手足の筋肉の量が低下 握力が低下 歩く速さが低下 していました。しかも薬の量が多い方ほど、影響が大きいという関係も見えています。 もうひとつ気になるのは、参加した方の27.7%が、はじめからサルコペニア(筋肉が減って力が落ちた状態のこと)だったことです。もともと少ない方が、さらに減らしていた可能性があります。 この研究の弱いところも書いておきます 大事な但し書きです。この研究は、あとから記録をさかのぼって調べたものでした。 くじ引きで薬を使う人と使わない人を分けた研究(そのほうが確かなことが言えます)ではありません。ですから、「薬のせいで筋肉が減った」と断定はできません。 「薬を使った方には、そういう変化が見られた」——いまはそこまでです。 あなた じゃあ、そんなに心配しなくてもいいのでしょうか。 Torapon 私は、心配しすぎず、備えはしておくくらいがちょうどいいと思っています。というのも、筋肉を守る手立てはどれも、やって損のないことばかりだからです。研究の結論を待たなくても、今日から始められます。 なぜ高齢の方でとくに心配なのか 理由は単純です。筋肉が減ると、生活の自由が減るからです。 立ち上がりにくくなる 歩く速さが落ちる 転びやすくなる 転んで骨折すると、そこから寝たきりにつながることがある 体重が10キロ減って血糖値がよくなっても、歩けなくなってしまったら、差し引きで損です。そこは天秤にかけ直したいところです。 筋肉を守るために、できること やることは、たった2つです。 ・たんぱく質を、いつもより意識して摂る 食事の量が減るぶん、中身の密度を上げます。 目安は体重1キロあたり1.0〜1.2グラム。体重60キロの方なら、1日60〜72グラムです。肉・魚・卵・大豆製品・乳製品を、毎食ひと品ずつ入れるとおおよそ届きます。 ※腎臓の病気がある方は、たんぱく質を増やすと負担になることがあります。必ずかかりつけの先生に相談してからにしてください。 ・筋肉に、力を出させる 歩くだけでは、筋肉は増えません。「よいしょ」と力を出す動きが要ります。 椅子から立ち上がる。10回を1セット、朝と晩に かかとの上げ下げ。台所で、10回 ペットボトルを持って、ひじの曲げ伸ばし。10回 きつくなくて大丈夫です。続くことのほうが、はるかに大事です。 ...

August 27, 2026 · 1 分