穏やかに過ごすシニア女性とご家族のイラスト

認知症リスク、女性のほうが影響を受けやすい? 〜1万7千人の調査が示した「男女差」〜

「認知症は、女性のほうがなりやすい」――そんな話を、聞いたことはありませんか? たしかに、患者さんの数は女性のほうが多いのですが、「長生きする人が多いから」とも言われ、はっきりした理由はわかっていませんでした。 そんな中、1万7千人を調べた研究から、こんな結果が報告されました。 「同じリスク因子でも、女性のほうが脳(思考力)への影響が強く出やすい」 今回は、私たち――特に女性とそのご家族に知っておいてほしい話を、やさしくお伝えします。 ✅ 高血圧・糖尿病・肥満・難聴などがあると、男性より女性のほうが「頭の働き(記憶や判断力)の低下」につながりやすい ことがわかった ✅ 女性は うつ・運動不足・睡眠の悩み を抱える割合も、男性より高めだった ✅ でも、これらは すべて「変えられる」リスク。だからこそ、早めの対策が効きやすい 目次 どんな研究だったの? 女性で影響が強かったこと 理学療法士として思うこと いま、できること おわりに どんな研究だったの? この研究は、アメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校などのチームが、医学誌『Biology of Sex Differences』に発表したものです。 対象:中高年〜高齢の 17,000人以上 内容:高血圧・糖尿病・肥満・難聴・うつ・運動不足など、13の「変えられるリスク因子」 を、男女で比べた すると、ただ「女性に患者が多い」という話ではなく、同じリスクでも女性のほうが脳への影響を強く受けやすい、という傾向が見えてきたのです。 女性で影響が強かったこと 研究からは、大きく分けて2つのことが見えてきました。 ① 同じ持病でも、女性のほうが「脳への影響」が大きい 高血圧・肥満・糖尿病・難聴――これらは男性にもありますが、女性ではこれらが、より強く「頭の働きの低下」につながっていました。同じ高血圧でも、女性のほうが脳に響きやすい、というイメージです。 ② そもそも、女性に多い悩みもある 次の3つは、男性よりも女性に多くみられました。 気分の落ち込み(うつ) … 女性は約17%、男性は約9%(女性はおよそ 2倍) 運動不足 … 女性は約48%、男性は約42% 睡眠の悩み … 女性は約45%、男性は約40% つまり女性は、脳に影響しやすい要因を「より多く、より強く」抱えやすい、ということです。 なぜそうなるのか、はっきりした理由はまだわかっておらず、研究が続けられています。でも見方を変えれば、「女性こそ、早めに気をつけることで守れる部分が大きい」 とも言えそうです。 理学療法士として思うこと 私自身、母がアルツハイマー型認知症で施設に入所しています。だからこそ、こうした「女性と脳」の話は、どうしても他人事に思えません。 リハビリの現場でも、血圧や糖尿病、聞こえにくさ、気分の落ち込みを抱えた女性は本当に多くいらっしゃいます。そのひとつひとつが脳に効いてくるのなら、早めに手を打つ意味は大きい と、あらためて感じます。 いま、できること 特別なことは要りません。女性で影響が強かった項目こそ、早めに整えたいポイント です。 ✅ 血圧 を家でときどき測る習慣を ✅ 聞こえにくさ は我慢せず、早めに耳鼻科や補聴器の相談を ✅ 体を動かす。散歩や体操を、無理のない範囲で毎日少しずつ ...

