手をつなぐ老夫婦のイラスト

認知症の種類とMCIをやさしく解説 〜母のアルツハイマーから学んだ早期対応の大切さ〜

ご家族の物忘れが増えてきた、同じことを何度も聞かれる、財布や鍵をしまった場所を忘れる…。 そんな様子を見て、**「もしかして認知症かも」**と心配されていませんか? 「でも、どこに相談したらいいの?」 「本人が病院に行きたがらない」 そう悩んで、一歩踏み出せずにいる方も多いと思います。 私の母も、2017年頃から物忘れの様子が目立つようになり、のちにアルツハイマー型認知症と診断されました。家族として辛い時期を経験しましたが、今になって、こう思うことがあります。 「もっと早く相談していれば…」 と。 この記事では、認知症の種類とMCI(軽度認知障害)をやさしく解説しつつ、私自身の家族の経験から学んだ「早期対応の大切さ」をお伝えします。 ✅ 認知症は 1種類じゃない。主に4つのタイプがあります ✅ MCI(軽度認知障害)は認知症の一歩手前。気づいた時が一番大事なタイミング ✅ まずは 地域包括支援センター へ。無料で誰でも相談できます 目次 そもそも認知症とは? 認知症の主な4種類 軽度認知障害(MCI)— 認知症の一歩手前 我が家の経験 — 母のアルツハイマーと家族の時間 困ったときの相談先 まとめ — チェックリスト おわりに そもそも認知症とは? 認知症とは、いろいろな原因で脳の働きが弱くなり、生活に支障が出てくる状態のことを言います。 「物忘れ」と「認知症」は、似ているようで違います。 加齢による物忘れ 認知症 忘れる範囲 体験の 一部 を忘れる 体験 そのもの を忘れる 自覚 本人が気づいている 本人が気づきにくい 日常生活 支障はない 支障が出てくる たとえば、こんな違いがあります。 「朝ご飯に何を食べたか思い出せない」のは 加齢の物忘れ 「朝ご飯を食べたこと自体を覚えていない」のが 認知症のサイン ここに、大きな違いがあります。 認知症の主な4種類 認知症と一口に言っても、原因となる病気は大きく分けて 4つ あります。 種類 おおよその割合 主な特徴 アルツハイマー型認知症 約 6割 物忘れから始まり、ゆっくり進行 血管性認知症 約 2割 脳梗塞・脳出血が原因。手足の麻痺を伴うことも レビー小体型認知症 約 1割 幻視、パーキンソン症状(手のふるえ・小刻み歩行) 前頭側頭型認知症 数% 性格の変化、社会のルールを守れなくなる ※ 厚生労働省・国立長寿医療研究センターの資料をもとにまとめています。 ...

May 4, 2026 · 2 分
地域の仲間と一緒に歩く高齢者のイメージ

『何を、どれくらい』のヒントが見えてきました 〜MCIから始める運動の最適解〜

「MCI(軽度認知障害) と言われたけれど、いったい何から始めればいいのか分からない…」 「運動がいいのは分かるけど、 何を、どれくらい やれば本当に効くのかしら?」 そんなお声を、地域の体操教室や介護現場でよく耳にします。 実は、2026年に入ってから MCIや軽度の認知症の方を対象にした運動研究 が立て続けに公表されました。 中身を読んでみると、これまで「とりあえず体を動かしましょう」と曖昧になっていた部分に、 具体的な答えのヒント が見えてきています。 今日は、特に注目したい 2つの研究 を、現場の目線でやさしくご紹介します。 ✅ 「何を、どれくらい」が見えてきました:複数の運動を組み合わせて、週3回以上 がひとつの目安です ✅ 続けることが何より大切:5年間の追跡では、参加率60%以上 のグループに認知機能の安定した経過傾向がみられました ✅ 一人で頑張らないこと:地域の仲間と一緒にやると 長続きしやすい——これが「効く運動」の隠れた条件かもしれません 少し長めの記事になりますので、気になるところからお読みください。 そもそも:MCI(軽度認知障害)ってどんな状態? 研究①:MCIの方に「どんな運動が効く」のか? 研究②:5年続けると、本当に差が出るのか? 「組み合わせる」と「続ける」のかけ算 家でできる組み合わせ運動の例 Toraponの現場から:地域体操教室で感じていること いま私たちにできること おわりに 〜進行しても、遅らせることはできる〜 そもそも:MCI(軽度認知障害)ってどんな状態? MCI(エム・シー・アイ) は Mild Cognitive Impairment の略で、日本語では「軽度認知障害」と呼ばれます。 ひとことで言うと、 「年相応の物忘れ」と「認知症」の あいだの状態 です。本人やご家族が「あれ?」と気付くことはあっても、まだ日常生活には大きな支障が出ていない段階のことを言います。 ただ、ここからが大事な話で、MCIは そのままにしておくと数年で認知症に進む方 もいれば、 元の状態に戻られる方や、長く安定したまま過ごされる方 もいらっしゃいます。 つまり、MCIは 「いま何をするか」で先が変わってくる段階 ——「分かれ道」のような時期です。 だからこそ、 「何を、どれくらいやればいいのか」 をできるだけ具体的に知っておきたいですよね。 研究①:MCIの方に「どんな運動が効く」のか? ひとつ目は、 MCIの方にどんな運動が一番効くのか を世界中の研究をまとめて比較した報告です(ネットワークメタ解析 と呼ばれる手法)。 複数のランダム化比較試験を集めて、 有酸素運動(ウォーキング・自転車など) 筋トレ(レジスタンス運動) バランス運動(太極拳・体操など) デュアルタスク(二重課題) 運動 を、 どれが一番認知機能を改善するか という観点で比べたものです。 ...

