笑顔でウォーキングを楽しむシニアのイラスト

認知症リスクを45%下げる運動習慣 〜60代から始める「脳の貯金」〜

「最近、人の名前がすぐに出てこない」「物のしまった場所をよく忘れる」―― そんな小さな不安を、ふと感じることはありませんか? 認知症は、ある日突然なるものではなく、何十年もかけて静かに進む病気だといわれています。 だからこそ、「いま、何ができるか」がとても大切です。 最近、世界的に権威のある医学誌『ランセット』の専門委員会が、こんな報告を発表しました。 「認知症のリスク要因の約45%は、生活習慣で管理・遅らせることが可能」 その中でも、今回お伝えしたいのが 「運動」 です。 私も理学療法士として30年、たくさんの方の体と向き合ってきましたが、「運動が脳に効く」という事実は、年を追うごとに 科学的にもはっきり してきています。 ✅ 定期的に運動している人は、認知症リスクが 約31%低い(早歩きを週3回以上で 50%低下 との報告も) ✅ 効くのは 有酸素運動+筋トレ+コグニサイズ(運動と脳トレの組合せ) の合わせ技 ✅ 「もう遅い」はありません。60代・70代から始めても1年で変わります 目次 なぜ運動が脳にいいの? 認知症予防に効く「4つの運動」 どのくらいやればいい? 頻度・強度・期間の目安 60〜70代の方へ 無理なく続けるコツ 理学療法士として、現場で感じていること いま、私たちにできること おわりに なぜ運動が脳にいいの? 「運動が体にいい」のはイメージしやすいと思います。 でも、運動が “脳” にも直接効く ということは、案外知られていません。 ここ数年の研究で、こんなしくみが分かってきました。 ① 筋肉から「脳の肥料」が出る スクワットなど筋肉を使う運動をすると、筋肉から イリシン という物質が出て、脳の中で BDNF(脳由来神経栄養因子) を増やすことが分かっています。 BDNF は別名 「脳の肥料」。新しい神経のつながりを作ったり、傷んだ神経を修復したりする、とても大切なはたらきをします。 ② 脳の血のめぐりが良くなる 運動で全身の血流が良くなると、脳にも新鮮な酸素と栄養が届きます。 特に 運動と頭の体操を組み合わせる と、記憶を司る脳の領域(海馬)が 萎縮しにくくなる ことが報告されています。 ③ リスクそのものが下がる 統計的にも、運動習慣のある人は、ない人に比べて 認知症リスクが約31%低い というデータがあります。さらに、早歩きなどの 少し息が上がる運動を週3回以上 行っている方は、リスクが50%も下がる との報告もあります。 運動は、いま見つかっている認知症予防策の中でも、もっとも証拠(エビデンス)の積み重なった方法のひとつ です。 認知症予防に効く「4つの運動」 ...

May 8, 2026 · 2 分
公園で楽しく歩くシニアのイラスト

1日5,000〜7,500歩で、アルツハイマー病の進行が遅くなる? 〜歩数の『スイートスポット』が見えてきた〜

「健康のためには 1日1万歩 歩きましょう」―― そう聞いて、「正直、それはちょっとしんどい」と感じたことはありませんか? 実は最近、世界的に有名な医学誌に、少し希望のもてる研究 が発表されました。 「1日5,000〜7,500歩でも、アルツハイマー病の進行を遅らせる可能性がある」 しかも、すでに脳に “アルツハイマー病の早期サイン” が現れている人 にも、その効果が見られたというのです。 私自身、母がアルツハイマー型認知症で施設に入所しているので、こうした研究には自然と目がとまります。今回は、その内容をできるだけわかりやすくお伝えします。 ✅ 1日 5,000〜7,500歩 歩いている人は、ほとんど歩かない人と比べて思考力の低下が 約半分 だった ✅ すでにアミロイドβ(脳のゴミ)がたまっている人にも、運動の効果が認められた 目次 どんな研究だったの? 5,000〜7,500歩が「スイートスポット」 アミロイドβがあっても、運動は意味がある 「タウ」って何? 脳のゴミとの関係 理学療法士として、現場で感じていること いま、私たちにできること おわりに どんな研究だったの? 今回ご紹介する研究は、米国マサチューセッツ総合病院(Mass General Brigham)の Wendy Yau 氏らのグループが、「Nature Medicine」 という非常に権威ある医学誌に発表したものです(2025年11月3日掲載)。 大きな特徴 対象:認知機能が 正常な高齢者 296人 期間:最大 14年間 の追跡調査 測定:歩数計で測った 1日の歩数 と、脳の検査 場所:ハーバード大学の「加齢脳研究(HABS)」のデータを使用 「歩数」と「脳の変化」の関係を、ここまで長くきちんと追いかけた研究は、世界的にも珍しいものです。 5,000〜7,500歩が「スイートスポット」 研究では、参加者を 1日の歩数によって4つのグループ に分けて比べました。 グループ 1日の歩数 非活動的 3,000歩以下 低活動量 3,001〜5,000歩 中活動量 5,001〜7,500歩 高活動量 7,501歩以上 その結果、注目すべきことがわかりました。 「歩けば歩くほど、認知機能の低下スピードが緩やかになる」 「ただし、1日 7,500歩までで効果は頭打ちになる」 ...