May 31, 2026 · 1 分
野球を応援して喜ぶシニアのイラスト

"好きなこと"が、認知症の心をほどく? 〜阪神優勝とBPSDの研究から〜

認知症のご家族が、以前より 怒りっぽくなった、あるいは 元気がなくなって一日ぼんやり過ごすようになった――そんな変化に、戸惑ったことはありませんか? こうした、もの忘れ以外の「心と行動の変化」は、ご本人にとっても、支えるご家族にとっても、とてもつらいものです。 そんな中、ちょっと驚くような、でも心があたたかくなる研究が報告されました。テーマは、なんと 「プロ野球」。阪神タイガースが優勝したあと、ファンの認知症の方の “心の症状” がやわらいだ というのです。 理学療法士として長く介護の現場にいる私自身、学生時代は野球部で、いまも阪神ファンのひとり。この話には、つい身を乗り出してしまいました。今日は、この研究から見えてくる 「好きなこと・楽しみの力」 について、ごいっしょに考えてみたいと思います。 ✅ 阪神ファンの認知症の方 19名 で、2023年の優勝後に BPSD(ビーピーエスディー=認知症にともなう心と行動の症状)が やわらいだ と報告された ✅ 怒りっぽさ・無気力・興奮・昼夜逆転・気分の落ち込みなど、幅広い症状 で良い変化がみられた ✅ ただし 19名の小さな探索的な研究。「好きなこと・楽しみが心に効くかもしれない」という ヒント として受け止めたい 目次 そもそも「BPSD」って何? どんな研究だったの? どんな症状が、やわらいだの? なぜ「好きなこと」が、心に効くのでしょう 理学療法士として、私自身のこと いま、私たちにできること おわりに そもそも「BPSD」って何? 認知症というと、「もの忘れ」を思い浮かべる方が多いと思います。これは 中核症状(ちゅうかくしょうじょう)と呼ばれる、脳のはたらきが直接およぼす症状です。 いっぽうで、それを取り巻くように現れるのが BPSD(行動・心理症状)です。たとえば、 怒りっぽくなる、強い言葉が出る 不安そうにする、落ち着かず動き回る 元気がなくなる、何ごとにも関心をしめさなくなる 昼と夜が逆転する 気分が沈む といったものです。BPSDは、ご本人の体調・気持ち・まわりの環境 などによって、強くなったり、やわらいだりします。裏を返せば、接し方や環境を整えることで、和らげられる可能性がある ということでもあります。 どんな研究だったの? 今回の研究は、大阪・脳神経内科はつたクリニックの 初田裕幸(はつた ひろゆき)医師 らによるもので、医学誌 Geriatrics & Gerontology International(2026年5月号)に報告されました。 研究では、関西地方にお住まいの認知症の方 855名 を対象に、プロ野球の試合結果 と BPSDの変化 に関係がないかを調べました。 そして、そのうち 阪神タイガースのファンだった19名 に注目したところ、2023年にチームがセ・リーグで優勝したあと、BPSDのスコア(症状の強さを表す点数)が、はっきりと下がっていた(=症状がやわらいでいた)のです。 ここで、ひとつ大切なことを正直にお伝えします。これは 「探索的レトロスペクティブ研究」 といって、過去の記録をふり返って関係を探す、最初の手がかりを見つけるタイプ の研究です。注目したのも19名という小さな人数。ですから、「優勝すれば症状が必ず良くなる」と言い切れるものではありません。あくまで 「こういう面白い関係がありそうだ」という、出発点の発見 です。 ...

June 24, 2026 · 1 分
猛暑の中で涼をとるシニアのイラスト

夏の暑さは、脳にも効いていた? 〜猛暑と認知症リスク、今年からできる対策〜

年々きびしくなる夏の暑さ。「ご高齢のご家族が心配」「自分も夏になると体がつらい」と感じている方は、多いのではないでしょうか。 暑さといえば、まず気になるのは 熱中症。けれど最近、それだけではない可能性を示す研究が報告されました。テーマは 「長く続く猛暑と、認知症のリスク」 です。 日本の大規模な調査で、極端な暑さに何年もさらされることが、認知症の発症リスクと関係していそうだ という結果が出たのです。少し心配な話に聞こえるかもしれませんが、大事なのは 「だからこそ、今年の夏からできる対策がある」 ということ。今日は、研究の中身と、すぐに実践できる暑さ対策を、ごいっしょに見ていきます。 ✅ 日本の高齢者 約5万7千人 の調査で、極端な暑さに多くさらされた人ほど、認知症の発症リスクがやや高まる傾向がみられた ✅ 目安として、猛烈に暑い日が7日増えるごとに、認知症のリスクが約9%・亡くなるリスクが約13% 高まる計算だった ✅ ただし「暑さが原因」と言い切れる段階ではない。だからこそ 今年の夏から、エアコン・水分・室温の対策 を大切にしたい 目次 どんな研究だったの? どれくらい、リスクが上がるの? なぜ暑さが、脳に関わるのでしょう 理学療法士として、夏の現場で感じること いま、私たちにできること おわりに どんな研究だったの? あなた 暑さで「熱中症」はよく聞きますけど、「認知症」にも関係があるなんて初耳です。どんな調査だったんですか? Torapon 日本の高齢者 約5万7千人 を長く追いかけた、とても大きな調査なんです。順番に見ていきましょう。 この研究は、東京科学大学・公衆衛生学分野の 森田彩子(もりた あやこ)氏 らによるもので、認知症の世界的な医学誌 Alzheimer’s & Dementia(2026年1月4日号)に報告されました。 使われたのは、JAGES(ジェイジス=日本老年学的評価研究) という、日本の高齢者を長く追いかけた大規模な調査のデータ(2016〜2019年)です。対象になったのは、同じ町に30年以上住み、認知症がなく、自立して生活している65歳以上の方 約5万7千人。これだけ多くの方を追跡した、信頼性の高い調査です。 研究では、それぞれの地域の ふだんの気候とくらべて「極端に暑い日」が何日あったか を計算し、その暑さへの「のべの量」が多い人と少ない人で、その後の 認知症の発症 や 死亡 に差が出るかを調べました。 追跡のあいだに、2,454名(4.3%)が認知症を発症し、2,375名(4.2%)が亡くなっていました。 どれくらい、リスクが上がるの? 結果は、「極端な暑さにさらされた量が多い人ほど、認知症や死亡のリスクがやや高くなる」 という傾向を示すものでした。 数字でいうと、わかりやすい目安はこちらです。 猛烈に暑い日が7日ふえるごとに、認知症になるリスクは約 9%、亡くなるリスクは約 13% 高まる計算だった さらに研究チームは、2016〜18年に実際にあったレベルの猛暑 にあてはめると、認知症のリスクは 約1.43倍、死亡のリスクは約1.63倍になると試算した あなた 「1.43倍」って聞くと、ちょっとこわい数字です……。 Torapon どきっとしますよね。でも、ここで落ち着いて受け止めたい点があるんです。 これは たくさんの人を集めて見たときの「全体の傾向」 であって、「暑い夏を過ごした人が必ず認知症になる」という意味ではありません。また、この種の研究は 「関係がありそうだ」を示すもの で、暑さが直接の原因だと断定できる段階ではない、ということも大切です。 ...