May 20, 2026 · 2 分
野球を応援して喜ぶシニアのイラスト

"好きなこと"が、認知症の心をほどく? 〜阪神優勝とBPSDの研究から〜

認知症のご家族が、以前より 怒りっぽくなった、あるいは 元気がなくなって一日ぼんやり過ごすようになった――そんな変化に、戸惑ったことはありませんか? こうした、もの忘れ以外の「心と行動の変化」は、ご本人にとっても、支えるご家族にとっても、とてもつらいものです。 そんな中、ちょっと驚くような、でも心があたたかくなる研究が報告されました。テーマは、なんと 「プロ野球」。阪神タイガースが優勝したあと、ファンの認知症の方の “心の症状” がやわらいだ というのです。 理学療法士として長く介護の現場にいる私自身、学生時代は野球部で、いまも阪神ファンのひとり。この話には、つい身を乗り出してしまいました。今日は、この研究から見えてくる 「好きなこと・楽しみの力」 について、ごいっしょに考えてみたいと思います。 ✅ 阪神ファンの認知症の方 19名 で、2023年の優勝後に BPSD(ビーピーエスディー=認知症にともなう心と行動の症状)が やわらいだ と報告された ✅ 怒りっぽさ・無気力・興奮・昼夜逆転・気分の落ち込みなど、幅広い症状 で良い変化がみられた ✅ ただし 19名の小さな探索的な研究。「好きなこと・楽しみが心に効くかもしれない」という ヒント として受け止めたい 目次 そもそも「BPSD」って何? どんな研究だったの? どんな症状が、やわらいだの? なぜ「好きなこと」が、心に効くのでしょう 理学療法士として、私自身のこと いま、私たちにできること おわりに そもそも「BPSD」って何? 認知症というと、「もの忘れ」を思い浮かべる方が多いと思います。これは 中核症状(ちゅうかくしょうじょう)と呼ばれる、脳のはたらきが直接およぼす症状です。 いっぽうで、それを取り巻くように現れるのが BPSD(行動・心理症状)です。たとえば、 怒りっぽくなる、強い言葉が出る 不安そうにする、落ち着かず動き回る 元気がなくなる、何ごとにも関心をしめさなくなる 昼と夜が逆転する 気分が沈む といったものです。BPSDは、ご本人の体調・気持ち・まわりの環境 などによって、強くなったり、やわらいだりします。裏を返せば、接し方や環境を整えることで、和らげられる可能性がある ということでもあります。 どんな研究だったの? 今回の研究は、大阪・脳神経内科はつたクリニックの 初田裕幸(はつた ひろゆき)医師 らによるもので、医学誌 Geriatrics & Gerontology International(2026年5月号)に報告されました。 研究では、関西地方にお住まいの認知症の方 855名 を対象に、プロ野球の試合結果 と BPSDの変化 に関係がないかを調べました。 そして、そのうち 阪神タイガースのファンだった19名 に注目したところ、2023年にチームがセ・リーグで優勝したあと、BPSDのスコア(症状の強さを表す点数)が、はっきりと下がっていた(=症状がやわらいでいた)のです。 ここで、ひとつ大切なことを正直にお伝えします。これは 「探索的レトロスペクティブ研究」 といって、過去の記録をふり返って関係を探す、最初の手がかりを見つけるタイプ の研究です。注目したのも19名という小さな人数。ですから、「優勝すれば症状が必ず良くなる」と言い切れるものではありません。あくまで 「こういう面白い関係がありそうだ」という、出発点の発見 です。 ...