May 8, 2026 · 1 分
頭の体操をするシニアのイラスト

脳の「処理スピード」を鍛えると、20年後の認知症リスクが下がる? 〜数週間の脳トレが教えてくれたこと〜

「脳トレって、本当に意味があるの?」―― そう感じたことは、ありませんか? ドリルやパズルをやってはみるものの、「これで本当に認知症が防げるのかな…」と、半信半疑の方も多いと思います。 ところが最近、その問いに 20年がかりで答えを出した研究 が話題になりました。 「ある脳トレを数週間受けただけで、認知症になるリスクが下がり、その効果が最長20年続いた可能性がある」 今回は、その内容をできるだけやさしくお伝えします。 ✅ 「情報を素早く処理する力」を鍛える脳トレを受けた人は、10年後の認知症リスクが約29%低かった ✅ その効果は 最長20年 続いた可能性。途中で「追加レッスン」を受けた人ほど、効果が大きかった ✅ 特別な道具はいりません。大事なのは「素早く見て・気づく」練習を 続けること 目次 どんな脳トレだったの? 2,800人を20年追いかけた研究 カギは「追加レッスン」 おうちでできること おわりに どんな脳トレだったの? 今回の主役は、「情報処理スピードのトレーニング」(処理速度=見たものを素早く理解し、判断する力)と呼ばれる脳トレです。 やることはシンプルで、画面にパッと出てくる絵や記号を 素早く見つけて答える というもの。慣れてくると、表示時間がどんどん短くなり、まわりにじゃまな情報があっても、目的のものを素早く見分けられるようになっていきます。 車の運転で「歩行者や標識にパッと気づく」あの感覚に近い力、とイメージするとわかりやすいかもしれません。 2,800人を20年追いかけた研究 この研究は、アメリカで行われた 「ACTIVE研究」 という、とても大きな調査がもとになっています。 対象:65歳以上の 健康な高齢者 2,802人 開始:1998年ごろ から、20年以上の追跡 体制:アメリカ国立衛生研究所(NIH)が支援 参加者を、いくつかの脳トレを受けるグループと、何もしないグループに分けて比べたところ―― 情報処理スピードの脳トレを受けた人は、10年後に認知症と診断されるリスクが約29%低かった そして2026年2月、医学誌『Alzheimer’s & Dementia』に発表された最新の解析では、その効果が 最長20年 にわたってみられた可能性が報告されました。 カギは「追加レッスン」 ひとつ大事なポイントがあります。それは、一度きりで終わらせないこと。 最初の5〜6週間のトレーニングのあと、1〜3年後に 「追加レッスン」(ブースター) を受けた人ほど、認知症リスクがより下がっていました。レッスンを1回受けるごとに、リスクがさらに少しずつ下がっていく傾向もみられたそうです。 運動と同じで、脳トレも 「ときどき思い出して、また続ける」 ことが効いてくる、というわけですね。 おうちでできること 研究で使われたのは専用のパソコンプログラムですが、その「素早く見て・気づく」エッセンスは、毎日の暮らしの中にも取り入れられます。 ✅ トランプの神経衰弱や間違い探し で、「素早く見つける」練習を ✅ 会話・カラオケ・囲碁将棋 など、人と関わりながら頭を使う遊びを ✅ そして何より、ウォーキングなど体を動かす習慣 を。体を動かすことは、最強の「脳トレ」でもあります ✅ 大切なのは「完璧」より 「ときどきでも、続けること」 ...