June 25, 2026 · 1 分
笑顔でウォーキングを楽しむシニアのイラスト

認知症リスクを45%下げる運動習慣 〜60代から始める「脳の貯金」〜

「最近、人の名前がすぐに出てこない」「物のしまった場所をよく忘れる」―― そんな小さな不安を、ふと感じることはありませんか? 認知症は、ある日突然なるものではなく、何十年もかけて静かに進む病気だといわれています。 だからこそ、「いま、何ができるか」がとても大切です。 最近、世界的に権威のある医学誌『ランセット』の専門委員会が、こんな報告を発表しました。 「認知症のリスク要因の約45%は、生活習慣で管理・遅らせることが可能」 その中でも、今回お伝えしたいのが 「運動」 です。 私も理学療法士として30年、たくさんの方の体と向き合ってきましたが、「運動が脳に効く」という事実は、年を追うごとに 科学的にもはっきり してきています。 ✅ 定期的に運動している人は、認知症リスクが 約31%低い(早歩きを週3回以上で 50%低下 との報告も) ✅ 効くのは 有酸素運動+筋トレ+コグニサイズ(運動と脳トレの組合せ) の合わせ技 ✅ 「もう遅い」はありません。60代・70代から始めても1年で変わります 目次 なぜ運動が脳にいいの? 認知症予防に効く「4つの運動」 どのくらいやればいい? 頻度・強度・期間の目安 60〜70代の方へ 無理なく続けるコツ 理学療法士として、現場で感じていること いま、私たちにできること おわりに なぜ運動が脳にいいの? あなた 運動が体にいいのは分かるんですけど……『脳にいい』って、どうもピンとこなくて。 Torapon そうですよね。実はここ数年で、運動が脳そのものに効く しくみが少しずつ分かってきたんです。3つのポイントに分けて、やさしく見ていきましょう。 「運動が体にいい」のはイメージしやすいと思います。 でも、運動が “脳” にも直接効く ということは、案外知られていません。 ここ数年の研究で、こんなしくみが分かってきました。 ① 筋肉から「脳の肥料」が出る スクワットなど筋肉を使う運動をすると、筋肉から イリシン という物質が出て、脳の中で BDNF(脳由来神経栄養因子) を増やすことが分かっています。 BDNF は別名 「脳の肥料」。新しい神経のつながりを作ったり、傷んだ神経を修復したりする、とても大切なはたらきをします。 ② 脳の血のめぐりが良くなる 運動で全身の血流が良くなると、脳にも新鮮な酸素と栄養が届きます。 特に 運動と頭の体操を組み合わせる と、記憶を司る脳の領域(海馬)が 萎縮しにくくなる ことが報告されています。 ③ リスクそのものが下がる 統計的にも、運動習慣のある人は、ない人に比べて 認知症リスクが約31%低い というデータがあります。さらに、早歩きなどの 少し息が上がる運動を週3回以上 行っている方は、リスクが50%も下がる との報告もあります。 ...