June 24, 2026 · 1 分
薬と家族のあたたかいイメージ

認知症の薬、いま何が変わったのか 〜『症状をやわらげる薬』と『進行を遅らせる薬』〜

ご家族がアルツハイマー型認知症と診断されたとき、最初に気になるのは「お薬で何ができるんだろう?」ということではないでしょうか。 「最近、新しい薬の話題をよくニュースで見るけれど、自分や家族にも使えるのかな?」と気になっている方もいらっしゃるかもしれません。 実は認知症の薬物療法は、ここ数年で 大きな転換点 を迎えています。 今日はその全体像を、できるだけやさしく整理してみます。 ✅ 認知症の薬は 「症状をやわらげる薬」 と 「進行を遅らせる薬(疾患修飾薬・DMT)」 の2系統に分かれてきている ✅ 注目の新薬(レカネマブ・ドナネマブ)は MCI〜軽度の段階 で、かつ アミロイド検査 の確認が必須 ✅ 薬だけでは完結しません。早期発見・運動・食事・対人交流を組み合わせた 「統合的アプローチ」 が大前提です 少し長めの記事になりますので、気になるところからお読みください。 そもそも:認知症の薬には2つの流れがある これまでの主役:症状をやわらげる4つの薬 新世代の薬:『進行を遅らせる』DMT 新薬の副作用「ARIA」をどう見守るか 2026年以降:さらに広がる治療の選択肢 薬だけでは完結しない:統合的アプローチ いま私たちにできること そもそも:認知症の薬には2つの流れがある あなた 先生、新しい認知症の薬ってよくニュースで聞くんですけど、これまでの薬と何が違うんですか? Torapon いい質問ですね。実は認知症の薬には、いま大きく 2つの流れ があるんですよ。 ひとつ目は、症状をやわらげる薬(対症療法薬) です。 神経の働きを調整することで、記憶力や意欲、行動の悪化のスピードをゆるやかにしてくれます。 これまでの認知症治療の 主役 だったお薬です。 ふたつ目が、近年登場した 進行を遅らせる薬(疾患修飾薬=DMT) です。 DMTは「Disease-Modifying Therapy」の略で、病気の経過そのものを変える治療 という意味です。 これまでの薬のように症状をやわらげるのではなく、病気の原因物質そのもの に直接働きかけて、進行のスピードを抑えようとする、まったく新しいタイプのお薬です。 あなた 「原因物質」って、いったい何のことですか? Torapon アルツハイマー型認知症の場合、脳に アミロイドβ(ベータ)——ねばねばしたたんぱく質のかたまりが、20〜30年もかけて少しずつ溜まっていくことが、発症の一因と考えられているんです。 新世代の薬は、この アミロイドβを脳から取り除く ことを目的としています。 これまでの主役:症状をやわらげる4つの薬 日本では、長らく以下の 4種類 が使われてきました。 症状や重症度、合併症、ご本人の状況にあわせて、医師が一人ひとりに合うものを選びます。 お薬の名前 特徴 主な適応 ドネペジル(アリセプト®) 内服。意欲低下や自発性の低下が目立つときに 軽度〜高度のAD、レビー小体型認知症 にも保険適応 ガランタミン(レミニール®) 内服。液剤もあり、固形物が飲みにくい方に 軽度〜中等度のAD リバスチグミン(イクセロンパッチ®/リバスタッチ®) 唯一の貼り薬 ◎ 飲み込みが心配な方や、内服での吐き気を避けたい方に 軽度〜中等度のAD メマンチン(メマリー®) 上の3剤と 併用できる ◎ イライラ・攻撃性・焦燥感が強いときに 中等度〜高度のAD ※AD=アルツハイマー型認知症の略です。 ...