May 31, 2026 · 1 分
和やかに食卓を囲むシニア夫婦のイラスト

認知症予防は「食卓」から 〜MCIからの回復にも効く食事の整え方〜

「最近、何を食べたか思い出せない」「同じおかずばかりになっている気がする」―― 食卓を見ながら、ふとそんな小さな不安を感じることはありませんか? 実は、毎日の食事が、何十年もかけて少しずつ脳の健康をつくっていることが、近年の研究でだんだんはっきりしてきました。 そして、もし軽い物忘れ=**MCI(軽度認知障害)**の段階であれば、適切な対策で 健常な状態へ戻る可能性がある ことも分かっています。 ✅ 「これさえ食べれば治る」魔法の食品はありません。基本は 多様な食品をバランスよく ✅ 主食・主菜・副菜を、1日2食以上そろえることが質のよい食事の目安 ✅ 年代で食事のギアチェンジを:中年期はメタボ対策、高齢期はフレイル(虚弱)対策 今日は、認知症予防やMCIからの回復を支える「食事の整え方」を、できるだけやさしくまとめてみます。 目次 そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う 減塩・血糖・お酒の付き合い方 「共食」と五感の刺激 〜心と脳を元気に〜 私自身が実践していること(体験談) いま、私たちにできること おわりに そもそも「食事と認知症」って関係あるの? 「食事で本当に脳が変わるの?」と思われるかもしれません。 これについて、近年こんなことが分かってきました。 いろいろな種類の食品を食べている人ほど、認知機能の低下が抑えられている 野菜・果物・魚を豊富に含む食事(地中海食や、それを応用した MIND食 と呼ばれるもの)は、抗酸化・抗炎症のはたらきによって認知症予防に役立つと考えられている 高血圧・糖尿病・高LDLコレステロールなど 血管の病気 は、認知症のリスクを高めることが分かっている。だから「血管の健康を保つ食事」が、そのまま「脳を守る食事」になる つまり食事は、ある日突然脳に効く特効薬ではなく、毎日少しずつ、脳に栄養を貯金していくようなものなのです。 基本のキ:主食・主菜・副菜をそろえる 「何を食べたらいいの?」と聞かれたら、私はまず 3つの皿をそろえること をおすすめしています。 主食(しゅしょく) ごはん、パン、麺類など エネルギー源 になります 主菜(しゅさい) 魚、肉、卵、大豆製品(豆腐・納豆など) 筋肉や脳の材料となるたんぱく質 が豊富 副菜(ふくさい) 野菜、きのこ、海藻、サラダ、煮物 ビタミン・ミネラル・食物繊維 で、脳の酸化ストレスを和らげます そこに、果物・ナッツ・乳製品を少しプラスできれば、栄養バランスはほぼ整います。 1日2食以上、主食・主菜・副菜がそろっているか―― これを意識するだけで栄養バランスは完璧です。 朝・昼・夜の小さな工夫 朝食:手間をかけずに ゆで卵 や 納豆 で主菜を確保。ヨーグルト で乳製品もプラス 昼食・夕食:魚(鯖・イワシ・サンマなど) を週に2〜3回。緑黄色野菜 を2種類以上 おやつ:菓子パンやスナックの代わりに ナッツ・果物・チーズ を選ぶ 「全部きちんと」と思うと続きません。1日1回からでOK。私もそうしています。 年代でギアチェンジ:中年期と高齢期で気をつけることは違う ...