May 8, 2026 · 2 分
笑顔でウォーキングを楽しむシニアのイラスト

運動すると、筋肉が「脳を守る薬」を出している? 〜注目の物質『イリシン』のはなし〜

「運動は体にいい」――これは、みなさんよくご存じだと思います。 では、「運動は “脳” にもいい」 のはなぜか、考えてみたことはありますか? 「歩くのは足の運動なのに、どうして頭にまで効くんだろう?」 実は、その “橋渡し” をしている物質が、近年とても注目されています。 その名前が イリシン。運動をすると、筋肉そのものから分泌され、血液に乗って脳まで届く といわれる物質です。 理学療法士として30年、私はたくさんの方の体と向き合ってきました。「運動が脳に効く」という実感は前からありましたが、その “理由” が少しずつ科学で説明できるようになってきたのは、とても心強いことです。 ✅ 運動すると、筋肉から イリシン(運動でつくられるホルモンのような物質)が出ると考えられている ✅ イリシンは脳に届き、「脳を育てる物質(BDNF)」 を増やして、記憶の中心 「海馬」 を助けるとみられる ✅ 2026年には、人間でも「運動→イリシン→海馬」のつながり を示す研究が報告された(ただし、まだ研究の途上です) 目次 そもそも「イリシン」って何? なぜ筋肉の物質が、脳にまで効くの? 2026年の新しい研究が示したこと どんな運動でイリシンは出るの? 理学療法士として、現場で感じていること いま、私たちにできること おわりに そもそも「イリシン」って何? イリシン(irisin)は、運動をしたときに筋肉から出てくる物質 です。 こうした「筋肉から分泌される物質」は マイオカイン(=筋肉がつくるメッセージ物質)と呼ばれ、イリシンはその代表選手のひとつです。 最初に報告されたのは2012年のこと。「筋肉は、ただ体を動かすための器官ではなく、体じゅうに指令を送る “臓器” でもある」――そんな見方を広げるきっかけになりました。 おもしろいのは、このイリシンが 血液に乗って全身をめぐり、脳にまで届く と考えられている点です。 「足腰を動かしているだけ」のつもりが、実は 体の中で “脳あての手紙” を出しているのかもしれない、というわけです。 なぜ筋肉の物質が、脳にまで効くの? カギになるのが、BDNF(ビーディーエヌエフ=脳由来神経栄養因子)という物質です。 むずかしい名前ですが、ひとことで言えば 「脳の神経細胞を育てて、元気に保つための栄養」 のようなものです。 イリシンは脳に届くと、この BDNFを増やす はたらきがあるとみられています。BDNFが増えると、記憶をつかさどる 海馬(かいば)という場所で、神経細胞のつながりが保たれたり、新しく生まれたりするのを助けると考えられています。 流れをまとめると、こうなります。 運動する → 筋肉からイリシンが出る → 血液に乗って脳へ → BDNFが増える → 記憶の中心「海馬」が元気に ...

June 21, 2026 · 1 分
公園で楽しく歩くシニアのイラスト

1日5,000〜7,500歩で、アルツハイマー病の進行が遅くなる? 〜歩数の『スイートスポット』が見えてきた〜

「健康のためには 1日1万歩 歩きましょう」―― そう聞いて、「正直、それはちょっとしんどい」と感じたことはありませんか? 実は最近、世界的に有名な医学誌に、少し希望のもてる研究 が発表されました。 「1日5,000〜7,500歩でも、アルツハイマー病の進行を遅らせる可能性がある」 しかも、すでに脳に “アルツハイマー病の早期サイン” が現れている人 にも、その効果が見られたというのです。 私自身、母がアルツハイマー型認知症で施設に入所しているので、こうした研究には自然と目がとまります。今回は、その内容をできるだけわかりやすくお伝えします。 ✅ 1日 5,000〜7,500歩 歩いている人は、ほとんど歩かない人と比べて思考力の低下が 約半分 だった ✅ すでにアミロイドβ(脳のゴミ)がたまっている人にも、運動の効果が認められた 目次 どんな研究だったの? 5,000〜7,500歩が「スイートスポット」 アミロイドβがあっても、運動は意味がある 「タウ」って何? 脳のゴミとの関係 理学療法士として、現場で感じていること いま、私たちにできること おわりに どんな研究だったの? あなた 歩数と脳の話って、なんとなくの話じゃなくて、ちゃんとした研究なんですか? Torapon はい、とてもしっかりした研究なんです。約300人の高齢者を、最大14年間 も追いかけた大規模なもの。順番に中身を見ていきましょう。 今回ご紹介する研究は、米国マサチューセッツ総合病院(Mass General Brigham)の Wendy Yau 氏らのグループが、「Nature Medicine」 という非常に権威ある医学誌に発表したものです(2025年11月3日掲載)。 大きな特徴 対象:認知機能が 正常な高齢者 296人 期間:最大 14年間 の追跡調査 測定:歩数計で測った 1日の歩数 と、脳の検査 場所:ハーバード大学の「加齢脳研究(HABS)」のデータを使用 「歩数」と「脳の変化」の関係を、ここまで長くきちんと追いかけた研究は、世界的にも珍しいものです。 5,000〜7,500歩が「スイートスポット」 あなた やっぱり、たくさん歩けば歩くほどいい……ってことですよね? Torapon それが、うれしい意外な結果だったんです。1日7,500歩あたりで効果は頭打ち。つまり1万歩を無理にめざさなくても大丈夫、ということなんですよ。 研究では、参加者を 1日の歩数によって4つのグループ に分けて比べました。 グループ 1日の歩数 非活動的 3,000歩以下 低活動量 3,001〜5,000歩 中活動量 5,001〜7,500歩 高活動量 7,501歩以上 その結果、注目すべきことがわかりました。 ...