May 10, 2026 · 2 分
医師が高齢の方にやさしく説明しているイラスト

血液一滴で、アルツハイマー病の“きざし”がわかる時代へ 〜p-tau217という新しい検査が照らす希望〜

「最近、親の物忘れが増えた気がする」 「自分も、ふと言葉が出てこないことがある」―― そんな小さな不安を、心のどこかに抱えていませんか? 認知症、とくにアルツハイマー病は、「気づいたときにはかなり進んでいた」ということが少なくありません。だからこそ、もっと早く、体に負担をかけずに気づける方法が、長いあいだ望まれてきました。 2025年5月、その願いに一歩近づくニュースが、海の向こうから届きました。血液の検査で、アルツハイマー病の手がかりを調べる方法が、初めて公式に認められたのです。 今日は、この「p-tau217(ピー・タウ・ニーイチナナ)」という新しい血液検査について、できるだけやさしくお話しします。そして最後に、私自身の家族のことにも、少しだけ触れさせてください。 ✅ この記事の要点 ✅ 2025年5月、米国で「血液検査」によるアルツハイマー病の手がかり調べが、初めて公式に承認されました ✅ これまでの検査(脳の画像検査や背中からの検査)より、体への負担がぐっと少ないのが特徴です ✅ 早く気づけるほど、生活習慣の見直しや治療を早く始められる——そこに大きな希望があります もくじ そもそも「アルツハイマー病」と「認知症」は同じ? 脳に溜まる“2つのゴミ”――アミロイドβとタウ これまでの診断は、体への負担が大きかった p-tau217――血液でわかる「手がかり」 早く分かることが、なぜ希望になるのか いま私たちにできること おわりに――母のこと、そして未来へ そもそも「アルツハイマー病」と「認知症」は同じ? よくある誤解のひとつに、「アルツハイマー病=認知症」というものがあります。じつはこれは正確ではありません。 認知症は、いろいろな原因で記憶や判断の力がゆっくり低下していく「状態」をまとめた呼び名です。その原因のひとつとして最も多いのが、アルツハイマー病という脳の病気です。 アルツハイマー病では、もの忘れ(記憶の障害)が少しずつ進んでいくのが特徴です。そして脳の中では、目には見えない変化が、症状が出るよりもずっと前から始まっているとされています。 脳に溜まる“2つのゴミ”――アミロイドβとタウ アルツハイマー病の脳には、大きく分けて**2種類の“ゴミ”**が溜まっていくことが分かっています。 アミロイドβ(ベータ)……神経細胞の外側に溜まるタンパク質。比較的早い段階から溜まり始めます。 リン酸化タウ……神経細胞の内側に溜まるタンパク質。こちらが溜まってくると、神経細胞が傷んで、もの忘れなどの症状につながっていきます。 大切なのは、まずアミロイドβが溜まり、それを追いかけるようにタウが溜まっていくという順番です。 つまり、タウの変化を捉えられれば、その前段階であるアミロイドβの蓄積も起きていると考えられる――この点が、今回の血液検査のカギになります。 これまでの診断は、体への負担が大きかった 長いあいだ、生きている方の脳で、この“2つのゴミ”がどれくらい溜まっているかを確かめる方法はありませんでした。 近年になって、ようやく次のような方法で調べられるようになりました。 アミロイドPET/タウPET……特殊な画像検査で、脳の中の蓄積を見る方法 脳脊髄液(のうせきずいえき)の検査……背中に針を刺して、脳のまわりの液を採って調べる方法 どちらも精度は高いのですが、費用が高い・体への負担が大きい・受けられる施設が限られるといった難しさがありました。とくに背中から液を採る検査は、想像するだけで身構えてしまう方も多いと思います。 そこで、もっと手軽な「血液検査」でわからないかと、20年以上にわたって研究が重ねられてきました。 p-tau217――血液でわかる「手がかり」 研究の積み重ねのなかで、とくに有望とされたのが、血液中のp-tau217(リン酸化タウの一種)です。 p-tau217は、脳の画像検査で異常が見える前の早い段階から、血液の中でわずかに増えてくることが分かってきました。そして2025年5月、米国の食品医薬品局(FDA)が、アルツハイマー病の診断に使える初めての血液検査として、この測定方法を正式に認めました。 報告されている精度の一例を挙げると、 アルツハイマー病と診断された方で、この血液検査が陽性なら、脳にアミロイドβの変化がある可能性がとても高い(年齢にかかわらず、おおむね95〜97%台) アルツハイマー病以外のタイプの認知症と診断された方で、検査が陰性なら、アミロイドβの変化はない可能性がとても高い(おおむね91〜99%) とされています。体への負担が少ない血液検査で、ここまで手がかりがつかめるようになったことは、医療にとって大きな前進です。 ⚠ ここはとても大切です 今回の承認は、あくまで米国(アメリカ)での話です。日本で今すぐ、どこの病院でも受けられる検査というわけではありません。 また、検査だけで「アルツハイマー病です」と決まるものでもなく、症状や経過と合わせて、医師が総合的に判断するものです。気になる症状があるときは、まずはかかりつけ医や「もの忘れ外来」に相談するのが第一歩です。 早く分かることが、なぜ希望になるのか 「早く分かっても、どうしようもないのでは?」と感じる方もいるかもしれません。でも、私はそうは思いません。早く気づけることには、たしかな意味があります。 生活習慣を早めに見直せる……運動・食事・睡眠・人とのつながりなど、脳の健康を支える習慣に、より早く取り組めます 新しい治療を検討できる……近年は、アミロイドβに働きかける新しいお薬(レカネマブ、ドナネマブなど)も登場しています。こうした治療は、早い段階ほど検討の余地が広がるとされています これからの暮らしに備えられる……ご本人もご家族も、心の準備や生活の工夫を、あわてずに進められます 認知症を完全に防ぐ魔法はまだありません。けれども、進み方をゆるやかにし、その人らしい時間を少しでも長く保つことは、決して夢物語ではなくなってきています。早期発見は、その入り口なのです。 脳の健康を支える生活習慣について、くわしくは過去の記事もあわせてどうぞ。 👉 認知症を防ぐ「血管と代謝」の整え方 👉 脳を守る「刺激とつながり」 いま私たちにできること 新しい検査の登場を待つあいだにも、今日から始められることはたくさんあります。チェックリストにしてみました。 ☑ 気になる物忘れが続くときは、ひとりで抱えずもの忘れ外来などに相談してみる ☑ ウォーキングなど、無理のない運動を生活に取り入れる ☑ 野菜・魚・大豆などをバランスよく、腹八分目を心がける ☑ しっかり眠る(睡眠は脳のお掃除の時間です) ☑ 人と話す、出かける、笑う――つながりと刺激を大切にする ☑ 聞こえや見え方が気になったら、早めにケアする どれも特別なことではありません。けれど、こうした積み重ねが、脳をやさしく守ってくれるのです。 ...