May 9, 2026 · 2 分
健康診断の結果を見て笑顔の男性

コレステロールが気になる方へ。今日から始められる『3つの習慣』

「健康診断でコレステロールが高いと言われた…」 「数値を下げたいけど、何から始めればいいの?」 そんな方のために、今日からできる『3つの簡単な習慣』 をお伝えします。 理学療法士として30年、たくさんの方の健康と向き合ってきましたが、結論はとてもシンプルです。 結論:『青魚』『野菜』『ウォーキング』の3つだけでOKです! 難しいことはありません。一つずつ、無理なく始めていきましょう。 そもそもコレステロールって何? コレステロールには 「善玉(HDL)」 と 「悪玉(LDL)」 の2種類があります。 種類 異常なしの値 善玉(HDL) 40 以上(mg/dL) 悪玉(LDL) 60〜119(mg/dL) ※ 2024年4月改定版・日本人間ドック・予防医療学会の基準値 善玉と悪玉、なにが違うの? ざっくり言うとこんな違いです。 善玉:血管にこびりついた余分なコレステロールを掃除してくれる 悪玉:多すぎると血管にたまり、血液をどろどろにする ただし、悪玉といっても コレステロール自体は体に必要なもの。細胞の大切な材料です。少なすぎても問題なんですね。 ちょうど良いバランスが大事、ということです。 「LH比」もチェックしてみてください 最近は LH比(悪玉 ÷ 善玉) という比率が注目されています。 LH比 状態 1.5 未満 血管きれい 1.5 以上 コレステロール、たまり始め 2.0 以上 動脈硬化が心配 2.5 以上 血栓のリスクあり 各値が「異常なし」の範囲でも、LH比が高いと注意が必要です。 健康診断の結果を見ながら、ぜひご自分でも計算してみてください。 高いとどうなるの?気になる3つのリスク 悪玉コレステロールが多すぎると、血管の内側にプラーク(脂のかたまり)がたまっていきます。 そのまま放っておくと… 動脈硬化(血管が硬くなる) 心筋梗塞(心臓の血管が詰まる) 脳梗塞(脳の血管が詰まる) どれも避けたいことばかりですよね。だからこそ、早めの対策が大切なんです。 食事で気をつけたい3つのこと ① 青魚を週に2〜3回、食卓へ サバ・イワシ・サンマなどの青魚には、EPA・DHA という成分がたっぷり含まれています。 これがコレステロールや中性脂肪を減らし、血液をサラサラにしてくれるんです。 毎日でなくても、週に2〜3回 を目安にしてみてください。 💡 ポイント:サバ缶もおすすめです。手軽で、味噌煮や水煮など種類も豊富。買い置きしておくと便利ですよ。 ...