May 8, 2026 · 2 分
頭の体操をするシニアのイラスト

脳の「処理スピード」を鍛えると、20年後の認知症リスクが下がる? 〜数週間の脳トレが教えてくれたこと〜

「脳トレって、本当に意味があるの?」―― そう感じたことは、ありませんか? ドリルやパズルをやってはみるものの、「これで本当に認知症が防げるのかな…」と、半信半疑の方も多いと思います。 ところが最近、その問いに 20年がかりで答えを出した研究 が話題になりました。 「ある脳トレを数週間受けただけで、認知症になるリスクが下がり、その効果が最長20年続いた可能性がある」 今回は、その内容をできるだけやさしくお伝えします。 ✅ 「情報を素早く処理する力」を鍛える脳トレを受けた人は、10年後の認知症リスクが約29%低かった ✅ その効果は 最長20年 続いた可能性。途中で「追加レッスン」を受けた人ほど、効果が大きかった ✅ 特別な道具はいりません。大事なのは「素早く見て・気づく」練習を 続けること 目次 どんな脳トレだったの? 2,800人を20年追いかけた研究 カギは「追加レッスン」 おうちでできること おわりに どんな脳トレだったの? 今回の主役は、「情報処理スピードのトレーニング」(処理速度=見たものを素早く理解し、判断する力)と呼ばれる脳トレです。 やることはシンプルで、画面にパッと出てくる絵や記号を 素早く見つけて答える というもの。慣れてくると、表示時間がどんどん短くなり、まわりにじゃまな情報があっても、目的のものを素早く見分けられるようになっていきます。 車の運転で「歩行者や標識にパッと気づく」あの感覚に近い力、とイメージするとわかりやすいかもしれません。 2,800人を20年追いかけた研究 この研究は、アメリカで行われた 「ACTIVE研究」 という、とても大きな調査がもとになっています。 対象:65歳以上の 健康な高齢者 2,802人 開始:1998年ごろ から、20年以上の追跡 体制:アメリカ国立衛生研究所(NIH)が支援 参加者を、いくつかの脳トレを受けるグループと、何もしないグループに分けて比べたところ―― 情報処理スピードの脳トレを受けた人は、10年後に認知症と診断されるリスクが約29%低かった そして2026年2月、医学誌『Alzheimer’s & Dementia』に発表された最新の解析では、その効果が 最長20年 にわたってみられた可能性が報告されました。 カギは「追加レッスン」 ひとつ大事なポイントがあります。それは、一度きりで終わらせないこと。 最初の5〜6週間のトレーニングのあと、1〜3年後に 「追加レッスン」(ブースター) を受けた人ほど、認知症リスクがより下がっていました。レッスンを1回受けるごとに、リスクがさらに少しずつ下がっていく傾向もみられたそうです。 運動と同じで、脳トレも 「ときどき思い出して、また続ける」 ことが効いてくる、というわけですね。 おうちでできること 研究で使われたのは専用のパソコンプログラムですが、その「素早く見て・気づく」エッセンスは、毎日の暮らしの中にも取り入れられます。 ✅ トランプの神経衰弱や間違い探し で、「素早く見つける」練習を ✅ 会話・カラオケ・囲碁将棋 など、人と関わりながら頭を使う遊びを ✅ そして何より、ウォーキングなど体を動かす習慣 を。体を動かすことは、最強の「脳トレ」でもあります ✅ 大切なのは「完璧」より 「ときどきでも、続けること」 ...