June 15, 2026 · 1 分
朝日のイラスト

アルツハイマー病に明るい光? 〜『NAD+』研究の進展と、いま私たちにできること〜

ご家族にアルツハイマー病の方がいらっしゃる、あるいは「もしかして自分も…」と気になっている。 そんな方にとって、「いつか治る薬は出るのだろうか」 という思いは、いつも心のどこかにあるのではないでしょうか。 最近、医療ニュースで興味深い研究が紹介されました。 「進行したアルツハイマー病が『元に戻る』可能性」 そんな見出しが踊る、最新の研究レポートです。 私自身、母がアルツハイマー型認知症で施設に入所しているので、この記事を読んだとき、思わず食い入るように画面を見つめました。 今回は、その内容を 冷静に、わかりやすく お伝えしつつ、いま私たちにできることを一緒に考えてみたいと思います。 ✅ 海外で「進行したアルツハイマー病から脳の機能を取り戻す可能性」を示す研究が発表されました ✅ 鍵となるのは 「NAD+(ナドプラス)」 という、細胞のエネルギー源となる物質 ✅ ただし まだマウスの段階。すぐ使える治療ではないけれど、これまでにない新しい希望が見えてきました 目次 これまでの治療と、何が違うの? NAD+(ナドプラス)ってどんな物質? 研究でわかったこと でも、すぐ人に使えるわけじゃない理由 私が感じたこと いま、私たちにできること おわりに これまでの治療と、何が違うの? これまでのアルツハイマー病の治療や薬は、「進行を遅らせる」ことが目標でした。 最近話題になった抗体薬(レカネマブなど)も、脳にたまる「アミロイドβ」というゴミを取り除いて、進行をゆっくりにする働きをします。とても大切な進歩ですが、「失われた記憶や能力が戻ってくる」わけではありません。 ところが今回の研究では── これまでの治療 今回の研究 目標 進行を 遅らせる 失われた機能を 取り戻す ねらい アミロイドβの除去 脳の 修復力 を取り戻す 段階 一部すでに使用中 まだマウス実験 「取り戻す可能性」というのは、これまでなかった視点です。だから医療界では 画期的 と評価されています。 NAD+(ナドプラス)ってどんな物質? NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド) という名前は難しいですが、はたらきはシンプルです。 私たちの すべての細胞の中 に存在し、エネルギーを生み出したり、傷ついた DNA を修復したり するために欠かせない、いわば「燃料」のような物質です。 体が元気に動くにも、傷を治すにも、NAD+ が必要です。 NAD+ が枯渇すると… 研究チームは、アルツハイマー病のマウスの脳と、実際の人間の患者さんの脳でも、この NAD+ のバランスが崩れて、枯渇している ことを突き止めました。 つまり── 脳がダメージを受けても、それを 修復するための「燃料」が足りない。 結果として、脳の防御システムが崩れ、アルツハイマー病が進んでいく。 ...

May 4, 2026 · 1 分
脳のイラスト

脳は「自分で治す力」を取り戻せる? 〜改良型ビタミンKと神経再生の研究〜

「一度こわれた脳の神経は、もう元には戻らない」―― 長いあいだ、そう考えられてきました。 でも、その常識を少しずつ書きかえるような研究が出てきています。今回は、日本の大学から届いた、こんなお話です。 ビタミンKを改良した新しい物質が、「神経のもと」から神経細胞が育つのを、約3倍も後押しした ワクワクする話ですが、これも まだ研究の入り口 の段階です。「将来が楽しみな芽」として、やさしくお伝えします。 ✅ 芝浦工業大学のチームが、ビタミンKを改良した新しい化合物 をつくった ✅ その化合物は、「神経のもと(神経幹細胞)」を神経細胞に変える力が、天然のビタミンKの約3倍 だった ✅ ただし、これは 培養した細胞での実験。市販のビタミンKサプリとは 別物 で、「飲めば脳が再生する」話ではありません 目次 神経細胞は、本当に増えないの? 改良型ビタミンKの研究 ここを誤解しないで おわりに 神経細胞は、本当に増えないの? 私たちの脳は、たくさんの 神経細胞 がつながり合ってできています。これらは増えにくく、傷つくと戻りにくい――それが長年の「常識」でした。 ところが近年、脳の中には「神経のもと(神経幹細胞=しんけいかんさいぼう)」が残っていて、条件がそろえば 新しい神経細胞が生まれうる ことが分かってきました。そこで「このもとを、上手に神経細胞へ育てられないか?」という研究が進んでいるのです。 改良型ビタミンKの研究 芝浦工業大学のチームは、ビタミンK に注目しました。ビタミンKをそのまま使うのではなく、ビタミンAに関係する成分と組み合わせて、新しい化合物を設計したのです。 すると、その化合物は「神経のもと」を神経細胞に変える力が、天然のビタミンKのおよそ3倍 にもなりました。研究チームは、将来的に アルツハイマー病やパーキンソン病 のように神経が失われる病気の治療に、役立つ可能性があると期待しています。 この研究は2026年、専門誌『ACS Chemical Neuroscience』に発表されました。 ここを誤解しないで とても大事な注意点があります。 今回すごい働きを見せたのは、研究者が 新しく設計した特別な化合物 です。納豆や青菜に含まれる、ふだんのビタミンKとは別物 ですし、市販のビタミンKサプリを飲めば脳が再生する、という話ではありません。 また、実験は 培養した細胞 で行われたもので、人や動物の体で確かめるのはこれからです。期待しすぎず、研究の進み具合を見守りたいですね。 ⚠️ 血液をさらさらにするお薬(ワルファリンなど)を飲んでいる方 は、ビタミンKのとり方に注意が必要です。食事やサプリを変える前に、必ずかかりつけ医にご相談ください。 ビタミンKそのものは、骨や血管の健康に欠かせない大切な栄養です。納豆・ほうれん草・ブロッコリーなどから、ふだんの食事でバランスよく とるのがおすすめです。 おわりに 「こわれた脳は戻らない」という常識が、研究の進歩で少しずつ変わろうとしています。脳が 自分自身を修復する力 を引き出す――そんな未来の入り口に、私たちは立っているのかもしれません。 すぐに治療が変わるわけではありませんが、こうした地道な研究の積み重ねが、いつか大きな希望につながります。今日できることは、バランスのよい食事と、無理のない生活。基本を大切にしながら、明るいニュースを待ちましょう。 📚 あわせて読みたい一冊 PR LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界 ハーバード大学の老化研究の第一人者が、「老い」を科学の力でどこまで遅らせ、若返らせられるのかを語った世界的ベストセラー。体や脳が自分を修復する力という、今回の話とも通じるテーマを大きな視野で学べます。 Amazonで見る 楽天で見る 参考にした情報 芝浦工業大学の研究チーム(ビタミンKを改良した神経再生化合物) 専門誌『ACS Chemical Neuroscience』2026年発表の論文 ※ 本記事は、上記の信頼できる研究・大学発表をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。紹介した内容は培養細胞を用いた研究段階のものであり、治療効果やサプリメントの効果を示すものではありません。お薬の服用中の方・治療中の方は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