November 2, 2021 · 1 分
地中海食と日本食が並ぶ食卓のイラスト

地中海食と日本食、合わせるとどうなる? 〜認知症予防の食卓に並べたい3つの食材習慣〜

「毎日同じおかずばかりで、なんだか脳によくない気がする」 「地中海食がいいって聞くけれど、急にオリーブオイル中心の食卓には変えられない」―― そんなふうに、自分の食卓と"理想の食事"のあいだで迷っていることはありませんか? 実は近年、地中海食と日本食、どちらも認知症予防によいことが分かってきました。 そして国立長寿医療研究センターの研究では、日本食をよく食べている人ほど認知症になりにくく、腸内環境にも違いが出ることが明らかになっています。 「地中海風」か「和食」かで悩む必要はありません。いいとこ取りで、今日からの食卓を少しずつ整えていくのが現実的な答えです。 ✅ **「単品サプリ」より「食事全体のパターン」**が認知症予防のカギ ✅ 地中海食と日本食はどちらも理にかなっている――両方のいいとこ取りでOK ✅ 注目したい4つの食材:魚介・きのこ・大豆・コーヒー(日本食スコア研究より) 今日は、地中海食と日本食をどう"合体"させるか――そして私の食卓によく並ぶ3つのメニューを、やさしくご紹介します。 目次 そもそも「脳によい食事」って? 地中海食のここがいい 日本食スコアという発見 地中海食×日本食という選択肢 私の食卓によく並ぶ3つの一皿 いま私たちにできること おすすめの一冊 そもそも「脳によい食事」って? 国立長寿医療研究センターは、認知症予防の食事についてはっきりこう言っています。 単一の栄養素(サプリメント等)を摂取しても、認知症予防には効果がありません。 つまり、「これさえ飲めば」という魔法のサプリは無く、実際の食品から、いろいろな栄養をパターンで摂ることが大事だ、ということです。 そのうえで、これまでの研究で繰り返し名前が挙がるのが、地中海食と日本食の二つの食事パターンです。 地中海食のここがいい 地中海食とは、イタリア南部やギリシャ沿岸で昔から食べられてきた食事のことです。 特徴をひと言でまとめると―― 色とりどりの野菜・果物(赤・黄・緑) 魚介類が豊富 オリーブ油を使う 全粒の穀類と食物繊維 ポリフェノールたっぷりの赤ワインを少々 国立長寿医療研究センターも「認知症予防効果が期待できます」と紹介しており、糖尿病の予防にもよいとされています。 ただ、毎日オリーブ油でパスタを食べる暮らしには無理がある――それが日本に住む多くの人の本音だと思います。 日本食スコアという発見 ここで嬉しいニュースがあります。 国立長寿医療研究センターの 佐治直樹副センター長 たちのチームは、日本食をよく食べている人ほど認知症になりにくいことを、実際の患者さんを調べて確かめました(Nutrition誌、2021年)。 研究チームが使った「日本食スコア」は、こんな食品を組み合わせて点数化したものです。 JDI9(基本の9品目) 米・味噌・魚介類・緑黄色野菜・海藻類・漬物・緑茶・牛肉/豚肉・コーヒー JDI12(拡張版) ↑に加えて、大豆・大豆製品/果物/きのこ 点数のつけ方 それぞれの食品について、ふだんよく食べている人は「1点」/あまり食べていない人は「0点」 ただし、牛肉・豚肉は逆(伝統的な和食では魚を主役にするので、たくさん食べていると0点になります) これを9品目すべて足すと、最大9点・最小0点(拡張版なら最大12点) **点数が高いほど"日本食らしい食事"**ということになります つまり「7点」というのは、9品目のうち7つは日常的によく食べているくらいの感覚です。 結果はとても分かりやすいものでした。 認知症のない人 vs 認知症のある人:JDI9 スコア 7点 vs 5点 同じく JDI12 スコア 8点 vs 7点 特に 魚介類・きのこ・大豆・コーヒー をよく食べている人で差が大きかった これらの食品が多い人は、腸内環境がよく整っており、認知症のリスクと結びつくと言われる物質も少ない 傾向(腸内細菌が出す"体に負担をかける成分"のこと) つまり、お味噌汁・焼き魚・きのこ・豆腐・コーヒーといった、ふだんの和食の延長線上にあるものが、ちゃんと脳の健康と結びついていた、ということです。 ...

May 21, 2026 · 1 分
Torapon

野菜中心でも油断できない? 〜超加工食品と『注意力』のはなし〜

「お野菜もちゃんと食べているし、そんなに偏ってはいないはず…」 そう思っていても、菓子パンや即席麺、加工肉が毎日の食卓に並んでいませんか? 最近の研究で、こうした 超加工食品(UPF) が増えると 「注意力」が落ちやすい ことが分かってきました。今回は、難しいお話を平易にまとめてみます。 この記事のポイント ✅ 超加工食品(UPF)が10%増えるごとに、注意力スコアが下がるというデータが出た ✅ 「食事全体の質」とは別の影響なので、野菜中心の人も油断できない ✅ 大切なのは 「ゼロにする」ではなく「頻度を下げる」 そもそも「超加工食品(UPF)」って? UPFは Ultra-Processed Foods の略で、工場で何段階も加工された食品をさします。代表的なものは: 菓子パン、市販の菓子 加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン) 即席麺、冷凍ピザ 清涼飲料水、エナジードリンク スナック菓子 これらは塩・砂糖・脂質に加え、家庭ではあまり使わない添加物(乳化剤・保存料など)が含まれているのが特徴です。 研究:UPF 10%増ごとに「注意力」が落ちる オーストラリアの研究(Monash大学、Cardosoら、2026年4月発表)は、40〜70歳の成人 2,192人 の食事を分析しました。「Nova分類」という方法でUPFの割合を出し、認知機能との関連を調べたところ、 UPFが食事全体で10%増えるごとに、注意力スコアが有意に低下していた ことが分かりました。一方で 記憶のテストとの関連は見られなかった とのこと。注意力という、毎日の生活の中で「うっかり」「気が散る」につながる部分にじわっと影響していたわけです。 大事なのは「食事全体の質」と独立だったこと ここがポイントです。研究では「食事全体の質(野菜・果物の摂取量など)」を補正しても、 UPFそのものの影響が残った といいます。 つまり、 野菜をしっかり食べている方 魚や大豆もとっている方 でも、 菓子パン・加工肉・即席麺・清涼飲料を放っておくと注意力が落ちる可能性がある ということ。「いいものを足す」だけでは足りず、「困るものを少し減らす」両輪が大切なんですね。 現場で私が伝えていること 私(Torapon)は患者さんやご家族にお話しするときに、こんなふうにお伝えしています。 「ゼロにしなくて大丈夫です。それ以外にも、おいしいものはいっぱいありますし、お楽しみとして時々食べる分には良いと思いますよ」 UPFを「悪者扱い」して全部禁止してしまうと、食卓がさみしくなり、長続きしません。 頻度を下げる ことを意識するだけで、注意力の維持にぐっと近づけます。 いま私たちにできること 具体的に、無理なく続けやすい工夫を5つご紹介します。 ✅ 朝食の 菓子パンを週に1〜2回に(残りはご飯・パン+たんぱく質に) ✅ ハム・ソーセージは 週2〜3回まで、メインは魚・卵・豆製品で ✅ 即席麺は 「忙しい日のお守り」 として常備、毎日にはしない ✅ 清涼飲料水を お茶・水・無糖炭酸 に置きかえる ✅ おやつは 果物・ナッツ・ヨーグルト を選ぶ日を増やす ...