May 31, 2026 · 1 分
変化していく脳のイメージ

脳は、いくつになっても変われる 〜リハビリでわかった『脳の可塑性』のお話〜

「もう年だから、これ以上は良くならないよ」 リハビリの現場でも、ご本人やご家族から、そんな声をよく耳にします。 でも、私が理学療法士として毎日のように見ているのは、それとは少し違う光景です。 脳の病気やケガのあとでも、練習を重ねるうちに、できなかった動きが少しずつ戻ってくる――。そんな場面が、たしかにあるのです。 その背景には、脳がもともと持っている 「変わる力」 があります。今回はその力、「脳の可塑性(のうかそせい)」 について、やさしくお話しします。 ✅ 脳には、経験や練習に応じて、神経のつながりを作りかえる力 「脳の可塑性」 があります ✅ 脳卒中などで脳の一部が傷んでも、残った部分が役割を肩代わりしようとする(脳の再構成)。リハビリは、その力を引き出す手助けです ✅ この力は 高齢になってもゼロにはなりません。日々の運動・学び・人との関わりが、脳の“余力”を育てます 目次 そもそも「脳の可塑性」って? 脳が自分を作りかえる「再構成」の話 リハビリは「脳の変化」を引き出すお手伝い 現場で感じていること 高齢になっても、脳は変われる いま私たちにできること おわりに そもそも「脳の可塑性」って? あなた 脳って、一度できあがったらもう変わらないものだと思っていました……。 Torapon よく聞くお話ですね。でも実は、脳のつながり方は生まれたまま固定されているわけではないんです。練習や経験に応じて作りかわる力 ——それが『脳の可塑性』なんですよ。 私たちの脳の中には、「神経細胞(しんけいさいぼう)」 が、数えきれないほどたくさんあります。この細胞どうしは、手をつなぐように 「シナプス」 という接ぎ目でつながり、網の目のようなネットワークをつくっています。 このつながり方は、生まれたときのまま固定されているわけではありません。何かを練習したり、新しい経験をしたりすると、つながりが太くなったり、新しくできたりします。この「経験に応じて、脳の回路を作りかえる力」のことを、「脳の可塑性(かそせい)」 と呼びます。 たとえば、よく使う神経のつながりは、信号が伝わりやすくなっていきます。これは専門的には 「長期増強(ちょうきぞうきょう、LTP)」 と呼ばれ、学習や記憶の土台になっている仕組みです。「習うより慣れろ」という言葉は、まさに脳の可塑性のことを言い当てているのかもしれません。 脳が自分を作りかえる「再構成」の話 この「変わる力」が、いちばん頼もしくはたらくのが、脳卒中(のうそっちゅう)などで脳の一部が傷ついたあとです。 脳のある場所が傷んで、そこが担っていた役割(手を動かす、言葉を話すなど)がうまくいかなくなったとき――傷つかずに残った部分が、ネットワークを組み替えて、その役割を肩代わりしようとすることがあります。これを 「脳の再構成(さいこうせい)」 といいます。 休んでいた回路が活性化したり、残った神経どうしが新しいつながりをつくったりして、失われかけた働きが、少しずつ再び組み立て直されていくのです。 ただし、いいことばかりではありません。脳が傷ついたあとには、回復のじゃまをするタンパク質が現れることもわかってきており、これが回復の壁になる場合があります。だからこそ、早めに・適切にはたらきかけることが大切だと考えられています。 リハビリは「脳の変化」を引き出すお手伝い あなた リハビリって、ただ我慢して頑張るだけの、つらいものだと思っていました。 Torapon がむしゃらに頑張ればいい、というものではないんです。リハビリは、脳が変わりやすい状況を外から手伝ってあげる もの。運動や繰り返しの練習が、その『変わる力』をそっと引き出してくれるんですよ。 では、その「変わる力」を、どうやって引き出すのでしょうか。 そこで登場するのが、リハビリテーションです。 リハビリは、運動や、同じ動きの反復練習といった刺激を通して、脳の可塑性を 意図的に引き出し、失われた機能の回復を促していくプロセスだと考えられています。やみくもに頑張るのではなく、「脳が変わりやすい状況」を、外から手伝ってあげるイメージです。 カギをにぎるのが、脳の中で出る アセチルコリン という物質です。記憶や注意に深くかかわる脳の部位(マイネルト神経核)から出るこの物質が、脳の可塑性を後押しするスイッチのような役割をすると考えられています。さらに、こうした物質を調整して人工的に可塑性を高め、リハビリの効果を底上げしようという研究も進められています。 そしてもう一つ大切なのが、環境と経験です。ヒトの脳は、まわりの環境や、積み重ねる経験によって育ちます。刺激の豊かな環境――人と話す、手先を使う、体を動かす――が、脳の作りかえを後押しすると考えられています。 運動が脳を元気にする話は、こちらの記事もあわせてどうぞ。 👉 運動でつくられる“脳の若返り物質”の話 現場で感じていること 理学療法士として現場に立っていると、教科書の言葉以上に、この「脳の可塑性」を実感する場面があります。 最初はわずかな動きしか戻らなくても、あきらめずに、こつこつ続けた方ほど、半年・一年と経つうちに、できることが増えていく――そんな姿を、何度も見てきました。派手な特効薬があるわけではありません。地道な繰り返しこそが、脳の変化を引き出す確かな道なのだと、現場で教えられています。 高齢になっても、脳は変われる ...

