「パーキンソン病と言われてから、外に出るのがおっくうになった」。
そう感じている方も、いらっしゃるかもしれません。パーキンソン病というと、手のふるえや動きにくさが思い浮かびますが、物忘れや、考える力の衰えが心配になる方も少なくありません。
2026年10月、パーキンソン病の人でも、よく体を動かしている人ほど、考える力の衰えがゆっくりだったという研究が発表されました。
✅ アメリカで、軽い〜中くらいのパーキンソン病の人294人を追った研究で、体をよく動かしている人ほど、考える力の衰えも、体の動きにくさの進み方も、ゆっくりでした
✅ 大事だったのは、運動の激しさより、動いている時間の長さ。そして、若いころよりいま動いているかでした
✅ ただし「関係が見られた」という研究で、運動のおかげで進行が遅くなったとまでは言えません
目次
パーキンソン病と「考える力」
パーキンソン病は、脳の中でドーパミン(体の動きをなめらかにする物質)を作る細胞が、少しずつ減っていく病気です。
手足のふるえ、動きがゆっくりになる、歩幅が小さくなる、といった体の症状がよく知られています。そのほかに、病気が進むにつれて、物忘れや、段取りを考える力が衰えてくる人もいます。
体の病気だと思っていました。頭のほうにも関係があるんですね。
そうなんです。だからこそ、体と頭の両方を、どう守っていくかが大事になります。今回の研究は、その両方を一緒に追いかけたものです。
よく動く人ほど、衰えがゆっくり
研究は、アメリカ・シンシナティ大学のチームによるもので、学術誌『Neurology』に2026年10月に発表されました。
- 対象:軽い〜中くらいのパーキンソン病の人294人(平均66歳・女性は3人に1人)
- 2019年から2025年にかけて参加した人を、頭の働きは最長5年、体の動きは最長7年追いかけました
- 運動は、聞き取りで「どんな活動を、週に何時間しているか」を調べました
- 頭の働きは、30点満点のテスト(MoCA=言葉や図形、計算などで、考える力を測る検査)で、毎年測りました
運動している時間の合計で、少ない組・中くらいの組・多い組の3つに分けて比べています。発表元の説明では、少ない組は週4時間まで、中くらいの組は週4〜8時間、多い組は週8時間を超える人たちです。
結果は、次のとおりでした。
| 運動している時間 | 頭のテストの点数の変化(1年あたり) |
|---|---|
| 少ない組(週4時間まで) | 約0.5点ずつ下がった |
| 中くらいの組(週4〜8時間) | 約0.1点ずつ下がった |
| 多い組(週8時間を超える) | ほとんど変わらなかった |
※研究チームが計算で出した、それぞれの組の平均的な変化です。
年齢や性別、病気になってからの年数などをそろえて比べても、多い組は少ない組にくらべて、頭の働きの衰えがゆっくりでした。
手足の動かしにくさ(医師が診察して点数をつける検査)も、多い組のほうが、悪くなり方がゆっくりでした。ただし、こちらの差は、偶然とは言いにくい、ぎりぎりのところでした。
1年で0.5点……。それって、大きな差なんでしょうか?
1年だけ見ると、小さな差です。研究チームも「差は小さい」と認めています。ただ、パーキンソン病は長く付き合っていく病気です。小さな差でも、年月が重なると意味が出てくるかもしれない、というのが研究チームの見方です。
激しさより「時間」、昔より「いま」
この研究では、もう2つ、おもしろいことが分かりました。
① 大事なのは、激しさより「時間」
ジョギングのような激しい運動をしている人も、良い結果でした。ところが、動いている時間の合計をそろえて比べると、激しさによる差は見られなくなりました。
つまり、激しい運動でなくても、動いている時間が長いことのほうが、関係が強かったのです。
では、激しくない運動とは、どんなものでしょう。発表元の説明では、ジョギングほどきつくない「ほどほどの強さの運動」として、次のようなものが挙げられています。
- 早歩き
- ダブルスのテニス
- 軽い水泳
- 家事
② 昔より「いま」
参加者には、この10年間にどれくらい運動してきたかも聞いています。その分を差し引いても、最近の運動の量が、その後の衰えと関係していました。
若いころは運動していなかったんですけど、今からでも遅くないですか?
この研究では、昔どうだったかより、いま続けているかのほうが大事そうだ、という結果でした。研究チームも「どれだけ長く動き続けるかが、カギかもしれない」と話しています。
気をつけて読みたいところ
希望のある結果ですが、次の点は心にとめておいてください。
- くじ引きで「運動する組」「しない組」に分けた研究ではありません。もともと病気の進みがゆっくりな人ほど、たくさん動ける、という面も考えられます
- 運動の時間は本人の申告です。実際より多め・少なめに答えた人もいるかもしれません
- 参加者は、はじめの時点で頭の働きが比較的よい人が多く、研究チームも「結果の受け止め方には注意が必要」としています
体を動かすと脳が変わっていく仕組みは、こちらでも紹介しています。 👉 脳は、いくつになっても変われる 〜リハビリでわかった『脳の可塑性』のお話〜
いま、私たちにできること
- ☑ 「動いている時間」を、1週間の合計で考える……散歩・買い物・掃除・庭仕事も、立派な活動です
- ☑ 激しさより、続けやすさ……息が少しはずむくらいの早歩きなど、長く続けられるものを
- ☑ 休んでも、また再開すればいい……研究では「いま」の運動が大事でした。何歳からでも、何度でも
- ☑ 安全第一で、主治医やリハビリの専門職に相談を……パーキンソン病は転びやすくなることがあります。どんな運動が合うか、一緒に考えてもらいましょう
おわりに
パーキンソン病と言われると、「これから悪くなる一方なのでは」と不安になるかもしれません。
でも今回の研究では、体をよく動かしている人ほど、頭も体も、衰えがゆっくりでした。しかも大事だったのは、激しい運動ではなく、動いている時間を、いま続けていることでした。
運動のおかげと言い切れる研究ではありません。それでも、毎日の暮らしの中で「動く時間」を少しずつ積み重ねることは、きっと無駄にはならないはずです。
※治療中の方は、運動の内容や量について、必ず主治医に相談してください。
参考にした情報
- Ryu DW ほか「Physical Activity and Motor and Cognitive Progression in Parkinson Disease: A Longitudinal Cohort Study」Neurology 2026年;107(9):e218682(2026年10月7日オンライン公開・アメリカの294人)
- アメリカ神経学会(AAN)の発表資料「Greater Physical Activity Associated with Slower Progression in Parkinson’s」2026年10月
※ 本記事は、上記の論文と発表資料をもとに、一般読者向けにわかりやすくまとめ直したものです。紹介した研究は観察研究(関係が見られたというもの)で、運動がパーキンソン病の進行を遅らせることを証明したものではありません。