May 23, 2026 · 1 分
栄養バランスのよい食卓のイラスト

ビタミンB12、「基準値内」でも足りていないかも? 〜年を重ねた脳と、栄養の意外な関係〜

健康診断で「ビタミンの数値は正常ですよ」と言われると、ひと安心しますよね。 でも、こんな研究をご存じでしょうか。 「血液検査では『基準値内』でも、ビタミンB12がやや低めの高齢者は、考えるスピードが少しゆっくりになっていた」 “足りている”はずなのに、脳には影響が出ているかもしれない――。今回は、そんな少し意外な研究を、やさしくお伝えします。 ✅ B12が「基準値内でも低め」の高齢者は、考えるスピード(処理速度)がゆっくりめ で、脳の白質に小さな変化がみられた ✅ ただし「サプリをたくさん飲めば脳が良くなる」わけではない。上乗せ効果は ごくわずか という報告も ✅ まずは 食事から。気になる方は自己判断せず、血液検査でかかりつけ医に相談 を 目次 そもそもビタミンB12って? 「基準値内なのに足りない」研究の話 サプリに飛びつく前に 食事でとるには おわりに そもそもビタミンB12って? ビタミンB12は、神経や血液を元気に保つ ために欠かせない栄養素です。魚や貝、肉、卵、乳製品などに多く含まれています。 やっかいなのは、年を重ねると吸収する力が落ちやすい こと。さらに、胃の調子や一部のお薬の影響でも、吸収が下がることがあります。つまり「ちゃんと食べているつもり」でも、体の中では足りにくくなっている――そんなことが起こりうるのです。 「基準値内なのに足りない」研究の話 アメリカのカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームが、認知症のない 健康な高齢者231人(平均71歳)を調べました。 すると―― B12が 「基準値内でも低め」 の人は、考えるスピード(処理速度)がゆっくりめ だった さらに、脳の 白質(はくしつ=神経の通り道)に、小さな傷のような変化が多くみられた この研究は2025年に医学誌『Annals of Neurology』に発表され、「いまの基準値は、脳にとっては少し甘いのかもしれない」という議論を呼びました。 サプリに飛びつく前に ここで、とても大事な注意点があります。 「じゃあB12のサプリをたくさん飲めばいいんだ!」――そう考えたくなりますが、話はそう単純ではありません。 別の研究では、Bビタミンのサプリで頭の働きが良くなる効果は ごくわずか にとどまった、と報告されています。足りない人が補うことには意味があっても、「たくさん飲むほど脳に効く」わけではない のです。 サプリは飲み合わせや持病との相性もあります。自己判断で大量にとるのは避け、まずは血液検査でご自分の状態を知ること から始めましょう。 ※ サプリメントや栄養の取り方については、必ずかかりつけ医にご相談ください。 食事でとるには いちばんの基本は、やっぱり毎日の食事です。B12は、こんな食材に多く含まれています。 ✅ あさり・しじみ・牡蠣 などの貝類 ✅ さんま・さば・いわし などの魚 ✅ レバー、卵、牛乳・チーズ、のり 特別なものではなく、和食の食卓に自然と並ぶもの ばかりですね。「最近、魚や貝を食べていないな」と思ったら、週に何回かは意識して取り入れてみてください。 食事と脳の関係は、こちらの記事もどうぞ。 👉 認知症を遠ざける食事のヒント おわりに 「基準値内だから大丈夫」と思っていた栄養が、実は脳にとっては少し足りていないかもしれない――。今回の研究は、そんな気づきを与えてくれました。 とはいえ、神経質になりすぎる必要はありません。魚や貝、卵を、いつもの食卓に少し増やす。 そして気になるときは、ひとりで悩まず、かかりつけの先生に相談する。その小さな積み重ねが、これからの脳を守ってくれます。 ...