June 27, 2026 · 1 分
運動で体と脳を元気にするイメージ

「にぎる力」が、脳を守る? 〜筋肉と脳の、新しい関係のお話〜

「このごろ、ペットボトルのフタが開けにくくなった」 「握手した手に、昔ほど力が入らない気がする」 そんなふうに、手の力(握力)の衰えを感じたことはありませんか? 「年のせいだから、しかたない」と思ってしまいがちですが、実はいま、この“にぎる力”と、脳の元気との関係に、世界中の研究者が注目しています。 理学療法士として現場に立っていると、「体の力」と「頭の元気」は、思っている以上に深くつながっていると感じます。今回は、筋肉と脳の、新しい関係について、やさしくお話しします。 ✅ 握力は「体全体の筋力の鏡」。大規模な研究で、握力が強い人ほど、将来アルツハイマー病になりにくい傾向が報告されています ✅ アメリカの有名な研究所が、**2026年を「脳の健康の年」**と位置づけました。運動が、脳を元気にする物質 「BDNF」 を増やすことがわかっています ✅ カギは、中年期からの筋力づくり。歩くなどの有酸素運動だけでなく、「筋トレ(筋力を保つこと)」も脳を守る、という新しい視点が広がっています 目次 そもそも、握力と脳って関係あるの? 世界が注目「2026年は、脳の健康の年」 握力は「体全体の筋力の鏡」 なぜ、筋肉が脳を守るの? 現場で感じていること いま私たちにできること おわりに そもそも、握力と脳って関係あるの? あなた 手の力と、脳の元気……。まったく別のもののように思えるのですが。 Torapon そう感じますよね。でも、握力は「体ぜんたいの筋力」をうつす鏡のようなもの。手の力が保てている方は、体全体の筋肉も元気なことが多いんです。そして、その体の元気が、脳の元気ともつながっている——そんなことが、少しずつわかってきたんですよ。 握力とは、文字どおり「手でにぎる力」のことです。健康診断で測ったことがある方もいらっしゃるかもしれません。 この握力、じつは 「体全体の筋力の目安」 として、医療の現場でよく使われています。手の力だけを特別にはかっているのではなく、握力が保てている人は、全身の筋肉も元気なことが多いからです。 そして近年、この握力と、脳の健康・認知症のリスクとの関係を調べる研究が、世界中で相次いで報告されるようになりました。順番に見ていきましょう。 世界が注目「2026年は、脳の健康の年」 アメリカに、ソーク研究所(Salk Institute) という、脳科学で世界的に知られる研究所があります。この研究所が、2026年を「脳の健康の年(Year of Brain Health)」 と位置づけ、脳を守るしくみの解明に力を入れると発表しました。 その中で、大きなテーマの一つとされているのが 「運動」 です。 運動をすると、脳の中で 「BDNF(ビーディーエヌエフ)」 という物質が増えることがわかっています。これは 「脳を元気にする栄養」 のようなもので、神経細胞が生き延びるのを助け、学びや記憶を後押しし、新しい神経細胞が育つのを支えるはたらきがあると考えられています。 あなた 運動が、脳の栄養を増やしてくれるんですね。ちょっと意外です。 Torapon そうなんです。しかも研究所は、「有酸素運動」だけでなく「筋力(筋トレ)」も、脳を守るのではないかと考えて、くわしく調べはじめています。歩くことに加えて、筋肉を保つことも大事、というわけですね。 これまで「運動といえば、ウォーキングなどの有酸素運動」というイメージが強かったかもしれません。でもいま注目されているのは、筋力そのもの。筋肉が強い人ほど、脳が守られやすいのではないかという、新しい視点です。 運動でつくられる“脳の若返り物質”の話は、こちらの記事もあわせてどうぞ。 👉 運動でつくられる“脳の若返り物質”の話 握力は「体全体の筋力の鏡」 「筋力が脳を守る」という話を、より具体的に示したのが、握力を使った大規模な研究です。 ある研究では、約8万6千人という、とても多くの人を長い期間にわたって追いかけました。その結果、握力が強い人ほど、将来アルツハイマー病になるリスクが低い、という関係が、段階的にみられたと報告されています。握力が強いほどリスクが下がっていく——そんなゆるやかな傾向です。 また、2025年に発表された別の大規模な追跡研究でも、筋力が弱い人は、将来認知症になるリスクがやや高いという結果が示されました。握力や全身の筋力の低下が、将来の脳の健康を映すサインの一つになりうる、というわけです。 あなた 握力が弱いと、もう手おくれ……ということでしょうか。 Torapon いいえ、そうではありません。これらはあくまで「傾向」であって、握力が弱いから必ずそうなる、という話ではないんです。むしろ大切なのは、筋力は、いくつからでも育てられるということ。とくに 40〜60代の中年期から筋力を保つことが、将来の脳を守る土台になると考えられているんですよ。 ここで大事なのは、「握力の数字におびえること」ではありません。握力は、あくまで体の状態を知る手がかりの一つです。数字そのものより、**「これから、体の筋力をどう保っていくか」**のほうが、ずっと大切です。 なぜ、筋肉が脳を守るの? では、どうして筋肉が、脳を守ってくれるのでしょうか。そのしくみは、まだ研究の途中で、すべてが解明されたわけではありません。ただ、いくつかの道すじが考えられています。 運動が「脳の栄養(BDNF)」を増やす……体を動かすことで、神経を元気に保つ物質が増えると考えられています 筋肉そのものが、脳によい物質を出す……近年、筋肉は「動くための器官」であるだけでなく、体じゅうに“よい信号”を送り出す器官でもあることがわかってきました 血のめぐりがよくなる……運動や筋力の維持は、脳へ届く血の流れを助けます 生活習慣が整う……体を動かす習慣は、睡眠・血圧・血糖など、脳に関わる多くのことを、よい方向へ導きます ソーク研究所も、「筋肉を育てるしくみ」が、年をとった脳を守る手がかりになるのではないか、と考えて研究を進めています。つまり、筋肉を保つことは、脳への“うれしい贈りもの”を増やすことでもあるのです。 ...