June 1, 2026 · 1 分
朝日と研究のイメージ

アルツハイマーの「炎症スイッチ」が見つかった? 〜脳の火を消す研究の最前線〜

「認知症の薬や治療は、これからどうなっていくの?」 ご家族のことを思って、そんなふうに気になっている方も多いと思います。 今回は、アルツハイマー病の研究の最前線から、ひとつ明るいニュースが届きました。 アルツハイマー病の脳で「炎症を止まらなくするスイッチ」になっているタンパク質が見つかった ただし、これは まだ研究の段階 の話です。期待しすぎず、でも前向きに――そんな気持ちで読んでいただければと思います。 ✅ アルツハイマー病の脳では「STING(スティング)」というタンパク質が、炎症をいつまでも続けさせるスイッチ になっていた ✅ マウスの実験で、このスイッチが入るのを防いだところ、脳の炎症がやわらいだ ✅ ただし 動物実験の段階 で、すぐに使える薬ではない。「新しい治療の的(まと)が見つかった」というニュースです 目次 そもそも「脳の炎症」って? 見つかった「炎症スイッチ」の話 いま私たちにできること おわりに そもそも「脳の炎症」って? 私たちの体には、ばい菌やケガから身を守る「免疫(めんえき)」のしくみがあります。脳にも、同じように見張り役の細胞がいて、異常があると 炎症 を起こして対応します。 ところが、この炎症が 必要もないのにずっと続いてしまう と、今度は脳そのものを傷つけてしまいます。アルツハイマー病では、この「消えない炎症」が、神経のつながりを弱らせる一因と考えられてきました。 見つかった「炎症スイッチ」の話 アメリカのスクリプス研究所のチームが、この「消えない炎症」の犯人をつきとめました。 カギになっていたのは、免疫の見張り役として働く「STING(スティング)」というタンパク質です。アルツハイマー病の脳では、このSTINGが 化学的に変化 してしまい、炎症のスイッチが入りっぱなしになっていたのです。 そこで研究チームが、マウスの実験で この変化が起きないように したところ――脳の炎症がやわらいだことが確認されました。研究を率いた神経内科医のスチュアート・リプトン博士は、これを「アルツハイマー病の新しい、重要な治療の的(まと)になる」と話しています。 ※ この研究は2026年、医学誌『Cell Chemical Biology』に発表されたものです。マウスでの段階 であり、人に使える薬ができたわけではありません。 いま私たちにできること 「新しい薬を待つ」だけでなく、今日からできること もあります。脳の余計な炎症を抑えるには、こんな生活習慣が役立つと考えられています。 ✅ 適度な運動 を続ける(歩く・体操など) ✅ しっかり眠る(睡眠中に脳の掃除が進みます) ✅ 野菜・魚を中心としたバランスのよい食事 ✅ 歯みがき・歯科受診など 口の中を清潔に保つ(歯周病の炎症も関係するといわれます) 特別なことではなく、いつもの暮らしの延長です。 運動と脳の関係は、こちらの記事もどうぞ。 👉 認知症を遠ざける運動のヒント おわりに 炎症という「脳の中の火」を、どこで消せばいいのか――その スイッチの場所 が見えてきた。これは、これからの認知症研究にとって大きな一歩です。 すぐに治療が変わるわけではありませんが、世界中の研究者が一歩ずつ前に進んでいます。私たちは過度に不安にならず、今できる生活習慣を大切にしながら、こうした明るいニュースを待ちたいですね。 📚 あわせて読みたい一冊 PR アルツハイマー病 真実と終焉 アルツハイマー病を「炎症・栄養・毒素」など複数の原因から見直す、世界的に話題になった一冊(白澤卓二先生監修)。今回の炎症の話とも通じる、生活習慣からのアプローチがやさしく整理されています。 Amazonで見る 楽天で見る 参考にした情報 スクリプス研究所(米国)の研究/責任著者:スチュアート・リプトン博士 医学誌『Cell Chemical Biology』2026年発表の論文(STINGタンパク質と脳の炎症) ※ 本記事は、上記の信頼できる研究・大学発表をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。紹介した内容は研究段階のものであり、治療効果を保証するものではありません。治療やお薬については、必ず主治医・かかりつけ医にご相談ください。