May 31, 2026 · 1 分
栄養バランスのよい和食の食卓のイラスト

その「疲れ」「やる気の出なさ」、栄養不足のサインかも? 〜ビタミンB12・葉酸と疲労の意外な関係〜

「しっかり寝ているのに、なんだか疲れがとれない」 「以前ほど、やる気がわいてこない」―― そんなふうに感じることはありませんか? 年のせいかな、と思いがちですが、実は 毎日の食事(栄養) が関係しているかもしれません。今回は、日本の研究から届いた、こんなお話です。 ビタミンB12と葉酸(ようさん)が足りない人ほど、「疲れ」や「やる気の低下」が大きかった ✅ 健康な日本人 約600人 を調べたところ、B12・葉酸が不足ぎみの人ほど、疲れやすく・やる気が出にくい 傾向があった ✅ カギになったのは「ホモシステイン」という血液中の物質。B12・葉酸が足りないと、これが増える ✅ ただし「サプリを飲めば元気になる」と決まったわけではない。まずは 食事の見直し から 目次 B12・葉酸ってどんな栄養? 「疲れ」と栄養をつないだ日本の研究 食事でとるには おわりに B12・葉酸ってどんな栄養? ビタミンB12 と 葉酸 は、どちらも血液や神経を元気に保つために欠かせない栄養素です。2つは チームのように協力して 働いています。 困ったことに、年を重ねると 吸収する力が落ちやすい うえ、葉酸は野菜不足などで足りなくなりがちです。「ちゃんと食べているつもり」でも、体の中では不足しはじめている――そんなことが起こりえます。 「疲れ」と栄養をつないだ日本の研究 大阪公立大学の叶内(かのうち)宏明教授らのチームが、健康な日本人 約600人 を対象に、血液の状態と「疲れ・やる気」の関係を調べました。 すると―― 血液中の「ホモシステイン」が高い人ほど、疲れが強く、やる気も低め だった ホモシステインは、B12・葉酸が足りないと増える 物質 つまり「栄養の不足が、疲れやすさの隠れた原因のひとつかもしれない」というわけです。この研究は2026年、栄養学の専門誌『Nutrients』に発表されました。 ※ これは「関係がみられた」という研究で、「B12・葉酸を増やせば必ず元気になる」と証明したものではありません。慢性的な疲れには、ほかの原因(病気など)も隠れていることがあります。 食事でとるには いちばんの基本は、やっぱり毎日の食事です。 ✅ ビタミンB12 … あさり・しじみ・牡蠣などの貝類、さんま・さば、レバー、卵、のり ✅ 葉酸 … ほうれん草・ブロッコリーなどの青菜、枝豆・納豆などの豆類、いちご・みかんなどの果物 どちらも、和食の食卓に自然と並ぶもの ばかりですね。「最近、魚や青菜を食べていないな」と思ったら、少し意識して取り入れてみてください。 なお「サプリで補えばいいのでは?」と思われるかもしれませんが、自己判断で大量にとるのは禁物 です。疲れが長く続くときは、ひとりで悩まず、まずはかかりつけ医に相談してみましょう。 ※ サプリメントの利用や栄養の取り方については、必ずかかりつけ医にご相談ください。 ビタミンB12と脳の関係は、こちらの記事もどうぞ。 👉 ビタミンB12、「基準値内」でも足りていないかも? おわりに 「疲れ」や「やる気の出なさ」を、気持ちや年のせいだけにしてしまうのは、少しもったいないかもしれません。その背景に、栄養という整えられる原因 がかくれていることもあるのです。 魚や貝、青菜や豆を、いつもの食卓に少しだけ増やす。そんな小さな積み重ねが、毎日の元気につながっていきます。気になる疲れが続くときは、どうぞ早めにかかりつけの先生に相談してくださいね。 📚 あわせて読みたい一冊 PR 医者が教える食事術 最強の教科書 ...