July 3, 2026 · 1 分
和やかに食卓を囲むシニア夫婦のイラスト

認知症予防は「食卓」から 〜MCIからの回復にも効く食事の整え方〜

「最近、何を食べたか思い出せない」「同じおかずばかりになっている気がする」―― 食卓を見ながら、ふとそんな小さな不安を感じることはありませんか? 実は、毎日の食事が、何十年もかけて少しずつ脳の健康をつくっていることが、近年の研究でだんだんはっきりしてきました。 そして、もし軽い物忘れ=**MCI(軽度認知障害)**の段階であれば、適切な対策で 健常な状態へ戻る可能性がある ことも分かっています。 ✅ 「これさえ食べれば治る」魔法の食品はありません。基本は 多様な食品をバランスよく ✅ 主食・主菜・副菜を、1日2食以上そろえることが質のよい食事の目安 ✅ 年代で食事のギアチェンジを:中年期はメタボ対策、高齢期はフレイル(虚弱)対策 今日は、認知症予防やMCIからの回復を支える「食事の整え方」を、できるだけやさしくまとめてみます。 目次 そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う 減塩・血糖・お酒の付き合い方 「共食」と五感の刺激 〜心と脳を元気に〜 私自身が実践していること(体験談) いま、私たちにできること おわりに そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 「食事で本当に脳が変わるの?」と思われるかもしれません。 これについて、近年こんなことが分かってきました。 いろいろな種類の食品を食べている人ほど、認知機能の低下が抑えられている 野菜・果物・魚を豊富に含む食事(地中海食や、それを応用した MIND食 と呼ばれるもの)は、抗酸化・抗炎症のはたらきによって認知症予防に役立つと考えられている 高血圧・糖尿病・高LDLコレステロールなど 血管の病気 は、認知症のリスクを高めることが分かっている。だから「血管の健康を保つ食事」が、そのまま「脳を守る食事」になる つまり食事は、ある日突然脳に効く特効薬ではなく、毎日少しずつ、脳に栄養を貯金していくようなものなのです。 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 「何を食べたらいいの?」と聞かれたら、私はまず 3つの皿をそろえること をおすすめしています。 主食(しゅしょく) ごはん、パン、麺類など エネルギー源 になります 主菜(しゅさい) 魚、肉、卵、大豆製品(豆腐・納豆など) 筋肉や脳の材料となるたんぱく質 が豊富 副菜(ふくさい) 野菜、きのこ、海藻、サラダ、煮物 ビタミン・ミネラル・食物繊維 で、脳の酸化ストレスを和らげます そこに、果物・ナッツ・乳製品を少しプラスできれば、栄養バランスはほぼ整います。 1日2食以上、主食・主菜・副菜がそろっているか―― これを意識するだけで栄養バランスは完璧です。 朝・昼・夜の小さな工夫 朝食:手間をかけずに ゆで卵 や 納豆 で主菜を確保。ヨーグルト で乳製品もプラス 昼食・夕食:魚(鯖・イワシ・サンマなど) を週に2〜3回。緑黄色野菜 を2種類以上 おやつ:菓子パンやスナックの代わりに ナッツ・果物・チーズ を選ぶ 「全部きちんと」と思うと続きません。1日1回からでOK。私もそうしています。 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う ...

May 9, 2026 · 2 分