June 1, 2026 · 1 分
研究と希望のイメージ

アルツハイマー病に「もうひとつの引き金」? 〜脳の“発電所”をふさぐタンパク質の発見〜

「認知症の研究は、いまどこまで進んでいるの?」 ご家族のことを思って、そんなふうに気になっている方も多いと思います。 今回は、アルツハイマー病の研究の最前線から、また新しい発見が届きました。 アルツハイマー病の脳で「細胞のエネルギー工場」をふさいでしまうタンパク質が見つかった ただし、これは まだ研究の段階 の話です。期待しすぎず、でも前向きに――そんな気持ちで読んでいただければと思います。 ✅ アルツハイマー病の脳では「GRK2(ジーアールケーツー)」というタンパク質がかたまり、細胞の“発電所”であるミトコンドリアをふさいでいた ✅ それによって、認知症のもとと言われる アミロイドβ(ベータ)が増える悪循環 が起きていた ✅ マウスの実験で、このかたまりを防ぐ候補の物質を使うと、神経細胞の傷みがやわらいだ。ただし まだ動物実験の段階 で、すぐ使える薬ではありません 目次 そもそも「ミトコンドリア」って? 見つかった新しい「悪循環」の話 いま私たちにできること おわりに そもそも「ミトコンドリア」って? 私たちの体は、目に見えないほど小さな「細胞(さいぼう)」が、たくさん集まってできています。その細胞の一つひとつの中に、体を動かすためのエネルギーをつくる、小さな工場 があります。これが「ミトコンドリア」です。車でいえばエンジン、家でいえば電気をつくる発電所のような、大切な役わりをしています。 脳の神経細胞は、とてもたくさんのエネルギーを使います。ですから、このミトコンドリアが元気でないと、神経細胞もうまくはたらけません。ミトコンドリアの元気と脳の元気は、深くつながっている と考えられています。 見つかった新しい「悪循環」の話 スイスの工科大学(ETHチューリッヒ)のチームが、この「発電所のトラブル」の犯人のひとつをつきとめました。 カギになっていたのは、「GRK2(ジーアールケーツー)」というタンパク質です。アルツハイマー病の脳では、このGRK2の“はたらかなくなった形”が かたまりになってたまり、ミトコンドリアの出入り口をふさいでいたのです。 すると発電所がうまく回らなくなり、認知症のもとと言われる アミロイドβ(ベータ)が増える。そのアミロイドβが、またGRK2のかたまりを増やす――という 「悪循環」 が起きていました。 そこで研究チームが、このかたまりができるのを防ぐ候補の物質(「化合物10」と呼ばれるもの)をマウスに使ったところ――発電所のはたらきが戻り、神経細胞の傷みがやわらいだ ことが確認されました。 ※ この研究は2026年、医学誌『Cell Reports Medicine』に発表されたものです。ヒトの脳の組織とマウスで調べた段階 であり、人に使える薬ができたわけではありません。研究チームはこれから、薬の開発を一緒に進める企業を探す段階だとしています。 以前ご紹介した「炎症スイッチ」の話と同じく、これも 「新しい治療の的(まと)が見つかった」 という前向きなニュースです。 あわせて、こちらの記事もどうぞ。 👉 アルツハイマーの「炎症スイッチ」が見つかった? いま私たちにできること 「新しい薬を待つ」だけでなく、今日からできること もあります。細胞の発電所(ミトコンドリア)を元気に保つには、こんな生活習慣が役立つと考えられています。 ✅ 適度な運動 を続ける(歩く・体操など。ミトコンドリアは運動で増えるといわれます) ✅ しっかり眠る(睡眠中に脳の掃除が進みます) ✅ 野菜・魚を中心としたバランスのよい食事 ✅ 食べすぎに気をつける(腹八分目も体にやさしいといわれます) 特別なことではなく、いつもの暮らしの延長です。 おわりに 「炎症」に続いて、今度は「細胞の発電所」。アルツハイマー病を、いろいろな角度から見直す研究が、世界中で一歩ずつ進んでいます。 すぐに治療が変わるわけではありませんが、手がかりは確実に増えています。私たちは過度に不安にならず、今できる生活習慣を大切にしながら、こうした明るいニュースを待ちたいですね。 📚 あわせて読みたい二冊 PR 生涯健康脳 こんなカンタンなことで脳は一生、健康でいられる! ...