June 1, 2026 · 1 分
夜空の下、月明かりにそっと照らされる脳のイラスト

ぐっすり眠ると、脳が掃除される? 〜眠りと脳のふしぎな関係〜

「最近、ぐっすり眠れていますか?」 夜中に何度も目が覚めたり、朝起きても疲れが残っていたり——。 そんな日が続くと、なんとなく頭がぼんやりして、集中力も落ちてきますよね。 でも、もし「睡眠」が、ただの休憩ではなく、脳の中をきれいに掃除する大切な時間だったとしたらどうでしょう? 実は、2012年に発見されたある仕組みによって、それが本当のことだと分かってきました。 今回はその仕組み——「グリンパティック・システム」をやさしくご紹介します。 この記事のポイント ✅ 脳には、寝ている間に老廃物を流す独自の「掃除システム」があります ✅ そのカギを握るのは、脳脊髄液(のうせきずいえき)と、 星型の細胞「アストロサイト」です ✅ 睡眠不足は、認知症の原因物質の蓄積につながる可能性があります 目次 そもそも「グリンパティック・システム」って? 寝ている間、脳の中で何が起きているの? 掃除がうまくいかないと、どうなる? どうやって守ればいいの? まとめ そもそも「グリンパティック・システム」って? 聞き慣れない言葉ですが、難しく考えなくて大丈夫です。 脳の中を流れる水(脳脊髄液)が、老廃物を洗い流してくれる仕組み——そう思っていただければ十分です。 私たちの体には「リンパ系」という、老廃物や余分な水分を集めて流す仕組みがあります。 ただ、脳の中にはリンパ管がほとんど通っていません。 ではどうやって脳の中の “ゴミ” を片付けているのか——。 それを2012年に解き明かしたのが、デンマークの神経科学者ネーデルガード博士のチームでした。 彼らは脳特有の “もう一つのリンパ系” として、この仕組みをグリンパティック・システムと名付けました。 「グリア(脳の支援細胞)+リンパ」という意味の造語です。 脳の中にも、私たちが眠っている間にせっせと働く"掃除部隊"があったのです。 寝ている間、脳の中で何が起きているの? このシステムの主役は、3人います。 1. 脳脊髄液(のうせきずいえき)——脳と背骨の中を流れる、無色透明の液体です。 2. アストロサイト——脳の中で神経細胞を支える、星のような形をした細胞です。 3. 血管の “ゆっくりした拍動”——心臓に合わせて広がったり縮んだりするポンプの動きです。 眠りに入ると、これらが連携して動き始めます。 ① 細胞の “すき間” が広がる ノンレム睡眠(深い眠り)に入ると、脳の中の興奮を高める物質(ノルアドレナリン)の量がぐっと下がります。 すると、脳の細胞が少し縮み、細胞と細胞のすき間が約60%も広がることが分かっています。 このすき間こそが、脳脊髄液の “通り道”。 広がった通り道を、液体が一気に流れやすくなるのです。 ② 脳脊髄液が流れ込む 血管の周りには、ほんのわずかな空間(血管周囲腔)があります。 脳脊髄液は、ここを通って脳の奥深くまで入り込み、老廃物を集めて再び外へと運び出します。 このとき、アストロサイトの末端にある「アクアポリン4」という小さな水の通り道が、流れをスムーズにする大切な役割を果たします。 ③ 老廃物が運び出される 最終的に集められた老廃物は、首のリンパ節へ送られ、体の外へと処理されていきます。 こうして、起きている間にたまった “脳のゴミ” が、一晩でしっかり片付けられているのです。 つまり、眠っている時間は休んでいるのではなく、脳が “そうじタイム” を迎えているといっても良いでしょう。 掃除がうまくいかないと、どうなる? では、もしこの掃除システムがうまく働かなくなったら——。 ...

May 15, 2026 · 1 分