June 19, 2026 · 1 分
研究と希望のイメージ

脳の老化を進める『鉄のタンパク質』 〜減らすと記憶が戻った、という新しい発見〜

「年をとると、もの覚えが悪くなるのは仕方ない」 そう思ってあきらめている方も、多いかもしれません。 ところが最近、「脳の老化には、ある“原因物質”がかかわっていて、それを減らすと記憶が戻った」 という、おどろきの研究が報告されました。 今回は、その発見――脳にたまる 「FTL1(エフティーエルワン)」 というタンパク質の話を、やさしくご紹介します。ただし、これは まだ研究の段階 の話です。期待しすぎず、でも前向きに、そんな気持ちで読んでいただければと思います。 ✅ 老化した脳には 「FTL1」という鉄に関わるタンパク質がたまり、細胞の“発電所”ミトコンドリアを弱らせて、記憶力を下げていた ✅ 年老いたマウスでこの FTL1を減らしたところ、記憶のテストの成績が改善。脳の働きが“若返る”可能性が示されました ✅ ただし、これは マウスの遺伝子を操作した実験の段階。人にそのまま使えるわけではなく、これからの研究が必要です 目次 そもそも「FTL1」と「ミトコンドリア」って? 見つかった「脳の老化のしくみ」 FTL1を減らしたら、記憶が戻った 人に使えるの? 見通しと、いまの限界 いま私たちにできること おわりに そもそも「FTL1」と「ミトコンドリア」って? 私たちの体は、小さな 「細胞(さいぼう)」 がたくさん集まってできています。その細胞の一つひとつの中に、エネルギーをつくる小さな工場があります。これが 「ミトコンドリア」 です。家でいえば、電気をつくる発電所のような存在です。 脳の神経細胞は、とてもたくさんのエネルギーを使います。ですから、この発電所が元気でないと、脳もうまくはたらけません。 一方の 「FTL1」 は、もともと 脳の中の“鉄”をしまっておく役割を持つタンパク質です。鉄は体に必要なものですが、多すぎても少なすぎてもいけない、デリケートな存在。FTL1は、その鉄のバランスを保つ係をしています。 見つかった「脳の老化のしくみ」 研究チームが、**若いマウスと年老いたマウスの脳(記憶をつかさどる海馬)**を比べたところ、おどろくことがわかりました。年をとるにつれて、神経細胞の中にFTL1が異常にたまっていくのです。 FTL1が増えすぎると、脳の中の鉄のバランスが乱れます。すると―― 発電所(ミトコンドリア)の働きが悪くなる → 体に必要なエネルギー(ATP)がうまくつくれなくなる → 神経細胞どうしのつなぎ目(シナプス)の働きが弱る → 記憶力や、考える力が低下する つまり、「年をとると、FTL1が増える → 脳がエネルギー不足になり、神経のつながりが弱る」 という流れが、もの覚えの低下の一因になっていた、というわけです。 ここで大事なのは、この研究が 「神経細胞が死んでしまうことだけが、脳の老化の原因ではない」 と示した点です。つながりの“働き”が弱っているだけなら、もう一度元気にできる余地がある――。そんな希望につながる発見でもあります。 脳の“発電所”をめぐる話は、こちらの記事もどうぞ。 👉 アルツハイマー病に「もうひとつの引き金」? FTL1を減らしたら、記憶が戻った 研究チームは、次に 「では、増えすぎたFTL1を減らしたらどうなるか」 を確かめました。年老いたマウスの脳で、FTL1を減らす操作を行ったのです。 すると、その結果は劇的でした。 物を見分ける記憶:ふつうの年老いたマウスは、新しい物と古い物を見分けられず、テストの成績はほぼゼロ。ところが FTL1を減らしたマウスは、はっきりと成績が改善し、新しい物を見分けられるようになりました 道を覚える記憶(空間記憶):以前通った道と新しい道を区別するテストでも、ふつうの年老いたマウスはできなかったのに、FTL1を減らしたマウスでは、はっきり改善が見られました 脳の中を調べると、乱れていた鉄のバランスが整い、弱っていたミトコンドリアの働きとエネルギー産生も回復していました。加齢で減っていた、つなぎ目(シナプス)に必要なタンパク質も、再び増えていたといいます。 さらに研究チームは、エネルギーづくりを助ける「NADH」という成分を与えることでも、記憶の低下を防げることを確認しました。FTL1という“原因”だけでなく、エネルギー不足という“結果”の側からも手を打てる可能性が見えてきたのです。 人に使えるの? 見通しと、いまの限界 ...

July 1, 2026 · 1 分